京都・南座が遊び場になるーー松竹株
式会社 代表取締役社長・迫本淳一氏
と株式会社GO 代表取締役 三浦崇宏氏
が語る『京都ミライマツリ2019』

4月30日(火)、きゃりーぱみゅぱみゅ 音ノ国ライブツアー 2019 第二弾「きゃりーかぶきかぶき」で幕を開けた京都·南座での新プロジェクト南座新開場記念「京都ミライマツリ 2019」Supported by SUNTORY。5月12日(土)からは「昼マツリ–HIRUMATSURI-」「夜マツリ–YORUMATSURI-」が開かれる。本プロジェクトでは、南座の新機構である「客席フルフラット化」を活用し、昼と夜で演出の異なるお祭りを展開。舞台上には本物の水を用いた納涼滝が現れ、その滝に映像を投影する「滝ジェクションマッピング」が登場。また、最先端テクノロジーと縁日あそびを掛け合わせたデジタル屋台や、「昼マツリ」では「歌舞伎✕AR 石川五右衛門 ~南座唐破風の場~」、京都の人気店や老舗による「ミライマツリフードフェス」を同時開催。「夜マツリ」でも、クラブと化した南座で新たなナイトライフを提供。週末には田中知之(FPM)や大沢伸一MONDO GROSSO)、tofubeatsEXILE MAKIDAI(PKCZ®)ら豪華DJ陣がさらに盛り上げる。
新開場した南座の場内
日本最古と言われる劇場で伝統芸能と最先端のポップカルチャーやデジタルアートを掛け合わせ、新たな文化を発信する「京都ミライマツリ2019」。このプロジェクトについて、松竹株式会社 代表取締役社長の迫本淳一氏と、プロモーションとブランディングを担う株式会社GO 代表取締役·PR/Creative Director三浦崇宏氏に話を聞いた。
インタビューは、初日の「きゃりーかぶきかぶき」公演後におこなわれた。まずはジャパニーズ·ポップカルチャーと歌舞伎のコラボレーションとなった本公演についての感想を伺った。
迫本淳一(以下、迫本):感動的でした。昨年11月に南座が再開場した時、みんなで話していたのは、『顔見世をはじめ古典をきっちりやる一方で、新しいことにも挑戦しよう』ということでした。伝統的な最も古い劇場で、原宿カルチャーの最先端を行くきゃりーぱみゅぱみゅさんが、小さなお子様から男性お一人のお客様など連れてきてくれて、違和感のないステージをされていることが素晴らしかったです。松竹のスタッフも言っていましたが、お客様の層がすごく新鮮でした。揃いのアロハシャツで着ていた方もいましたね。
三浦崇宏(以下、三浦):コスプレイヤーの方もいました。
迫本:はい。そういう意味でも本当に新鮮でしたね。
――歌舞伎の舞台機構もエンターテインメントとして昔から機能していますし、今回で歌舞伎とポップカルチャーの親和性の高さを改めて実感しました。
迫本:セリ(舞台の一部が上下する仕組み)も歌舞伎が初です。今、世界の潮流になっていますが、歌舞伎がまず取り入れたこと。新しいことや傾いたことをやっていくのは、南座にはすごく親和性があることなんですよね。
三浦:きゃりーぱみゅぱみゅさんが歌舞伎の馬で登場した時も、「みんな本物の馬だと思ってびっくりしたでしょう。でも歌舞伎では何百年も前からやっている演出なんだよ」とおっしゃっていて。お客様を感動させるあらゆるアイデアを詰め込んできたのが歌舞伎で、それが歴史に残ってきたから、今も非常にかぶいたことをやっていますよね。
迫本:本当に、これは単発で終わらせたくないので、そういうところも今後、楽しんでもらいたいですね。
――5月12日(土)から始まる「昼マツリ」「夜マツリ」では、南座の新機構である「客席フラット化」も見られます。南座が一体どうなるのか、未知の体験ですね。
三浦:両方とも来て下さい。世界中でこの南座という空間でしか体験できない、伝統文化と最新エンタメの融合が楽しめるので。あと、屋台の食事も京都らしい、屋台とは思えないクオリティのものとなってます。
――『京都ミライマツリ2019』を始めようという、きっかけは何だったのでしょう?
