2インタビュー 最新作『生と詩』が
映し出す4ピースバンドの姿、そこへ
至る道程は

2のニューアルバム『生と詩』は、“本当の意味での4ピースの始まり”を刻んだ作品だ。それぞれの前のバンドでの経験を踏まえて、“2度目の初期衝動”を鳴らしたのが、ファーストの『VIRGIN』とセカンドの『GO 2 THE NEW WORLD』だったのに対し、本作には、この4人で音を鳴らすことの意味を改めて問い直した日々が、ドキュメントとして濃密に詰まっている。その結果、エネルギッシュなバンドサウンドの一方で、古舘佑太郎の歌詞には悶々とした想いが生々しく綴られてもいるが、だからこそ、「WHEN I WILL DIE」から「フォーピース」へというラスト2曲の突き抜けるようなカタルシスがたまらない。バンドの抜本的な変化について、メンバー4人に話を聞いた。
――先日、NUMBER GIRLが再結成を発表したじゃないですか? 世代的なこともあって、僕にとって彼らは理想の4ピースで、音楽的に2と通じる部分も大きいと思うんですけど、あの再結成をどう受け止めましたか?
古舘佑太郎:僕は中尾さんにプロデュースをしてもらったことがあって、あとSUPERCARのいしわたりさんにもプロデュースしてもらったことがあるから、昔「NUMBER GIRLとSUPERCARとくるりの3マンを俺が作る」みたいなことを言って、2人にちょっと相談してたんですよ。「その3バンドと面識があるのは俺しかいねえ!」っていう、謎の思い違いをしてて(笑)。結局そんなの到底無理な話で、冗談で終わったんですけど。
――めっちゃ観たいですけどね(笑)。
古舘:で、そんなことがあったのもすっかり忘れてたら、再結成をニュースで知って、「うわ、マジか!」と思って、時間の流れをすごく感じましたね。もし10代の頃のNUMBER GIRLをめちゃめちゃ聴いてた自分のまま今に至って、今回の再結成の話を聞いたら、とにかく「ウォー!」ってなってたと思うけど、自分もバンドを通じていろんな経験をしてきたので、あの発表にすごい重みを感じました。
加藤綾太:僕もNUMBER GIRLはめっちゃ好きで、佑太郎くんのソロで中尾さんと一緒に仕事することになったときは、「ウワウワウワ」って感じでした。で、再結成を知って、ファン心理としては、嬉しい半面、「どうせチケット取れないだろうな」って悲しさもあって、バンド目線で言うと、「化け物が帰ってきた、怖い怖い」っていう(笑)。でも、今あの人たちが当時の曲をどうやって演奏するのかはすごい楽しみというか、気になる部分ですね。
赤坂真之介:2の前にやってたバンドのときは指弾きだったんですけど、ピック弾きを始めてから、NUMBER GIRLのライブ映像を参考にするようになって、未だに見まくってます。「復活してほしいバンド」みたいな話になると、必ず出てくるバンドだけど、でもまさかホントに復活するとは思ってなかったので……どうなっちゃうんだろうなって(笑)。
yucco:私は2に入ってから聴き始めたので、正直みんなみたいに「帰ってきた!」っていう感じではないんです。ただ、2を始めて、いろんなバンドを教えてもらう中にNUMBER GIRLがあって、私「こういうドラマーになりたい」とかってあんまりないんですけど、その中で唯一と言っていいくらい「こうなりたい」と思ったのがアヒトイナザワさんだったので、未だに参考にしてます。
――ドラマーであるアヒトさんがすごく注目されたことも「まさに」って感じですけど、僕がNUMBER GIRLのことを理想の4ピースだと思うのは、「メンバー4人がそれぞれの個性を発揮していて、その上でひとつのバンドとしてめちゃめちゃかっこいい」っていうのが大きいんですよね。で、2も今回のアルバムでそうなったというか、少なくとも、そこに足を踏み入れたような手ごたえを感じたんです。
古舘:NUMBER GIRLみたいな4ピース感ってみんなにとっての理想だし、奇跡だと思うけど、あれを追い求めたがゆえに死んでいったバンドもたくさんいるというか。あのあり方って難しくて、だからこそあのバンドは今も異彩を放ち続けてるんだと思うんです。だから、あれはNUMBER GIRLにとっての大正解であって、あれがすべてだと思っちゃうと、足元をすくわれる。実際、NUMBER GIRL自体も長くは続かなったわけですしね。
で、自分たちのことを考えてみると、前作と前々作は完全に分業制で、僕が詞を書いて、P介(加藤)がメロディーとアレンジを作ってたんですけど、今回はその役割がいい意味でゴチャっとしてきて、俺もメロディーにタッチしたり、詞のことをメンバーに相談したり、アレンジも真之介やyuccoに考えてもらったりしてて。NUMBER GIRLどうこうとは関係なく、ホントに4人のピースが合わさってできたアルバムは、今回が初めてかもしれないです。
加藤:最初は良かれと思って2人で仕事を分けてやってたんですけど、やっぱり味気なさを感じたり、「何のためにこの4人でやってるのか」っていうところに目が行くようになったんですよね。特に「シングルをどうしようか?」っていう時期にみんな悩んでて、作っても作っても納得いかない時期があったんです。で、4人で話し合う時間が増えて、どういうスタンスで、どういう精神性でやっていくかっていう話を初めてちゃんとして。その中で、「各々でアレンジを考えてこよう」とか、当たり前の会話が普通にできるようになって、実際曲に躍動感が出てきたので、このスタイルが合ってるんだなって確認できました。
2・古舘佑太郎 撮影=菊池貴裕
――シングル曲であり、アルバムのラストに収録されている「フォーピース」は間違いなく今作のキーになる曲だと思うんですけど、実際にどうやって完成まで漕ぎつけたのでしょうか?
