【インタビュー】THE SLUT BANKS、荒
々しいロックンロールと様々なジャン
ルの要素がミックスされた魅力的なニ
ュー・アルバム『NOIZ THE RIPPER』

ドラマーのカネタク脱退の危機に屈することなく彼らはHAYATO(Moi dix Mois)とTAKAURA TOMMY(ex.TEDDY)両名をドラマーに迎えて新譜の制作に入り、ニュー・アルバム『NOIZ THE RIPPER』を完成させた。THE SLUT BANKSの真骨頂といえる荒々しいロックンロール・チューンを軸にしつつパンクやオルタナ、レゲェといった様々なジャンルの要素を活かした楽曲群とロックが香る歌詞のマッチングは実に魅力的。パワフル&ソリッドなサウンドなども含めて、同作を聴くと彼らがさらなるパワーアップを果たしたことを実感できる。新生THE SLUT BANKSのメンバー4名に集まってもらい、『NOIZ THE RIPPER』についてじっくりと話を聞いた。

■イギーやエアロが自分のルーツであり大好きだったから
■今回はそういう音楽にしたいという思いがあった

――『NOIZ THE RIPPER』を作るにあたって、テーマなどはありましたか?

DUCK-LEE:ありました。俺は曲を作るときは鍵盤や弦を入れて大袈裟にするのが好きなんだけど、そういうのはやめてギターだけで成立させたいと思ったんだ。ただ、THE SLUT BANKSは1ギターだけど、そこを押し出しすぎるとすごくシンプルになってしまうので、ギタリストが2人いるようなアレンジにすることも意識した。ギターをダブルにするんじゃなくて、違うことをしているギターを左右に振って、右側で鳴っているギターがそのままギター・ソロを弾いたりとか。俺は長く音楽をやっているけど、そういう音楽はあまりやっていなかったんだよね。それで、自分は子供の頃に、あんなにストレートなロックが好きだったのに…と思って。イギー・ポップ&ザ・ストゥージスをよく聴いていたし、エアロスミスだったら『ロックス』が一番大好物だったし。そういうロックが自分のルーツであり、大好きだったから、今回はそういう音楽にしたいという思いが制作に入る前にありました。

――ソリッドなバンド・サウンドを活かしつつギターで広がりを出すという手法を採られたんですね。では、アルバムに向けて曲を作っていく中で、キーになった曲などはありましたか?

DUCK-LEE:そういうのはあまりなかったけど、「BRUSH MAN」はTHE SLUT BANKSというか、俺っぽいかなと思う。ハードだけどヘヴィメタルではなく、ラウドロックでもなく、ロックンロールな感じがあるから。メタルは嫌いじゃないけど、あまり聴いていなかったというものあって、俺が作る曲はメタルにはならない。そういう意味で、「BRUSH MAN」は俺らしいなというのがあるし、その辺りのテイストが『NOIZ THE RIPPER』の核になっているよね。
――THE SLUT BANKSならではのアッパー&キャッチーなハード・チューンは本当に魅力的です。それぞれ今作の中で、特に印象の強い曲をあげていただけますか。

ACE DRIVER:いつもと同じように今回の曲も全部好きだけど、特に好きな曲をあげるとしたら7曲目の「The Rolling」ですね。最初にデモを聴いたときから良い曲だなと思ったし、できあがったトラックを聴いたときにすごく“グッ”ときた。この曲はロックンロールでいながらエモくて、キャッチーなんですよね。歌詞もシンプルだけど、深みがあって素晴らしいし。「The Rolling」は、ぜひ聴いてほしい1曲です。

DUCK-LEE:「The Rolling」は、こういう曲は結構得意だから自然とできたという感じだった。なんか、イントロのコード進行は、いつも俺がやっているコード進行でさ。THE SLUT BANKSの昔の曲で「煙の中で」というのがあるんだけど、それと一緒じゃんという(笑)。進歩ねぇなと思いながら、“まっ、いいか”みたいな(笑)。

ACE DRIVER:コード進行は同じでも全然違う曲になっているし、コード進行とかは“DUCK-LEE節”みたいなものだから。全然、気にならなかったよ。

DUCK-LEE:本当に? 甘やかすと、またこのコード進行出てくるかもよ(笑)。

一同:ハハハッ!

