ザ・ビートルズ解散後、
初めてメンバー全員が参加した
リンゴ・スターの代表作『リンゴ』
本作『リンゴ』について
アルバムはジョン・レノン作の「アイム・ザ・グレーテスト」からスタート。この曲はリンゴ、ジョン、ジョージの3人とクラウス・フォアマン、ビリー・プレストンという布陣での録音。「シックス・オクロック」はポールとリンダの共作で、リンゴ、ポール&リンダ、著名なソングライターとしても知られるヴィニ・ポンシア、クラウス・フォアマンというメンバーでの録音。ジョンとポールは1曲ずつの提供だが、ジョージは3曲を提供(リンゴとの共作を含む)しており、そのうちの「フォトグラフ」は第一弾シングルとしてリリースされ、全米1位の大ヒットとなる。凝ったアレンジがなされているが、シンプルで優しい曲調が特徴だ。
「サンシャイン・ライフ・フォー・ミー」ではリチャード・マニュエルを除くザ・バンドの面々に、ジェリー・ジェフ・ウォーカーのバックギタリストとして名を挙げたデビッド・ブロンバーグとジョージ、クラウス・フォアマンが参加し、オールドタイムの香りのするアメリカン・ルーツロックに仕上がっている。ジョージもリンゴも、本当にザ・バンドが好きなんだなと再認識できるナンバーだ。第2弾シングルとしてリリースされ、これまた全米1位を獲得する「ユー・アー・シックスティーン」はシャーマン兄弟作で、ジョニー・バーネットが1960年にヒットさせたオールディーズ曲。ポールがカズーで参加し、ひょうきんな良い味を出している。
僕が本作で一番好きなのが第3弾シングルの「オー・マイ・マイ」(全米5位)。トム・スコットのサックス、ジム・ケルトナーのドラム、ビリー・プレストンのピアノ、クラウス・フォアマンのベース、ボックヴォーカルにメリー・クレイトンとマーサ・リーヴスというメンバーで、70sストーンズみたいなスワンプロックを聴かせる。本作で最もファンキーで泥臭いサウンドになっている。
アルバムに参加したメンバーは前述のミュージシャンの他、マーク・ボラン、スティーブ・クロッパー、ニッキー・ホプキンス、ハリー・ニルソン、ジェームズ・ブッカー、ボビー・キーズ等々で、リンゴの広い人脈というよりは、彼が好きな人を集めたという感じである。考えられないほど豪華なメンバーが本作を盛り立てているわけだが、主役はちゃんとリンゴになっている。言い換えれば、彼の温かい人間性がちゃんと見えているわけで、そのあたりに本作の魅力があるのだと思う。
オールスターバンドのコンサートに行った人も行かない人も、この機会に本作『リンゴ』をぜひ味わってみてください♪
TEXT:河崎直人