植田真梨恵メジャー5周年記念 コンセ
プトミニアルバム『F.A.R.』『W.A.H
.』を連続リリース「心地良くて素敵
な歌を届けたい」

2018年にインディーズ活動10周年、2019年メジャーデビュー5周年を迎えた植田真梨恵。5周年を記念して、年明けから4ヶ月の間に配信シングル2枚、LIVE Blu-ray、コンセプトミニアルバム2枚という、5作連続リリースを行ってきた。そのラストを締めくくるのは、4月17日にリリースされたミニアルバム『W.A.H.』。2月にリリースされた『F.A.R.』に続く2作連続コンセプトミニアルバム第2弾だ。前作のフルアルバム『ロンリーナイト マジックスペル』から約2年。『F.A.R.』は“大人の成長”、『W.A.H.』は“和”“ジャポニズム”がそれぞれコンセプトに掲げられている。また、ノンタイアップだった『F.A.R.』に対し、『W.A.H.』はTBS系テレビ「CDTV」エンディングテーマとしてオンエアされている『Bloomin’ 』、CHOYA「夏梅」CMソングとしてオンエアされた『勿忘にくちづけ』や、初出演映画『トモシビ銚子電鉄6.4kmの軌跡』の主題歌『灯』、三昭堂TV CMソング『長い夜』など、タイアップ曲が多数収録されている。今回は、2作連続コンセプトミニアルバム『F.A.R.』と『W.A.H.』について、5月から始まるライブハウスツアーについて彼女に語ってもらった。15歳でオーディションに優勝し、大阪に出てきて手探りで作曲を始めてからは12年。これまでも精力的に自身の経験や感情から生まれ出た楽曲を赤裸々に歌いつづけてきた彼女は今現在、何を思い歌を歌うのか。節目とも言えるアニバーサリーイヤーは、まだまだ加速するだろう。
植田真梨恵 撮影=森好弘
●今年は「よりアートする」1年に●
――メジャー5周年おめでとうございます。5作連続リリース、4月17日のミニアルバム『W.A.H.』もリリースされましたが、既にボリュームのある1年になりそうな気配がしていますね。
そうですね。5周年がすぐそばに見えてきて、どんな1年にしたいかと考えた時に、なるべく曲をたくさん作りたい、よりアートする作品を作りたいなと思っていて。
――アートする作品。
昨年インディーズ10周年という節目があって、メジャー5周年がくるということで、メジャーシーンの中でどんな曲を届けていこうか、植田真梨恵としてどんな歌を歌っていくべきか迷ったり考えた部分もあったんですけど、ここにきて、自分が作っていて、より心が躍って、しっかり作品として内容が充実したものをお届けしたい気持ちが強くなりました。それが2枚のミニアルバムをリリースしたいと思ったキッカケなんです。
――これまでもセルフプロデュースで作品を作られてきたと思いますが、これまでとはベクトルが変わってきたということですか?
その気持ちがより強まったという感じです。単純にたくさんの人に届けることも、もちろんメジャーでやっていく上では考えるべき要素なんですけど、それ以前に、シンプルに聴いていて心地良いとか、色付けや味付けがなくても、音楽として「良い」と思えるものを届けることが、今、私がやりたいことだなと思ってます。
植田真梨恵 撮影=森好弘
――昨年の活動を通して、そう思われたんですか?
そうですね。去年の夏に「勿忘にくちづけ」という曲をリリースして。ライブで歌っていくうちに、その場の雰囲気や空気を音楽で心地良くしたいし、できるという感覚が「勿忘にくちづけ」を歌っている期間ずっとあって。今までは、強い思いや感情をグッと太くしてお届けしていた部分があったんですけど、そうじゃなくて、流れている空気や風が気持ち良いとか、水が冷たいとか、誰もが同じように共感できる質感と音楽が一緒になる心地良さを、この曲で新しく知ったんです。それで、そんなふうに心地良く聴けるということを目指して作ったミニアルバムが2枚なんです。
――コンセプトアルバムにされた理由は?