TUSK:「The Rolling」は、今回のアルバムの中で一番最初にデモを聴いた気がするんですよ。だから、歌詞の書き出しが“何から始めましょうか”という言葉になっている。うちのバンドは2018年はメンバーの脱退があったり、いろんなことがあって、全国ツアーができなかったんですよ。そういう中でHAYATO(dr)と出会って、また動けるようになったときのライブのタイトルが“転がせロックンロール”だったので、それにちなんで“The Rolling”という歌にしました。“Rolling”というのはシンプルな言葉だけど、“ロックンロールとはなんぞや?”みたいなことが伝わるんじゃないかなと思って。そういうことも考えて、歌詞を書きました。今回俺の中で一番印象が強いのは、「痛み止めとアルコール」ですね。DUCKにしては珍しいタイプの曲だし、そんなに激しくもなくて。そういう曲で、これでもかというくらい“痛み止めとアルコールを”と言ったら面白いんじゃないかなと思って(笑)。最後も“痛み止めとアルコールを”と言っているという(笑)。
▲DUCK-LEE

DUCK-LEE:年齢もあって、疲れているんだね(笑)。

TUSK:そう(笑)。DUCKはこのアルバムを作るにあたって「初期衝動でいくぞ!」みたいになって、それはわりといつも言っていることなんですよ。いつも初期衝動で、そのエネルギーはすごいなと思って。俺個人は初期衝動はとっくの昔に忘れているから(笑)。そういうところで、歌詞に関しては等身大というか、あまり無理せずに書きました。だから、この曲みたいに疲れているということを歌っている曲もあれば、“もうダメだ”と歌っている曲もある。アルバムを通して、歌詞はわりと“素のまま”という感じになっています。

DUCK-LEE:「痛み止めとアルコール」の“目尻のシワさえも愛おしくなって”という言葉が50代には響くんだよな(笑)。この曲は俺も好きというか、うまく作れたと思う。昔の自分らしさが出ている気がして、そこが気に入っています。

HAYATO:『NOIZ THE RIPPER』の曲で、自分が叩いた中で特に好きなのは「HELLO MURDER」と「Trap」です。僕はタム廻しをするのが結構好きで、「HELLO MURDER」はデモの段階でそういうドラムが入っていたから、“よっしゃっ!”と思って。ただ単に16分で廻すんじゃなくて、リニア・フレーズといってキックとタムを合わせて16っぽく聴かせるパターンも混ぜたので、叩いていてすごく楽しいんですよ。もちろん、曲自体も大好きですし。「Trap」は“いてまえ!”という感じの曲で、それをちゃんとパッケージできたというところで気に入っています。

DUCK-LEE:「HELLO MURDER」も「BRUSH MAN」と同じように、俺が思うハードなロックンロールを形にしたという感じ。こういう曲をやっているバンドはいそうでいないから、どんどんやってやれ! みたいなところはあるね。「Trap」は、どうだろう? 作ったときは特になにも意識していなくて、とにかくバカみたいに速い曲を作りたかったんだ。モーターヘッドみたいな激しさのある曲がほしいと思って。
▲ACE DRIVER

――「Trap」や「イガイガ」のモーターヘッドに通じる荒々しさや疾走感は最高です。アッパーなロックンロール・バンドというイメージで、こういうアグレッシブさも併せ持っているというのは、すごくカッコいいですね。

DUCK-LEE:カッコいいよね…って、自分で言うのはどうかと思うけど(笑)。俺の中ではモーターヘッドもロックンロールだからさ。「Trap」や「イガイガ」みたいな曲は大好きだし、こういうことをやっているバンドもいそうでいないというのがあって。こういうのは多分俺にしかできないだろうというのはあるね。