迫本:それは現場からの声です。半分、松竹がやってきた伝統をやろうと。残りの半分は新しいことをやろうとみんなで決めて。あとは現場で考えました。
三浦:社長にとってはリスクがありますよね。賛成の声だけではなかったと思います。でも新しいことをやらないと、進化が止まっちゃいます。
迫本:そうなんです。止まった途端に退化も始まります。ちゃんとした伝統を受け継ぎつつも前に進んでいくという姿勢があることが一番重要です。
三浦:松竹は、誰もが知っている伝統的なコンテンツ·ビジネスや演劇をずっとやってきた会社です。そこにきゃりーぱみゅぱみゅさんと株式会社ネイキッドさんの演出チームが入って。いろんな若いミュージシャンも集まって、僕たちみたいなクリエイターの仲間も集まって。そしてSUNTORYさんという大きなスポンサーさんも入られて。日本の新しい時代に新しい文化を作っていこうということにみんなが集っているのがいいですよね。
場内イメージ
――南座という劇場で遊ぶということも新鮮ですね。お客様も新しい体験ができるのではないでしょうか。
迫本:いつもおじいちゃん、おばあちゃんが行っているような場所に、お孫さんたち世代に手軽な料金でふらっと入ってもらえます。
三浦:南座は、日本の伝統文化において歴史や意味のある、ものすごくいい空間です。でも、何か上演されていないと入れません。今回の『ミライマツリ』は期間中いつでも、南座の伝統空間とプロジェクションマッピングなどの最新技術を体験できるイベントになっています。これまでの南座や歌舞伎に親しみのない家族や、カップル、若い人も一人でも気軽に体験に来てもらえればと思います。そういう「開く」ということが、迫本社長のご決断であり、松竹のスタッフの方々の努力だと思います。今日(4月30日)で平成が終わりますが、令和は、古いものと新しいもの、日本のものと海外のものなど、いろんなものがオープンになって繋がっていく時代だと思います。平成から令和になるタイミングで『ミライマツリ』というイベントができるのは、日本のエンターテイメント文化にとってもすごく意味があることだと思います。
迫本:今、隣で聞いていて涙が出そうになりました(笑)。本当にそうなんです。古典の歌舞伎をご覧になりたというお客様にはきちんとした形で歌舞伎をお届けしつつ、もっともっといろんな層に劇場を楽しんでいただきたいと思っています。南座は曾我廼家五郎·十郎や、片岡仁左衛門さん、坂東玉三郎さんが「孝玉コンビ」でやられていた若手の花形公演の活躍の地でもあります。そういう意味でも、さまざまな新しいことを出している劇場でもあるので、出雲阿国から脈々と流れるかぶくエンターテイメントを発信できる場になればと思います。本当にいろんな方に来ていただいて、世界中に発信していきたいですね。今日の『きゃりーかぶきかぶき』の夜公演も生配信します。
三浦:これも迫本社長のアイデアで。「これは全世界に配信すべきだ!」って。松竹の現場の方々が一体となって動いて、YouTubeとLINE LIVEでの配信がすぐに決まって。さらにきゃりーぱみゅぱみゅさんとアソビシステム株式会社の皆さんが「一緒にやりましょう」と言ってくれました。そのうねりが素晴らしいですね。
迫本:本当にありがたいです。配信が実現してめちゃくちゃ嬉しかったですね。無理だろうなと半ば諦めつつでしたから。最近では外国のアーティストのライブを生配信で見ている人が多いので、外国の方にも南座を見ていただけたらどんなにうれしいかと。また、きゃりーぱみゅぱみゅさんのような強い発信力を持つ方は日本で数えるほどしかいない。それを考えると、今こそ海外に向けて配信できればと思ったんです。
三浦:去年、『FUJI ROCK FESTIVAL』がYouTubeで全世界配信をして、今年はアメリカ最大の音楽フェス『コーチェラ·フェスティバル』が配信しました。迫本社長も来年以降もやりたいとおっしゃっているので、『FUJI ROCK FESTIVAL』、『コーチェラ·フェスティバル』に並ぶ、日本の南座でやる最先端のエンタメという形で歴史に残っていくプロジェクトになればいいなと思っています。
