INTERVIEW / VaVa 「ステージにラッ
パーとして立っているのが信じられな
い(笑)」――自身を「普通の人」と
称するVaVa。彼の素直な胸の内とは

THE OTOGIBANASHI’Sのメンバーらを擁するクルー、CreativeDrugStore所属のビートメイカーにしてラッパーのVaVaが2月20日(水)に2ndアルバム『VVORLD』をリリースした。
昨年、全て自身のビートで構成した『Virtual』、逆に海外のプロデューサーからのビートのみを使用した『Idiot』、tofubeatsYogee New Wavesの角舘健悟、BIM、OMSB、in-d、JUBEEなど、全曲に客演を招いた『Universe』と3枚のEPをリリース。初のラップ披露となった前作『low mind boi』から一転、ドリーミーなビートや開放感溢れるトラックに、オートチューンを駆使したメロウなフロウを乗せた作風で、より広い層へのアプローチに成功したように思える。
そして満を持してリリースされた本作『VVORLD』には、これまでのEPでトライしてきた音楽性をさらにブラッシュアップさせたような洗練ぶりと、より詩的な表現溢れるリリックが印象的な力作だ。中には“いわゆる”ヒップホップ的な価値観とは距離を置くような、素直な表現も溢れる本作には、VaVaという人間そのものの魅力がストレートに反映されているように思えてならない。
今回はそのVaVaにインタビューを敢行。こちらの様々な質問に対して、楽曲同様に飾らない姿勢で、丁寧に言葉を紡ぎ出してくれた。
Interview & Photo by Takazumi Hosaka
生活の変化から“挑戦”のEP制作へ
――昨年1年はEP3枚をリリースし、これまで以上に大きな注目を集めることになったと思います。VaVaさん自身から見て、昨年はどういう1年でしたか?
VaVa:EP3枚リリースして、今年アルバムを出すっていう流れを〈SUMMIT〉の増田さんと先に決めたので、その目標に向けてひたすら頑張ってたっていう感じですね。ずっと楽曲制作をしているので、あまり外にも遊びに行けないですし、ひたすら家で作業している……っていう1年でした。特に後半はそんな感じです。
――では、そのEPを3枚リリースしようというのはどういうキッカケから決めたのでしょうか?
VaVa:(昨年1月に発表した)「Call」ですね。前作『low mind boi』はラップを始めて2ヶ月で作ったアルバムだったんですけど、あの作品は自分のマインドに向き合った作品だったんです。というのも、僕はその前まで仲間たちと共同生活をしていたんですけど、それが上手くいかなくなっちゃって、僕がひとりでそこから抜ける形になったんです。その時に、「このままだと自分には何もないぞ」って思ったところから始まったというか。だから、暗いとまではいかないですけど、あまりみんなで歌って盛り上がるっていう作品ではないんですよね。
VaVa:まぁ、今思えば、男4〜5人の共同生活なので、そりゃあみんなストレス溜まりますよね。僕が先にひとりで抜けたからといって、僕が悪いとか、逆に残りのメンバーが悪いとかでもなくて、全員の責任というか。でも、あの経験があったからこそ今があるなって思えるようになりました。その後『low mind bo』をリリースして、ライブをするようになってからは、もっとアガるような曲を作りたいなって思うようになって。僕自身は元々そういう曲も好きなので。それで2018年の元旦に、暇だからお雑煮でも食べながらビート作ってみようかなってPCに向かってできたのが「Call」です。それを増田さんに送ってみたらいい反応をもらえたので、これを機に作ってみようかなって。それまで、『low mind boi』を出してからは曲を作ってなかったので。
――それが新しいモードに入るキッカケみたいなものにも繋がったと。
VaVa:『low mind boi』は野望というか「やってやるぞ」っていう、外に対してある種牙を向いたようなアルバムって感じだったんですけど。それをリリースして、1年くらいライブしたり遊んだりした結果、今度はもっと自由にリラックスした気持ちで作ってみるかっていう考えになったんだと思います。あとは、(前作リリース後は)結構インプットも意識的にしていたつもりなので、「こういう曲作ってみたい」とか、そういうのがどんどん溜まってきたんですよね。その時のアイディアの蓄積みたいなのが、今回のEP3枚とアルバムのリリースに繋がってるんじゃないかなって思います。
――「Call」を発表した当時の反響や周囲のリアクションは、VaVaさん自身はどのように感じていましたか?