TUSK:それも自分で言っちゃうんだ(笑)。「HELLO MURDER」の歌詞は、純粋に楽曲に寄り添って書いたという感じです。この曲は“トラブルメーカーここへこいよ”と歌っていて、それは自分に歌っているところもある。俺は行き場がないという気持ちが結構強かったりするんですよ。同じように感じているヤツは多い気がして、そういうヤツはTHE SLUT BANKSのライブに来て、もう全部発散しろよということを伝えたかった。ここに、お前の居場所があるぜと。そういう歌です。「Trap」は、ちょっとハレンチな歌詞ですよね(笑)。

――ハレンチというか、ハニートラップだと気づいていながら、“でも、これも結構いいかも”と思っているというのが絶妙です(笑)。

TUSK:そう(笑)。「Trap」ははっきり書いてないけど、俺の中では相手の人が実は男性だったという話なんですよ(笑)。でも、それでもいいやっていう(笑)。「Trap」は曲のスピード感から“欲望のままに”みたいなことを感じたんですよ。で、スリリングさもある。そういうところで、“良けりゃ、もう何でもいいじゃん”という感情を描きたいな思ったんです。

DUCK-LEE:キテるなぁ(笑)。今回俺の中で印象が強いというか「痛み止めとアルコール」や「見苦しいほど狂おしいほど」は、俺っぽいなと思う。もう30年以上いろいろやっているけど、30年前もZIGGYで似たような曲を作っていたんだろうな…みたいな。要は、俺のルーツだよね。そういう意味では新味はないけど、当時と違ってプレイヤーもちゃんとしてるし、俺自身ももっとちゃんとできるようになったから(笑)。自分の芯にあるものを良い形で聴いてもらえるのは嬉しいよね。
▲HAYATO

――ストレートなハードロックに知的な味わいのユニゾン・リフを入れ込んだ「me and」は独自の魅力を放っていますね。

DUCK-LEE:それは、横関敦と一緒にやったLANCE OF THRILLの影響かもしれない(笑)。狙ったわけでもなくて、自然とああいうフレーズが降ってきて、この曲に入れたら面白いんじゃないかなと思ったんだ。俺の中では「me and」は、歌詞のほうが面白い。歌詞カードには書いてないけど、“呑んで 呑んで”というところで“八戸(笹塚の呑み屋さん)で”と歌っているんだ(笑)。

TUSK:そう、お店の名前が3軒入ってる(笑)。

DUCK-LEE:えっ、3件も入っているんだ?

TUSK:うん(笑)。『八戸』と、某メンバーがよく呑んでいる『夢庵』と、小田原のほうで友達の母ちゃんがやっている『岩原』というお店(笑)。この曲はできたのが最後のほうだったから、ボーナス・トラックになるんだろうなと思っていたんですよ。それで、“これで、いっか”みたいな感じでサラサラッと歌詞を書いたら、アルバムの3曲目になったという(笑)。

DUCK-LEE:キーも変えたしね。ボーナス・トラックどころか、結構ちゃんとした曲になった(笑)。

TUSK:そう(笑)。THE SLUT BANKSが凄いなと思うのは、レコーディングするときにテイクを全然録らないんですよ。大体1発~2発勝負でOKになる。それに、「me and」もそうだけど、1回録って、歌まで入れた後に、DUCKが「このキーだと、ちょっと歌が映えないな」とか言って録り直したりするんです。今回も1ヶ月もない短期間の中で、そういうことをパンパンやった。しかも、「me and」はテクニカルなユニゾン・フレーズが出てくる。それでも、対応できるのは凄いなと思って。

ACE DRIVER:いや、元のキーに合わせてフレーズを作っていたから、キーが変わって結構大変だったんだよ(笑)。でも、がんばりました。

TUSK:がんばらないと、DUCKに叱られるから?(笑)

ACE DRIVER:うん(笑)。

DUCK-LEE:ええっ? 叱らないよ(笑)。
■良いものを作るという気持ちがいつも以上にあったから
■褒めてもらえると純粋に嬉しいんだよね

――今はデジタルを使って同じテンポのままキーを変えることもできますが、そうではなくて最初から録り直すのはさすがです。さらに、レゲェ・チューンの「病んでんのさ」も、アルバムのいいフックになっています。