迫本:配信を見たお客様にも南座に来てほしいですし、いいクリエイターも集まってほしい。南座の制作スタッフと、三浦さんなど世界のクリエイターが一緒になって、ワイワイ言いながら作っていく。そういう機運が高まると本当に嬉しいです。これからはどんどんネットと連携していきたいと思っているのですが、そんななかにおいて『ミライマツリ』ではネットでは代替できないものを作ろうということも松竹の中では合言葉になっています。そうじゃないとネットに負けて、淘汰されると思うのです。ネットに淘汰されない、価値のあるものを作っていこうと。それがライブの魅力で。今日もお客様が「きゃりーぱみゅぱみゅさんをすごく近い距離感で見れたことがよかった」とツイッターに書かれていて。同じ空気の中で一緒に物を作っていくことは、絶対に代えがたい経験になると思います。
三浦:お客様を増やすことももちろん大事ですが、僕がよく言っているのは関係者人口を増やすこと。このプロジェクトにもお客様にはどんどん来てほしくて、それは当たり前で。ほかにも「この映像、俺も手伝いたい」とか、「このライブ来年もあるんだったら私たちもお手伝いしたい」とか、関わる方がどんどん増えていくことがすごくいいなと思っています。今回、デザインも僕たちがお手伝いさせてもらっているのですが、歌舞伎の定式幕の色を現代流にアレンジしたデザインで。GOと一緒に仕事をしている小杉幸一(ジャニーズやPARCOのブランディングを手掛ける日本を代表する若手のアートディレクター)が手掛けていて、本人もめちゃくちゃ気合入れています。今、いろんなクリエイターが歌舞伎と関わりたい、南座と関わりたいと言っているので、それもすごく嬉しいことだと思います。日本のクリエイティブやコンテンツに関わる人だったら、「歌舞伎と何かやらない?」と言われて、やってみたいと言わない人はいないと思うんです。歌舞伎はそれだけの文化や財産だと思うので、観客としても関係者としても関わる人が増えたらいいなと本当に思います。
迫本:そして、お客様に作る側との一体感を感じてもらうことがライブの強さですね。
三浦:本当、僕らも『昼マツリ』『夜マツリ』も楽しみです。どんなふうになるのか、実際に開くまでお客様の反応も想像つきませんが、お客様も体験して、一緒に新しい文化を作っていくことになると思います。ニューヨークのブロードウェイなんかは、チケットスタンドがあって劇場にふらっと入れます。南座も、ああいうふうになったらいいなと思っていて。京都の地元の方、日本各地の方、そして海外の方がふらっと訪れて、南座という伝統の空間でないと体験できない非日常体験を楽しめる。それが京都の新しい名物になるといいなと思っています。京都·南座、歌舞伎という文化やコンテンツそのものへの関心も高まると嬉しいですし、『京都ミライマツリ』はそのきっかけにピッタリだと思います。
迫本:京都の地元の方とも一緒になってやっていければと思いますね。去年、南座が再開場をした時に四条通でお練りをしました。警察や、地元のいろんな方にご協力をいただいて。すごく賑やかにできました。あれをまたやってほしいという声があって。若い人から年配の人が喜んでくださる賑やかなことをやっていく。そういうことをやり続けることが松竹の役割だなと思います。
場内イメージ
――街にとって劇場の役割はものすごく大きいですね。
三浦:ローマにしてもパリにしても、大きい街には必ずいい劇場があります。そこに外部から来る人とクリエイターの方々、地元の方々が混ざり合って街を大きくしてきたという思いもあるので、そういう意味でも南座は京都の一番重要な場所になるかもしれないですね。
取材・文・撮影=岩本和子

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