KSR for OSAKA『清水音泉ぶっとばさ
れ…る?』~レキシ・サンボ・キュウ
ソの3組が清水音泉救済イベントで心
から強い気持ち強い愛を伝えまくった
夜!!~

KSR for OSAKA『清水音泉ぶっとばされ…る?』2019.4.6(SAT)Zepp Osaka Bayside
4月6日にZepp Osaka Baysideにて関西のコンサートプロモーター清水音泉の救済イベントKSR for OSAKA『清水音泉ぶっとばされ…る?』が開催された。本イベントは昨年夏に台風21号の影響により中止となった、野外音楽イベント『OTODAMA'18~音泉魂~』主催の清水音泉を救済する為に、親身に心配したレキシサンボマスターキュウソネコカミの3組によって開催が決定されたもの。
 が、清水音泉の清水さんこと番台(まぁ、いわゆる代表って事です)いわく、「音泉の為にとは正直、憚られます。我々だけではなく昨年地震や台風でションボリ気味の大阪が元気になりますよう願いを込めて、'85年「USA for AFRICA」の如く(ちょっと古いけど)K→キュウソ、S→サンボ、R→レキシの3組が『KSR for OSAKA』として春の大阪で揃い踏みしてくれます!」。
これHPに掲載されていたものだが、今年42歳の学年になる私でさえも、当時アフリカの飢餓救済の為に開催された『USA for AFRICA』は、いまいちピンとこなかったが、そこで歌われたチャリティーソング「We Are The World」はピンときまくる。要は、ライオネル・リッチー、マイケル・ジャクソン、スティービー・ワンダーら45人のミュージシャンが参加したプロジェクト。てなわけで、Zepp Osaka Bayside前のスピーカーからは、この歌が響きまくり、会場内に入るとテレビモニターからは、この歌のPVが流れまくっている。相変わらず芸が細かいコンサートプロモーターである。
中島ヒロト(FM802)
さぁ、既にここまでで600字近い文字数を使っているが、このイベントは丁寧に説明しないといけない。実際のイベントもFM802DJ中島ヒロト(ボランティア出演!)が丁寧に前説をしていた。特に幻の『OTODAMA'18~音泉魂~』グッズ7000円分を詰め込んだ3000円福袋の話を中心に! 『OTODAMA'19~音泉魂~』開催も祈り、いよいよライブが始まる。
サンボマスター
お馴染みゴダイゴ「THE BIRTH OF THE ODYSSEY~MONKEY MAGIC」をSEに登場するはサンボマスター。山さんこと山口隆が両手で観客を鼓舞しながら、「清水音泉にはお金がありません! みなさん宜しくお願いします!」とユーモアたっぷりに叫ぶが、その後の「色んな思いがあって、ここに来た! だから、色々やらしてくれ! 平成最後にお前の命があって良かった!!」という言葉が何よりも気になった。「美しき人間の日々」、「青春狂騒曲」と立て続けに歌われるが、とにかく歌詞が、とにかくメロディーが良いから、聴く我々は心揺さぶられるし、いつも以上にぶっ飛ばそうとする異様に強い気持ちを感じる。「色んな事があったけど、踊りまくって、幸せになるしかねぇんだよ!」、「特別な思いを持ってやって参りました!」……、これらの言葉は清水音泉救済だけの言葉では無いと気付いていた人も多くいただろう。
サンボマスター
「こんなの始まって10何分で言うのはあれだけど、生きててありがとうございます!」……、そう言われての3曲目「ラブソング」での演奏途中での黙祷的時間は、もう言わずもがなであった。亡くなった人への思いも込められた「ラブソング」では、毎回ライブで20秒ほどの黙祷的時間がある。この日は、その時間が1分以上あった。山さん含め、多くの人が彼の名前を思い浮かべていたはずだ。そして、歌われる《あいたくて あいたくて》という歌詞……。
ボブ·ディラン、ミック·ジャガーという存命のロックミュージシャン、ジョン·レノン、忌野清志郎という亡くなったロックミュージシャンの名前が挙げられ、「あいつは何残してくれた? 行動、優しさ、思い……、あいつに出逢った事を感謝したい。親友の松原に捧げます」と言って、まさしく捧げられた楽曲「ロックンロール イズ ノット デッド」。多くの人が思い浮かべていたであろう松原裕という名前が遂に出た。ライブハウス太陽と虎の経営者であり、日本最大規模のチャリティーイベント『COMIN’ KOBE』実行委員長でもある彼は、3年間の闘病生活の末、この2日前に39歳という若さで亡くなった。《死んで花実など咲くものかよ》という歌詞と、客席ではなく袖の方を観てギターを弾く山さんの姿が強烈に印象に残っている。
