前に進み続けるLONGMANがPOTを迎えO
-WEST公演でみせたもの

LONGMAN TOUR2019“WALKING IS DEAD”

2019.2.22 TSUTAYA O-WEST
もう歩いてはいられない、止まらない。そんな意味をタイトルに冠した、愛媛発の3人組パンクバンドLONGMANの全国ツアー『LONGMAN TOUR2019“WALKING IS DEAD”』は、バンドが放つポジティブなヴァイブスがフロアへと伝播する最高のライブだった。1年間の活動休止を経て、昨年9月にリリースされたミニアルバム『WALKING』を携えた今回のツアーでは、FOUR GET ME A NOTSENTHSpecialThanksBUZZ THE BEARSら、全国11ヵ所で9組のバンドと共演。以下のテキストでは2月22日にPOTを迎えたO-WEST公演の模様をレポートする。前日の横浜公演が平井の体調不良で延期したため、開催が心配されたライブだったが、その影響を微塵も感じさせないほど、いまのLONGMANには誰にも止められないエネルギーが漲っていた。

POT
アース・ウィンド・アンド・ファイアー「セプテンバー」のSEにのせて、まずトップバッターとしてPOTが登場。織田(Vo/Gt)が「みんなテンション上がってるかー!? LONGMANに最高のバトンを渡したいので、盛り上がっていきましょう!」と叫んでフロアの興奮に火をつけると、キャッチーな心踊るポップソング「COUNTDOWN」からライブはスタートした。織田(Vo/Gt)を中心に、よしくん(Vo/Gt)、よっぴー(Vo/Ba)が代わる代わるメインボーカルをとる人懐こいメロディが楽しげに紡がれていく。ゴリゴリのベースラインが口火を切った狂騒のダンスロック「Tonight」、まこと(Dr)が繰り出す高速ツービートがフロアをもみくちゃにした「EPIC」。ライブをすることが「心底楽しい」という表情全開で爆音を奏でる4人の陽性のエネルギーがO-WESTをハッピーな色に染めていく。
POT
MCでは、よっぴーが「(お客さんに対して)LONGMANの友だちってことは、俺たちも友だち。友だちの友だちは友だちだろ?」という熱い言葉で、お客さんの心をがっちりと掴む。そして、彼らが“世界一温かい打楽器”と呼ぶ、一体感のあるハンドクラップで会場を埋め尽くした「Sunrise」のあと、“泣いてないで明日を描け”という前向きなメッセージを届けた「Yolo」へとつないだ。生きていれば、笑えない日も泣きたい日あるけれど、それでも新しいステージを目指そうと歌うPOTのエールソングは、とても真っ直ぐで、一点の曇りもない。中盤、テンションが上がった勢いで「1曲追加するわ!」と投下したファストチューン「I scream fuckin' day」では、腰にヘルニアを抱えているよっぴーがフロアに決死のダイブ。さらに、“ハッスルシリーズ”と呼ぶライブ定番曲「Hustle Carnival」では、ドラムのまこともフロアに飛び込み、O-WESTの熱狂は天井知らずに高まっていった。ラストは織田が「今日のことは絶対に忘れないから、生き抜いていけよ!」と伝えると、集まったお客さんと一緒に歩んでいこうという前向きなメッセージを込めた「Supra」でフィニッシュ。最後によっぴーが「俺たちは心からLONGMANが大好きです! 誘ってくれてありがとう」と感謝を伝えると、「友だちの友だちは……?」という問いかけに、お客さんが「友だち!!」と答えて、この日の主役=LONGMANへとバトンを託した。

