秋山黄色が奏でる力強い唄。22歳フリ
ーターの突然変異。

秋山黄色という名前を聞いたことはあるだろうか。昨年、突如音楽シーンに現れ「出れんの!?サマソニ!?」枠で「SUMMER SONIC 2018」にも出演。コアな音楽ファンを中心に話題を呼んでいるソロアーティストだ。宇都宮出身の22歳、専門学校中退のフリーターであるという。楽曲以外の素性はあまり明らかになっていない彼の初CD作品『Hello my shoes』リリースに際して開催されたライブへと足を運んだ。そこには部屋で1人ギターを弾いていた少年が、着実に、力強く人生のステップを踏みだす姿があった。

Photography_Yuri Suzuki(@pbys_1986)
Text_ Sota Nagashima


謎多きソロアーティストのステージ

2月15日、渋谷TSUTAYA O-Crest。秋山黄色がゲストアクトとしてツアーに参加したこともある盟友、眩暈SIRENとその地元の後輩であるというユアネスを迎えたスリーマンでのリリースライブ。若い女の子から、音楽好きであろう中年男性まで幅広い客層で会場は一杯になっていた。先の2組によるライブが盛り上がりをみせ、熱を帯びたフロア。そこにギターを持った金髪白Tシャツ姿の男が現れる。秋山黄色の登場だ。アーティスト写真もイラストで、あまり本人の写真が表に出ないので、その出立ちを全く知らない人もいたに違いない。顔がほとんど見えない程に前髪が伸びたヘアースタイルは、内気な青年そのものといったイメージ。しかし、曲が始まった瞬間、そのイメージは一瞬にして打ち砕かれる。ギターを振り回すように弾いたパンクソング『スライムライフ』から、秋山黄色のステージは幕を開けた。

激しくも切なさの漂う秋山黄色の声

続いて披露したのは、妖艶で独特なギターリフで始まる『やさぐれカイドー』。この曲は初の配信楽曲で、国内のSpotifyのバイラルチャート(国内)で2位にランクインした人気曲。「取り残されていた 一人の夜は楽しくて」と切なくも激しく叫ぶ姿に、胸を締め付けられる。お次は一変し、明るいイントロでスタートする『Drown in Twinkle』。しかし、やはり声を張り上げて叫ぶその姿には切なさが漂う。音楽でしか本当の想いを伝えられなくて、必死にもがくような、等身大な22歳の男がそこにいる。

幸せになるのに、不幸なものを見て見ぬ
振りできない

ここで途切れ途切れの、たどたどしいMCが始まる。「陰と陽というものは昔からあって。俺は見るからに陰なんですけど。幸せになるのに、不幸なものを見て見ぬ振りできない。そういう曲をやります」とCD未収録の『クラッカー・シャドー』が始まり、次に同じくCD未収録の『日々よ』でミドルテンポなナンバーを観客に聴かせる。「音楽を作るのは遊び。でも、ライブは確実に遊びじゃない。」そうライブという音楽表現についての真摯な姿勢を語りながら、次の曲の準備に。『ドロシー』のイントロが始まると、今度は切なくも優しい声が会場に響き渡る。まだライブ経験が浅いとは思えない圧倒的な”唄”の強度に驚いた。

音楽って本当に良いよね

「VIVA LA ROCK 2019」出演の感謝を改めて述べると、音楽の楽しさを語り出す。「音楽って本当に良いよね。ボクシングとかテニスって、好きで始めたことであっても絶対に勝ち負けがついちゃうじゃないですか。でも、音楽はどんなにデカい場所になったりしても、景色が変わるだけで自分がやることは変わらない。自分が歌いたい歌を歌って、演奏したい曲を演奏するだけ。だから、音楽って本当に最強の趣味だなって思ってます」。そして始まったアルバム収録曲のラストナンバー「とうこうのはて」。厳しい現状をアッパーなロックナンバーに乗せて歌い上げるその姿には、部屋で1人ギターを弾いていた陰鬱な青年の影はない。オーディエンスは拳を上げて熱いパフォーマンスに応えた。

観客のボルテージも最高潮となったラス
トナンバー

畳み掛けるようにラストナンバー「猿上がりシティーポップ」が演奏される。そして、この日のライブが全て終了。演奏が終わった後も鳴りやまないアンコールに、秋山黄色のみステージへ戻ってくる。「ギターを持てないほど体力が残ってない」とアンコールを演奏できないことを謝り、そして深く深く感謝をしてステージを去っていた。2019年、彼を取り巻く状況は目紛しく変化するかもしれない。それでも、彼自身が信じることを信じていれば大丈夫、そんな風に思わせる逞しさすらその背中に感じた。
秋山黄色 -『猿上がりシティーポップ』


<『Hello my shoes』 release LIVE>
”What color are you? vol.2”
2月15日@渋谷TSUTAYA O-Crestセットリスト

01. スライムライフ
02. やさぐれカイドー
03. Drown in Twinkle
04. クラッカー・シャドー
05. 日々よ
06. ドロシー
07. とうこうのはて
08. 猿上がりシティーポップ

秋山黄色 オフィシャルサイト
秋山黄色 Twitter

秋山黄色が奏でる力強い唄。22歳フリーターの突然変異。はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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