【インタビュー】SHE IS SUMMER「本
当に大事にすべきものを歌いたくなっ
ている時期だったからこの作品ができ
た」

SHE IS SUMMERの3rd E.P.「MIRACLE FOOD」が完成した。じぶん銀行のタイアップソングとして書き下ろされ、2月に配信された「君をピカソの目でみたら」を含む全6曲。今作もまた、さりげないのに唯一無二の味わいがあり、リピートが止まらない中毒性を秘めたボーカル・MICOの魅力が軽やかに炸裂している。今回は、そんな彼女のセンスと才能の源に着目しながら、本作完成までの経緯を聞いてみた。

■「君をピカソの目でみたら」は“共作したな”っていう手応えがある
■タイトルもそうだけど結構存在感のある曲になりました

――SHE IS SUMMERの3rd E.P.「MIRACLE FOOD」が完成しました。MICOさんの言葉のセンスがとても好きなんです。MICOという人の人格や今のこの感性が出来上がるまでにはどんな過程があったのか、すごく興味があります。

MICO:自分では今も「どうしたらもっと上手く言葉が書けるようになるのかな」って探りながら、勉強しながらなんですよ。文章の書き方をちゃんと習ったわけでもないし、本をたくさん読んだわけでもないけど、“少ない考え方”を持って生まれてきたと思うから、そこを書くくらいしかできないけど、それをしようと思っていて。

――”少ない考え方”??

MICO:去年、自分で書いたエッセイが入ったアーティストブック(「HOW TO CATCH THE TIME」)を作った時にも、やってみたいけど文章をちゃんと書いたことがないから「どうしようかな」って思っていたんです。その頃ちょうどGREAT 3の片寄(明人)さんにサウンドプロデューサーとして参加していただいていて、作詞の面も見てもらったりしていたので相談をしたら、「文章のルールも大切だけど、いちばん大事なのは何を考えているかっていうことだよ」って。「そこにしかオリジナリティーは宿らないと思うから、そこ(自分の考え)をちゃんと書けばいいと思うよ」って言われたんです。

――信頼している方からそんな風に言われると、肩の力を抜いてやれますね。

MICO:そうそう。それに、とりあえず完成させてみないことには、何が良くて悪いのかわからないなとも思って。

――一度やってみないと。

MICO:はい。でも、歌は全然不恰好でもやれたのに、文章や絵になると「不恰好だからやれない」というのは変だなって思ったんですよ。それで、どんなに不恰好でもいいから一度出し切ってみようって思えたんです。
――その考え方って、いろんな場面で自分を助けてくれる気がします。

MICO:あと、私の母、ちょっと変わった人なんですよ。幼い頃から、一度も子供用の言葉遣いで会話をされたことがないんです。

――小さい時から、ちゃんと1人の人間として向き合ってくれていた。

MICO:そうなんです。大人の事情とかも全部話してくれていました。だから結構理屈っぽくなっちゃった気がするんですよね(笑)。客観的に見る癖があるし、冷めているし、説明っぽいというか。すっごい冷めた小学生だったんです(笑)。みんな子供の言葉で、大人の事情を知らずに喋っているから、同い年の子たちが子供に見えてしょうがなかった。「本当はそういうことじゃないのにな」って、私はひとり心の中で思ったりして。

――MICOさんは長女なんですか?

MICO:7つ上の姉がいます。やんちゃな姉だったんですが(笑)、そういうのを見て育ったからっていうのもあるかな。自分が、妙に聞き分けのいい子になったのは。そういう背景もあるかもしれません(笑)。

――今こうしてMICOさんが表現活動をするにあたって、何かしらにじみ出てるなって感じることもありますか?

MICO:もう、それ以外の何物でもないです(笑)。今となれば「よかったな」と思うけど、学生時代は結構悩んだんです。母は全然芸術もカルチャーも全く知らない人なんだけど、随分特殊な育てられ方をしたんだなあって。母は、独創的なんですよ。

――例えば?

