【ライブレポート】ASKA、7年ぶり日
本武道館への帰還。「やっていれば時
代はついてくる」

ASKAの約7年ぶりとなる日本武道館公演<ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ - >が、2019年4月23日に開催された。本記事では当日のレポートをお届けする。

◆<ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ - >画像

「ありがとう、ASKA」──。CHAGE and ASKAの「YAH YAH YAH」という破壊力満点の超ビッグプレゼントまで飛び出したアンコール、終演を迎えてもまだ興奮さめやらぬオーディエンスがそういう気持ちになっているのがひしひしと伝わってきて、胸がジーンとした。

昭和、平成のレジェンドが、ついに日本武道館に帰ってきた。昨年、約5年ぶりにオーケストラを率いたツアー<billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018-THE PRIDE->で新たなスタートをきったASKAは、今年2019年2月からファン待望のバンドツアー<ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA−40年のありったけ−>を全国13都市で開催。こちらのツアーのチケットが各地で完売が相次いだため、東京・大阪・名古屋での追加公演が発表され、そのなかの4月23日に行なった東京公演。ASKAはじつに7年ぶりに日本武道館のステージに戻ってきたのだ。会場には40周年というキャリアのなか、昭和、平成とそのなかのさまざまな時期にASKAと出会いASKAと過ごした老若男女が集結。ここ数年、急激に増えていった若い男性ファンも武道館にはたくさん集まった。
場内がまだ暗転しないなか、ASKAが2020年の東京オリンピックテーマ曲をイメージして作ったという壮厳なインスト曲が流れだす。コーラスの美しい旋律が印象的なこの曲がエンディングに差し掛かった頃、場内が暗転。すると、拍手が一斉に沸き起こり、オーディエンスの興奮がピークに到達したところで、舞台が明るくなり、「未来の勲章」からライブはスタート。古川昌義(Gt)、鈴川真樹(Gt)、萩原基文(Ba)、菅沼孝三(Dr)、澤近泰輔(Pi)、クラッシャー木村(Vio)、西司(Cho)、藤田真由美(Cho)というサポートメンバーに囲まれ、舞台中央に構えたASKAはワインレッドのスーツにフェンダーの真っ赤なアコギと赤づくめ。舞台上はセットもないむき出しのシンプルなステージ。そこから、この胸に貼り付けた勲章は未来のもの、これが本物となるまで自分は歌い続けるんだといういまのASKAの迷いのない決意が、頼もしい8ビートのロックにのっかって伝わってくると、それだけでパァーっと目の前が開けた気分になる。

じつに気持ちのいい幕開け。と、浸る暇もなく「ONE」、ASKAの声を追うようにコーラスの声が重なっていくアカペラから、「待たせたね!」とASKAが一言いってCHAGE and ASKAの名曲「明け方の君」をアクト。やはり武道館という広大な空間で見るASKAは格別だ、とでもいうように場内には「ASKAー!」と叫ぶオーディエンスの声が響き渡る。その声援に対して「ようこそだよ!」と応えたあと、追加公演で平成最後に武道館をというのは狙った訳ではないと説明。「やっていれば時代はついてくる」、強がりでも偉そうにでもなくさらっとそういってのけるASKA。そのキャリアに裏打ちされた大人の余裕に、しびれる。

白いボディの12弦ギターに持ち替え、ツアー毎に形を進化させていった「cry」を『Made in ASKA』に収録した最新バージョンで歌唱したあとの「GIRL」から、ライブはいっきに大人ゾーンへ。声をはらないASKAの歌が哀愁を誘い、間奏では古川がスパニッシュなガットギターソロ、それを引き継ぐようにクラッシャー木村が泣きの旋律を重ねていって場内にメランコリックなムードを増幅させていった。

そうして、ポリスの「見つめていたい」を彷彿させるギターリフから「憲兵も王様も居ない城」へ。重たい覚悟を歌ったこの曲では、サビ、そうして曲の後半にかけてギターを弾くのをやめたASKAは、右手をグッと握りしめて2人のコーラスを凌駕するような熱量と気迫を凝縮したシャウトを全開。その瞬間、武道館はスリリングな高揚感で包まれていった。