DUCK-LEE:これも、なんとなくというか。“レゲェやっちゃうぜ!”という感じではなくて、こういうのができたんだけど…みたいな(笑)。レゲェとかスカは得意ではないけど、すごく好き。ギターはちょっと大変だったみたいだけどね。

ACE DRIVER:結構大変でした。雰囲気ものは難しいんですよね。練習でピロピロ弾いているといい感じなんだけど、いざ録りましょうとなると、“あれっ?”ていう。なんか演奏が固かったりして、味気ないんですよ。中々良い感じのニュアンスが出せなくて、Aメロ/Bメロは30回くらい弾きました。

DUCK-LEE:この曲はドラムとベース、ギター1本だけという形にしたかったんだ。ちょっと前の俺だったら、こういう曲でも多分弦とかを入れていたと思う、そういうふうにするのが好きだから。でも、今回は最小限の音数で成立させたかったし、しかもギターは埋めないようにしてほしかった。それがムズイんだよね。

ACE DUCK-LEE:そう。DUCKさんに「さっき録音する前に弾いていたのは良かったじゃん。なんで、ああいうふうに弾けないの?」と言われて、「えっ? 適当だったから覚えてないです」という(笑)。

HAYATO:「病んでんのさ」は、僕の中でも印象が強いですね。この曲は僕はドラムを叩いていないんですけど、デモは聴いていたんです。レコーディングして完成形になったのを聴いたら全然違うものになっていて、“ええっ!? こうなっちゃの?”と思いました(笑)。もちろん、“良い意味で”ですよ。自分が参加していない曲は結構そういうことがあって、すごく楽しかったです。

TUSK:「病んでんのさ」の歌詞は、もうタイトルのままですね。病んでいる感じです。この曲はHAYATOも言ったようにアレンジがちょいちょい変わったり、構成も変わったり、歌の入る感じも変わったりというふうに、結構二転三転したんです。でも、最初に聴いたときに“ダーン・ダーン・ダダーン”というところで、“病~んでんのさぁ~”という言葉が浮かんできて、それをそのまま活かしました。

ACE DRIVER:ええっ、そんな簡単な感じ? キング・クリムゾンとか、イエスとか言いなよ(笑)。

TUSK:ゴメン、そういうのじゃない(笑)。最初に“病んでんのさ”というキーワードが出てきて、そこからイメージを膨らませて書いた歌詞です。
――今作はいろいろなイメージが膨らむ歌詞が多くて、それも魅力になっています。もうひとつ、『NOIZ THE RIPPER』はタイムが3分を切ったコンパクトな曲が多いことも特徴ですね。

DUCK-LEE:それは、もう基本だから。無駄なものは全部省いちゃうという。コンパクトなサイズで物足りなさを感じさせないというのが好きなんだよね。

TUSK:DUCKは、やりくり上手だから(笑)。曲を短く纏めるのは、実は難しいことなんですよね。いつも絶妙だなと思っています。

DUCK-LEE:でも、まあテンポも速いから。

ACE DRIVER:えっ、そういうことじゃない気が……(笑)。

DUCK-LEE:そうか(笑)。いや、4~5分の曲とかは、聴いていると疲れちゃうからさ。俺が一番嫌いなのは、1曲目にシンセとかを“ブワァーン”といわせたイントロ・ダクションをつけるパターンなんだ。“ほらほら、この後大袈裟なのがきますよ”みたいなバンド多いじゃん。俺、あれはムリ(笑)。
▲TUSK

――構成がしっかりしていて、ギター・ソロもあって、3分以内という凝縮感が光っています。では、続いて『NOIZ THE RIPPER』のプレイ面の話をしましょう。今作を録るにあたって、それぞれプレイや音作りなどでこだわったことは?