MICO:私そうめんが好きだったんですけど、母が「じゃあ流しそうめんしよう!」って言い出して。「家で?どうやって?」って聞いたら、「ホームセンターでパイプ買ってきて、それを半分に割って」とか、子供でもつっこみたくなるようなことを言うんです(笑)。すごく自由。自分で描いたオリジナルのキャラクターもあったし、オリジナルの子守唄も持ってた。

――本能の赴くまま、みたいな。

MICO:そう。そういう母の自由度の高さや常識にとらわれてないところは影響を受けているし、自分の作品にもすごく出ていると思います。自由な発想ができるようになったのは、そういった教えのおかげだなって。

――だから、お店の看板とかじゃなく、音楽をパッケージしたミニアルバムなのにタイトルが「hair salon」になったり、次のツアータイトルが「FOOD COURT」になったりするわけですね(笑)。

MICO:もう自分ではわからないけど、そうなんでしょうね(笑)。でも「hair salon」って付けたあのヤバさは、自分でも理解しています(笑)。

――だけどなぜか納得できるんですよ。全体のムードとして、もう説得力があるというか。だからみんなMICOさんの言葉や作品に惹かれるんだと思います。

MICO:ありがたいです(笑)。でもなんか、もったいないなと思っているところもあるんですよ。母は別に何もしてないから、彼女にも何かアウトプットするところがあればすごい人になっていたんじゃないかなあって。

――確かに。

MICO:母の実家もうちもそんなに裕福じゃなかったから、塾とか習い事とか行ってないんですね。その代わりに工夫をしてきた結果がこうだし(笑)、セオリーばかりだと見失っちゃうものっていっぱいあるんだって気づけたのもよかったなと思っています。
――では改めて今回の「MIRACLE FOOD」について聞いていきたいのですが、まずはリリースに先駆けて配信もされた「君をピカソの目でみたら」の反響はいかがでしたか?

MICO:結構、今までよりも歌詞についての声が多かったですね。あと、私はこれまでのSHE IS SUMMERの楽曲の延長線上にあるものだと思って出したんですが、「今までと違うね」っていうコメントが多くて。私としては、去年リリースした「CALL ME IN YOUR SUMMER」(ミニアルバム「hair salon」収録)で新しい一面を出して、今回はちょっと戻ってきたような感覚だったから、世間の反応が意外でした。

――「君をピカソの目でみたら」は、じぶん銀行のタイアップソング。オリジナルのMVも(https://www.youtube.com/watch?v=A-GpiyOaNPc)、内田理央さん主演のWEBドラマも(https://www.youtube.com/watch?v=qtl37j8kCro)、見応えがありました。

MICO:計画性というテーマで書き下ろしてほしいというお話だったので、何度か共作している元バンドメンバーである(ヤマモト)ショウさんと一緒に作りました。今まででいちばん「共作したな」っていう手応えがあって、歌詞もすごく気に入っています。タイトルもそうだけど、結構存在感のある曲になりましたね。
■「Darling Darling」は聴いた人のメンタルの状態によって歌詞の解釈が変わって
■色んな捉え方ができるんじゃないかなって思う

――今回のE.P.は、全体的なテーマや方向性などを考えた上で制作を始めたんですか?

MICO:全体的にというよりも、やはりE.P.なので1曲1曲という感じで作りましたね。今回からサブスクリプションも解禁になるので、その点も重視して。特に前作のリード曲だった「CALL ME IN YOUR SUMMER」は海外の方にたくさん聴いてもらえて嬉しかったんですが、いわゆるわかりやすいポップスではないので、今まで聴いてくれていた日本の人達は正直どうだったんだろうっていうのがわからない部分もあったんですね。だから今回は、そのどちらの人もが聴ける曲を作りたいねというのを、片寄さんとお話ししながら。

――なるほど。

MICO:あと、これまでの曲はイメージ的に結構キラキラした感じのポップさが強かったと思うんですが、いろんな活動を追ってちゃんと聴いてもらえれば、さっき言ってくださったような私の本質的な部分もわかると思うんです。でも片寄さんから、そういうことが一聴しただけでわからないともったいないと言われて。

――そうやってできたのが、今回のリード曲「Darling Darling」。

MICO:そうですね。この曲は聴いた人のメンタルの状態によって、(歌詞の解釈が)変わる曲かなと思います。色んな捉え方ができるんじゃないかなって思っています。

――現時点ではまだ完成形を聴くことができていないのですが(取材は3月下旬に行われた)、2曲目の「Highway Records feat.向井太一、Simon」、そして3曲目の「TRAVEL FOR LIFE」はどんな感じの曲ですか?

