誰しもが楽しめる心地よい音楽の時間
!クラシカロイド音楽祭~ムジークL
IVE&ピアノコンサート~イベントレ

NHK Eテレで第2シリーズ再放送中のTVアニメ『クラシカロイド』の楽曲をフィーチャーしたLIVE&コンサートイベント『クラシカロイド音楽祭~ムジークLIVE&ピアノコンサート~』が2019年2月13日(水)、東京・品川プリンス ステラボールで開催された。第一部は実力派奏者たちによるクラシックピアノコンサート、第二部は歌やダンスたっぷりのムジークLIVEと、アニメ好きはもちろんクラシックファンも楽しめた、煌めきいっぱいのステージをレポートする。

布袋寅泰の作曲・編曲の楽曲もクラシックに!?
聴くよりも見て楽しむ『クラシカロイド』ピアノコンサート!

自分は一体、何を観て聴いたのだろうか? 本当に素晴らしいステージを見た後で語彙力を失ってしまうことはたびたびあるが、今回はまさにそんなイベントだった。
本格クラシック楽曲のピアノ演奏あり、サイリウムやコンサートライト揺れるアイドルLIVEあり、さらには大物音楽プロデューサー浅倉大介のシークレットゲスト参加があるなど、とにかく一言では言い尽くせないボリュームである。
ただ「豪華!」と言うだけでは何一つ言い表せない。司会の言葉にあった「音楽のおもちゃ箱」という表現も悪くないが、まだ物足りない。
そもそもアニメ『クラシカロイド』をどう説明すべきか。個性の強いキャラクターたちが、あるときは火炎放射器を持ち出し、あるときは大爆発を引き起こし、なぜか餃子が舞い、またあるときはイリュージョンを巻き起こしてドッカンバッカンを繰り広げるコメディーアニメと言えば、「『銀魂』や『おそ松さん』みたいな感じ?」と思われてしまうかもしれない。事実、それらを手掛けた第1シリーズ監督藤田陽一氏が関わっている作品ではある。
司会が言うには「偉大な作曲家たちが“クラシカロイド”という存在として登場し、数々の名曲とともにお送りするハートフルストーリーとなっております」ということだったが、この説明で会場には爆笑が沸いてしまった。ハートフルストーリーって……ほのぼの系か!?
そんな明文化に困る特殊なアニメをフィーチャーしたイベントなのだから、第一部としてピアノ演奏による本格的なクラシックコンサートが始まったことには、驚いた観客も多かったのではないか。その序盤で演奏したのは、「ピティナ」に所属する片山柊(かたやましゅう)、太田糸音(おおたしおん)、角野隼人(すみのはやと)の3人だ。
「ピティナ」とは、1966年に発足されたピアノを中心とする音楽指導者の団体で、ピアノ指導者をはじめ、ピアノ学習者や音楽愛好者など、およそ15,000人の会員が所属しているそう。そこで開催される「ピティナ・ピアノコンペティション」にて、片山は2017特級グランプリ、太田は2016特級銀賞、角野は2018特級グランプリをそれぞれ獲得する実力派である。中でも太田は『クラシカロイド』第2シリーズの第10話にて、リストの原曲演奏も担当している。
もともとクラシックをテーマにしたアニメ作品なのだから、まずはマジメに原曲から楽しみましょうということだ。この第一部は、クラシックコンサートにあまり慣れてないかもしれないアニメファンに、どう映ったのだろうか。
少なくとも筆者は、「逆に新鮮!」と見入ってしまった。最初に登壇した片山が演奏するショパン「幻想即興曲」、続くモーツァルト「トルコ行進曲~ピアノソナタ第11番イ長調ケッへル331より~」も、静かな場面の小猫を撫でるような繊細な指使いから、音が力強く大きな広がりを見せる場面でのダイナミックな腕の動きまで、動作の一つ一つが立体的に音楽を形作っていき、耳で聴くより見て楽しむ演奏の素晴らしさを伝えていた。