HAYATO:今回僕がレコーディングで参加したのは7曲目から11曲目までなんですけど、DUCKさんは手数の多いドラムが好きなんですよ。で、いざ録りの段階になったら自分の引き出しが結構少ないことに気づかされたというのがあって、それがプレイ面ではちょっと難しかったです。DUCKさんは1小節丸々だったり、2小節丸々だったりのフィル・インが好きなんですよね。僕はそういうアプローチはあまりしたことがなくて、1小節くらいなら叩けるけど、2小節だとすぐには対応できなくて。長いフィル・インは組み立てを考える必要があって、それで結構苦労しました。

DUCK-LEE:今回のドラムに対する注文は、“とにかく叩き倒せ”だったから。

ACE DRIVER:キース・ムーンになれと(笑)。

DUCK-LEE:そう(笑)。HAYATOは元々メタル畑のドラマーだから、最初はそれでちょっととまどったみたいだった。でも、俺が言っていることをわかってくれて、良いドラムを叩いてくれました。

HAYATO:いや、まだまだです。あとは、レコーディングするときは勢いが大事。なので、録るときは息を止めて叩き切るみたいな感じでした。イントロが始まる前に大きく息を吸って、息をとめて“バァーッ!”と叩くという(笑)。今回は、そういうレコーディングでした。

DUCK-LEE:ベースは結果的にそうなったんだけど、意外に弾き倒している。ルート弾き全然してねぇな、俺…みたいな(笑)。もう動きまくって、ラインばっかり弾いている。まあ、そういうベースが好きなんだよね。

――DUCKさんらしいです。ベースのフレーズは、いつもどんなふうに考えているのですか?

DUCK-LEE:思いつき。レコーディングの現場で、ドラムがこう叩いているならベースも合わせようみたいな感じが多いんだ。ドラムを録るときは細かいことは言わずに、とりあえず好きなように叩いてもらうから、事前にベースを考えても意味がないんだよね。だから場場で考える…というか、その場の感覚で弾く。で、気がついたら弾き倒していたという(笑)。しかも、その場の雰囲気で弾いているから、自分でもコピーできなかったりするんだ(笑)。1コーラス目と2コーラスで違うことを弾いていたりするから。
▲TAKAURA TOMMY

――ロックですねぇ(笑)。凝ったフレージングは聴き応えがありますし、曲によってベースの音色を変えていることもポイントです。

DUCK-LEE:いや、それは違うんだよ。弦が違うの。俺はずっとダダリオ弦を使っていたんだけど、今回ロトサウンドを使ってみたんだ。最初は“安心のダダリオ”で弾いていたけど、俺はクリス・スクワイアが好きで、彼はロトサウンドを使っているから、ちょっと試してみようと思って。そうしたら、同じゲージなのにロトサウンドのほうがバキバキした音がして“乱暴感”があるし、野蛮な感じがするんだよね。それがすごく良くて、全部ロトサウンドで弾けば良かったなと思って。今回そういう発見があって、それは今後につながると思うよ。

ACE DRIVER:今回はリーダー(DUCK-LEE)のリクエストで、録りのときはギターを爆音で鳴らしてくれと言われまして。しかも、アンプの前で弾けと言われたんです。

――だから、ハウリまくっているんですね。

ACE DRIVER:そう(笑)。もう、弾くのをやめるとハウるという(笑)。ちゃんとミュートして“ジャン・ジャン!”と弾いても“ジャン・ピィーッ!・ジャン・ピィーッ!”みたいな(笑)。ほぼ全曲をそういう状態で録ったから、なんかもうすごいことになっている(笑)。それは、初めてのことだったんですよね。

DUCK-LEE:TDのときに、エンジニアに「ギターのハウリング、どうします?」と聞かれて、もう全部活かしてくれと言いました(笑)。

――あのハウリングが“ヤバさ”を増幅させていますよね。それに、冒頭で話が出たツインギターを思わせるステレオ感を活かしたバッキング・アプローチや効果的なエフェクターの使い方なども聴きどころです。

ACE DRIVER:今回はバンド外の音を入れないということで、そうなるとギターの影響力がすごく大きくなります。それで、リーダーといろいろ話し合ってアドバイスをもらったりしながら、どんなギターにするかを丁寧に決めていきました。パッと聴くと大雑把に感じるかもしれないけど、実は結構練り込んだギターになっています。音色に関しては、ファズを結構使いましたね。