MICO:「Highway Records」は、せっかくのサブスク解禁なので、日本だけじゃなくアジアの色んな国との架け橋になるような曲を作れたらということで、台湾のアーティストにも参加してもらいました。高速道路を飛ばしながら、みんなで適当に作ったハナウタを持ち寄って1曲にするみたいなイメージからこういうタイトルをつけたんですけど、言語が通じなくても車で聴いて気持ちいいみたいな感覚って通じるかなと思ったし、みんなで曲を作るって、それだけでもうハッピーじゃないですか。データのやり取りだったんですけど、まだ会ったこともない人と作っていくっていうのがすごく面白かった(笑)。
――色んな化学反応も起こりそうですね。

MICO:そう! しかも面白かったのが、リズムを打ち込んでくれた台湾のPuzzle Manさんに「レコーディングするから、トラックのデータください」って連絡したら、「今、山登りしているので、下山したら送ります」って。最高ですよね(笑)。私とマインドが似てるなと思って、それだけでもう信用できるなって思っちゃいました。

――MICOさんもそうだけど、人間的な魅力があるから作るものも面白くなるんだと思いますよ。

MICO:これ、今回の制作の中でも好きなエピソードなんです(笑)。みんなで「山、登ってるのかー!いいなぁ!」って。それは「待とう」ってなりますよね(笑)。

――素敵なエピソードです(笑)。「TRAVEL FOR LIFE」は?

MICO:私、すごく旅に出るのが好きなんです。全然旅には縁がない人生を送ってきたんですが、23歳の時に初めての海外旅行でロンドンに行ったんです。前にやっていたバンド(ふぇのたす)が解散したので、何かひとつ、これまでやったことないことをやってから次のことを考えようと思って、急にロンドンに。その時すごくフラットに、自分の本当にやりたいことが湧いてくる感覚があったんですよ。でも家に帰ってきて時間が経つと、その感覚が消えているんです。それがすごく悲しくて。

――なるほど。

MICO:次に旅行に行く時はちゃんと覚えているようにしようって思っているんですけど、どこかでまたフッと消えている。この前の年末年始にドイツに行ったんですけど、「今度こそ!」と思ってメモしておいたことを書いたのがこの曲なんです。気持ちをメモするって、あまり発想にはなかったんだけど。でもこういう気持ちが生まれる場所があるんだっていうことと、そういう気持ちを強く信じること以外、根本的な真実の自分の気持ちに向かっていく方法はないですからね。

――ちなみに最近はどこに行ったんですか?

MICO:マラソンをしに与論島に行きました。友達に誘われたんですけど、こんな機会でもない限り行かないだろうなと思って(笑)。マラソン以外することがなかったんですけど、のんびり綺麗な海をただ眺めるのが幸せだったり、することがない状態にならないと本当にしたいことって思いつかなかったりするんでしょうね。

――仕上がりを楽しみにしています。「海岸2号線」は、去年行われたキネマ倶楽部のワンマンライブで初披露されましたね。

MICO:はい。作曲の原田(夏樹)くんとはこれまでも一緒に曲を作ってきたんですが、今回は「バラードが歌ってみたいです」とお願いしてみました。

――歌詞は何かきっかけがあって生まれたんですか?

MICO:始めて熱海に行ったんですよ。そしたら見事な大雨で(笑)。「こんなことある!?」と思うくらい降っているその光景がすごかったんです。以前はキラキラしていたんだろうなって思うような街の感じ───今は逆にそれがカワイイって言われそうなあの景色が大雨と相まって、色んなことを物語ってきたんです(笑)。何とも言えないこの気持ちはなんなんだろうって、そこから想像しながら歌詞を書いていきました。

――全部ではないですが、MICOさんの書く歌詞は景色が動いていくものも多いですよね。歩いていたり、車で移動している時に記憶した感覚がベースにあるのかなと思うものもあります。

MICO:言われてみれば確かに、そういうところはあると思います。移動ってすごいですよね。飛行機とか電車とか、座っているだけなのに動いている。だけど、物理的な移動距離と気持ち的な移動距離って比例しているんですよね。それは、初めてフジロックに行った時に思いました。移動は、こんなにも直接的に気持ちに影響してくるんだなって。フジロックに行って帰ってきただけで、自分が別人になっていたんですよ。なんだかすごく成長していた。4日間いたんですが、ロールプレイングゲームを1本やりきったような感じでした。
――そんな風に捉えるMICOさんの感覚が、作り出すものにも反映しているんですね。さて今作のラストには「とびきりのおしゃれして別れ話を」のリミックスが収録されています。1作目「LOVELY FRUSTRATION E.P.」のリード曲であり、SHE IS SUMMERの代表曲となってきたわけですが、現時点で、この曲の存在をどんな風に捉えていらっしゃいますか?

