ミュージカル『レ・ミゼラブル』令和
元年最初のステージでスペシャルカー
テンコール

■令和最初の「レミゼ」
オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ、作:アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルクによる舞台『レ・ミゼラブル』(通称「レミゼ」)は、19世紀初頭の動乱期を生きるフランスの民衆の生活や社会情勢を描いたヴィクトル・ユゴー原作の小説をミュージカル化した作品である。1985年10月にロンドン初演以来、世界各国で上演され、映画化もされた。日本では1987年(昭和62年)に帝国劇場にて公演がスタート。初日の舞台は当時の皇太子ご夫妻と浩宮様も御覧になられていた
そのご夫妻が上皇と上皇后となり、浩宮様が天皇に即位した令和元年幕開けの5月1日(水)、帝国劇場での「レミゼ」昼のステージはe+貸切公演だった。道路を隔てた皇居では複数の国事行為が行われていたため、帝国劇場においても入場時のセキュリティチェックが行われていたが、その傍らでは最近のe+貸切公演でおなじみのキャラクター「プラみちゃん」が来場客を出迎えていた。
e+貸切公演名物の「プラみちゃん」 (撮影:安藤光夫)
1987年の日本初演から30年以上経っても未だ色褪せることなく、今年新キャストを迎えさらに進化を続ける「レミゼ」。令和最初のステージとなるこの回の主なキャストはジャン・バルジャン=佐藤隆紀、ジャベール=伊礼彼方、ファンテーヌ=知念里奈、エポニーヌ=昆夏美、マリウス=三浦宏規、コゼット=熊谷彩春、テナルディエ=駒田一、マダム・テナルディエ=森公美子、アンジョルラス=上山竜治。指揮は若林裕治だった。
バルジャンを演じる佐藤隆紀は2019年版からの新キャストで、満を持しての出演だ。パンを盗んで囚人となり、人生に絶望する男の悲壮感と、信じるもの、守るべきものを見つけ強く生きる事を決意してからのバルジャンを圧倒的な歌唱力で演じきる。そしてジャベールを演じる伊礼彼方も新キャストの1人だ。伊礼の醸し出す雰囲気や、低音が心地よく響く歌声はジャベールにぴったり。2人の持つ熱量はものすごく、対峙するシーンは客席までダイレクトに熱い空気が伝わってきた。
2011年公演よりファンテーヌを演じている知念里奈は、さすがの存在感だ。娘を守るために必死に生きるシングルマザーから、落ちぶれ、全てをなくす1人の女性を見事に演じている。2013年からエポニーヌを演じる昆夏美もすっかり欠かせない存在になっている。コゼットに夢中のマリウスに自分の気持ちを伝えられず、ただ尽くすことでしか愛を全うできないエポニーヌ。彼女が「オン・マイ・オウン」を歌う前はハンカチを握りしめておくことをおすすめする。
マリウスを演じる三浦宏規も新キャストの1人だが、安定した歌唱力で、コゼットへの素直な想いと、革命に走る学生の必死さを表現していた。同じく新キャストでコゼットを演じる熊谷彩春は納得の大抜擢。透き通る歌声と確かな演技力で清楚なコゼットを見事に演じていた。三浦演じるマリウスとのカップルは思わず応援したくなってしまうような初々しさがあった。
駒田一と森公美子演じるテナルディエ夫婦はもはや日本版「レミゼ」の名物コンビである。2人の息はぴったりで、憎たらしいけどどこか憎めない2人をコミカルに演じている。上山竜治の演じるアンジョルラスは、周りをよく見ながら仲間を引っ張る優しく強いリーダーだ。上山ならではのアンジョルラスを丁寧に作り上げていた。子役やアンサンブルも実力者揃いで、本作をしっかりと固めていた。
こうして日に日に熱を増している『レ・ミゼラブル』は5月28日(火)まで帝国劇場で上演され、その後は愛知、大阪、福岡、北海道をまわる5ヶ月間のロングラン公演になっている。新キャストも加わり、演出もさらに進化したレミゼを、是非劇場で観て欲しい。
開場前の帝国劇場客席
■壮観、スペシャルカーテンコール
終演後、テナルディエを演じる駒田一と、アンジョルラスを演じる上山竜治が登場し、駒田が「令和1日目のレミゼでございます!」と客席に向かって挨拶を述べると、観客からは大きな拍手が起こった。
続いて、この2人のMCから、スペシャルカーテンコールについての説明が行われる。まずは観客全員で、配布された歌詞カードを見ながら「民衆の歌」を、出演者たちと共に合唱。続いて最後の「明日は~♪」のフレーズで、歌詞カードを思いっきり上に掲げて欲しい、と。実はカードの裏が赤・白・青のいずれかの色に分けられており、舞台側から見ると場内にフランス国旗のトリコロールが浮かび上がるのだという。
実際の本番の中で「民衆の歌」の歌い出しを担当している上山が、同曲を歌ううえでのポイントを駒田から尋ねられると、「今日は特に令和初日ということで、新しい時代の幕開けということに重ねて歌いました」と答えた。ちなみに駒田は、「レミゼ」に16年間出演しているにもかかわらず、これまで本番の中では一度も「民衆の歌」を歌ったことがない、と告白して会場を笑わせた。
今回の出演者全員が再登場し、いざ曲が始まると、さすが「レミゼ」ファンの観客達、キャストたちと一体になって堂々と歌い上げる。劇場は約2000人の歌声に包まれた。筆者も子供の頃からの「レミゼ」ファンなので、もちろん熱唱させて頂いた。
最後、観客が歌詞カードを掲げトリコロールを作ると、「僕らから観るととても綺麗です!」と駒田。大盛り上がりの中、スペシャルカーテンコールは終了した。
取材・文=一ノ瀬ふみか
写真撮影=福岡諒祠・池上夢貢

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