天才画家・ピカソの血気盛んな20代を
演じる三浦翔平にインタビュー「僕も
満たされずむしゃくしゃしていた」

『ピンクパンサー』シリーズで知られる名優スティーヴ・マーティンの戯曲をもとに、シカゴで1993年に初演され、日本でも1997年、2000年にランダル・アーニー演出、岡本健一、川平慈英のキャストで上演された舞台『ピカソとアインシュタイン〜星降る夜の奇跡〜』。同時代に生きながら並び立つことがなかった二人の天才、画家・ピカソと物理学者・アインシュタイン。「彼らがもし血気盛んな20代の頃に出会っていたら……」という創造性にあふれた物語が、新翻訳で再びよみがえる。今作では、ピカソ、アインシュタイン、発明家・シュメンディマン、未来からの訪問者という主要キャラクターを、岡本、川平を含む2チーム4人の俳優が演じる。そんな本作で、ピカソと未来からの訪問者の二役をつとめるのが、三浦翔平だ。「世界を変えた男たち」を演じることになった三浦に話を訊いた。
三浦翔平
――今回、ピカソを演じるにあたってどのようなアプローチをしようと考えられましたか。
ピカソやアインシュタインが登場すると聞くと「難しい」と思われそうだけど、19世紀末のパリで、もし二人が出会ったらこういう話をするんじゃないかというコメディー作品なので、(アプローチに関しては)むしろあまり考えすぎないようにしました。ただ、台本は一度や二度、読んだだけではなかなか役をつかめなくて、何度も読み込みました。ちなみに、知り合いに通訳してもらってパリのバーで現地のお客さんにこの舞台のことを話したら、「え、君がピカソをやるの?」と驚かれましたね(笑)。
――イントロダクションを読んでいると、この舞台のピカソは非常に熱量が高いようですね。
冒頭から中盤までのピカソの熱量の高さは特に意識しました。ピカソについて調べると、実際に若いときはかなり刺激的な人間性の持ち主だったようで、語弊を恐れず言えばヤバさがあった。絵や芸術が第一にあるけど、その原動力となったのが女性。でも、それでもどうしようもないときがあって、バーに酒を飲みに行く。そこで出会うんですよ、アイシンシュタインに。
――情熱的ではあるけど、まだ世に広まる前から「俺は天才だ」と自負するような、20代らしい傲慢さも伺えます。
ピカソはずっとそれは持っていたのではないでしょうか。天才だと信じきっていて、自分よりすごいやつなんていない、と。
――役者や演出家もそうですが、作品づくりに携わる人は、どこかでそういった自分に対する至高的な気持ちを持っている気がします。
誰もがそれはあると思います。でも日本人の感覚だと、それを表に出さないし、出しづらい。ただ、アメリカとかは特にそういう気持ちの人が多いでしょうし、その中でひねくれていたり、変だったり、おもしろいことを考えていたりする。だから、その考え方を表に出すことは必要だと思いますよ。
三浦翔平
――三浦さんは、何か天才的な部分はお持ちですか。
それが、ど平凡なんです(笑)。何かに卓越しているわけでもないし、感覚で動くし、天才なところはないですね。「ミドルの凡人」です。むしろ、可もなく、不可もなくが大好きなんです。アート的なセンスを持ち合わせていないし、わからないことの方が多い。僕の場合はすぐに、「この人には勝てない」と白旗をあげてしまう。
――特に「この人は天才的」と感じた人はどなたですか。
まず、木村拓哉さん。お仕事でご一緒させていただいて、尊敬できる部分ばかりでした。あと友だちで言えば、ONE OK ROCKのTakaくん、早乙女太一くん、山田孝之くん。やっぱり違うんですよね、考えていることが。みんな、ちょっと普通じゃないんです。発想も、何もかも。その才能への羨ましさとか完全に超えたものがありますね。
――この舞台では、血気盛んな20代のピカソにスポットをあてていますが、20代ってそうやっていきり立つなかで物事を吸収していくものが多い。三浦さんも血気盛んな時期はありましたか。
ありました。20代半ばくらいまで、何か満たされなかったんです。自分が求めているものに実際の感覚が追いついてなくて、どうしようもなくて、むしゃくしゃしていました。体力は有り余っていたから、余計にむしゃくしゃが強かったのかもしれません。
――作品のなかのピカソも、内に秘めるものがあるけども、それが表現としてなかなか出せない。
そう、ピカソがもどかしさを感じるんです。ピカソも人間ですからね。もちろん人にはそれぞれの性質があるし、若くてもしっかりしている人もいたり、目上でも少し抜けているところがあったり(笑)。大切なのはどういうときに、どんな風に地に足を着けているかということ。そういう時代を過ごしながら、一体何を吸収できるか。それがその先の10年を決めると思います。
三浦翔平
――三浦さんはその当時、どういう人間性でしたか。
やっぱり、いろんな意味で無知でしたね。10代後半から20代前半は、わがままで生意気なところもあったし、何か注意されても心の中で「いや、別にいいじゃん」と反発していました。でも、分かってくるじゃないですか。相手がなぜそうやって言ってくれたのかとか。
――そういう時期、あったんですね。
何を言われても「関係ない」と反抗していました。でも年齢を重ねると、そうも言っていられなくなる。自分の至らなさに気づきますし。
三浦翔平
――作中のピカソは言いたいことをバンバンいいますよね。
全然隠さない。「こいつが憎い」「あいつはすごい」とか。時にはボロクソに言うし。(気持ちを)隠すということを知っていたら、もうちょっと上手く世渡りができたのでしょうけど。でもそれがピカソの良さ。だからこそ、偉大な絵を描くことができた。いまだにピカソには、意図がわからない絵もたくさんあると言われています。でも、世界中からその絵を見に来る人たちがたくさんいる。時代を超えて価値を生み出している。その絵の正解は分からないけど、しかしピカソの凄みが伝わってきますよね。
――あと今回は、ピカソだけではなく、「未来からの訪問者」という役も演じますね。その正体は誰もが知るミュージシャンということですが。
もしかすると若者は知らないかもしれないけど、上の世代の方たちはほぼ100パーセント分かると思います。(曲を)聴けば絶対に「ああ!」となりますね。あと、とあるセリフがその人を表すヒントになっています。それを読み取れたら「なるほど」となるはず。(舞台を)観終わったあと、調べてみてほしいと思います。
――この舞台を観ると、あくまで作り手の解釈ではありますが、ピカソはじめ歴史的な人物たちの人間性が楽しめそうですね。
誇張している部分はもちろんありますし、想像の世界だけど、ブッとんだヤツらの溜まり場を舞台に、彼らのブッとび具合を楽しんでもらいたいです。
三浦翔平
取材・文=田辺ユウキ 撮影=田浦ボン

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