興奮する観客を「どうぞどうぞ」となだめるように椅子に座らせたあとは、先日35年ぶりに発売し、売上も絶好調(2回目の重版(増刷)決定!)という詩集『ASKA 書きおろし詩集』(双葉社刊)について触れ、「3年前からブログで詩を公開してたんだけど。誰かが見てるもんだね」と今回詩集を出したきっかけが自身のブログにあったことを伝えた。そうして昨年のツアーでも歌っていた「Man and Woman」、主メロ、途中で聴こえるベースの裏メロまでもがいちいちオシャレな「めぐり逢い」と展開したあと、ジャジーなイントロから「MOON LIGHT BLUES」へ。アンサンブルが醸し出す大人っぽいメロウな雰囲気と、声を張らないしっとりとした歌い方がいまのASKAにぴったりマッチしていて、武道館はとたんにムーディーな雰囲気に包まれていった。
「久しぶりのデカいところ。ホールはお客さんの顔を見ながら歌うんだけど、アリーナは(ステージから客席を見ると)真っ暗なの。ああ、こうだったなって思い出しながら歌ってます」といまの心境を伝えたあとは、「世間がいろんな意味で認めてくれた、その大きなきっかけはこの曲だった気がします」という曲紹介から、ASKAの代表曲「はじまりはいつも雨」へ。舞台の上部、天井付近から吊るされた小さな円と大きな半円のバトンにとりつけられた照明が青く灯り、ステージには美しい雨のカーテンが広がる。みんなが絶対知っているであろうこの甘く繊細なラブソングを届けたあとに、すべては自分次第、すべては愛だってことをいま現在のASKAの生き様、思想に重ねて歌うスケール感たっぷりのライフソング「いろんな人が歌ってきたように」を歌って、鮮やかなコントラストを描き出していった場面は、間違いなく前半のハイライトだった。

このあとは、本ツアーで恒例となった“もぐもぐタイム”へ。舞台上には座布団が敷かれ、メンバーみんなで円座になり、この日は赤坂離宮 銀座店のタイアップでASKAも大好きな「杏仁豆腐」を美味しそうにもぐもぐ。ツアー前は7Kgの減量に成功したが、ツアー中に3kg戻り「太った」と嘆くASKAに「食べたらまた太るよ」と客席から声がかかる(笑)。もぐもぐタイム中もマイクは入っていて、ASKAが「誕生日にもらった宝くじが3000円当たったんだけど」とメンバーと繰り広げている会話はすべて聞こえてくる。そんななか、ASKAが「みんな、トイレ行っていいんだよ」というと、かなりの人が一斉に席を立つ。40年目にして、このようなエポックメイキングなコンサートスタイルを成立させてしまうASKAのバイタリティーに衝撃を受けたもぐもぐタイムだった。

メンバー紹介の最後にCHAGE and ASKAの代表曲「PRIDE」の編曲を担当したバンマス、澤近を紹介したあと、ASKAが「私はいま〜」と今井美樹の「PRIDE」を歌うというお茶目な(?)ギャグから、その澤近がイントロで感動的なピアノを奏でる「FUKUOKA」から後半戦は開幕。ハンドマイクでフロントに出てきて、ステージを移動しながら歌うASKA。前半は喉の奥の開きが重そうだったが、それを払拭するかのように、ここからコンディションをどんどん上げていく。そのパワーが尋常じゃなかった。観客も負けてはいない。「LOVE SONG」では手を挙げ“ラブソング!”と掛け合いのコーラスを大声で入れる。場内の熱気に引っ張られるように、バンドもテンションを上げていく。

曲の後半、鈴川がギターソロで熾烈なダイナミズムを引き起こすと、それに負けじとステージにひざまずき、バイオリンでカオティックな音色を轟かせるプレイで武道館を震撼させた「リハーサル」。そこからの「と、いう話さ」への展開はたまらなかった。ローボイスからアップダウンを繰り返し、じょじょに魂を高ぶらせていくASKAのエネルギッシュなボーカル。間奏ではドラムの前にギター2人、ベース、ASKAが集まり、バンドアンサンブルが緊迫感を高めてくなか、そこに重厚なコーラスまで加わってバンドツアーならではの迫力あるライブ空間を作り上げると、オーディエンスの熱狂は最高潮に。さらにそこに、激しいロックチューン「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」を畳み掛けると、武道館一面にクラップが広がる。“命尽きるまで 愛し続けたい”、ASKAの激唱が武道館の空気を震わせ、曲が終わると満場の観客が“ウォー!!”と地響きのような大歓声をあげた。
そんな最高の一体感が生まれたあと、アコギの弾き語りから始まった「ロケットの樹の下で」がまた、たまらなくきた。CHAGE and ASKAの曲でありながらも”そこから見えるすべてが今の俺だ”“ここは途中だ 旅の何処かだ“”終わるもんじゃない“と自らを奮い立たせていくASKAの情熱をむき出しにしたような歌に、胸が、目頭がどんどん熱くなる。そうして感動がピークに達したところで、”今の自分に万歳“”今日を生きてる自分に万歳“とエールをおくる「今がいちばんいい」で、場内はこの上ない幸せな空気に包まれていった。