2人目に登場した太田の演奏は、身にまとう真っ赤なドレスの鮮やかさもさることながら、リスト「愛の夢 第3番」で、腕を何度もクロスさせながら鍵盤の上で音を重ねていく様子が、まるでおまじないでもかけているかのように優雅で美しかった。続く「ラ・カンパネラ」では、楽しげに跳ねる指の動きがパチパチと小さな花火が弾けるような煌めきが感じられ、一層華やかに見えた。
3人目として登場した角野が演奏したのは、いよいよアニメファンも特に待ち望んでいただろう楽曲。布袋寅泰とスティーヴ・リプソン作曲、角野自身の編曲となる「ClassicaLoid ~クラシカロイドのテーマ~」ピアノヴァージョンである。
クラシックの要素を散りばめながらギター唸る現代風の楽曲として手掛けられたこの曲。それをもう一度クラシックに戻すという試みで、驚きよりも、改めていかにこの楽曲が「クラシック」というテーマに合っているかを再確認でき、納得感のある演奏となった。テンポがガラリと変わり音がだんだん大きくなっていく部分も、殻をぶち破るかのような力強さで盛り上がっていき、ピアノ1台で演奏していることを感じさせない音を作り出していた。
この「ピティナ」の3人の演奏だけでも、会場では溢れんばかりの拍手が沸き起こる。さらにこの後、スペシャルゲストとして『クラシカロイド』の劇伴曲を担当した浜渦正志(はまうず まさし)が登場すると、会場は一層大きな拍手に包まれた。
アニメ劇伴だけでなく、ゲーム音楽・CM曲も作曲している浜渦。今回のMCにて、『クラシカロイド』ではどんなところを意識されているか? という司会の質問には、こう回答した。
「『クラシカロイド』ではモツやベトなどバラエティ豊かで濃いキャラクターがいっぱい登場しますので、彼らの絵を壁に貼り、それを見ながら曲を書きました。キャラクターの個性を吸収するんです。他の仕事でもやったことのない、初の試みでした」
今回のコンサートでも、浜渦が手掛けた100曲を超える楽曲の中から、特にキャラクターの個性がよく表れたという4曲が披露された。ヴァイオリン奏者に伊藤彩(いとう あや)を迎え、「普段は人前で演奏することはない」と言う浜渦の貴重すぎるピアノ・ヴァイオリンセッションが始まる。
1曲目は「モツ」ことモーツァルトのテーマ曲の中から、次回予告シーンでも使われた楽曲「モツ 華麗にジャンプ」。2曲目はモツや「ベト」ことベートヴェンらが楽器を持ち寄ってセッションするシーンで流れた「天才たちのセッション」。続けて3曲目は浜渦の「推しキャラ」でもあるというヒロイン歌苗(かなえ)と、そのお婆様との印象的な回想シーンで流れた「おばあさまとの約束」。そして最後は、浜渦が特に思い入れ深いという「みなさん、ご無事で?」。
軽快な曲、穏やかな曲、ごくごく短い曲もありながら、どれを聴いてもアニメのシーンが思い浮かぶような演奏に、鳥肌が立ったのは筆者だけではないハズだ。演奏が終わった後の、いつ鳴り止むのかと思うほど長い長い観客の拍手もその証拠だろう。
これにて第一部は終了。10分間の休憩をはさみ、いよいよ第二部からガラリと印象の変わる「ムジークLIVE」のステージが始まる。この段階でこの日のコンサートへの想像はすべて外れたと言っていい、カオスで驚きや喜びに満ち溢れたステージがそこに待っていた。

歌もダンスもボカロもゲーム機も!? 何でもアリの「ムジークLIVE」の幕が開く!