VaVa:特別な感じがあったかと言われれば別にそんなこともないんですけど、周りの友達とかが「いいね」って言ってくれるのが嬉しかったですね。やっぱりラッパーってカッコつける文化だし、自分もそういうところに惹かれて始めたし、前作ではそういうカッコつけてる部分もあったんです。でも、それでライブをしていく中で、「おれ、そんなにカッコよくないよな」って思うようになって。だったら1回そういう素直な曲を作ってみようかなっていう軽いノリで作ったっていう感じだったので。
――「Call」に続いて、3月には「現実 Feelin’ on my mind」を発表します。この曲はメロウなトラックに乗せて、ゲームへの愛情を綴ったかのようなリリックが印象的ですが、“いわゆるヒップホップ”的なものとは離れたトピックについて、正直に綴ることについて、何か戸惑いや不安などはありましたか?
VaVa:自分自身が納得していて、あとはやっぱり周りのみんなが評価してくれたので、特にそういう気持ちもなかったですね。逆にすごい再生数回っても、友達とかが褒めてくれなかったら不安になると思いますね。
―― FNMNLのインタビュー(http://fnmnl.tv/2018/06/08/54109) では、共同生活をしていた時は「取り憑かれたように」制作をしていて、精神的にも余裕がなかったと語っていましたよね。そこから実家に戻って以降は、精神的にもいい状態をキープできていますか?。
VaVa:はい。たぶん……性格自体も変わったんじゃないかってくらい(笑)。仲間と共同生活していた時期は増田さんともあまり喋ったことなかったですし、「VaVaちゃんってこういう人だったの」って言われたのを覚えてるんですよ。いつも逃げ腰というか、本心をあまり出さないような性格だったんですけど、それが素直に何でも話せるようになったというか。『low mind boi』も今回のアルバムも、その前のEP3作も、根底には「やってやるぞ」っていう野心というか、強い気持ちは一環としてあって。ただ、『Virtual』からはその感情の使い方みたいなものを変えたっていう感じですね。それをそのまま表現するんじゃなくて、原動力のようなものに変換するというか。
――ちなみに、今回のアルバムに収録されている新曲は、EP3作の制作時期にできたものもあるのでしょうか?
VaVa:それがほとんど被ってなくて。(EP3作の最後を飾る)『Universe』をリリースしたのが12月26日で、その日からアルバム『VVORLD』の制作に取り掛かりました(笑)。「Blend」は1バースだけできてて、「Dry Ice Vibe」と「Pac man」はトラックだけもらってる状態でしたけど、あとはイチから作りましたね。なので、実質1ヶ月かかってないくらい。普段からビートとかもあまりストックしないタイプなんですよ。BIMの「Bonita」とかKID FRESINOの「Retarded」、ERAさんの「Drop」とか、他のアーティストさんに提供させてもらったビートも、元々は自分用に作っていたものだったりするので、中々時間がないんですよね。
――というか、とんでもなくスピーディーな制作スケジュールですよね。
VaVa:周囲からは確実に間に合わないと思われてました(笑)。
――『Virtual』は全て自分のビートで、ラップも自分だけ。『Idiot』は全て海外のプロデューサーのビートを使用。『Universe』は自分のビートですが、全ての楽曲に客演を招くといったようにEP3作はそれぞれコンセプチュアルなものになりましたよね。この3作について、それぞれVaVaさんはどのような作品だと言えるでしょうか?