そのあと、ひと呼吸おいてASKAが詩の朗読を始める。「この星はもうすぐ人が住めなくなると僕の本能が囁いている」「最近この星の従兄弟が見つかった」「僕たちはお引越しに間に合わない」というような衝撃的なお話のあとに、本編最後を締めくくったのは、昨年末の静岡公演で初公開された新曲「歌になりたい」だった。主メロを歌うコーラスの声と掛け合いをするように繰り出すASKAの歌が徐々に熱を帯びて広がっていき、”この地球の この星の この宇宙の歌になりたい“と武道館を遥かにこえる音楽世界を描いていったところで本編はフィニッシュ。「どうもありがとう。1回入るね」。さっきまであんなに壮大な曲を歌っていたのに、こうやってすぐに友達のような距離感に戻れるところはASKAの人間的な魅力でもある。
だから、客席からアンコールが上がると、着替えもしないですぐにステージに戻ってくる。礼儀正しく、各方向に向かって90度腰を曲げて挨拶をしたあとは「さてと。みなさん参加してくださいよ」といって、アンコールは昭和のヒット曲、西城秀樹の「YMCA」のカバーでASKAも観客も大いに歌い踊って大盛り上がり。最後にはノリノリでASKAは「ヒデキ、感激っ!!」とモノマネまで披露。そうしてこのあと、追加公演ということでこれまでにはなかったCHAGE and ASKAのヒット曲「YAH YAH YAH」へと雪崩れ込んだとき、この曲の破壊力の凄さをまざまざと見せつけられた。あの必殺のサビ、“YAH YAH YAH”のこぶし突き上げで、会場は一瞬にして興奮のるつぼ化して大噴火。その姿を見回し、しっかりと受け止めたASKAは、追加公演終了後に6月からはアジアツアーへとむかうこと。さらに、いまは来年に向けていろいろ準備をしていることをファンに伝えた後、最後に「UNI-VERSE」をプレイ。“あの日のアトムみたいだ”で、ASKAを真似してアトムのポーズをとるオーディエンス。そんな観客たちの姿を目に焼き付けるように最後“僕も君もみんな みんなそうさ”“心のなかで つながっている UNI-VERSE”と歌いながら、ASKAは客席全体をゆっくり愛おしそうに見渡していった。

セットリストは、CHAGE and ASKA、ASKAを含め、40年間のヒット曲を並べたようなベスト盤的なものではけしてなかった。いま自分が歌ってこそ意味のある楽曲。そんな思いが詰まった曲たちを中心に置いて、いまのASKAの生き様やメッセージをきっちり伝えながらも、ここまで観にきてくれたファンの感動と満足感を満たしていくASKAの楽曲のポテンシャル。それを1本のストーリーを描くように組み合わせていくライブアクターとして才能、センスに改めてしびれた夜だった。
この日のライブの模様はCS放送フジテレビTWOドラマ・アニメで5月31日(金)22時〜23時30分に放送される。同番組はインターネットチャンネル、フジテレビTWOsmartでも同時配信される。そうして、ASKAはこの後、6月2日からアジアツアーへと向かう。

取材・文◎東條祥恵

■番組概要

『ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館』
放送日時:5月31日(金)22時~23時30分放送
放送/配信チャンネル:フジテレビTWO ドラマ・アニメ/フジテレビTWOsmart
番組URL:https://otn.fujitv.co.jp/aska2019


<ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ - >

■追加公演
<愛知>
2019年4月30日(火) 愛知県芸術劇場 大ホール
開場 16:30 / 開演 17:00
問合先:サンデーフォークプロモーション TEL 052-320-9100


書きおろし散文詩集『ASKA 書きおろし詩集』

発売中
本体価格:1,400円(税抜)
出版社: 双葉社
特設サイト:
https://www.futabasha.co.jp/introduction/2019/aska/


DVD/Blu-ray『ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 -THE PRIDE-』

発売中
【DVD】 DVD 2枚組 品番:HBRD-1001 定価:¥8,000 +税
【Blu-ray】Blu-ray 1枚組 品番:HBRD-2001 定価:¥9,000 +税

ASKA 再始動公演となった2018年11月5日(月)東京国際フォーラム ホール A 公演ライブを完全収録。ASKA と、世界三大合唱団と称される“パリ木の十字架少年合唱団”との共演も特別収録。
その他特典として、インタビュー等も収録。
CDリリース情報

『Made in ASKA』(UHQCD仕様)
発売中
YCCR-10034 3,519円(本体価格)+税
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B07G9TBX1J
e-onkyo music:http://www.e-onkyo.com/music/album/yccr10034/

『SCENE -Remix ver.-』(UHQCD仕様)
発売中
YCCR-10035 3,704円(本体価格)+税
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B07H61KKFV

『SCENEII-Remix ver.-』(UHQCD仕様)
発売中
YCCR-10036 3,704円(本体価格)+税
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B07H5VJLYM
発売中
ハイレゾ配信:e-onkyo music
http://www.e-onkyo.com/news/2149/

<ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -ASIA TOUR->

【台湾】日時:2019年6月9日(日) 場所:台大體育館
【香港】日時:2019年6月16日(日) 場所:MacPherson Stadium
※ オフィシャルファンクラブツアーも予定。

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