古舘:分業をやめて、僕もメロディーを作ってみようと思って、家で弾き語りでAメロとBメロを鼻歌で歌ってたんです。ただ、サビがなかなかできなかったんですけど、P介が昔作って、ボツになりそうだった曲のサビを当てはめたら、絶対合うなって思って。だから、僕がAメロとBメロ、P介がサビを作って、4人でアレンジをしたので、ホントの意味で4人で一曲作り上げたのは、この曲が初めてかもしれない。2人とも元々フロントマンだから、ビートルズ作戦はやってみたいと思ってて、ビートルズの場合は「レノン・マッカートニー」って表記されるじゃないですか? 俺らで言うと何だろうと思って、これは誰にも言ってなかったんですけど――
yucco:え、聞いてない(笑)。
古舘:P介と古舘じゃないですか? だから、「ピースフル」ってどうかなって思って、一人でニヤニヤしてました。
yucco:知らなかった! いいじゃん!
古舘:でも、しらけるのが嫌でずっと言ってなくて、結局普通に「加藤綾太、古舘佑太郎」ってなってるんですけど(笑)。
――(笑)。じゃあ、「フォーピース」のアレンジは赤坂くんやyuccoさんのアイデアも取り入れられたものになってるわけですね。
赤坂:今までと比べたら、アルバム通してそうなってて、より楽曲に寄り添えたというか。
古舘:今回はあえてP介に「ノーアイデアでいてくれ」って言ってたんです。だから、結構アレンジでピリついたこともあったし、2人(赤坂、yucco)を追いこんだりもしました。
yucco:私のドラムはシンプルなものが多かったんですけど、「フォーピース」のBメロでワンパターンじゃないおかずを入れてたり、そういうのは初めてで。そこはみんなとも話しつつ、自分からも出しつつだったんですけど、完成に至るまではかなり苦戦しました。
加藤:僕の中では最初から答えが見えてたんですけど、でもこの曲は4人で作ることの方が大事だったんです。冒頭のベースのフレーズを決めるのもすごく大変で、最初真ちゃんが考えてきたものに対して、俺も佑太郎も全然納得しなくて、「もっとあるっしょ」みたいな日々で。yuccoに関しても、「もっと手数多い感じで」くらいしか言わなかったんですけど、それを自分なりに解釈しようとしてくれて、しっかり作品にできたなって。
――4人で作った楽曲だからこそ、歌詞も自然とツアーのドキュメントのような内容になったわけですか?
古舘:いや、歌詞は歌入れの前夜に徹夜で書くまで何もできてなくて。今こうやって話すと、「だからバンドの歌になったのかな?」って思うくらいで、当時はアレンジで偉そうなことを言いまくりながら、歌詞は全くできてなかったんです。最後の最後に一語一句ゼロから作ったので、ホント火事場の底力というか、書いてるときに何を考えてたのが思い出せないくらいで、気づいたらこんな詞になってて。
――逆に言えば、そのときの自分がそのまま出てる歌詞だとも言えるでしょうね。
古舘:自分で言うのもなんですけど、突貫工事的に書いた歌詞には見えないと思うんですよね。時間がない中で書いてるのに、いろんな描写が出てくるのは、無意識ゆえの力だったなって思います。
2・加藤綾太 撮影=菊池貴裕
――“4人でアレンジをする”っていうこと自体、ツアーを通じてお互いに対する理解を深めたからこそできたことだと思うし、音に言葉が引き寄せられた部分はきっとあるような気がします。アルバム全体で見ても、すごくライブ感のある作品で、曲調も幅広い。“コンパクトで、強い”という意味ではファーストにも通じるけど、ファーストがコンポーザーである加藤くんの衝動だったとしたら、今回はバンドとしての衝動が詰まっていて、質は全然違うなと。実際、加藤くんとしては今回曲調を広げようという意識があったのか、それとも、作業をしていく中で結果的に広がったのか、どちらが近いですか?