VaVa:全部そうっちゃそうなんですけど、『Virtual』と『Idiot』に関しては“挑戦”っていう印象が大きいですね。『Idiot』なんて全部海外のプロデューサーからビートをもらっているので、全く新しい試みでしたし。『Universe』に関しては憧れてたtofubeatsさん、角館(健悟)さんとやっと一緒に仕事させてもらうことができたし、あとはオムスくん(OMSB)や仲間たちと作り上げたっていう感じですかね。基本的にみなさん素晴らしくて、「僕からは何も言うことないです」みたいな感じでしたね。「Virtual Luv」の場合、僕が中高6年間男子校で、まぁモテなかったので、何となくその当時を振り返ったリリックというか、ポエムみたいなものを「こんな感じで考えています。いかがでしょうか?」ってtofuさんに送ったら、めちゃスピーディーに1バース書いてくださって。「スゲー!」みたいな(笑)。角館さんとは制作の前に1回お会いして、遊んだんです。「二郎」食べに行ったり(笑)。『Universe』は3枚の中でも結構スムーズに完成させることができた作品と言えるかもしれないですね。
――VaVaさん自身が手がけたトラックに関して言うと、ブラスの使用が目立ったり、よりドラマチックな楽曲が増えた印象です。
VaVa:ありがとうございます。昨年。『ドラクエ』のオーケストラをひとりで観に行った時に、すごく感動したんです。8ビットのピコピコ・サウンドがオーケストラになった時に、何て言うんでしょう……ただ聴いてるだけで涙が出てくる、みたいな(笑)。元々ゲーム音楽とオーケストラが合うのもわかってたし、ゲーム音楽とヒップホップの組み合わせもすでにやっている人がいて。ということは、ゲーム音楽とオーケストラとヒップホップは混ぜられるんじゃないかって思ったんです。それからオーケストラ系の温かみのあるサウンドを求めて、そういう音を集めたりもしたんですけど、その中でも結局はブラス系の音が自分にはシックリきて。
――FNMNL主催のイベントではBrasstracksとも同じステージに立ちましたよね。
VaVa:はい、めっちゃ好きです(笑)。
――あとは、「Call」以降のリリースではオートチューン使いがすっかり定着しましたよね。ひとつのスタイルとして確率されたと言えるのではないでしょうか。
VaVa:メロディアスなモノが好きっていうのは、(ラップをする前の)ビートメイカー時代からそうで。僕みたいにメロディを好むラッパーにとって、オートチューンは素晴らしいソフトですよね(笑)。初めて使ったのは「93′ Syndrome」なんですけど、使ってみたらもう……最高で。
――あれ? でも「Call」や「現実 Feelin’ on my mind」でもオートチューンは使われていますよね?
VaVa:あ、そうか。実は発表した順番と違って、「93′ Syndrome」はその2曲よりも前に作っていたんですよ。『low mind boi』が完成して、リリースされる前くらいにはできてたはず。MV制作にすごく時間がかかったんですよね。〈SUMMIT〉の増田さんと「こういう方向性を磨いていった方がいいかもね」っていう話をしたのを覚えています。
――そうなんですね。「93′ Syndrome」はリリックもとても詩的かつ散文的な表現が多い印象を受けました。個人的には、あの曲のリリックからは何かこれからを宣言するようなイメージも感じられたのですが、フックの「もう幕は上がるけど/俺は待つ」という部分だけ少し違和感があって。幕が上がるから「俺は行く」のではなく、「待つ」と綴った本意が気になります。
VaVa:あ〜。なるほどです。「93′ Syndrome」の「93」っていうのはもちろん僕の生まれた年、1993年のことなんですけど、僕はTHE OTOGIBANASHI’Sに出会う前にラップ・グループをやっていたことがあって。……僕らが今やっていることって、ある種の「夢」からスタートすることじゃないですか。でも、一緒にやっていく中でみんな歳を重ねていって、どんどん大人になっていく。会社で働きだしたり、彼女と同棲して結婚を考え始めたり。そういうのも僕は全然ネガティヴに捉えてなくて、むしろポジティヴに考えていたんです。でも、昔つるんでたやつらと話してみると、「何もやることがない」とか、みんなそれぞれ色々な悩みを抱えるようになっていて。それが僕の目には病気が広がっていっているように見えたんです。なので、「93」に「症候群」っていう意味の「Syndrome」をつけて「93′ Syndrome」にしました。みんなは人生を進めていくけど、僕はまだ夢を追いかけていたいというか、こっちの世界で生きていきたい。もちろんそれが正解かどうかなんてわからないし、その先には地獄が待っているかもしれない。それでも、まだ僕はみんなとまた夢を追いかけることを望んでしまうんです。