DUCK-LEE:“結構”というか、ガンガン使ってる(笑)。

ACE DRIVER:そう(笑)。ただ、エレクトロ・ハーモニックスのグラフィック・ファズと、マーシャルのガバナーというディストーションを使い分けています。ファズといってもいわゆるスモーキーなファズ・サウンドではなくて、身がギュッと詰まっていて、ソリッドなドライブ・トーンを出したくて使ったんですよね。それが、うまくいったと思います。

――ギターの音も本当にカッコいいです。それに、勢いとテクニカルな面を併せ持ったギター・ソロも聴きどころです。

ACE DRIVER:いや、僕はテクニックは全然はないです。勢いのみ(笑)。それだけで、ずっとやってきていますから(笑)。

――でも、「イガイガ」などで、速弾きもされていますし。

ACE DRIVER:やっていますけど、速弾きでいったら横関さんに敵うわけないし。

DUCK-LEE:いや、彼はなんていうか、もう伝統芸だから(笑)。

ACE DRIVER:いやいや(笑)。それに、僕がこのバンドでやるべきなのはストゥージーズみたいなギターとか、デッド・ボーイズのチーター・クローム、バックヤードベイビーズみたいな方向性のプレイだと思うんですよ。だから、テクニックや速弾きで押す気はない。ただ、パンクとか初期のKISS、ラモーンズが大好きだけど、同時にマイケル・ランドウとかスティーブ・ルカサーとかも聴けちゃうんです。日本人だと土方(隆行)さんとか、大村憲司さん、鈴木茂さんとかが大好きだし。そういうふうに幅広く好きなところが出ているかなという気はしますね。

TUSK:歌は、今回いつもと違うのはDUCKと話した中でのチョイスですけど、コンデンサー・マイクではなくて、細っちいリボンマイクというのを使いました。それを使ってザラついている歌を、さらにザラつかせていこうということで。それがハマって、今回は歌の質感が今まで以上に良くなったというのがありますね。歌録りは相変わらずテイクは少なめだったけど、今回コーラスでNao君(首振り Dolls)が参加してくれたというのがあって。彼を大フィーチュアして、完成にたどり着きました。

――ハードなサウンドとワイルド&セクシーなボーカルの取り合わせは本当に魅力的ですし、「涙をそっと流しているかい」や「The Rolling」「人形姫」「病んでんのさ」といった曲のエモーショナルな歌はすごく聴き応えがあります。

TUSK:本当ですか? 自分の歌は……どうなんだろう……。

DUCK-LEE:困ってるね(笑)。

TUSK:自分で自分の歌を分析したことはないから(笑)。ただ、歌詞が当然つくわけで、そうすると言葉のほうに重心がいくんですよ。ACEのギターと同じように、歌唱力だったり、どれだけ高い声が出せるかという方向にはいかない。それがDUCKとうまくやっていける理由でもあるんですよね。あと、エンジニアさんとの相性というか、俺はレコーディングの雰囲気をすごく気にするんですよ、気が小さいから。そういう中で、いつも良い雰囲気でやらせてもらっているので、すごく伸び伸びと歌える。それも大きいと思います。

――皆さんの話を聞くと、プロダクトを丁寧にしていることがわかります。「アッパーなロックンロールを楽しくやろう!」ではなくて、細やかに作り込んだうえでハウリングを活かしたり、1~2回で録るようにしてロックンロールさせるというパターンですね。

