【KOKIA インタビュー】
10年間をひとつの
コンサートだと思って
セットリストを組むように
曲を選んだ
“ライヴが命”という気持ちを込めた
タイトルがいいなと思った
それにしても会場によって歌や音の響き方が全然違いますね。
これまで歌ってきた会場のことを意外と鮮明に覚えていたりするんですけど、音源を聴いたことでより鮮明に思い出しました。品川教会グローリア・チャペルでの音源も入っていますが、私は小学校1年から6年まで毎日礼拝があるミッション系の学校に通っていたので、品川教会で歌えた時はすごく嬉しかったです。慣れ親しんだ教会という雰囲気の中で歌えた喜びを感じましたね。
2010年以降のコンサート音源が収録されていますが、それ以前とのコンサートやライヴに対する意識の違いはありますか?
2006年からヨーロッパでライヴを行なっていますが、2010年はヨーロッパツアーが拡大された年でした。でも、残念なことに、その時期からちょっと体調を崩してしまって、その微妙な状態が8年も続いたんですね。今回のライヴベストアルバムの音源はまさにその時期に行なった音源になってしまうので、もしかしたら“どうしてそんな時期のコンサート音源を集めてライヴベストアルバムにしたの?”と思われるかもしれません。でも、逆に言うと、そんなに長く体調不良が続いたら普通だったら辞めてしまおうとか、私がくだしてきた以外の選択肢が他にもあったはずなのに、そういう答えは選ばず、体調がどうであれ、悩みながらも毎回渾身のステージを届ける努力をしてきた自分に拍手を送りたいなという気持ちはあるんです。体調は悪かったけれど、いい瞬間、ステージはたくさんあったな“やるなぁ、私!”って思いました(笑)。もちろん、体調が悪い状態で歌うことはお客さんに対して失礼なことなんじゃないかと思い悩んで歌うことはこれ以上難しいのかもしれないと思った時期もありましたけど、自分を信じて、お客さんを信じて歌い続けました。もちろん体調が良ければ楽に歌えますが、具合が悪いからこそどうにか気持ちで補おうと渾身の想いで歌うので、それゆえに感動的なパフォーマンスが生まれたりしたこともあったのかもしれません。
もう今は大丈夫なんですね。
はい。このアルバムにも入っていますが、去年の11月にフランスのパリでライヴを行なった時に体調が万全に戻りました。20周年イヤーという節目の時期に、上手く言えないんですけど、神様が“これから頑張れよ”と言ってご褒美をくれたような気持ちになりました。もちろん体調なので、この先いつどうなるか、分からないのが怖いところですが。
自分を、ファンを信じて歌い続けてきた甲斐がありましたね。
続けてきて良かったです。
そういう背景も含めて、“ALIVE -The live history-”というアルバムタイトルはぴったりだと思いました。
20年歌い続けてきた中で“KOKIAはやっぱりステージだよね”って都度となく言われてきて、自分で“そうですね”と言うのは変だから、“そうですか。ありがとうございます”と答えてきましたけど、自分の中でも“そうですよね。私ってライヴですよね”というのは明確な答えとしてあったので、“ライヴが命”という気持ちを込めたタイトルがいいなと思いました。それで“生きている”とか“活き活きとしていられる場所”とか“光り輝く場所”という意味合いを込めて、この“ALIVE”に辿り着きました。
あと、ジャケットのアートワークも凝っていて素敵ですね。
カッコ良いですよね! 20周年関連のインタビューを受けている時にいろいろ振り返る機会が多かったんですけど、私の歌人生って長く続けていくことでひとつの絵を描き上げているようなところがあるとお話してきたのですが、今回のジャケットはライヴの写真や歌詞などをコラージュして、たくさんのピースを俯瞰で見ることによって“KOKIA”という人物が見えてくる、活動を通したものが見えてくるという、まさに自分で話してきた自分自身の活動、歩みをイメージしたようなアートワークにしてもらいました。初回盤は大きいサイズなので、お部屋に飾ってもらいたいですね。私は自分のCDを部屋に飾るタイプじゃないんですけど、今回のジャケットは、レコードサイズのジャケットを作るのなら、自分の部屋に飾れるようなものにしましょうよ!と最初にお願いしたんです。すごくカッコ良い仕上がりになったと思っているので、サンプルが上がってきてすぐに部屋に飾りました(笑)。
最後に“20周年”ということですが長く感じましたか?
いろいろありましたから長かったと言えば長かったと思いますけど、もう分からないですね(笑)。去年の秋にパリでインタビューを受けた時、8年振りのパリ公演だったんですけど、久しぶりだと感じなかったんです。その時、久しぶりと感じるか、そうでないかの違いは、時間の流れ、数字の大きさではなくて、人に気持ちを寄せる距離感なのかなって答えたんです。この答えはすごくしっくりきていて、毎日のことに必死で、でも思いを寄せて頑張ってきたので、これまでの20年はあっと言う間な感じがします。きっとこれからの20年もあっと言う間なのかもしれませんね。
取材:田中隆信