CROSS REVIEW / JABBA DA FOOTBALL
CLUB 『DON’T WORRY,BE HAPPY』 メ
ジャー・デビュー控えるジャバの最新
EPを奥富直人、永嶋創太、高木"JET"
晋一郎、照沼健太の4名がクロス・レ
ビュー!

4月6日(日)に東京・代官山UNITで開催された〈OMAKE CLUB〉と〈PARK〉による合同レーベル・イベント“OMAKE PARK”にて、メジャー・デビューを発表した4人組ヒップホップ・グループ、JABBA DA FOOTBALL CLUB。
そのJABBAが2月にリリースしたインディーズ最後のEP『DON’T WORRY,BE HAPPY』を、メンバーのノルオブたっての希望によりそれぞれ観点の異なる4名――奥富直人、永嶋創太、高木”JET”晋一郎、照沼健太がクロス・レビュー。果たして、この4者4様のレビューから浮かび上がってくる、JABBA DA FOOTBALL CLUBの本質とは?

Review by 奥富直人(BOY ショップ・オーナー)

東京を拠点に活動する4人組ヒップホップ・グループ・JABBA DA FOOTBALL CLUBが、2019年2月、最新EPとなる『DON’T WORRY,BE HAPPY』をリリース。作品冒頭を飾る「i&i」では、優しいアルペジオから一変するアッパーなサビに乗せる言葉は<YEAH>。続く「GIRLS」では、歪んだギター・サウンドに軽快な掛け合いが交差し攻撃力が増す中、UCARY VALENTINEによる客演でチャーミングな面が絶妙に絡み合う。間髪入れずに始まる「だからピース」は、スカ・パンクの要素と四つ打ちの転調で独創性の高い1曲。タイトル曲でもある「DON’T WORRY,BE HAPPY」では、シンプルなアコースティック・サウンドにレゲエ・フレーバーなメロディが染み込み作品の幕を閉じる。

ラップ・グループでありながら、90’s後半~00’s USポップ・パンクを彷彿させるかの様に、ボーダー・レスかつ軽快に多種なサウンドを彼らの音楽に取り入れた作品となった。このライン、とても挑戦するに踏み込み辛い線を彼らの個性とチーム・ワークで形にしたのであろう。JABBA DA FOOTBALL CLUBというチームは、沢山の笑顔を生む試合をし続けてくれるんじゃないか、と期待させられる1枚。

【奥冨直人】

“FASHION&MUSIC”をコンセプトに掲げる渋谷のアパレル・ショップ「BOY」ショップ・オーナー。ショップでは、ヴィンテージや音楽タイトルのバイイング/イベント制作なども行う。DJとしてはTOMMY(BOY)名義で年間80本程のイベントに出演。2018年は“FUJI ROCK FESTIVAL”や“RISING SUN ROCK FESTIVAL”などのフェスにも出演し、野外でのフィジカルの強さを見せつけた。

Review by 永嶋創太

足取りはあまり軽くないけど、よく晴れた朝の電車でこのEPの再生ボタンを押した。あぁ、アイツらも頑張ってるし、俺も頑張るか。1曲目「i&i」のイントロが鳴った瞬間から、月並みだけどそんな事を考えていた。こんなことを言ったら彼らに怒られるかもしれないけど、JABBA DA FOOTBALL CLUBはいつも“悩んでいる”。結成当時から何も変わらずしっかりと“悩んでいる”。ジャバは別にそれを隠す事なくリリックにぶつける。でけぇ音にでけぇ声で各々が信じるものをラップする。よかった、こういうやつらがいてくれて。

でも、今作はいつも以上に彼らの意思に強度があり、サウンド面でもそれは感じれる。希望も不安も全部ごちゃ混ぜにしたものがミクスチャー・サウンドだと言わんばかりに、ポップ・パンクとヒップホップを軽やかに横断する。ロックという音楽にも恩恵を受けてきたジャバらしい、ある種の決意だと思っている。彼らの前向きな言葉たちが軽快なサウンドの上で走り出し、聴いている僕らの日常の景色も加速させてくれる。あのキムタクも『ロンバケ』で、自分の住むマンションの屋上看板に書かれたあのメッセージに勇気付けられるシーンがあったけ。「DON’T WORRY, BE HAPPY」。

迷いながらも覚悟を決めた人たちの言葉はやっぱり強い。

【永嶋創太】

エディター・ライター。平成生まれ平成育ち。warp MAGAZINE編集部に休刊までの約5年間在籍し独立。ファッションや、音楽、映画などのカルチャー系の記事まで幅広く活動中。