コンセプトアルバム、好きなんですよ。前作の『ロンリーナイトマジックスペル』も夢がテーマになっていて、ベッドサイドでずっと鳴っているようなイメージで作ったある意味コンセプトアルバムだったんですけど、それが今回はより強まりましたね。インディーズ時代にも『退屈なコッペリア』、『U.M.E.』、『葬るリキッドルーム』と、3枚のミニアルバムを出しているんですけど、1枚ごとの色を完成させてお届けしたい気持ちは、その頃から持っていました。
――『ロンリーナイトマジックスペル』は、無意識のうちに歌いながら曲を書いていて、それが共通して夢にまつわるものだったからテーマにしたとおっしゃっていて、最初から決めたというよりは後で固めたとおっしゃっていましたが、今回はどうですか?
その時よりは意識的に、先にコンセプトを決めて作りました。
――なるほど。『F.A.R.』が「大人の成長」、『W.A.H.』が「和」、「ジャポニズム」というコンセプトです。『W.A.H.』は発音したら「ワー=和」になりますね。これは意図されたんですか?
そうです。というか、それだけです(笑)。
――コンセプトが決まった経緯は?
まず『FAR』という、ずっと大切に持っていた1曲があって。2016年頃に作っていたんですけど、あまり人に聴かせようと意識して作った曲では全然なくて。当時、私が生まれ育った久留米の実家を引き払ったタイミングがありまして、家を片付けたり、空っぽになった家を見ながら心がすごく揺れたんです。「こういう心が動いている時こそ、曲に変えなければ」、と思いながら作った曲だったんですね。その後マネージャーに聴いてもらった時に、「すごく好きです」と言ってもらえたので、いつか皆さんにお届けできるといいなと思ってたんです。で、「今年はよりアートしていく」と決めた時に、今、『FAR』を出したいと思いお届けする形になりました。それで、改めて立ち返って『FAR』を考えてみると、「大人の成長」というテーマが曲の中に含まれているなと思ったので、それに合わせて他の曲を書いて、まずミニアルバム『F.A.R.』を作りました。
植田真梨恵 撮影=森好弘
――人生の節目ともいえるタイミングで書かれた曲がメジャー5周年でリリースされるタイミングにも、意味がありますよね。あらためて過去を振り返ったりはされましたか?
インディーズ10周年の時点で過去はいっぱい遡って、いろいろ考える部分は自分なりにあったんですけど、「自分がやりたいことをなるべく実現させていく」ということが、「大人の成長」のテーマの中で行き着いた1つの答えでした。「いつかやりたい」とか、「今はできない」ではなくて、“今”できることを全力でまっとうしていくことが、とても大切だなと。自分の人生を耕すというか。
――人生を耕す。
いろんな人の力を借りて、いろんな人の縁の中で生きているからこそ、自分自身がエンジンをしっかりと燃やして考えて進んでいくことが大人の成長に繋がると思っていて。そういう意味でも『F.A.R.』は、「私はこういうメロディーラインが好きで、こういう音楽がやりたい、こっちの方が心地良い」、と、感覚的に作っていた部分が大きいので、実は歌詞の一節を紐解きはじめると、自分でもちょっと迷宮入りするというか(笑)。
――歌詞はメロディーと同時に自然に出てくることが多いとおっしゃっていましたもんね。『FAR』は植田さんの個人的な体験を元にしつつも、一歩俯瞰して見ると、誰でも感じたことのあるノスタルジックや、大人になるにつれて生まれる感覚など、普遍的なものを感じました。
『FAR』自体、自分の気持ちを整理するために作った部分が大きかったので、余計に他の曲もちゃんとテンションを合わせてしっくりくる1枚のミニアルバムにしてあげたかったんです。私は歌が好き得意で良い曲が作れているかは別として曲が作れるから作詞作曲をしているけど、世の中との関わり方がそうなだけで、なんら特別じゃなく、皆さんと同じように日常を生きている。そんな私がただ普通に書く曲だからこそ、届くと良いなと思っている部分が、今は大きいですね。
●日常を生きている中で感じる和や、美しさに寄り添った1枚●
植田真梨恵 撮影=森好弘
――『W.A.H.』は、『勿忘にくちづけ』のMVを拝見して感じた艶感や質感、音の透明感、豊かさが全曲を通して存在していて、美しい1枚でした。コンセプトを「和」にされたのは、「勿忘にくちづけ」のリリースが影響していますか?
