Rhythmic Toy Worldが今だから語るこ
と、鳴らす音——最新作へ至る道程を
辿るロングインタビュー

昨年メジャーデビューを果たしたRhythmic Toy Worldが、再び活動の拠点をインディーズに戻すことを発表した。それを受けて、4月3日にリリースされた最新ミニアルバム『PLACE』はバンドの古巣であるインディーレーベルSTROKE RECORDSからのリリースになった。なぜ、リズミックはメジャーからインディーズに戻る決断を下したのか。以下のテキストでは、その理由と経緯、そこで起きた変化を赤裸々に話してくれた。ボーカルの内田直孝がブログに綴っていることと重複するところもあるが、改めてメンバー全員が揃う場所で話してもらうことで、いまのリズミックの意思が伝わればと思う。そのうえで、このタイミングだからこそ生まれた『PLACE』という作品の衝動を感じてほしい。
——メジャーにいたのは1年間ぐらいですよね。
内田:そう、ちょうど1年でした。実質的には8ヵ月ぐらいかな。
——内田くんのブログも読んだけど、改めて今回インディーズで活動しようと思った理由から聞かせてください。
内田:現実的な部分から話すと、バンドを続けていくためのスタミナを考えたんですよね。平たく言えば、お金のことなんですけど。インディーズでは、僕らはレーベルと事務所が同一の社内にあったんですよ。でも、メジャーになったことでレーベルとしての収入が会社に入ってこなくなった結果、バンドをまわしていく運営費が減ったわけですよね。メジャーでアルバムも出したし、ツアーもまわったし、お客さんも盛り上がってくれたけど、もっとめちゃくちゃ大きく収益が上がらないと、メジャーという所ではRhythmic Toy Worldは運営ができないんですよ。
お金のために音楽をやるわけじゃないけど、僕らはちゃんとお金を生み出せる音楽をやっていかなきゃいけないところもあるんです。4人だけじゃないから。事務所とか、たくさんの人の生活が僕らにかかってるから、そこを誤魔化して続けるわけにはいかない。それはバンドの息切れにつながるなっていうことを、みんなで話したんです。
——今回の決断はすごくリズミックらしいけど、メジャー以降の状況が決して悪くなかったことを考えると、そんなに性急に答えを出す問題でもないような気もします。
内田:そうなんです。状況がガーンって悪かったら、もう少しわかりやすい話し合いができたんですけどね。そうなったら、なんとか自分たちでやれる方法を探しましょうってなるけど、このまま行くって決めるなら、このままでもいい状況ではありましたね。
岸明平:だからミーティングは何回もやったよね。
——5年後、10年後のバンドのことを考えたときに今回の決断だった。
内田:そう。「インディーズに戻ります」っていうことを決めて、事務所の人たちがビクターに頭を下げにいってくれたんです。
——で、もうひとつの理由として、「やりたい」と思ったことに対して瞬発力で動いていけないことが多くなった、というのもありましたね。
内田:もちろん、みんなで算段を立てながらやっていくやり方もめちゃくちゃかっこいいし、すごいことだと思うんです。でも、いかんせん僕らはそういうことをできる人がいないんですよ。
——さっきの撮影でも「これ面白い!」「やっちゃおう!」っていうノリでしたもんね。
岸:そうそう、そのときに面白いものをやりたいから。
内田:誰かがふざけたら、「お、それのほうが面白くない?」ってなったりするから。結局そっちのほうが僕らに合ってるなっていう感じですね。僕らが楽しくないと、見てる人も楽しくないだろうし。その瞬発力みたいなものは自社で完結してるほうが速いんです。
——メンバーはこの提案に対して、どう受け止めました?
磯村貴宏:最初はわからなかったですね。1年前、僕ら自身がメジャーにいくことを決めたわけだし、そこに居続けることもかっこいいじゃないですか。でも、内田もブログで書いたように、関わってくれる人の顔が見えることが一番なのかなって思ったんです。メジャーに行ってから、関わってくれる人が本当に増えたんです。そこには僕らが見えてない部分もあって、その見えない部分が不安だったというか。「あ、そういうこともしてくれてたんですね……」みたいな。インディーズのチームは少人数だから、実際いっぱいいっぱいなんですよ。でも、だからこそチームの強さが出るんですよね。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
——岸くんは?