Review by 高木“JET”晋一郎

「JABBA DA FOOTBALL CLUBってどんなグループ?」
KICK THE CAN CREWRIP SLYMEの流れを汲んだキャッチーな楽曲?」「ポップに振り切ってるよね」
「4MCでキャラの立ったマイク・リレー?」「カラフルで良い」
「ワチャワチャした楽しげなライヴ?」「エンターテイメント性が高くてオモロい」
じゃあ「JABBA DA FOOTBALL CLUBって<どんな>グループ?」「……」

そう。途中の3つのような、ある意味ではパッケージングやカラー、方法論といった「JABBAのアプローチ」というのは、これまでの活動を通して分かりやすかったし、実際形になっていた。また、それぞれのメンバーが持つキャラクター性も、「FANTASTIC 4」などの楽曲やライブを通して、彼ら自身も明らかにしていた。

しかし一方で、「根本的な存在性」や「意思」、より深く言えば「それぞれの行動原理」という部分は、実は楽曲を通して明らかにはなって来なかったと思う。故にパッケージではなく、根本的な「どんな」という問いには、実は答えにくかった。

これはそれぞれのパーソナリティを出しにくい集団MCの宿命でもあるし、彼らがまだ作品としては2枚のアルバムと1枚のEPしかリリースしていないということにもよるだろう。もちろん、それが悪いことではない。自意識や自我が投影されていない楽曲は世の中に五万とあるし(ことポップスにおいてはそうだろう)、完全なるフィクションで構築された名曲は数々ある。

だが、こと自分でリリックを書き、自分でラップするというアートフォームを採用している彼らにとって、「自分自身の行動原理」が作品から読みとりにくいというのは、「彼らそのものが見えづらい」「彼らの腹の底が分からない」ということにも繋がり、それが活動や言動の説得力を欠いてしまう要素にもなり得てしまう。つまり、言葉の背骨が見えず、説得力が弱くなる、と言った具合だ。

しかし、今回の『DON’T WORRY,BE HAPPY』に収録された「i&i」で、彼らはしっかりと「オレ語り」をした。それぞれのMCがキャラクターではなく、そして「JABBAの誰か」ではなく、NOLOV/BAOBAB MC/ASHTRAY/ROVINという、それぞれの存在として、「自分は何者なのか」を明示する。楽曲を4等分するため、その「オレ語り」の深度をソロ・マイカーと比べるのは酷かもしれないが、それでこの楽曲の言葉によって、彼らそれぞれが何を行動原理としているのかが明らかになった。ゆえに、この曲を通して、彼らの楽曲は立体感を増していくことになるだろう。

そして「DON’T WORRY, BE HAPPY」でもそういった個人性を明らかにしながら、<DON’T WORRY, BE HAPPY>という、現在のJABBAがグループとしてリスナーに与えたいであろう言葉を形にし、「グループとしてのメッセージ」として収斂させた。ベタな例えだが「三本の矢」(この場合は四本の矢、か?)の故事のように、「それぞれのメンバー」という個性が見えたことで、グループとしてのメッセージの幹は確実に太くなった。

JABBAらしい呑気さや前向きさを内包した「GIRLS feat. UCARY & THE VALENTINE」、「だからピース」も含め、全ての楽曲のトラックをBAOBAB MCが手がけたことも含めて、「JABBAの足元」がより明確になったと感じさせられる本作。この足元からどのように次の足を蹴り出していくのか、より楽しみにさせられた一作だ。

【高木“JET”晋一朗】

ライター/男の墓場プロ所属/レキシネーム:門仲町一郎/Amebreak「Beat Scientist」連載/構成にサイプレス上野『ジャポニカヒップホップ練習帳』など。

Review by 照沼健太

「時代錯誤的なラップ・クルー」。失礼な話だが、それがこれまでJABBA DA FOOTBALL CLUBに抱いていた印象だった。たまたま観たライブで披露されていたのは、世界的に隆盛を極めているトラップやエモラップの不穏さなど何処吹く風の、陽性のヴァイブスによる観客を巻き込んだパフォーマンスとマイク・リレー。そこから連想したのは、00年代に教室でみんなが話題にし、カラオケで歌っていた、当時のヒップホップブームを象徴する2グループ、RIP SLYMEとKICK THE CAN CREWだ。グーグルの検索候補に「JABBA DA FOOTBALL CLUB 年齢」と出てくることや、過去のインタビューや対談に書かれている内容からも、自分と同じように感じている音楽ファンや同業者が多数いることは間違いないだろう。たぶん。