加藤:1枚目のときはホント何も考えてなくて、確かに、僕のエゴが出てる印象もあると思うんですけど、逆に2枚目は広げたいっていう意識が強かったですね。そこでそのときできることはいろいろ試して、今回は一回自分たちの核を見直そうと思ったので、手法とかアプローチに関してはそこまで変わったとは思ってないんですけど、今回は2っぽいアルバムになったのかなっていうのは思います。
――新しいインプットを入れて広げたというよりは、一人ひとりが持っているプレイヤーとしてのいい部分を引き出した結果、幅が生まれたっていう感じかなと。
加藤:ああ、そういう表現の方が正しいかもしれないです。今までは最初から完成形が見えてたんですけど、今回はアレンジを試していく中でいろいろ発見があったから、レコーディングもすごく楽しかったし。
――ワンマンツアーと今回のレコーディングを経て、プレイヤーとしての赤坂くんとyuccoさんに対して、再発見したような部分はありましたか?
加藤:真ちゃんは昔から内なるエネルギーを持ってるんですけど、アウトプットの仕方はあんまり上手くなかったから、昔だったら「フォーピース」の頭のフレーズとかも思いつかなかったと思うんです。真ちゃんとは前のバンドから長く一緒にやってるんですけど、2をやり始めて、初めてちゃんと真剣に向き合えてる気がしますね。
赤坂:話を聞いてて、「確かに」って思っちゃいました。りょうちの好みとか趣向自体はそこまで変わってないと思うんですけど、今までやってなかったアプローチが今回はできたかもしれないです。
――yuccoさんに関してはどうでしょう?
加藤:言われたことをしっかりできる才能を持った人で、難しいオーダーをしても、サラッとできちゃうのは前からすごいと思ってたんです。今回に関しては、いかに自分からファーストアイデアを出せるかにフォーカスを当てて、最初は俺ら的に違うことも多かったんですけど、「もっとこういう感じ」っていうやりとりをしていく中で、出てきたものがすごい荒々しかったり、泥臭くていいなって思って、今後このスタイルをさらに磨き上げるべきなんじゃないかって思いました。
yucco:引き出しがあまりないというか、何もないところから新しいものを出すのがホントに苦手で、結構時間かかったんですけど、ヒントはいっぱいくれたので、一人だったらできなかったと思います。「DAY BY DAY」みたいな速いテンポの16ビートは初めてだったし、「ホメオパシー」の2ビートも初めてで、めちゃくちゃ時間かかったんですけど。
――ど真ん中のパンクを通ってないと、2ビートって意外とやらないですもんね。
古舘:僕も2ビートってやったことなくて、むしろパンクとか嫌いでした。でも、P介も「パンクが好きだから、これをやろう」じゃなくて、あくまで曲として2ビートをやろうってことだったから、やってみたいなって。初めてだから、最初はリズムの取り方もわからなかったけど、真似事でやるんじゃなくて、2のものとして借用するというか、新しい挑戦は好きだし、そういうことができたのはデカいなって。ただ、曲の幅が膨らんだって言われるのは結構意外ではあるんですけどね。
――ジャンル的には、ハードコア、オルタナ、パワーポップ、ポストパンクといろんな要素が入ってて、幅は広いと思うんですよね。ただ、さっきのパンクの話と同様に、「そのジャンルをやってる」っていう感じじゃなくて、あくまで2の楽曲としてやってるから、バラバラな感じはしなくて、アルバムとしての統一感はちゃんとあると思います。
古舘:最初は何者でもないし、何にも印がついてない分、カービィみたいに全部を飲み込んでたけど、今回は“2印”みたいなのが自分たちでわかってたので、それに則っていろんなことがやれたのかなって。
――その“2印”の土台が、一人ひとりのプレイヤビリティなんだと思うんですよね。だから、カービィが飲み込んだものを、今回2として吐き出したというか。
古舘:あ、偶然ですけど、今回の歌詞がそうというか、ゲロるじゃないけど、胃液ごと吐くみたいな気持ちだったんですよね。
――確かに、楽曲の勢いの一方で、歌詞は結構悶々としていて、抱えていたものが出ちゃった、というような印象を受けました。やはり昨年はバンドとして次に行くためにいろいろと考える時間が多かったのでしょうか?