岸:僕はメジャーでもインディーズでもやることは変わらないから、別にメジャーのままでいいじゃんって言ってたんですよ。でも、俺らだけじゃない。関わってくれた人たちを大切にしたいっていう話になったときに、そこに共感できたんです。
須藤憲太郎:ただ、僕らをメジャーに誘ってくれた人に恩返しできてないから、そこに対して、「どうしよう?」っていうのもあったよね。そこは、いつか恩返しができるようにがんばりたいってことしか言えないけど。やっぱりバンドをやっていくなかで学んだのが、人との関係性が大事だっていうことなんですよ。だからちゃんと僕らとつながって、応援してくれる人を大切にしたかったんです。
——O-EASTでリズミックがメジャー発表したときには、ファンの人たちが「おめでとう!」って喜んでくれたじゃないですか。そのことは頭をよぎりましたか?
岸:そこはすげえ話しました。「お客さんを裏切ることになっちゃうかもしれない」って。
内田:あれは大きかった。
——あの「おめでとう!」をくれた人たちには、誤解してほしくなかった?
内田:あれを読んだうえで誤解されるなら、それでいいんですよ。でも、こっちが何も言わなかったら、ファンの人たち何もわからないし、納得できないじゃないですか。
——いろいろな憶測が飛びますよね。メジャーでどんな酷い目にあったんだ!?って。
一同:あはははは!
磯村:ケンカ別れしたんじゃないかとかね。
内田:全然そんなことはないけど、いま思えば、あの「おめでとう!」を無碍にしちゃいけないから、赤裸々にブログを書いたんだと思います。信じてほしかったんです。僕らの気持ちも、決断も、この先も。なるべくすべてに相違がないようにしようと思ったんですよね。
須藤:話し合いの中では、メジャーをやめたっていうことを、わざわざファンの人に伝えなくてもいいんじゃないかっていうことも考えたんですよ。
岸:そういう選択肢もあったね。
内田:でもCDのパッケージには、どこから発売されてるかが書いてあるから、もしそこで知ったら、僕らが隠してたとか、騙してたみたいなことになる。Rhythmic Toy Worldはそれをやっちゃダメだろうっていうのはありましたね。
——本当にそう思います。
内田:だから全部書くことにしたんです。ちょうど10周年っていうタイミングでもあるから、この機会に自分たちの生い立ちからバンドを結成したストーリーも書いたんです。
——話を聞けば聞くほど、今回の決断は「リスミックらしいなあ」っていう一言に尽きますね。ちなみにインディーズに戻ったことで感じた変化はあります?
内田:これは体(てい)が悪かったら書かなくてもいいんですけど、あのままメジャーで出してたのと、いまの『PLACE』だったら、こっちのほうが全然いいと思いますね。
——どうして、そう思うんですか?
内田:やっぱり作るときの意気込みと気合いが違いましたね。
岸:それは間違いない。
内田:今回、『軌道上に不備は無し』(インディーズ1stアルバム)を出すつもりで作ったんです。まだ何も成し遂げてないけど、なんかすげえ自信だけはあった、あのときのイメージですよね。「やべえだろ?」みたいなものを作りたくて。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
——初期衝動が詰まったような。
須藤:だから、今回はレコーディングの仕方も変えたんですよ。竿隊は自分たちでラインをとってるんです(マイクを通さずにケーブルから直接録音するやり方。より安定した音を録ることができる)。それをデータでエンジニアさんに送るっていう流れですね。いままではエンジニアさんのところに行って、その場で弾いたのを録ってたんですけど。
岸:そうすることで、ディレクションも自分らでやれるんですよ。
須藤:結果、4曲目の「未来へのセッション」の頭のスラップとかも、うっちー(内田)と一緒に作ったんですけど、すごく自分のなかにある衝動を表現できたんです。
岸:自分も同じですね。普段だと、レコーディングのときに、全部のフレーズを考えたあと、練習しないといけなかったたんですよ。そこで、きっちり演奏する。でも、今回はフレーズを作りながら録れたから、いままで以上に勢いを出せたんですよね。
須藤:めちゃくちゃ大変だったけどね(笑)。
岸:みんなで朝までLINEを交換しあって。「できた!」みたいな。
須藤:僕、事務所に3日間泊まったんですよ。
内田:須藤くんは、ずーっと泊まり込みでやってたから、朝起きたら何通もLINEがきてて。3〜4時ぐらいに「迷走中」「迷いの森に入っています」とか。
岸:「リズムの世界に入っています」とかね(笑)。
内田:で、2時間後ぐらいに「なんか掴めてきた気がします」とか。それで、エンジニアに確認するんですよ。そしたら、めちゃくちゃダメ出しされて。
須藤:「全然走ってるね」って……。
内田:俺のところにもエンジニアさんから連絡がきて、「須藤くんは何をしてるんですか?」。
一同:あはははは!