サンボマスター
このイベントでの重要曲に後々なる「できっこないをやらなくちゃ」でも「松原」という名前は何度も叫ばれた。ラストナンバー「輝きだして走ってく」の前にも、山さんは改めて2日前の悲報に触れた上で「俺は今日みんなに救われた」と思いを伝える。てか、あなたに今日救われたと思った人は、私含めてたくさんいるはずですよ、山さん。今まで一度もロックンロール葬という式に出た事が無いが、この日のサンボマスターのライブは、まさしく正真正銘のロックンロール葬であった。素敵な葬をありがとうございました。
レキシ
初っ端から『KSR』の「S」のライブが強烈過ぎて、次のライブへの転換中もボーっとしていたが、そんなオセンチな感情は、ほら貝が鳴った瞬間に吹き飛ばされた。そう「R」ことレキシ御一行7名が現れる。レキシこと池田貴史こと池ちゃんが自身の出演するCM「ファブリーズ」を撒き散らかしながら登場。その上、「みんなで回して!」と言って、ファブリーズを観客たちに渡す。まぁ艶やかな十二単に金色の袴姿! 一気に場が明るくなり、ひとつのイベントで、これだけ両極端な感情になれるなんて凄いと変な感心もしてしまった。
あっという間に1曲目「SHIKIBU」が終わり、「レキシでした! 次はキュウソです!」と帰ろうとするベタなボケを気持ちよくしっかりとかましつつ、観客たちが持つ稲穂をいじり、ケビン·コスナーという自己紹介ありつつ、目まぐるしく喋り倒してくれるが、もう、それが楽しくて仕方ない。色々な思いも浄化してくれる。
レキシ
続く「GOEMON」でのメロウなソウルナンバーもそうだが、もはや楽団とも言うべき、ギター·ベース·トランペット·サックス·ドラム·キーボードの演奏がキレッキレで素晴らし過ぎる。ふと周りを見渡すとレキシTシャツを着た子供も自然に体を揺らしている。そんな素敵空間な中も池ちゃんは、手をかざしてる観客たちにチョキで応え、「俺の勝ち!」と勝手にジャンケン対決をしているし、もう自由の極み。「ちょっとだけ踊るよ!」と言って、キレッキレというか、誠に振り切れた愉快なダンスを披露し、でも、「そんな盛り上がらなかった」と言って、また帰ろうとしている。いわゆる、お笑いで言うとこの繰り返しの「てんどん」をかましまくる。
「サンボみたいにバラードやる?!」とか、「救済なんて知ったこっちゃない!!」とか、ちょっと茶化す感じ、照れ隠しと言ったら、御本人に「何も隠してない!」と怒られそうだが、そんな楽しい事だけを明るい事だけを突き詰める池ちゃんに、また山さんとは違う意味で大変救われた。そして、そういう人は私以外にも多かったはずだ。「久しぶりにライブハウスでやるから、テンションが上がる!」なんていう何気ない言葉も嬉しかった。今や、すっかりホールミュージシャンなレキシだが、当たり前だが元々はライブハウスで鳴らしまくっていたわけで。まだ、2曲しかしてない中、「残り2曲!」と告げられるが、充分楽しませてもらっていて、誰も特に何も不満を全く感じていないのが凄い。
レキシ
「稲穂はレキシの臓器!」なんて、次のキュウソを匂わせるフレーズも飛び出し、場内は稲穂が揺れまくり、「狩りから稲作へ」、「きらきら武士」と駆け抜ける。「一体、何の集まりかわかりませんが!」と言いつつも、「清水音泉の事を宜しくお願いします!」と言ったり、「清水音泉が好き~」なんて歌ったりする。共に、その前に「一応!」と付け加えられていたのが池ちゃんらしいが、ちゃんと強い思いが伝わるライブであった。
キュウソネコカミ
嵐の「A·RA·SHI」がSEで鳴り、『KSR』の「K」ことキュウソネコカミが大トリで登場。1曲目は「KMTR645」だが、そうなると、もちろん池ちゃんも登場。イルカ着ぐるみを装着して、元気に登場するも、中々お立ち台に上がれないボケをひたすら繰り返すわ、ファブリーズは撒き散らすわ、キュウソの楽曲「推しのいる生活」で邪馬台国を舞台設定にしたMVを制作した事に対して、土下座させて説教するわと大忙し! この日、3曲目に披露された「米米米米」に対しても、レキシを彷彿させると稲穂的イチャモンを付け、米に縁のあるバンドたちにもキュウソからの謝罪を求めるなど、やりたい放題に喋り倒す。御本人も「人のとこのライブに飛び入りするのが一番楽しい!」と言っていたが、まさしくその通りで御座いました。