そうですね。「勿忘にくちづけ」を良い形でアルバムに収録したい気持ちが強かったので、そういう1枚にしようと思いました。
――個人的には「花鬘」が好きなんです。
おお、ありがとうございます!
――難しい漢字ですが、タイトルや言葉遣いはコンセプトを意識して決められたんですか?
「花鬘」は歌詞とメロディーが先に出来上がった曲で、久しぶりにタイトルをどうしようかと悩んだ曲ですね『W.A.H.』全体のイメージにあったのは、豪華絢爛・煌びやかな和ではなく、日常を生きている中で感じる和や、日々つないでいく中の美しさ。それを表現するための言葉をずっと探していて。「はなかずら」は花の名前ですけど、昔は季節の花を糸で連ねてかんざしとして使っていたそうで、いつも寄り添うように傍にあるようなイメージができるといいなと思ってタイトルにつけました。「勿忘にくちづけ」に合わせて2018年秋の弾き語りツアーの時に書いたので、割と新しい曲ですね。
――「(entrance)」を除くと、6曲中4曲がタイアップ曲ですね。今回書き下ろされた新曲は?
「Bloomin’ 」ですね。
――これからやってくる前向きな春を表していますね。「ひねもす」はいつ頃書かれた曲なんですか?
何年か前だと思います。これもリリースするために作った曲ではなかったので、『W.A.H.』にも最初は別の曲を入れるつもりだったんですけど、収録曲を並べて考えている中で「ひねもす」というすごく和なタイトルの曲があったことを思い出して、「こっちのほうがしっくり合いそう」と思って収録しました。
――なるほど。あと『W.A.H.』と『F.A.R.』の表記が、インディーズ時代のミニアルバム『U.M.E.』と同じなのが気になりました。
これは意図的です。アルファベット3文字のあっさりしたタイトルがしっくりきていたので、久しぶりにそうしようかなと思って(笑)。
――語感で選ばれたんですか?
『F.A.R.』は、既にあった『FAR』に合わせました。もう1枚は“和”がテーマならもう、『W.A.H.』としか言えないな、と思って(笑)。
●今はとにかく、素敵な歌を作りたい●
植田真梨恵 撮影=森好弘
――改めてミニアルバム、どんな2枚になったと思われますか?
私はとにかく歌が好きで曲を作っていますが、自分の人生を生々しく日記のようにお届けしているかと言われると、今回は特にさらけ出してはいない​かなと思っているんです。もちろん実体験が生きて曲に跳ね返っている部分はあるので、私の中に出来事が起きないと曲はできてこないと思うんですけど。やっぱりシンガーソングライターとして、皆と同じように生きている私がお届けする曲だから、ちゃんと本音でリアルな気持ちを乗っけて歌える歌じゃないと、ライブで困っちゃいますからね。でも今とにかく思っているのは、「私の日常を届けたい」というよりは、「素敵な歌を作りたい」ということです。
――素敵な歌。
口ずさんでいたら元気が出るような歌を作りたいし、聴いていたら疲れが癒されるような音楽にしたいし、心がときめくような歌詞とメロディーを書きたい。今回の作品は、心地良さとか、日常を紡いでいくことの尊さが傾向として現れた2枚だとは思うんですけど、昔からずっと一貫して素敵な歌を作りたいという気持ちが私の芯になっているなと思います。
――ご自身も、歌に救われた経験があってのことですか?