ACE DRIVER:そう。気楽にロックしているようで、実はそうじゃない。その辺は、リーダーの匙加減が絶妙なんですよ。

DUCK-LEE:そこはギリのところがあって、どっちを取るか…みたいなことは結構悩むけどね。今回は、ギリギリで良いほうに落とし込めたかなと思う。

――ギリギリではなくて、良質なロックンロール・アルバムに仕上がっています。

DUCK-LEE:そう感じてもらえたなら良かった。今回のアルバムは、個人的に思い入れが強いんだ。タケというTUSKの同級生で、ずっとマネージャーみたいなことをしてくれていた人がいるんだけど、その人が去年の10月くらいに亡くなったんだ。俺らは彼がいないと本当になにもできなくて、彼が病気になってしまったからライブもできなかった。それで、どうしよう、どうしようと言ってるときに、レコード会社のディレクターが「やりましょうよ」と声をかけてくれた。俺らみたいな大して売れるわけでもないバンドに、やろうと言ってくれたことが本当にあり難いし、タケに恩返しもしたかった。そういうところで、良いものを作らないといけないという気持ちがいつも以上にあったから、褒めてもらえると純粋に嬉しいんだよね。

――年季が入ったロックの魅力を実感しました。『NOIZ THE RIPPER』のリリースに伴って5月から始まる全国ツアーは、どんなものになりますか?

DUCK-LEE:どうだろう? まあ俺なんかは、イチローとは違うからさ。イチローはあの年齢まで野球を続けて誰もが凄いと思うけど、俺は“えっ、まだやってんの?”みたいな感じだろうから(笑)。でも、長く続けていることで得られるものや、見えてくるものは沢山あるから、続けられる間はやり続けようと思っている。応援してくれる人がいる限りはがんばりたいと思っているし、今度のツアーは新曲も多くて新鮮さを感じてもらえると思うし。なので、楽しみにしていてほしいです。

ACE DRIVER:さっき話が出たように、去年タケピーが亡くなってしまったこともあって、『ダイレクトテイスト』のツアーはあまりできなかった。今年はがっちりライブができるから嬉しいし、そういう思いを各地で炸裂させたいですね。HAYATOと初めて一緒にツアーを廻るのも楽しみだし。いいツアーになる予感がしていて、今は早くツアーに出たいという気持ちでいっぱいです。

HAYATO:THE SLUT BANKSに加入して、これまで4本ライブをしたんですけど、1本1本がしんどくて(笑)。なにしろ、自分の前にレジェンドが3人立っているわけですよ。そういう緊張感がすごいし、フィジカル面の過酷さもある。でも、ありがたいのはTHE SLUT BANKSのファンの皆さんはすごく温かくて、それに本当に救われているんです。なので、皆さんにちゃんとお礼ができるように、がんばって毎回いいライブをしてこようと思っています。

TUSK:我々も呑んで大暴れするので、お客さんも呑んで大暴れしてほしい。とりあえず、俺らのライブに来てもらえば、スカッとすることは保証します。なので、友達を沢山連れて遊びにきてください。

取材・文●村上孝之
リリース情報

『NOIZ THE RIPPER』
KICS-3783 ¥3,000+税
01.BRUSH MAN
02.イガイガ
03.me and
04.痛み止めとアルコール
05.見苦しいほど狂おしいほど
06.涙をそっと流しているかい
07.The Rolling
08.人形姫
09.丸こげ
10.Trap
11.HELLO MURDER
12.病んでんのさ
13.美貌
14.かったりぃ日々抜け出して

ライブ・イベント情報

George Fes' vol.1 ~RUDEE and George Birthday Party 2019~
2019年5月1日(水) 千葉柏PALLOZA

“切り裂きノイズ” ツアー
2019年5月11日(土) 吉祥寺ROCK JOINT GB
2019年5月17日(金) 新潟GPブラック
2019年5月18日(土) 長野J
2019年5月19日(日) 高崎FLEEZ
2019年5月25日(土) 名古屋UPSET
2019年5月26日(日) 神戸ART HOUSE
2019年5月28日(火) 広島SECOND CLUTCH
2019年5月30日(木) 福岡 DRUM SON
2019年6月1日(土) 岡山DESPERADO
2019年6月2日(日) 大阪KINGCOBRA
2019年6月9日(日) 仙台FLYING SON
2019年6月14日(金) 横浜ベイシス
2019年6月15日(土) 稲毛K’sDream

THE SLUT BANKS『NOIZ THE RIPPER』発売記念 アコースティック・ミニ・ライヴ&CDサイン会
2019年5月12日(日)20:30 START
会場:タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース

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