内田:だから俺も「いや……なんか、昨日の夜中に“迷いの森に入っています”って言ってたし、たぶんあんまり寝てないから、ズレてるかもしれないです」とかフォローして。で、そのエンジニアさんのダメ出しを須藤くんに伝えるのは辛かった。「相当ヤバいって言われてるから、ちょっとがんばって!」って。そしたら、須藤くんは「また今日も泊まる」みたいな。けっこう顔が死んでたもんね(笑)。
岸:ヤバかった。
——要するに、それぐらい今回のアルバムに賭ける熱量が高かったっていうことですね。
内田:そう。中途半端なものは作れないっていう気持ちはありましたね。レコーディングの方法を変えたのも、そういうダメ出しとか、厳しい意見をもらいながらやりたかったからなんです。最初から全部OKになるなら必要ないわけじゃないですか。
岸:曲のアレンジもギリギリまでやって、納得のいくものにしたかったんですよね。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
——サウンド感としては、シンプルに4人の演奏を生かした曲が多いですね。
磯村:そのなかに直球ストレートだったり、珍しくテクニックを詰め込んだ曲もあったりして、けっこう極端なことはやってますね。
内田:「パドル」は(弾き語りだから)誰もいないしね。
磯村:けっこう曲の候補があったんですよ。内田が産卵期で、めちゃくちゃ曲があって。だから今回、同時に内田のソロも出してるんです。
——『PLACE』と同じ日に、内田くんのソロデビュー作『Adversity is the first path to truth.』もリリースされますね。
磯村:あの作品があったのも良かったんです。「パドル」は、内田ひとりで歌ってるけど、ちゃんとリズミックとしての内田直孝らしさが出せてる。ソロで弾き語ってるのと、バンドとして弾き語ってるのとは、同じ弾き語りでも違うんですよね。
——制作の雰囲気は、全体的にどんな感じだったんですか?
磯村:楽しかったかな。特に「ネバギバ」とか。
——イントロからリズミックだ!っていう勢いのある曲ですよね。
磯村:これ、ギリギリまでアレンジの方向性が全然違ったんですよ。
内田:最初は仮タイトルが「熱海」だったよね。「カルフォルニア」とか。
磯村:いちばん最初は洋楽だったんだよ。
岸:あ、そうだ。
磯村:めちゃくちゃコテコテにかっこいい洋楽を作ってたんです。エモ系の。それをやったときに、スタジオでみんな無言になったんですよ。
岸:「俺らのお客さんはこれを求めてるのか?」みたいな。
内田:で、(プロデューサーの川原)祥太さんに言われたんだよね。「お前ら、大人になりすぎてる。高校の軽音部の1年生がやれることをやれ!」って。
——祥太さん、さすがですね。
磯村:そうそう。「初めてギター、ベースを弾いた、ドラムを叩いた、初めてバンドで歌ってるみたいなイメージで作れ」って。
内田:って言われたらもう、アンプから音が出てるだけで最高っていう話じゃないですか。
岸:それだけでテンション上がるっていうね。そういう役になりきったら、自然とこういう音になっていったんです。それが「熱海」。俺ら4人が熱海に行くときのドライブでかけたい曲っていう——高校生はドライブできないけど(笑)。
内田:まあね。それにかっこいいほうの「カルフォルニア」は、僕たちがやらなくても、他の人がやってくれる。でも、「熱海」は俺らしかやらねえっていう。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
——「ネバギバ」はレコーディングの最初のほうだったんですか?