特に10代の頃はそうでしたね。『FAR』の最初の歌詞に出てきますけど、《単純に思春期だった まだ10代の私は》の、その頃まさに、誰にも言えないことや、どうしたら良いかわからない時、単純にすっごいしんどい時、音楽を聴く時間に助けられたり、ときめきをもらって元気が出たので、そういう曲を作りたいですね。
――音作りの面でも心地良いものを目指したんですか?
はい、かなり。どれくらい実現できてるかは自分ではまだわからないんですけど、聴いてて「気持ち良いな〜、何も考えずリラックスできるな〜」、という感じにしたいと思いながらアレンジやミックスもずっと細かく調整していましたね。実はオケを薄めにして、カフェで流れていても会話の邪魔にならないようにと思って作っています。今までと同じエンジニアさんと一緒にやったんですけど、「これはこうしましょう」という部分をしっかり共有できたというか、より同じ景色を見ながら作れたと思います。
植田真梨恵 撮影=森好弘
――2019年は始まったところですし、まだまだ濃い1年になると思いますが、どんなアニバーサリーイヤーにしたいですか?
5年前にメジャーデビューして、それこそ最初の頃は、起こる出来事全部に全力でしがみつきながらの1年だったので、忙しさで巻き込まれていくような感覚があったんですけど、その流れが少しずつゆるまって、自分が何をしたいのか考える時間を持てたりする中で、回転はゆるめず、どんどん曲を出していくことが今の私にはベストであり、チャレンジでもあると思っています。「2枚ミニアルバムをリリースしたい!」と言ったのも私なので、自分で言ったからには頑張らないとしょうがないですよね(笑)。どのくらいできるかという挑戦でもあります。なるべくスピードを落とさずに、やりたいことをちゃんと実現させていきたいです。
――今までもずっとフル回転で活動されているイメージがありますが。
自分ではあんまりわからないんですよね。でも、不安はずっとつきまといますよね。どのくらいやれば正解なのかが見えないので、できることをできる限り、素敵に元気に心地良く、お届けしたいですね。皆さんがお腹空かないぐらいには活動していけるかなと思います。
――お話しを聞くたび、作品への熱量の強さを感じますが、それを途切れさせず続けておられるのは、本当にすごいなと思います。
どうでしょうね、私もいつ途切れるかわからないんですけど、気持ちが溢れている間は、やっぱり全力でやりたいので。そして子供の頃からの夢だった、歌手になって歌を届けることができることがとても幸せだと感じるので、いっぱい素敵な歌をお届けしていきたいと思います。
――その1つとして、5月からはツアー『LIVE TOUR 2019 [F.A.R. / W.A.H.]』が始まりますね。3月には『Live of Lazward Piano-凍てついた星座-』を終えられたばかりですが、こちらはどうでしたか?
今回は4箇所回ったんですけど、どこも会場自体にパワーがあって、心から素敵でしたね。
――大阪は中央公会堂でしたね。建物にも歴史がありますし、どこかパワースポット感がありますよね。
いや〜、当日ほんとに自分が表現者として試されている感覚もあったりして。やっぱり心を豊かにしていかないと負けちゃうなと。Lazward Pianoではそんな気持ちも生まれたりしたんですけど、5月からは、久々のライブハウスでのバンドツアーなので楽しみですね。『F.A.R.』と『W.A.H.』は、バンドの熱量で“大きい音ど〜ん!”みたいなアルバムはないので、1つ1つの楽器を大切にしたり、これまでバンドライブでは入れなかったような楽器を新調して、皆で心地良い時間が作れるライブにしたいと思っています。
取材・文=ERI KUBOTA 撮影=森好弘

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