古舘:めちゃくちゃ多かったですね。最初はバンド誕生の喜びしかなくて、先を深く考えることもなかったけど、でもそれだと期間限定のバンドで終わってしまう。で、僕の場合バンドのことを考えるってことが、自分の心の奥底を考える作業と直結するので、自分の見たくないところ、蓋をしておけば楽なところを開かないとって気持ちが去年一年はずっとありました。それを自分で把握しておかないと、バンドとしてもダメなんじゃないかと思って。だから、消化して出すっていうより、消化しきれないまま出したっていう方が近いですね。
――そんな中で、「これを書けたことによってすっきりした」とか「前を向けた」という曲を具体的に挙げてもらうことはできますか?
古舘:うーん……ホントの意味ですっきりしちゃったらお終いな気もして……救われたと思った瞬間は、いい意味で無いかもしれないです。僕にとって音楽をやることって、自分じゃない自分と出会えたり、新しい自分を再発見することが喜びでずっとやってて、歌詞にしても、「こんなこと書けた」とか「こんな自分がいたんだ」っていう喜びだったんです。でも、今回は自分の奥底の嫌な部分も含めて、今の自分をそのまま書くっていうテーマだったから、書けば書くほど、「ホントこいつクソだな」って、再確認する詞ばっかりなんですよ。そういう意味じゃ、救われるどころか、書けば書くほど絶望していく。「ニヒリズム」の<大好きな君と別れ 誰と寝ようか>とか<大好きな君の他に 残したい遺伝子がない>とか、こんな歌詞書いて救われるわけないですよね(笑)。
――となると、改めて「フォーピース」はでかいですよね。自分と向き合い続けて、最後の最後に何も考えずに書いたのが、バンドについて歌った歌だったっていうのが、いまの古舘くんにとって大事なものをよく表しているというか。
古舘:ずっと書けなかったけど、「フォーピース」っていうテーマで書き出してからは結構あっという間で、あんまり記憶はないけど、4時間足らずで書けたんですよね。ひとつわかったのは、少なくとも孤独じゃないんだなってこと。いろんなマイナス面も見えたけど、でも孤独じゃないってことだけはわかった気がします。
2・赤坂真之介 撮影=菊池貴裕
――加藤くんは歌詞の変化をどう見ていますか?
加藤:明らかに、よりパーソナルな部分が出てるなって。でも、そこが佑太郎くんのいい部分というか、普段は気さくで優しいお兄ちゃんなんだけど、俺らからすると、裏の佑太郎くんの方が面白かったりするんです。車運転してて、危ない運転をしてる車がいたら、「クソが!」とか言ってる佑太郎くんが好きだったり(笑)。「この人頭おかしいな」って部分がアーティストとして面白いというか、他の人だったら、周りの目を気にして書けないようなことを書いてたり、でもこれがすべてだとも思わない。そうやって歌詞ができて、4人で書いた曲に名前がついて世に出ていくっていうのは、すごく嬉しいことですね。
――『生と詩』というアルバムタイトルは、曲の「性と詩」から来てるのかなと思うんですけど、どうしようもない部分でも曲になることで「生きる」っていうことに繋がるっていう意味では、今の加藤くんの話とも通じるなと。
古舘:“生”と“性”、“死”と“詩”の4つって、自分の中で非常に近いと思ってて、“性”と“詩”も近い。誰かのことを想ってるんだけど、自分自身の欲のためでもあるっていうのがリンクするなって。で、「性と詩」を書いて、でもアルバム全体を考えると、『生と詩』だなって。これは後付けになっちゃうけど、「WHEN I WILL DIE」って曲を書いて、死ぬときの自分にメッセージを送るとしたら、詞を書いて、曲にしたら一番伝わると思ったんです。歌詞でずっと悩んで、それが日常生活の中でも大きな割合を占めてたから、このタイトルになったっていうのも大きいです。
――“死生観”っていうのも元々古舘くんの歌詞のテーマとしてあったものだと思うけど、「WHEN I WILL DIE」の<今日もこの瞬間を生きてみるのです><今日も悩みながら生きてみせるのです>っていうフレーズが、今作におけるひとつの結論になってると思うんですよね。だからこそ、その後の「フォーピース」がよりグッと来るっていう。
古舘:前までは“死”ってちょっと現実味がないというか、言ってみれば、アトラクションのひとつくらいの感じだったけど、徐々に現実味を帯びてきて、僕にとっての“死”って、死ぬまで生きることだなって思ったんです。どうせいずれ死ぬんだったら、それまでをどう生きていくのか。それって“死”があるからこそ考えることで、そういう意味でも、より現実的になってきたなって。