キュウソネコカミ、レキシ
そんな池ちゃんという名の嵐が去った後は、「清水音泉ぶっとばす」。ミニアルバム『ハッピーポンコツランド』に収録されている(シークレットトラックとして収録)。今回の『清水音泉ぶっとばされ…る?』というイベントサブタイトルの元ネタでもあるが、若くして『OTODAMA'15~音泉魂~』でヘッドライナーを務めただけあって、清水音泉への強い想いがひとしおな事は、この曲からも伝わってくる。先ほど話題に上がった「米米米米」の後は、「ビビった」へ。ヤマサキ セイヤが「超簡単超かっこいい踊りを踊ろう!」と自ら踊って促したが、観客と同じくらい本気で清水音泉の男湯こと田口さんが踊っていた姿には何故だがグッときた。こうやって本気でミュージシャンと向かい合ってるから、ミュージシャンからも信頼され、この様な救済イベントも開催してもらえるのだろう。
キュウソネコカミ
MCでセイヤは、いかにサンボとレキシの後に登場するのがバカ緊張したか、そして好きなモノに対しては、ちゃんとお金を払って、令和の時代にも続かしていこうと気持ちを込め、「俺たちも消えないように、清水音泉も潰れないように」と観客に伝えた。「令和」という新しい歌詞が書き加えられた事も話題になった「ギリ昭和」、「令和になってもヤンキーはいなくならない!」と切実に想いを込めた(?!)「DQNなりたい、40代で死にたい」と続いたが、「DQN~」で観客の上にダイブして、その上に何度も崩れそうになりながらも、ひとりひとりの支えによって立つ姿は、キュウソや清水音泉らが、まさしく観客のみなさんによって支えられている姿そのもの。ラストナンバーは《ライブハウスはもう最高だね》というイカした歌詞が抜群の「The band」で終わらせてくれた。
中島ヒロト、ガリガリガリクソン
後説的に再度、中島が登場して、「もうひとり清水音泉に縁のある方が来てます!」と紹介されたのは、ガリガリガリクソン! 最近では45キロ痩せた事でも有名な彼(が、8キロリバウンドしていた……)。久しぶりの大舞台で、ここだけのネタと披露したが、本当にここだけのネタにしないといけない全く書けないネタ! 当日観た人も自身の胸の内にだけ必ず秘めて下さい!
さぁ、そして本当の大ラスの出し物として、「We Are The World」が鳴る中、各界の著名人に扮した出演者たち9名が登場。てっきり「We Are The World」に登場する人物かと思いきや、ただただ、それぞれが扮したい誠におバカな人選。出演者たちのSNSにも写真がアップされてるので、それぞれ誰を演じたかを是非とも当てて欲しい。
で、まだまだ見せ所は尽きない。吉本新喜劇な衣装のキュウソのギターであるオカザワ カズマが突然仕切りだし、音泉の番台こと清水さんが呼び出され、「清水音泉ならできるんだ!」と叫ばれる。オカザワ、ベースのカワクボ タクロウ、ドラムのソゴウ ダイスケによって演奏されたのはサンボの「できっこないをやらなくちゃ」。それも、オカザワが熱唱! 元来ボーカルであるセイヤは扮した著名人に沿って、ひょっこりしまくるだけ、この曲が挿入歌にもなったドラマ『チア☆ダン』の主人公に扮した池ちゃんはただただ踊りまくり、自分の楽曲にも関わらず山さんは一切歌わず、「イリュージョン」が口癖の大師匠に扮して、ひたすら首を傾げまくる。「これで終わりなの?!」と思わずガリがつぶやくカオスな大団円だったが、最後はこの方がマイクを握った。
清水さんは最初このイベントを断ろうと思った事や、山さんの言葉では無いが、自身たちもライブに救われている事、そして、改めてライブの現場が大好きという思いを語り、「去年色々ありましたが、今年の夏、何か開催できたら!」と明かしてくれた。「この3バンドを僕らも応援するので、みなさんも応援して下さい!!」という〆も、ミュージシャンを、バンドを心から愛する清水さんらしい言葉だった。本当に強い気持ち強い愛しかないイベントであったし、清水さんは「何か」と言葉を濁したが、この夏は絶対的に『OTODAMA'19~音泉魂~』の開催を心底祈っております!
取材・文=鈴木淳史 撮影=河上良

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