そんなJABBA DA FOOTBALL CLUBの最新EPである本作『DON’T WORRY, BE HAPPY』は、直接的にバンド・サウンドを取り入れ、これまで以上に過去へとレイドバックした。……かのようだが、そこには自分がこれまで彼らの音楽から読み取ることができなかった意外なおもしろさや新しさがある。“過去に突き進んだ果てに「現在」にたどり着いた”……まるでそんな印象なのだ。

まずはリード・トラック「i&i」を聴いてみてほしい。アルペジオに導かれるヴァースから轟音ギターのコーラスへなだれ込む本楽曲は、00年代初頭のエモコア、『Viva La Revolution』以前のDragon Ashを通過し、90年代「Kurt Cobain自殺以前」のオルタナティブにまで遡る。Aviciiが死を選び、Lil Peepがオーバードーズを迎え、XXXTentacionが殺されたそのあとにやってきたこの2019年に、新たなパンクの萌芽が姿を現し、それぞれに違う花を咲かせる。そんな季節を予感させる空気が漂う楽曲だ。「トラップ以前」を参照することで「トラップ以後」を描く、なんてのはキャッチ・コピー的すぎるだろうか? ただ、“時代錯誤も極めれば、その果てに未来がある(場合もある)”ということは、すでに歴史が証明しているはずだ。

そう、表層的には目新しさはなくとも、感覚として本作は新しい。例えば、メロコアとテックハウスをミックスさせたような「だからピース」は、00年代では成り立たなかったであろうバランス感の上にある。使い古された過去と過去が出会い、未来を紡ぐ。音源自体のサンプリングではないかもしれないが、これもまた紛れもなくサンプリングである。ヒップホップ以外の音楽に向かうほど、ヒップホップの原点に立ち返る。そんなパラドックスもおもしろい。

そしてタイトル曲「DON’T WORRY, BE HAPPY」だ。神経症と不安の時代において、ハードな現実描写やセルフ・ボーストとは違う方法でサバイブを促す本楽曲は、個人をエンパワーメントする必要性が叫ばれ、Ariana Grand「thank u, next」が新たな潮流を切り開こうとしている2019年にふさわしい1曲だろう。

オルタナティブな音楽がメイン・ストリームとなり、J-POPにも取り込まれた時代。そんなあの頃の音楽を参照しながら、2019年にリアリティを生み出さんとする本作からは、時代が一周し、新たな意味を持って上書きされていくような感覚を覚える。カラオケに誘ってもらえず教室の片隅でNirvanaを聴いていたであろう彼女に、「これはお前らの音楽じゃない」とバンドを組んでいるクラスメイトたちを呪いながら一人でハイスタを聴いていた彼に、時空を超えて本作は手を差し伸べるだろう。

【照沼健太】

編集者・ライター・写真家。2019年は何かしら動きます。

おわりに

「この文を読んでくれてるってことは~」っつーお決まりのやつやります。
「この文を読んでくれてるってことは4人のレビューを読んでくれたってことですね!ありがとう!」
どうだった? 感想あったら教えてくれない!? (jabbadahuttfootballclub@gmail.com)

4つの観点からレビューされた『DON’T WORRY,BE HAPPY』という作品。
「JABBA DA FOOTBALL CLUB」というヒップホップ・グループ。
この記事を通して、興味を持ってくれたらすごく嬉しい。

6月5日(水)にメジャー・デビュー・シングル『新世界』を発売するから、どんな風に成長してるから見てやってちょうだい!

最後まで読んでくれてありがとう。
協力してくれた素敵な4人の方々、掲載させてくれたスピンコースターに大きな感謝と愛を。
ピース

ノルオブ


【リリース情報】
『新世界』初回生産限定盤
『新世界』通常盤

JABBA DA FOOTBALL CLUB 『新世界』

Release Date:2019.06.05 (Wed.)
[初回生産限定盤]SRCL-11137~8 CD+DVD ¥1,800 + Tax
[通常盤] SRCL-11139 CD ¥1,200 + Tax

※初回生産限定盤:プレイパス封入/通常盤:初回仕様のみプレイパス封入
※各収録内容は後日発表


【イベント情報】

全国ツアー「新世界体験記 ~飛び出しちゃってゴメンなさい~」

日時:2019年7月3日(水) Open 18:30 / Start 19:00
会場:愛知県・名古屋 CLUB UPSET

日時:2019年7月4日(木) Open 18:30 / Start 19:00
会場:大阪府・心斎橋 CONPASS

日時:2019年7月10日(水) Open 18:30 / Start 19:00
会場:東京・代官山 UNIT

料金:¥3,000 (1D代別途)

■ JABBA DA FOOTBALL CLUB オフィシャル・サイト(http://jbfc.jp/s/n63/?ima=5108)

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