――“生と死”は表裏一体だから、“死”の影が濃くなるほど、“生”の光もより強くなる。それは今作のエネルギッシュなイメージともつながっているように思います。
古舘:このバンドを組んだときは、「それぞれいろんなことがあったけど、ここから全部乗り越えていこう」っていう気持ちがあって、それを踏まえて、今を燃やそうぜって気持ちで作ったのが1枚目と2枚目だったけど、今回に関しては、今の自分たちがどんな日々を送っていて、どんなことをしているのかを掘り下げる行為が、もしかしたら誰かの共感を呼ぶかもしれないって思いもありました。セカンドは広く遠くの人まで届かせようと思ったけど、そういうのって、聴き心地はいいから振り向いてはくれるけど、あんまり残らないし、近い人にすら響かなかったりもする。でも今回は、わかりづらかったとしても、自分の状況をそのまま吐き出すことで、もしかしたら誰かの日々を救うかもしれないし、それが自分を救うことにもなるかもしれない。それを求めてはいましたね。
2・yucco 撮影=菊池貴裕
――最後に、5月からのリリースツアーのことも聞きたいんですけど、まずは先日終わったばかりの『スペースシャワー列伝JAPAN TOUR 2019』の手応えを聞かせてください。
加藤:手応えがある日もあれば、トラブルもあったり、結構波の激しいツアーだったんですけど、ファイナルでは自分たちの理想のライブが垣間見えた気がしてます。自分たちの中でですけど、やっと結果を残せたというか、あのツアーの意味を見出せたのは大きかった。一本終わるごとにみんなで話し合って、その成果がファイナルで出せて、もちろんまだ満足はしてないけど、あのツアーに参加できてよかったなって思えました。
赤坂:このアルバムができたときも、バンド感というか、4人の距離が縮まった感があったんですけど、列伝が終わって、さらにひとつになれた気がしてます。良いときも悪いときもあったけど、最終的に2としての理想のライブに近づけた気はしてますね。
古舘:“良いライブ”っていろいろあるじゃないですか? 失恋して落ち込んでる人と、彼女ができてハッピーな人にとっての“良いライブ”が全然違うように、そのときの感情とか気分、体調でも変わるから、“良いライブ”ってホントにアバウトだし、だからこそ難しいなって思うんですよね。でも、一個思ったのは、“良いライブ”って、一言で表せるライブなのかなって。30分でも一時間半でも、「このライブはこうだった」って言えるライブ。それを自分たちで考えると、列伝のファイナルで最後に「フォーピース」をやって、いろんな人に「涙が出た」って言われたんです。それは音楽業界の人もそうだし、お客さんもだし、友達もそう。僕自身も珍しくグッと来たりして。だから、“良いライブ”って、最後の一曲で泣けるかどうかだと思ったんです。でもそれって最後だけよくてもダメで、序盤からの流れがあるからこそ生み出せるものだと思う。次のツアーではそれをより確信的に自分たちで掴み取りたいですね。
――yuccoさんにとっては、もともとサポートを務めていたyonigeとの2マンも楽しみでしょうね。
yucco:そうですね。対バンは前にもしたことがあるんですけど、今回は2としてのバンド感ができつつある中での対バンなので、勝ち負けではないですけど、今の私を見てほしいっていう、個人的な気持ちはあります。
古舘:勝ちたいとか負けたくないとかはないんですか?
yucco:言っちゃえば、ありますよ(笑)。yonigeだけに関わらず、これまでバンドで関わってきた人たちを見返してやろうって気持ちはあるので、今のバンドで2マンをするのはすごく楽しみです。
――ファイナルには、古舘くんにとって想い入れの強い渋谷クラブクアトロが控えています。
古舘:僕、クアトロでのライブに関しては、まだ一度もちゃんと手ごたえを感じたことがないんですよ。クアトロのことが好きだからこそあえて言いますけど、クアトロを倒したいというか、ちょっとライバルみたいになっちゃってます。僕にとって、ギター初心者のFコードみたいな状態で(笑)、だから立ち続けてるのかなって。
――じゃあ、最後の一曲で泣けるライブをして、クアトロを倒し、よりでかいところに行きましょう。
古舘:はい、そう思ってますね。

取材・文=金子厚武 撮影=菊池貴裕

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