――なるほど。
VaVa:あと、すごく仲のいい人に、「VaVaは音楽で食っていくの?」って訊かれた時があって。「この先どうなるかわからないし、仕事しながらでもいいんじゃないの?」って言われたんですけど、「いや、今はこっちに賭けてみたいんだよね」って返したんです。なので、そういう人たちに「今は中々会えないけど、本当はまたみんなとこういうことやりたいんだよね」っていう気持ちの曲です。ちょっと寂しい、みたいな(笑)。
「なるべく自分に嘘をつくことなく、生きていきたい」
――何ていうか、すごく素直ですよね。今作のリリックを改めて文字で見返した時も、カッコつけた言葉でいうと自分の心内を曝け出したような表現が多いなと感じました。「つよがりのゆくえ」なんかは特にそれが顕著です。
VaVa:流石にこのペースだとリリックを書くのも大変なので、常日頃から何か思いついたらメモに残すようにしているんです。「つよがりのゆくえ」は、中学生くらいの時、全然学校が楽しくなかった時のことをリリックにしています。強がっていた時の自分についてですね。
――そうなんですね。「つよがりのゆくえ」は逆にすごく現代的な内容なのかと思ってしまいました。いわゆるSNS社会というか、そういった現状を描写しているのかなと。
VaVa:あぁ、なるほど。「フォロワー0人のアカウントで〜」っていうラインとかもありますもんね。……そうか、そういう読み取れ方もできるかもしれないですね。ヤバい、自分、すごい深いこと言ってるじゃないですか(笑)。
――ハハハ(笑)。でも、確かに過去を振り返るようなリリックも多いですよね。ノスタルジーを感じさせるというか。
VaVa:制作中って、基本ひとりで自分の部屋にいることが多いじゃないですか。そうなると、悲しい記憶とかよりも、楽しかった思い出とかの方が蘇ってきがちなんですよね。「Chapter」とか「Ziploc」「Blend」なんかもそうですし。
――「Chapter」は確かに過去を振り返ると同時に、VaVaさん自身のこれからを見据えているようにも感じられます。それこそ人生のチャプターを進めていく、みたいな。
VaVa:これは死ぬまで続いていく内容で。例えば、今僕がやっているような音楽活動って、中学生くらいの時に買ったヒップホップのMVが入ってるVHSビデオの映像とかを観て、「カッコいいな〜」って思ったりするところからスタートすることが多いと思うんです。でも、果たしてその当時、中学生くらいの僕が今の自分を見た時に、同じように「カッコいい」って思ってくれるのかって、ふと考えた時があったんですよね。そう考えると、死なない限りは永遠に続いていくと思うんです。今の僕が10年先の自分を見た時に、果たして「カッコいい」と思えるのか、っていう感じで。やっぱり、こうやってアーティストとしてやっていく以上、ダサいことはしたくない。恥ずかしいじゃないですか。なので、なるべく自分に嘘をつくことなく、生きていきたいっていう。
――断定とか、強い口調を使わないのもVaVaさんらしいポイントだと思います。
VaVa:不安なんで(笑)。例えば、仮に「おれはおれだからいつでもカッコいいゼ」みたいなリリックを書いたとして、10年後の自分がそれを見たら何だか悲しくなってしまいそうで(笑)。
――でも、それもすごく“今っぽい”感覚のような気がします。一方で、「Honey」「Ziploc」「Dry Ice Vibe」のようなロマンチックなリリックも増えてきた、目立ってきたような気がします。こういったリリックが自然と出てきたというのは、やはり生活環境だったり精神的な部分が穏やかになったからなのでしょうか? それこそ、先程おっしゃっていた『low mind boi』制作時の感情とはかなり距離があるというか。
VaVa:そうですね。なぜこういうリリックが出てきたのか……難しいですね。たぶん、少しずつ自分が救われてきたからなのかなって思います。別に特別な自覚があったわけではないんですが、振り返ってみるとそうなのかもしれないです。
――「救われた」とは?
