驚きの実話! 90歳近い「運び屋」の
物語

クリント・イーストウッドが運び屋に挑戦 映画界のレジェンド、クリント・イーストウッド。俳優として大成功しているだけでなく、監督作でアカデミー賞(作品賞・監督賞)を二度も受賞しているという、まさにハリウッドの重鎮ともいうべき存在です。そんな彼は「自分が演じられる作品はない」と一時は俳優引退をほのめかしていたそうですが、再び自らメガホンを取り自ら主演したのが、この『運び屋』です。なんといっても、企画がユニーク。ヒントとなったのはニューヨーク・タイムズの別冊に掲載されたある記事。なんと、メキシコ最大の麻薬カルテルの運び屋として摘発されたのが、87歳にもなる老人だったのです。この事件からアイデアを得て、90歳近い老人が麻薬の運び屋として活躍する本作が製作されたというわけです。

 主人公のアールは仕事一筋で家族をないがしろにしてきた男性。高級ユリの生産者として名を馳せていましたが、数十年後、ネットの普及で家業は傾き、自宅も農園も差し押さえられていました。ボロボロのトラックを運転して孫娘の婚約パーティに顔を出すも、家族とケンカになりすごすご車に戻る始末。そこへ、ある若者から「簡単な仕事があるから」と運搬の仕事を紹介されます。全米の品評会を飛び回ったおかげで運転は得意と、軽い気持ちで荷物運びの仕事を引き受けますが、渡された報酬は信じられないほど高額でした。アールの運んでいたのは麻薬だったのです。

 のんびりマイペースなアールの運転は麻薬捜査官や警察の目をあざむき、アールは組織にとっても格好の運び屋となっていったのでした。アールの運ぶ麻薬の量は次第に多くなっていき……。
 このアール、よれよれっとした老人なんですが、スゴいのは実年齢88歳のイーストウッドが「老人っぽく見せるために」役作りをしなければならなかったということ。普段のイーストウッドはアスリートのようにきびきびしているので、あえて老人の演技をしているそうです。カルテルの若者たちにも親しまれるチャーミングな老人を愛嬌たっぷりに演じていますが、物語では、いかにもイーストウッドらしい家族のドラマもしっかりと描かれています。

 全体的に、のんびりとしたテイストで物語は進みますが、そこはやはり犯罪の世界。ドキドキハラハラする展開もしっかり訪れます。イーストウッドの映画は、とにかく「上手いなあ」とうならせる部分が多いのですが、今回も落ち着いていながらも巧みに見せていく演出で、その才能は健在だと思わされたのでした。
(文/吉田直子)
映画『運び屋』2019年3月8日(金)全国ロードショー
©2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

アーティスト

ブッチNEWS

新着