go!go!vanillas 3人体制で臨んだツ
アー初日に見せたバンドの心情と決意
、Zepp Tokyoライブ完全レポート

LIVE! TO \ワー/ RECORDS feat. go!go!vanillas 〜新曲大解禁〜

2019.4.14 Zepp Tokyo
4thアルバム『THE WORLD』のリリースを目前にした、go!go!vanillasの東名阪ツアー。その初日、Zepp Tokyo公演。昨年末、事故に遭った長谷川プリティ敬祐(Ba)は現在療養中で、復帰に向けてリハビリに励んでいるところ。そのため今回のツアーでは、サポートベーシストを加えず、牧 達弥(Vo/G)、ジェットセイヤ(Dr)、柳沢 進太郎(G)の3人体制でステージに臨むこと、“3人の生演奏にプリティのベース音源を加える”という形でライブを行うことが事前に発表されていた。
サポートベーシストとともに出演していた昨年末のライブで、牧が、プリティ不在状態のバニラズについて「不謹慎じゃなくてレア」と言っていたことが強く印象に残っている。この日のライブからも、「せっかくだから今できることを楽しもう」「そうしてこのレアな状況をお客さんにも楽しんでもらおう」という視点で3人が考えた試みがいくつか見受けられた。
まず、ステージを覆う幕が上がると、スポットライトを浴びた3人が横一列に並んでいた。普段は牧の後方にいるセイヤが前に出てきていて、下手側、つまり普段プリティがいる位置にいる。そんなフォーメーションからして新鮮味があり、フロアもざわめいていたが、1曲目が『THE WORLD』に収録される新曲「Hey My Bro.」なのだからさらに驚いてしまった。ライブタイトルに「新曲大解禁」と入っていたから新曲をやること自体は予想できていたものの、早速のトップギアっぷりである。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
「マジック」ではいつもプリティが手拍子の回数をカウントする場面があるのだが、今日は牧が代わりにそれをやっている。ほぼ立っている状態で激しくドラムを叩くセイヤは、めちゃくちゃ動きまくっていて、そのせいで途中からサングラスがずれてしまう。かと思えば上手にいた進太郎が、ギターを鳴らしながら嬉しそうにセイヤのところまで駆け寄っていく。「SUMMER BREEZE」が爆音で鳴らされた頃にはフロアも沸騰状態。ギターがキュイーンと鳴くのに合わせてレーザー光線が広がる演出にもテンションが上がった。
最初のMCでは牧が、今回のツアーは3人体制で臨むことに決めたのだということ、しかしプリティを含めた4人の音でステージに立っているのだということを改めて説明。「気兼ねなく楽しんでもらえればと思います」とオーディエンスへ伝えると、「長谷川プリティ・ベース、カモン!」の声を合図に「ラッキースター」が始まった。
セイヤの遠吠えを機に始まったドラムソロを経て「ヒンキーディンキーパーティークルー」へ。振り返れば、ここ最近のバニラズのワンマンは、中盤にミドル~スローテンポの曲をじっくりと聴かせるブロックを設けているパターンが多かったが、今回はそのようなブロックはなく、セットリストはアッパーチューン中心。それは、バンドは前へ進み続けるのだという意思を体現するためだったのかもしれない。アクセル踏みっぱなしの演奏を前に、オーディエンスのテンションもぐんぐん上がっていく。そんなフロアの様子を見て、牧は「みんなのパワーをひしひしと感じてます。俺らも負けんようにしようぜ!」と進太郎、セイヤへ投げかけていた。
7曲目に披露された新曲「パラノーマルワンダーワールド」にもグッときた。『THE WORLD』の中で特に重要な役割を持った曲だと語られたこの曲では、自分の意思で“生き様”を選ぶこと、そうして命を燃やすことについて唄われている。日の出のように明るく凛々しく、しかし切なさを湛えたこの曲は、嬉しい時も悲しい時も大声で唄うのがロックンロールなのだと信じる彼らだからこそ唄える人間讃歌である。ステージ後方で上がる火花の光を反射させながら、はらはらと紙吹雪が舞っていく光景も美しかったし、近いテーマで別の時期に書かれた「ライクアマウンテン」がそのあとに続く流れも良い。牧が「こうやって考えるとバンドにも歴史があったなあと思います。全て繋がってる気がしていて」としみじみ呟く。