VaVa:『low mind boi』を作って、「自分のアルバムがタワレコで売られるぞ! すげー!」「これで人生変わるかな?」とか、そういうこと考えてたけど、実際は「全く変わんねー!」って(笑)。いわゆる“自分がなりたい自分”に全然近づけなくて。でも、最近ではそれが少しずつ報われてきたのかなって。
VaVa:改めて考えてみると、確かに今回のアルバムには昔の僕だったら書かないようなリリックが多いですね。でも、かといってただポップなだけのリリックを書いたつもりもないし、何度も聴ける作品になったんじゃないかなって思います。何か、いわゆる売れそうな、もっと聴き心地のいい、綺麗事なリリックも書こうとすれば書けるのかもしれないですけど、たぶん曲を作った後、自分で聴くのが嫌になっちゃうと思います。自分らしさが出てるとか、自分を素直に出しているっていうのは、そういうところに繋がってるから何じゃないかなって思いますね。
――自分の作品ってよく聴き返しますか?
VaVa:めちゃくちゃ聴きます。最近、アルバムのマスターが届いてからはどこ行く時もずーっと自分のアルバムを聴いてます(笑)。もちろん、ライブのためにリリックを覚えるっていう名目もあるんですけど、実際はそういう意識はなくて、普通に日常的に聴いちゃってるんですけど。自分が考える「いい曲」を作って、それがたくさん入ったアルバムなので、いいに決まってるんですよね(笑)。逆に『low mind boi』も、もし今後僕が挫折したりとかして、また落ち込んだりした時に聴いたら、「もっとやってやる!」って感じでめちゃめちゃフィールするかもしれないですね。今は『VVORLD』のモードですけど、どちらも自分であることは間違いないので。
――「Pac man」では自身のことを「俗に言うアーティストでも普通な人」と綴っています。しかし、その「普通な人」であるVaVaさんが、多くの人から作品を称賛され、期待され、リリパのチケットもすぐに売り切れるなど、実際に人気を獲得してきたという事実について、ご自身ではどう感じていますか?
VaVa:……正直、まだ「本当に?」って思ってますね(笑)。「こんなの当然っしょ」っていう感じで引っ張っていくタイプでもないですし、本当にみんなのおかげ。KID FRESINOとかtofuさん、okadadaさん、オムス君、shakke & wardaa、C.D.S.(CreativeDrugStore)のおかげでしょ、っていう気持ちが自分の中にある。だから、逆にリリパとかは怖いですよね。自分がメインのイベントなので「カマさなければ……」っていう。もちろん嬉しいんですけど、それに気づいた時に、さらに新たな課題が自分に降り掛かってくる、みたいな。
――すでに昨年の後半に行ったライブ、先述のFNMNLのイベントや、渋谷VISIONの“trackmaker”でもかなり会場を沸かせていて。個人的にはすでに「カマされ」まくっているのですが(笑)。
VaVa:本当ですか? ステージ上だとあんまりわからないんですよね……。よく「あの時よかったよ」とか言ってもらえることもあるんですけど、「え? 本当に?」ってなっちゃうんですよね。手応えあるライブの時は「なんとなくよかったかもなぁ」くらいの気持ちはあるんですけど。「あの曲が〜」とか「歓声が〜」とか言われても、たぶんそれをステージ上で自覚できる余裕がまだないんでしょうね。全然わからないんです(笑)。
「たぶんこの先もずっと満足はしないんだろうなって」
――では、今後の話についてお聞かせ下さい。これからも創作活動を続けていく中で、今の時点ではどういった精神状態がベストだと思いますか? 例えば『low mind boi』を作っていた頃の、少し落ちた状態。何クソ精神のような気持ちを抱えている状態なのか、それともさっき「救われた」とおっしゃっていたように、ある程度安定した気持ちが続く状態なのか。
