ロックの進化に貢献した
ムーディー・ブルースの
絶頂期の作品のひとつ『童夢』
本作『童夢』について
前述したように、彼らの69〜72年までのアルバムはどれも秀作だが、71年にリリースした本作『童夢』が日本で一番売れたので、取り上げることにした。興味のある人は他のアルバムも聴いてみてほしい。余談だが、世間が彼らに持っているプログレ的なグループという印象は、リアルタイムで彼らのことを知っている人なら頷いていただけるだろうが、フィル・トラバースの手になるジャケットのアートワークと、一連のアルバムにつけられた秀逸な邦題によるところが大きいと思う。
収録曲は全部で9曲、CD化に際して2曲が追加収録されている。全体を貫く牧歌的な雰囲気はフェアポート・コンベンションやヘロンなどのブリティッシュフォークからの影響も感じられる。また、生ギターをフィーチャーしたナンバーではCSN&Yのようなアメリカっぽいコーラスも披露しているし、ビートルズからの影響も少なくない。1曲目のプログレ的なナンバー「プロセッション」は、コンセプトアルバムの導入部として上手く機能していると思う。おどろおどろしいコーラスから2曲目のポップな「ストーリー・イン・ユア・アイズ」へとつながる部分は、何度聴いてもカッコ良い。「ゲッシング・ゲーム」と「エミリーの歌」は優しさに満ち、「生命をもう一度(原題:One More Time To Live)」や「家へ帰れない(原題:You Can Never Go Home)」は凛とした力強さが感じられる。ラストの「マイ・ソング」はドラマチックな展開を見せる名曲で、CDではこの後にボーナストラックが入っているが、絶対に「マイ・ソング」を最後に聴くべきだろう。
最後に…
TEXT:河崎直人