「みなさん、ムジークLIVE盛り上がっていきましょー!」
ステージはカラフルな照明で照らされ、ヒラヒラしたドレスをまとった歌手がマイクを持ち、歌い踊る。観客席はサイリウムやコンサートライトが揺れ、一気に華やかな空間と化す。第一部のピアノコンサートを楽しんだ後では、まるでパラレルワールドにでも迷い込んだような錯覚を覚える。
1つ目のセクションは、tofubeatsプロデュースによるモーツァルト楽曲の5曲である。1曲目はこの煌めく舞台への招待状となるような、星咲花那が歌う「アイネクライネ・夜のムジーク」。続いて松岡ななせが歌う「炎のレクイエム」は、シリアスな歌詞と鬼気迫るダンスが見応え抜群だ。
3曲目は上花楓裏がピョンピョン飛び跳ねながら歌うパーティーチューン「世界はMUSIC!!! ~魔笛より~」で再び場が華やぎ、4曲目に双子のようなお揃いの衣装を着た遠藤瑠香・藤城リエが可愛らしくデュエットする「ラブゲーム大作戦〜フィガロの結婚より〜」で観客のハートも撃ち抜かれる。そして5曲目、中川晃教に「光の旅人 ~交響曲第40番より~」を歌われると、まるで壮大なミュージカルでも見ているような感動が訪れた。
バラエティ豊か過ぎる楽曲の数々に、続くMCにて司会も「どこにいたんだろう、今……みたいな不思議な感覚に陥りました」と観客の気持ちを代弁するかのように述べた。モーツァルトを大胆にアレンジされた楽曲の数々、歌い手たちも「実在されたモーツァルトさんも破天荒な方だと伺ったので、私たちも自由に楽しく歌わせていただきました」と話す。もはや我々にも羞恥心はいらない。拍手に混じり、観客席からも興奮度を表すような「フォーーーッ!」という叫び声も上がっていた。
続いて第2セクション、EHAMICプロデュースのショパン楽曲に移ると、会場はますます異空間へと変化した。マイクを向けられているのは歌手ではなくパソコン。そこからボーカロイドによる歌唱が流れ始める。その1曲目「雨だれと憂事」は、曲の前半まで舞台の上がまったくの無人となり「一体何が始まるのか?」と思ったところで、舞台袖より仮面を付けた男がゆっくりした足取りで登場。お辞儀もせずスーッと舞台前を横切ったかと思えば、ターンしてピアノへと向かい、演奏を始めた。ピアノの生音、電子演奏、そしてボカロ。複雑に絡み合う音の舞台は、何かの実験でも見ているような気分にさせる。
やがて曲が終わると、仮面を外してピアノの上に載せる男。2曲目、「4.A.M. Nocturne」の演奏がじきに始まった。今度は曲の盛り上がりで奏者自ら手拍子を始めたり(観客も習って手拍子をし出す)、電子演奏に任せて急に席を立ったかと思えば、なぜかステージに置かれていたゲーム機をいじり始める。「演奏そっちのけでゲーム!?」と思いきや、流れたのはピロピロという電子音。まさかゲーム機までも楽器なのか。
ピアノ、電子音、ボカロ、そして観客の拍手、すべてを巻き込み音が作られる。なんて自由な空間なのだろう! 音楽は自由だ、そしてこんなにも面白い! 自分の中の語彙力をリセットにして、そう述べずにはいられない。
そして3曲目「恋はジョリジョリ 〜華麗なる大円舞曲より〜」では、ピアノを奏でる男が手招きすると、舞台袖からモーツァルト楽曲を歌った歌手の中から上花楓裏と遠藤瑠香が再登場。LIVEスペシャルバージョンとして生歌を披露する。二人でデュエットし、ワルツを踊るようにクルクル回り、ラブリー感いっぱいのステージが繰り広げられる。
続く「小犬のカーニバル ~小犬のワルツより~」も、やはり生歌。ピアノの男は舞台袖に消え、代わりに残りの女性歌手、星咲花那・松岡ななせ・藤城リエの3人が加わる。
「ここからはみんなで楽しく歌いましょーっ!」
再び観客を巻き込みながら、サンバのリズムで始まる音楽。「イヌイヌイヌイヌ!」「モフモフモフモフ!」と、原曲ではボカロが歌う歌詞を生身の女性歌手たちが歌うと、こうもチャーミングでポップになるのかと聞き惚れてしまった。そしてもちろん、サビの部分では筆者自身も「わんわーん!」と叫んでいた!
さて、袖に消えた例のピアノの男はと言えば……曲の途中で衣装チェンジし、再び舞台に登場。体にはサンバの衣装、と思いきや、何やらウツボカズラに体から飲み込まれて頭だけ出したかのような奇抜なデザインの衣装をまとい、手にはなぜか自撮り棒を持っている。……自由が過ぎるっ!
