ロックの進化に貢献した
ムーディー・ブルースの
絶頂期の作品のひとつ『童夢』

『Every Good Boy Deserves Favour』(’71)/The Moody Blues

『Every Good Boy Deserves Favour』(’71)/The Moody Blues

ムーディー・ブルースはメロトロンやサウンドエフェクトをよく使うからか、プログレッシブロックのグループと見られがちだが、実はそうではない。彼らはあくまでも美しいメロディーを生かすために当時の先進的な道具を使っていたのであって、プログレッシブロックを目指していたわけではない。キング・クリムゾンやイエスらとは立ち位置がまったく違うのだ。今回取り上げる7枚目となる『童夢(原題:Every Good Boy Deserves Favour)』を聴けば、プログレというよりポップでフォーキーなスタンスが彼らの持ち味であることが理解してもらえるはずだ。日本では本作で彼らの人気に火がつき(オリコン7位)、他の作品も聴かれるようになり、シングルカットされた「ストーリー・イン・ユア・アイズ」は毎日のようにラジオでオンエアされていた。本作は全英チャートで1位、全米チャートでも2位と大ヒットした彼らの代表作のひとつである。

ムーディー・ブルースの初期の歩み

ムーディー・ブルースは1964年に結成された。デビュー当初は、その頃イギリスに多かったR&Bの香りがするビートグループであった。64年末に出したシングル「ゴー・ナウ!」(ソフトなR&Bナンバー)が全英1位となり一躍脚光を浴びる。しかし、同曲収録の1stアルバム『デビュー!(原題:The Magnificent Moodies)』(‘65)をリリースするものの人気は下降線を辿り、ギタリストでリードヴォーカリストのデニー・レイン(のちにウィングスのメンバーとなる)とベースのクリント・ワーウィックが脱退する。ちなみに、このデビューアルバムはサウンドが渋すぎたために売れなかったのだが、内容は良い。泥臭いブルーアイドソウルが好きな人には気に入ってもらえると思う。

グループはリーダー的存在のデニー・レインが辞めたことで存続さえ危ぶまれたのだが、彼らの代わりにギタリストのジャスティン・ヘイワードとベースのジョン・ロッジが加入し、そのサウンドは大きく変わることになる。それまでとはまったく違うグループになったと言っても過言ではなく、彼らの音楽に言及する時は2ndアルバム以降を指す場合がほとんどだ。メンバーは、レイ・トーマス、マイク・ピンダー、グレアム・エッジ、ジョン・ロッジ、ジャスティン・ヘイワードの5人で、全員がソングライティングとリードヴォーカルを担当するという才能豊かなチームである。

革新的なアルバム『デイズ・オブ・
フューチャー・パスト』

67年にリリースされた2ndアルバム『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』は、当時在籍していたデッカレコードの企画をグループ側が受け入れたかたちになったものの、彼らならではの創意工夫で新しいロックの表現がなされ、以降のブリティッシュロック界、特にプログレッシブロックの誕生に大きな貢献をしたと言えるだろう。このアルバムで彼らが取り組んだのは、オーケストラとロックコンボの融合である。今でこそクラシックとロックの融合は珍しくないが、企画モノとはいえロック界では初めてのことであっただけに驚きをもって迎えられた。ディープ・パープルの『ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ』(‘69)は、明らかにこのアルバムにインスパイアされて制作されているし、キング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』(’69)については、ムーディーズが設立するレーベルからリリースすることになっていただけに、やはり影響を受けていることは確かである。この『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』はプログレッシブロックの誕生というロックの新たな可能性を提示したロック史に残る重要作なのである。また、このアルバムはクラシックとの融合だけでなく、コンセプトアルバムとして制作されたことも重要な側面である。

OKMusic編集部

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