須藤:いや、ギリギリ最後のほうかな。
内田:もともとの曲はちょっと前からあったんですよ。今回のレコーディングに本腰を入れる前からあって。もともといまに近いかたちだったんです。
——それがレコーディングの過程でかっこよくなっちゃったけど、戻したっていう。
磯村:「かっこよくなっちゃった」って……。
須藤:かっこいいのはいいことなのに(笑)。
内田:まあ、でもそういうことですね。
——それ、実は今回のインタビューで聞きたいと思ったところだったんですよ。音楽シーンって、良くも悪くも、いままで誰も聴いたことのなかったような新しくてかっこいい音楽が注目されるじゃないですか。
全員:(うなずく)
——最近では海外のポップスの影響を受けたジャンルレスなバンドも増えてるし。でも、なぜリズミックはそうじゃないところを選び続けるのかを知りたい。
磯村:え!? 俺らが一回いろいろ試してみてるのがバレてるんですか?
——いや、わからないけど、たぶんロックバンドをやってたら、いまシーンで流行ってるものは無視できないでしょう?
内田:うん、ぶっちゃけると、一度やってみてはいますね。そういうのもわかってないとダメだから。でも、不思議と「かっこいいー!……けど」ってなるんですよ。
岸:モヤッとするんだよね。
内田:それは、たぶん10年バンドを続けてきたからの感覚だと思うんですよ。もし俺らが結成して1年目とかのバンドだったら、「かっこいい!やろう!」ってなるんですけど、「かっこいい!……けど、このあとにライブで何の曲やる?」ってなる。「この曲のあとにやる曲なくね? じゃあ、この曲はライブでやらなくね? それダメだよね」っていう。
——ライブが判断基準なんだ?
内田:そう、幽霊部員はいらないんですよ。やべえ新人を入れたいから。
——部活に例えるとね(笑)。
内田:うん、フルアルバムであれば、たまに幽霊部員も入れますけどね。珍しくそういう曲をライブでやると、お客さんは喜んでくれるし。でも、やっぱり自分たちがテンション上がることが大事なんですよね。俺たちはライブバンドだから。
——結局、一緒に時間を重ねてきた4人だけが鳴らせる音を信じてるんでしょうね。
内田:それが最高だと思っちゃうんです。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
——そして内田くんの歌詞はけっこう変わりましたね。
磯村:ストレートですよね。
内田:それは理由が明確なんですよ。前までは、この曲は10代に聴いてほしいとか、そういうテーマがあったんです。狙う層があったんですけど、それをやめたんです。自分の同世代が聴いて「いい!」と思うものを書こうとしたんですよね。たぶん30歳になったことが大きいんだと思います。自分が10代のときに、30歳の人から「お前ら、聴け」って言われても、響かなかったなと思って。でも、自分に近い年の人に言われたことだったら「俺もやれるかも」って思えた。だから、作詞の精神年齢は上がりましたね。
——それで10代に届かなくなるのでは?っていうことは気にしなかったんですか?
内田:うーん………いや、言われてみたら、全然なかったですね。その不安は。何だろう……本気だから?かなあ。本気で自分の同世代の人に届けたいって思ってたから、「他のところに届かないかも?」って思ってる暇がなかったんですよね。
——さっき、ちょっと意地悪な聞き方をしちゃったんだけど、私は、内田くんがそういう書き方をしても、10代に届かなくなるとは思ってないんですよ。
内田:うん、そうだと思います。昨日、学生さんがやってる媒体の取材があって、大学2年生の子と話したんです。軽音部の子で、けっこう前から僕らのことを聴いてくれてたみたいなんですよ。その子に「今回のアルバムが一番好きです」って言われたんです。
須藤:へぇ。
内田:それにびっくりしたんですよ。で、「君たちに向けてないんだよね」って言ったら、言ってる内容が自分に置き換えられた、と。いまの自分の現状だったら、バイトだなとか。「すごく力強くメッセージを届けてくれてるのが曲から伝わってきたから、僕は好きです」みたいなことを言ってくれて。
——それが答えですよね。もともと内田くんが10代に向けて書いてたものも、実は上の世代にも届いてたわけだし。
内田:うん。僕らのお客さんは意外と年齢層が広いんですよね。年上の人たちもけっこうライブに来てくれて、“Team J”っていう人たちがいるんですよ。
——Team J?
内田:僕ら、「Team B」っていう曲があるじゃないですか(Bは所属事務所=TeamぶっちぎりのB)。そこから「私たち、チーム熟女だから、“Team J”っていう曲を作って」って言われるんですよ。
——あはははは!
