BIGMAMA「Paper-craft」で薄っぺらな神様の末路は

BIGMAMA「Paper-craft」で薄っぺらな神様の末路は

BIGMAMA「Paper-craft」で薄っぺらな
神様の末路は

BIGMAMAとは

まずは彼らの紹介から。金井政人(Vo, G)、リアド偉武(Dr)、柿沼広也(G, Vo)、安井英人(B)、東出真緒(Violin)からなる5人組バンド。2002年に東京・八王子で結成され、メンバーチェンジを経て現在の編成に。バンドサウンドにバイオリンの音色が美しく絡み、金井ワールド全開の言葉選びと優しくも力強くもあるメロディに魅了されるファンも多い。
彼らにとっての「Paper-craft」
2008年に発売した2ndアルバム『Dowsing For The Future』の1曲目に『Paper-craft』は収録されている。この楽曲は初めて彼らが日本語で詞を作成したものである。10年以上バンド活動を続けている彼らにとっても、ずっと応援しているファンにとっても、BIGMAMAというバンドを語る上では欠かせない楽曲となっていることは言うまでもないだろう。
自身のパーソナリティ
ここからは、歌詞について詳しく見ていく。金井は、この楽曲の出だしのフレーズのことを自身のパーソナリティを端的に表していると発言している。
「僕は酷く薄っぺらなんだ」 
金井が初めて日本語で歌詞を書いた曲の出だしがこれだ。なんとインパクトの強いフレーズ。いつも音楽に対してストイックで、息をのむような気迫のあるライブパフォーマンスをする彼から出てきたとは思えない。こう続く。
ここで私は気付く。金井自身も自分がそうであると言っているが、人間誰しもこの歌詞のような部分を持ち合わせているのではないか、と。自分の中の弱いダメな自分を”紙”で例える視点の柔軟さと、聴く人を引き込む独特な言い回しには、思わず舌を巻く。
自分が弱いことは分かっている。だからこそ誤魔化し、他人にはできるだけその自分が出ないように振る舞う。しかし、ここではそんな自分を変えようなどという情熱を歌っているのではない。サビに続く。
核心をついた歌

不確かなものはもちろん、確かなものさえ弱い自分にとっては自信がない。薄っぺらな紙のような自分にとって、”君”を守れるという保証がないし、自分で行く先を決める決定権すらないから、風に任せる。
多くの歌は、「弱い自分は変えていけ。」「僕が君を守る。」という表現が多いと感じる。力強く言われると、元気や勇気をもらえるワードではある。しかし、現実的に考えるとその言葉に”絶対”という保証はない。君を守りたいけど、少しぐらい他力本願でもいいかな?そんな思いが歌詞に込められている。
本来の人間らしい部分が垣間見える核心をついた歌詞だ。
最大の皮肉表現

ここからが更にBIGMAMAの醍醐味。
君を守りたいと願い、弱い自分が見えないように他人と距離を取ることで、虚構の自分を保ち続けた。すると、周りからは逆に「なんかあの人、人と違ってかっこいいよね。」みたいに、いつからか人とは違う”神”となった。薄っぺらな神(紙)様の誕生だ。
この歌のハイライトと言える最大の皮肉表現だ。
君の中の薄っぺらな神様
「欠伸してないで 飛び降りるんだ」
目を覚ませ。俯瞰してる場合ではない。お前は人と違う神様でもなんでもない。弱い部分を持ち合わせた誰とも変わらない普通の人間だ。この歌詞で歌がガラッと変わる。
確かについてるその二つの目で、不確かなものでも怖がらず進んでいけ。”君”の中にも存在する薄っぺらな神様が、壊れそうでも頼りなくてもいいじゃないか。やりたいようにやればいい。
最後に続いていく。
自分だけの人生

人間は自分を守るためにまた大事な人を守るために、偽りを重ねることが多い。でも、別に偽らなくたっていい。強い自分じゃなくたって分かってもらえる人には分かってもらえるし、そもそもこの世に最初から強い人間なんていないはずだ。自分を偽り、無理をしてまで叶えなくてはならない義理や義務もない。
自分の人生は自分自身の中からしか生まれない。他人に翻弄されすぎず、他人の目を必要以上に気にすることなく、自分の人生を全うすることの大切さがBIGMAMAらしくユーモラスに歌われている。

誰の心の中にも存在する薄っぺらな神様は、死ぬことはない。だが、見栄っ張りで面倒くさいこの神様と上手に付き合っていくことで、自分の人生がかけがえのないものであると気付けるだろう。
TEXT 坂倉花梨

アーティスト

UtaTen

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