MICO:この曲があったから、今の活動があると思います。とてもわかりやすいというか、タイトルひと言でどういうアーティスト性なのかも表せていますよね。でも、実は最初からこの曲がリード曲っていうわけではなかったんですよ。

――そうなんですか!

MICO:すんなり決まらなくて「どうする?」ってなっていた時に、1st E.P.でサウンドプロデュースをしてくれた江口(亮)さんが「いやいや、絶対これでしょ!」って(笑)。私自身もリード曲のつもりで作ったわけではなかったから、この状況は想像以上でした。2年以上経ってもこんなに愛されるとは(笑)。

――当たり前かもしれませんが、その時に何をどう選ぶかで、その先の道筋が変わっていくんですね。

MICO:私は別に、どの道でもいいっていうスタンスなんです。だからあまり気にしてないんだけど、周りからは、戦略的に色んなことをやっているように思われているみたいなんですよね。

――どちらがいいとか悪いという話ではなく、ですよね。

MICO:はい。後付けの説明が上手くできちゃうタイプだから、まるで最初から全部わかってやっているかのように思われるんでしょうね。自分ではもっと野生的な感覚でやっているんだけど、「結構、戦略家だね」って言われたりもして(笑)。もちろん、周りの方達がやってくださっていることもあると思うんですけどね。

――本能的なセンスであることは、お母さまのお話で証明されたと思います(笑)。では最後に、そんなMICOさんの感性で名付けられた今作のタイトル「MIRACLE FOOD」について聞かせてください。

MICO:「MIRACLE FOOD」は、私が考えた架空のフード。ドイツ旅行中に閃きました。ベルリンは、びっくりするくらいご飯が美味しかったんですよ。お店の雰囲気もいいし、ひとつひとつの味も見た目も本当に素晴らしくて。今回の楽曲も、全体のテーマというより1曲1曲で作っていったので、それぞれの味や美味しさを感じてもらえたらなと思ったし、そんなフード(=曲)が並んだこのE.P.は、さっきも少しお話しした旅先での気持ちを呼び覚ましてくれる奇跡の食べもの、つまり「MIRACLE FOOD」なんです。以前はもっとごちゃごちゃしたことを書いていたと思うけど、今回はどの曲も、「食べる」という原始的な行為のように根本的な気持ちしか書いていない。本当に大事にすべきものを歌いたくなっている時期だったからだと思うし、そういうものを書いたので、ぴったりだったなと思っています。

――3rd ANNIVERSARY ワンマンライブ「FOOD COURT」も楽しみにしています。

MICO:ライブは、単純にお腹いっぱいになって帰ってほしいなと思うんですよね。美味しそうなものがたくさん並んでいるフードコートでお腹や気持ちを満たすみたいに、元気とかパワー溢れる気持ちをテーマにライブができたらいいなと思っています。

取材・文●山田邦子

SHE IS SUMMERは、カラオケの第一興商が強力プッシュする5月度D-PUSH!アーティストに決定しており、「君をピカソの目でみたら」は楽曲配信されており歌唱が可能だ。また「君をピカソの目でみたら」のミュージックビデオは、カラオケ背景映像に今だけクリップ(期間限定映像)として順次配信。さらに、カラオケ演奏の合間に放映される音楽情報コンテンツ「DAM CHANNEL」内のD-PUSH!コーナーにゲスト出演し、パーソナリティとのトークを楽しませてくれる。DAM CHANNEL(新曲目次本)D-PUSH!ページでは、ここでしか読むことのできないインタビュー記事とともにアーティスト写真、ジャケット写真が掲載される。そしてリリース情報、インタビュー記事が同社が運営するwebサイト「DAM CHANNEL」(https://www.clubdam.com)でも掲載される。カラオケ店やWEBで、SHE IS SUMMERとの出会いを楽しんでほしい。
リリース情報

3rd E.P.「MIRACLE FOOD 」
5月15日(水)発売
SCL-006 \1,800 (1,667+税)
1.Darling Daring
2.Highway Records feat.向井太一,Simon
3.TRAVEL FOR LIFE
4.海岸2号線
5.君をピカソの目でみたら
6.とびきりのおしゃれして別れ話を SIRUP & Mori Zentaro Remix

ライブ・イベント情報

<SHE IS SUMMER 3rd ANNIVERSARYワンマンライブ「FOOD COURT」>
2019年5月19日(日) 大阪・梅田 Shangri-La
2019年6月01日(土) 東京・恵比寿LIQUIDROOM

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