大盛り上がりどころかハチャメチャ感まであったEHAMICステージ。楽曲が終わって司会が「EHAMICさん、演奏だけでなく素敵なパフォーマンスまで見せていただきありがとうございました」と例のパフォーマーの男に声をかけると、男は「私はEHAMICではありません。私はEHAMICではありません」と繰り返しながら、舞台袖にはけてしまった。
えっ……。
司会も戸惑いながら、改めてEHAMICを呼ぶと、現れたのはウツボカズラの衣装を脱いだ先ほどの男(とそっくりな別人?)だ。
「ありがとうございました! 東京都杉並区から来ましたEHAMICと申します!」
独特すぎる展開と自己紹介に、観客からは笑いが絶えない。演奏だけでなく何から何までフリーダムなステージであった。
さて第3セクション。ここからはシークレットゲストとして、舞台にはリストの楽曲をプロデュースした浅倉大介が現れた。プログラムにも載っていない大物の登場に、司会に紹介される前から会場は大盛り上がり。興奮を抑えられず「キャーッ!」と叫ぶ観客も少なくなかった。
もちろん登壇だけでなく、ピアノとシンセサイザーを用いて本人が演奏を行う。会場は一瞬にしてディスコへと変貌を遂げた。歌い手に石田燿子を迎えて「愛の矢の夢」、米倉千尋を迎えて「Fool Love Rhapsody ~ハンガリー狂詩曲より~」、玉置成実を迎えて「Mephisto Sheriff ~メフィスト・ワルツより~」と、どれも疾走感溢れるクラブミュージックのような3曲もの楽曲を披露してくれた。
MCでは、「レコーディング以来、まさか浅倉さんと一緒に演奏できるなんて嬉しかったです」と石田、「最初いただいた譜面に“オペラ”って書いてあって、すごく歌うのが難しかったですけど、挑戦させていただいて嬉しかったです」と米倉も、それぞれ浅倉への感謝の言葉を述べる。
また玉置は、「実は私、高校の卒業記念のときの記念のシングルを浅倉さんにプロデュースしていただいたんです。それからもう、30歳の大人になってしまったんですけど、いま再び“りっちゃん”ことリストの楽曲を一緒にやらせていただいてとても幸せです」と、過去の思い出も振り返りながら述べた。
今回のプロデュースに関して、浅倉はリストの楽曲プロデュースを自ら進んで立候補していたことを語る。
「リストと言えば超絶技巧のピアニストで、リストにしか弾けない楽曲が沢山あるなか、それを敢えてエレクトリックのサウンドと融合させると、まったく新しいものができあがるんじゃないかと思いプロデュースしました。もし今の時代にもリストが生きていたらこんな楽曲を作っちゃうんじゃないかな、というものができあがったと思っています」
また浅倉は、アニメのコンセプトについても言及。
「マッチョなキューピッドが登場したり、あれ大好きなんですけど、NHKでこんなキャラクター出していいの!? とか思いながら、それとリストのメロディをどう合わせるか楽しみながら制作に打ち込みました」
浅倉本人からも「大好き」という言葉を聞けて、喜ばないアニメファンがいただろうか。制作側の愛もたっぷりつまって作品がつくられていたのだと改めて知れる貴重なトークだった。
観客の興奮冷めやらぬ中、残る楽曲はわずか2曲。男性歌手の中川晃教が再び登場し、男性の逞しさを感じるtofubeatsプロデュースの「疾風怒涛 ~交響曲第25番より~」を披露し、再び場を盛り上げる。そして最後は、第一部含む出演者全員が登壇し、一人一人の挨拶の後でラスト1曲の演奏に移った。
曲目は、布袋寅泰プロデュースによる「大宇宙音楽賛歌No.9 ~交響曲第9番より~」。リードヴォーカルの中川晃教に続き、観客も含む全員合唱でコンサートは締めくくられる。ピアノの演奏は角野隼人、シンセサイザーに浅倉大介を迎えるという、「超豪華版」だ。
隣同士の観客と共に歌を口ずさみながら、改めてこの場にいれたことに感謝する。クラシック、そして沢山のプロデューサーによるアレンジ楽曲の数々。『クラシカロイド』というハチャメチャでとてつもない、しかしそれゆえ規模も大きく偉大なコンテンツが、我々をここに結び付けてくれた。
しかも驚いたことに、この奇跡の祭りはこの1回限りでは終わらないという。今度は3月22日(金)、場所は中野サンプラザと一層大きなステージに変わり、第2回目が開催されるとのことだ。
『クラシカロイド』を知らない人も、絶好の機会という他ない。ぜひ今から第1シーズン・第2シーズンと全話振り返り、3月の再び起こる感動のステージへと足を運んでみよう。
取材・文:平原 学

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