ザ・バンドの諸作に勝るとも劣らない
リトル・フィートの一大傑作
『ディキシー・チキン』

『Dixie Chicken』(’73)/Little Feat

『Dixie Chicken』(’73)/Little Feat

60sロックシーンに登場したライ・クーダーやデュアン・オールマンは、卓越したスライドテクニックを披露し、数多くのフォロワーを生んだ。80sに登場したサニー・ランドレスや90sのデレク・トラックスは、その華々しい成果であると言えよう。71年にデビューしたリトル・フィートのフロントマン、ローウェル・ジョージも凄腕のスライドギタリストとして知られているのだが、彼のスライドプレイは花形リード楽器というより、アンサンブルの一部として使用するタイプである。コンプレッサーやフェイズシフターを使った音作りは独創的で、ローウェル独特のサウンドであったためフォロワーは少ない。僕が思い付くのは、鈴木茂とボニー・レイットぐらいである。今回取り上げる『ディキシー・チキン』はリトル・フィートの3rdアルバム。そんなローウェルの渋いスライドをはじめ、ウエストコースト出身のグループとは思えないほど重厚で粘っこいサウンドが特徴だ。商業的には成功したとは言えないが、名作の多い70sロックの中でも飛び抜けて素晴らしい作品である。

ニューオーリンズのごった煮の魅力

ルイジアナ州はアメリカの中でも特異な地域である。元はフランスの植民地であり、フランスから来た白人にネイティブ・アメリカンやアフリカから連れてこられた黒人奴隷、周辺から流れてきたスペイン系など、さまざまな民族や文化が混在していた。中でもニューオーリンズはルイジアナ州最大の都市で、ここでブルースをルーツに持つディキシーランドジャズが生まれた。シカゴブルースやR&Bが他州から入ってくると、それらはニューオーリンズスタイルにアレンジされて広まっていく。また、ニューオーリンズのブラスバンド演奏から生まれたリズムとして知られる“セカンドライン”は、のちのR&Bやファンクの要素として組み込まれる。

ファンクの土台となった
ニューオーリンズ音楽

ニューオーリンズ独特のポピュラー音楽(特にR&B、ロックンロール)については、好サンプルがドクター・ジョンの『ガンボ』(‘72)に収録されている。このアルバムについては、以前このコーナーで書いているので参照していただきたい。アルバムタイトルの“ガンボ”とはルイジアナ料理のひとつであり、さまざまな旨み成分を含む繊細な味付けのスープで、多くの人種が入り混じっているルイジアナならではのメニューである。ドクター・ジョンはニューオーリンズの音楽はガンボのようなごった煮(フュージョン)音楽だと言いたいのだ。ドクターの他、ニューオーリンズにはアラン・トゥーサンやファッツ・ドミノといったR&B〜ロックンロール黎明期の巨人がいるし、60年代後半にはミーターズという秀逸なファンクグループが登場している。東海岸や西海岸ではサイケデリックロックやアシッドロックが全盛期であったが、ニューオーリンズではセカンドライン・ファンクが生まれていたのである。
■『ガンボ』/ドクター・ジョン
https://okmusic.jp/news/160354/

ザ・バンドとアラン・トゥーサン

僕が最初にニューオーリンズのことを知ったのは、ザ・バンドの『カフーツ』(‘71)を聴いた中2の時。このアルバムの1曲目にセカンドラインの変形リズムを使った「カーニバル」という曲が収録されており、ここでアラン・トゥーサンがホーンアレンジをしていたのである。その後、前述の『ガンボ』とアラン・トゥーサンの『ライフ、ラブ・アンド・フェイス』(’72)が相次いでリリースされ、どちらのアルバムにもミーターズが参加していて、特に後者はロック的な要素もあってよく聴いたものだ(アラン・トゥーサンの日本盤は当時まだリリースされていなかったが…)。ロック界はちょっとしたニューオーリンズ・サウンドのブームになっていたのである。

OKMusic編集部

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