内田:その人たちもすげえ楽しそうなんですよ。「私たち、おじさん、おばさんは若い子たちに混ざって大丈夫かな? 邪魔にならないかな」って言いながら、自発的にサークルみたいなのを作りはじめてて。そもそも、そういう年齢の人たちにも届いてたんだなっていうことを考えると、誰に届けたいかなんて気にしなくてよかったんですよね。
——その意識の変化があったから、「2019」みたいな曲が書けたんだと思います。
内田:問題作ですよね(笑)。
磯村:僕と須藤くんは、「2019」の歌詞ができたときに一緒に事務所にいたんですよ。で、「歌詞ができたから読んで」って言われて。読み終わったとき、ちょうど内田がトイレに行ったから、ふたりで「うっちー、なんかあった? 大丈夫?」みたいに顔を合わせたんです。寂しい気持ちになる歌詞だったんですよね。切れそうな裸電球の部屋にひとりでいるイメージ(笑)。それで思い出したのが、「輝きだす」の歌詞で。自分の弱い部分を全部出してるけど、だからこそ歌える希望があるんですよね。
内田:たしかに「大丈夫?」って言われた。きっちゃん(岸)は「めっちゃ良いじゃん! 現代を生きる人には響くよ」みたいなことを言ってくれたよね。
岸:いまの時代のことを歌ってるからね。
内田:でも、須藤くんと磯くんに「こんなことを考えてバンドをやってるんだ」って言われたとき、心の中ではすげえガッツポーズしたんですよ。いままで、そんなこと言われたことなかったから。やっと僕が隠してきた部分を言語化できたんだって、ひとつ殻を破った感じがして、内心すごくうれしかったですね。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
——歌詞でもうひとつ、たとえば<まだやめらんねえ音の鳴る方へ>って歌ってる「未来へのセッション」みたいに、今作は「何クソ!ここからだ!」みたいな歌が多いですね。
内田:反骨精神ですよね。これは「とおりゃんせ」を世に出したときに近いなって思ってます。あれがRhythmic Toy World流の反骨心を初めて世の中に提示したときだったんですよね。でも、「この世の中クソだぜ!」とか「こんな世界なくなればいいんだ」みたいな反骨ではないんです。理不尽なこといっぱいあるし、上手くいかないことだらけだし、明日起きたら世界が変わってたらいいのに、みたいな反骨心。そういうのからちょっとだけ踏み込んだエゴが出てますよね。「なんで俺を選ばないんだ!」みたいな。
——「クリティカルヒット」とかね。
内田:うん、あれはジャイアンみたいな歌です(笑)。
——最後に今回のアルバムタイトルを『PLACE』にしたのは?
内田:これはメジャーからインディーに戻るときに、ずっと僕らがやってきた古巣でこれからもやっていきたんだ、ここが俺たちの居場所なんだっていうものもあるし。「クリティカルヒット」の歌詞にもあるけど、僕らは届くためにやってるんじゃなくて、届くやつのためにやってるんだっていう気持ちだから、ちゃんと届いたやつの居場所になりたいっていうことですね。僕たちの曲に助けられた人には、僕たちに縋ってほしいんですよ。それぐらい思ってくれるやつの絶対的な居場所になりたい。「ネバギバ」の歌詞に、<響くすべてが君に贈るエールだ>っていうフレーズがあって、応援歌っていうのは、「これは応援歌ですよ」って提示されても、何も響かなければ、応援歌じゃないんですよ。でも、バラードでも、ふざけた曲でも、その曲を聴いて、ワンフレーズでもグっとくる瞬間があれば、それがその人のエールソングだと思うんです。そのワンフレーズを心の拠り所にしてほしい。そういう意味合いを込めて、『PLACE』っていうタイトルにしました。
——わかりました。今回話をしてて、メジャーで取材したときより、なんとなくメンバーが饒舌というか、たくさん喋ってくれるなって思ったんですけど。
一同:あはははは!
内田:それ太字でお願いします。
岸:インタビュアーの発言が見出しになるっていう(笑)。
内田:たぶん気を遣ってたんですよね。いろいろビクターの人にやってもらってるのに、僕らの発言ひとつで悪いほうに変わっちゃうこともあるじゃないですか。僕らが話したことで、何か違和感が起きてたらと思うと、何も……何も言えないことはないですけど、ちょっと引っ掛かりがあったんでしょうね。
磯村:あとは何か、気負ってたんでしょうね。
内田:そう、俺らは変に意気込むとダメなんです。
須藤:それもどうなの!?(笑)

取材・文=秦理絵 撮影=風間大洋
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋

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