POTが熱量の高いライブでフロアを温めたあと、いよいよLONGMANの出番だ。ジャーンと勢いよく鳴らしたバンドの音にのせて、「LONGMAN、はじめるよー!」と叫ぶと、最新ミニアルバム『WALKING』でもオープニングを飾る直球のメロディックパンク「OPENING」がライブの開幕を告げた。平井(Gt/Vo)とさわ(Vo/Ba)の男女ツインボーカルが目まぐるしく入れ替わりながら英語詞のメロディを紡ぎ、ほりほり(Dr)ががむしゃらに叩き出す性急なビートが疾走感を加速する。続けて「WALKING」と「WITH YOU」も、ミニアルバムの曲順どおりに畳みかけると、最初のMCでは、お客さんから「大丈夫ー?」「無理すんなよー!」と、平井を心配する声が飛んだ。これに平井が「大丈夫です! 今日は精一杯歌わせてもらいます」と完全復活を伝えると、さわも「みんなで良い夜を作っていきましょう!」と言って、最高の一夜にすることを約束した。
LONGMAN
自然と身体を動かさずにはいられない躍動感あふれるサウンドのなかで、「POT!」「気さく!」というユニークなコール&レスポンスで湧いた「Hole up」や、「お酒は好きですか?」という平井の問いかけを合図に高速ツービートが炸裂した「BEER」など、お客さん参加型のパフォーマンスでアッパーチューンを連投。中盤のハイライトは「I KNOW」だった。真っ赤な照明がステージを染めて轟いた重めのサウンドとマイナー調のメロディ。この曲で見せた明るくてキャッチーなだけではないLONGMANのシリアスで一面は、最新作で開花したバンドの新機軸だ。続く「IT IS TIME」でも、ダイナミックなサウンドにのせて、平井とさわは憂いを帯びたメロディを高らかに歌い上げる。メロディックパンクを軸にしながらも、LONGMANの楽曲はその枠に留まらない大きな可能性を秘めている。
LONGMAN
MCでは、平井がPOTとのエピソードを改めて語った。「活動休止をしちゃったときに、POTが愛媛にライブに来てくれて。僕はそれを見に行ってたんですけど、ライブの途中で“ギターの助っ人がいるわ”って、ステージで演奏させてくれたんですよね。そのとき、僕は活動休止でやさぐれて、引きこもってたんですけど、その1分間のステージでお客さんの歓声とか楽器の楽しさを思い出せてくれた」。POTの粋な計らいがバンド復活への励みになったという言葉は、この日の対バンがいかに大切なものかを伝えるものだった。
そして、「Looking Back」からライブは後半戦へと突入。「休止してるとき、こんな景色を見たいなと思って作りました」と、平井が紹介した「FEEL GOOD」は素晴らしかった。音楽のちからを心から信じる柔らかなポップソングは、これから先もLONGMANが長く歌い続けていく大切な楽曲になりそうだ。平井が「あと2曲です!」と宣言してから、「Neverland」と「IN THIS WAY」まで一気に駆け抜けると、最後は平井、さわ、ほりほりがしっかりと向き合って、灼熱のライブ本編は幕を閉じた。
LONGMAN
LONGMANのライブでは、フロアのお客さんが頻繁にメンバーに声をかける。アンコールもそうだった。これ以上ない最高の本編を終えてなお、「まだ足りないぞー!」「あと30曲!」と叫ぶお客さんに、「絶対無理でしょ?(笑)」と笑うさわ。「本当に30曲やって、いつまで(お客さんが)おるか、だよね。俺らが“もうすみません”って言うか、みんなが言うか」(平井)、「ライブハウスが言うかね(笑)」(ほりほり)と楽しげに話すメンバー。そんなお客さんとの距離の近さもLONGMANの魅力だ。そして、「いろいろなことを夢見て作りました」と紹介した「Sunset」から、お客さんがリフトアップする感動的な光景を作り出した「Will」のあと、サプライズ企画として2ndアルバム『SO YOUNG』の収録曲「Beautiful World」のPV撮影を行ない、「撮影につき合ってくれたから」という感謝のしるしに「Realize」を披露して、弾丸のようなライブを完全燃焼で締めくくった。
LONGMAN
なお、ツアーファイナルとなった地元・愛媛の公演でLONGMANはメジャーデビューすることが発表された。O-WESTのステージでは、「僕らは音楽が好きで、バンドが好きで、パンクロックが好きで、“バンドをやろうや”って趣味みたいにはじまったんですけど。いまは聴いてくれる人が元気になってほしいなとか、喜んでもらいたいと思いながら音楽を作ってます」(平井)と言っていた。新しいステージに立つLONGMANは、これからも私たちの心を明るく照らすような、血の通った音楽を生み出し続けてくれるだろう。

文=秦理絵 撮影=大橋祐希

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着