ギャング・オブ・フォーの
『エンターテイメント!』は、
数あるUKポストパンク作品の中でも
最重要アルバムのひとつ

ギャング・オブ・フォーのデビュー

ギャング・オブ・フォーは、ピストルズのジョニー・ロットン(現ジョン・ライドン)に影響されたヴォーカルのジョン・キング、ギターのアンディ・ギル、ベースのデイブ・アレン、ドラムのヒューゴ・バーナムの4人で77年に結成されている。エジンバラにあるインディーズレーベル、ファスト・プロダクトで最初のシングル「Damaged Goods」をリリースすると評論家やDJから絶賛され、大手レーベルEMIと契約することになる。このデビュー曲ではアンディ・ギルのシャープなギターワークとデイブ・アレンのファンクに影響された重量級のベースが中心となり、パンクというよりはすでにオルタナティブロックのスタイルとなっている。後にアンディ・ギルがレッド・ホット・チリ・ペッパーズのデビュー作のプロデュースを手掛けたのも、彼等の音楽性が時代を先取りしたものであったからであろう。

本作『エンターテイメント!』について

本作は79年にリリースされたギャング・オブ・フォーの記念すべきデビューアルバムである。ベースにしてもドラムにしても、ロック界ではそれまでにない全く新しい切り口の演奏が繰り広げられている。どちらかと言えば、ジェームズ・ブラッド・ウルマーの『ブラック・ロック』のようなジャズ寄りのファンクサウンドに近いかもしれない。祭りの時に奏でられる和太鼓に近いリズムを持っている曲もある。それにしてもアンディ・ギルの切れ味鋭いギターがリズムセクションと絡んだ時のテンションは凄まじく、呪術的ですらある。

アルバム収録曲は全部で12曲。前述の「Damaged Goods」はニューウェイブの香りもする本作中最もキャッチーなナンバーであるものの、ギルの鋭いギターはここでも容赦ない切り口で攻めている。唯一、出自が分かるのは「Glass」で、この曲のイントロとサビはバーズの「ロックンロール・スター」をモチーフにしている。バーズ好きのマイケル・スタイプ(REM)がギャング・オブ・フォーを好きなのは、案外そういうところかもしれない。アルバムの中で占有率が高いのは土着ファンク系のナンバーで、やっぱり彼らの代表的なスタイルである。

ニルヴァーナ、レッチリ、REMなど、オルタナティブ世代のスーパーグループが本作に影響されているのはよく知られているが、『エンターテイメント!』には普遍的なパワーがあり、そのサウンドは時代を超えた現代でも大きな影響力を持つことが分かる。故カート・コバーンは本作をオールタイムベスト50の一枚に挙げているし、レッチリのフリーは本作のベースを聴いて自分のプレイスタイルを見出したと語っている。彼らの音楽を聴いたことがないなら、この機会にぜひ聴いてください。

なお、『40TH Anniversary Japan Tour The Classic Album Played In Full』と題された来日公演は3月12日・13日の2日間(どちらも東京)となっている。

TEXT:河崎直人

アルバム『Entertainment!』1979年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. エーテル/Ether
    • 2. ナチュラルズ・ノット・イン・イット/Natural's Not in It
    • 3. ノット・グレイト・メン/Not Great Men
    • 4. ダメージド・グッズ/Damaged Goods
    • 5. リターン・ザ・ギフト/Return the Gift
    • 6. ガンズ・ビフォー・バター/Guns Before Butter
    • 7. アイ・ファウンド・ザット・エッセンス・レア/I Found That Essence Rare
    • 8. グラス/Glass
    • 9. コントラクト/Contract
    • 10. アット・ホーム・ヒーズ・ア・ツアリスト/At Home He's a Tourist
    • 11. 5:45/5.45
    • 12. アンスラックス/Anthrax
『Entertainment!』(’79)/Gang of Four

OKMusic編集部

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