公募展『FACE展2019 損保ジャパン日
本興亜美術賞展』レポート 最年少8
歳から74歳まで、新進作家たちの作品
71点が集結

『FACE展2019 損保ジャパン日本興亜美術賞展』が、2019年3月30日(土)まで、東京・新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館にて開催中だ。今年で7回目を迎える本展は、新進作家の動向を反映する公募コンクールとして定着しつつある。
今回、「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を公募して集まったのは、全国各地の幅広い年齢層、870名の作品だ。1次の「入選審査」と2次の「賞審査」を経て、国際的に通用する可能性を秘めた、入選作品71点(内受賞作品9点)が、会場にて展示されている。
2月22日に開催された表彰式・内覧会から、本展の見どころを紹介しよう。
最年少8歳から74歳まで、幅広い年齢層の作家による作品71点が集結
会場風景
公募で集まった870点の作品を最初に審査する際、審査委員には、「作家の名前」「作家の年齢」「作品名」といった一切の情報が開示されないという。作品それ自体の情報がまったくない中で、審査員らはそれぞれが培ってきた感性を用いて、作品と対峙する。その後の2次審査でも、やはり作品の一切の情報は伏せられたままなのだそうだ。
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 館長の中島隆太氏は、「審査員が感性を研ぎ澄ませて作品と対話をする。その結果として選ばれた71点は、当然ながら、作品としての強い発信力があります」と語る。さらに、「展示室の入り口に審査員の講評があります。こちらもぜひ読んでいただきたい」と言葉を続けた。
今年は、作家の年齢を問わない募集だったということで、最年少は8歳、最高齢は74歳という、大変幅広い年齢層の作家作品が集まったそうだ。このように、作品だけが持つ輝きのみで選考された結果、66歳という年齢の開きが生まれた点も、非常に興味深い点だといえるだろう。
観る者に訴えかけるような、象徴性を持つ作品たち
庄司朝美 《18.10.23》2018年 油彩・鉛筆・アクリル板 200×170cm
会場に入ってすぐの展示室には、9点の受賞作品が展示されている。
見事グランプリに輝いたのは、庄司朝美の《18.10.23》。特異な神話的世界を表現した、圧倒的な存在感を放つ作品だ。審査員を務めた堀 元彰氏(東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター)は、本作を「スケール感もあったと同時に、アクリルの裏から描くという即興的な技法を使ってらして、なおかつ的確な表現をされている」と講評。審査員一同から、高い評価を受けたという。
作家である庄司は、「この賞は励みにもなりますが、かなりプレッシャーもあるので、今後そのプレッシャーを制作のエネルギーに変えて、満足のいける作品を作っていきたいと思います」と、受賞の喜びと今後への意気込みを語った。
左:奥田文子 《untitled》2018年 油彩・綿キャンバス 130.3×194cm 右:古橋香 《汽水域のドローイング》2018年 油彩・綿布・パネル 130.3×194cm
優秀賞に選ばれたのは、古橋香《汽水域のドローイング》、松崎森平《東京》、奥田文子《untitled》の3作品。そして、少女を非常に鮮やかに描いた、中矢篤志の《アイコソハスベテ》が読売新聞社賞を受賞した。
中矢篤志 《アイコソハスベテ》2018年 アクリル・キャンバス 162×162cm
堀氏は、「いずれの作品も少しずつ傾向が違うものの、非常に高いテクニックに支えられ、完成度も高いものになっています。同時に、観る者に何か訴えかけるような不思議な雰囲気、象徴性を持った作品が選ばれました」と語る。確かに、どの作品も時代の感覚を捉えていながら、なおかつキラリと輝くものを備えているように感じられる。
その隣には、それぞれの審査員が独自の視点で選出した審査員特別賞、4点も並ぶ。こちらも4人4様、作品の傾向はかなり異なっていて、今回の『FACE展』全体の傾向を表しているかのようだ。作家それぞれに見られる様々な視点はもちろんのこと、それをまた各自の観点で評価する審査員らの感性にも触れられる。
右:小田瀧秀樹 《虚空の徒花》2018年 アクリル・鉛筆・キャンバス・パネル 162×194cm (野口玲一)
続く展示室には、入選作品がズラリと並んでいる。油彩、アクリル、水彩、岩絵具、版画、蒔絵、織物、ミクストメディアなど、多岐に渡る技法やモチーフを使用した、多種多様で彩豊かな作品たち。それぞれからきらめきや躍動感が感じられ、観ている側も大変ワクワクした気持ちにさせられる。
会場風景
先ほど紹介した9点の受賞作品のほか、入選作品全体の特徴としても、「技術的に非常に高い作品が集まっていると同時に、何か不思議な印象、不穏な雰囲気を感じさせる、象徴的な作品も多かったと思います」と堀氏は語る。さらに「恐らく、作家の皆さんが独自にアンテナを立てて、自分の関心や体験の中から本当に興味を感じることを丹念に研究され、制作された結果、こういった完成度が高く特徴のある作品が出品され選ばれたということになるのだと思います」と考察を述べた。
作家らにとっては、今回の受賞展がゴールなのではなく、あくまでひとつの通過点となる。ここから大きく羽ばたき、いずれは未来のスターとなる作家も創出されていくのだろう。
会場風景
会期中は、観覧者投票による「オーディエンス賞」の選出も行われる。ぜひこれら71点の中から、自身の“お気に入り”を見つけてみてほしい。『FACE展2019 損保ジャパン日本興亜美術賞展』は、3月30日までの開催。

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