間にセッションを挟み、シングル「No.999」カップリング曲の「触れたら」、『THE WORLD』収録曲の「Do You Wanna」とライブ初披露曲を連投すると、ここからがまたレアな展開。「Ready Steady go!go!」は牧がドラム、進太郎がベース、セイヤがボーカルという編成で届けられた。この曲は元々セイヤがボーカルの曲だが、これまでのライブではセイヤがドラムを叩きながら唄っていたため、このような形での演奏は初めてだ。進太郎はプリティの愛器を使用。センターのマイクをいきなり倒してしまったり(その間柳沢が自分のマイクを貸してあげていた)、フロアに飛び込んでいったりと自由奔放なセイヤと、明らかに余裕のない表情でビートを刻む牧のコントラストが微笑ましかった。因みに演奏終了後には牧が「練習の5割しかできなかった……」と悔しがる一幕も。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
イントロ中にプリティがよく言っている前口上まで牧が完コピしてみせた「エマ」、そして「チェンジユアワールド」を経て、「この曲が(バンドを)救ってくれたと思ってます」(牧)という言葉とともに演奏されたのは「No.999」だった。「No.999」は今のバニラズに必要な言葉ばかりが詰まった曲であり、このバンドのことを力強く支え続ける存在になっていたが、1月にリリースされて以降、この日までライブで披露される機会がなかった。
そんな曲をいよいよライブで鳴らすことができたのだという純粋な喜びと、「こうやって音楽を続けること、そしてバンドをやっていけること。やる使命があると、俺は思っています」(牧)と語られたような、並々ならぬ覚悟。一色では表せない感情同士が混ざり合い、その混ざり合った感情によってはち切れそうなほど膨れ上がったバンドサウンドは、凄まじい熱量になっていった。そしてだからこそ、再び4人でステージに立てるようになった時には、きっとこれ以上のものを見せてくれるだろうと確信することができた。
自らがメインボーカルをとる「ストレンジャー」の直後、「今日は本当にありがとう! マジで楽しい!」とオーディエンスへまっすぐ伝えた進太郎。そんな彼主導によるコール&レスポンスで「プリティ!」「絶対帰ってこいよー!」とみんなで声を合わせたあと、重厚なキメが「カウンターアクション」の火蓋を切った。2015年、進太郎が加入してから初めてのシングルとしてリリースされた「カウンターアクション」もまた、バンドは止まらないのだという意思が込められた曲であり、かつての彼らを奮い立たせた曲である。この日のライブを観て改めて感じたのは、自分たちが生んだ曲の存在が、バニラズというバンド自身を強くさせてきたのだということ。この日披露された新曲群も今後バンドにとってますます欠かせないものになっていくのだろう。牧と進太郎が互いの背を合わせ、掻きむしるようにギターを鳴らすなか、セイヤの放り投げたシンバルが弧を描いて宙を舞う。「この時代は俺たちの時代だ!」(牧)という宣言とともに「平成ペイン」が始まった。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
最後のMCで牧は「ライブは僕らからすると夢みたいなもの」と前置きしながら、「僕たちgo!go!vanillasというバンドは、バカだろうが音楽で夢を見ていきたいと思ってます。なので、バニラズの音楽を聴いてこんなにバカになってくれるみんなは大切なブラザーです」と語った。そういうバンドの大切にしてきた信条がしっかりと貫かれていたからこそ、3人でも、4人のライブだった。それこそがこの日のライブが素晴らしかった理由であり、私たちが変わらず思うがまま、彼らの音楽に全感情を委ねることができた理由でもある。
ラストに「ギフト」を演奏すると、アンコールをやらずに終了。ここで牧が、この3人で進み続けるがやはり4人でライブをやりたいのだと前置きし、「このツアーのファイナルを東京でやります。あいつを連れて帰ってくる! その時にこの続きをやろうや!」と宣言した。10~11月には、既に発表されていたワンマンツアーの追加公演が開催される。その時にはきっと今回以上のライブを見せてくれるはずだ。そう思うと今から秋が楽しみでしょうがない。だからプリティ、元気になって帰ってこい!
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=ハタサトシ
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ

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