VaVa:難しいですね……。でも、たぶん全部心地いいと思います。『low mind boi』の時も、今振り返って見ると楽しかったんですよね。例えば、自分がイジメられたとして、それと同じ方法でイジメてきたやつにそのまま仕返しするのって、たぶん気持ちいいと思うんですよ。でも、気持ちよくてもそれは実際にやっちゃいけないことなんですよね。そうじゃなくて、そういう負の感情を音楽に変えたりすると、ものすごい原動力になるんですよ。それでいい曲がドンドンできていく時はすごく楽しいんですよね。逆に今は平和な感じで過ごせていて、仲間といても楽しいですし、仲間たちと素で話せるようになった。結果的に見れば、今の方が幸せなのかもしれないですけど、でもきっと無い物ねだりなんでしょうね。何か、たぶんこの先もずっと満足はしないんだろうなって最近思うようになりました。お金いっぱい持ってて、温かい家庭があっても悩みを持っている人っていっぱいいるだろうし。人間って大変ですよね(笑)。
――ハハハ。本当にそうですね(笑)。
VaVa:あとは、やっぱりこれだけ短期間でたくさんの曲を作れたっていうのは、ずっとビートメイカーとしてやってきた経験があるからだと思うんです。6年くらいCreativeDrugStore周りのみんなに作り続けてきたし、それが今に繋がっている。全部ひとりでできるようになったんで。
――ビートメイカーとして音楽のキャリアをスタートさせたVaVaさんですが、今後はそのキャリアをどのように展開していきたい、もしくはどのように展開していくと考えますか?
VaVa:僕、ラッパーっていう意識が全然なくて。ステージにラッパーとして立っているのが信じられない(笑)。元々目立ちたいしモテたいけど、目立ちたくないっていう謎にワガママな性格なんです。できれば、誰にも会わないところでひとりで暮らしたいっていう気持ちもあって。なので、全然まだまだ信じられないし、これからもラッパーとして生きていきたいっていうような強い想いもあまりなく。ゆっくりと好きなことをやり続けられればいいかなって思います。
――「ゆっくりと〜」と言いながらも、昨年から今年にかけて3枚のEPとアルバムをリリースしてきたVaVaさんですが、この後の展望などはいかがですか? 何か見えてきていることはありますか?
VaVa:やっぱりラッパーっていうよりはビートメイカーっていう意識の方が強いので、プロデュース力だったり楽曲制作の力をもっとつけないとな、って思いますね。なおかつ、VaVa名義でも何かおもしろいことはしたいですし、あとはインプットの期間にも充てたい。でも、こういうこと言っておきながらすぐ(新作を)作ったりするかもしれないので、そこはわからないですね(笑)。
――ビートメイカー/プロデューサーとして、何か具体的に学びたいことなどはありますか?
VaVa:楽器ができるわけではないので、そういう面も学びたいんですけど、自分が好きじゃないことはすぐに諦めてしまうタイプなので、なるべく無理のない範囲で(笑)。
――「Blend」などにはギターの音色が大胆に使われていますが、あれもサンプリングで?
VaVa:所々弾いた音源も使ったりしてるんですけど、基本は全てサンプリングですね。
――アルバムの最後を飾る「NES」は、そのタイトルも相まってゲーム『MOTHER』シリーズの音楽を強く想起させますが、あれはサンプリングではないですよね?
VaVa:そうですね。サンプリングではないです。タイトルの「NES」って、『MOTHER2』の主人公の名前でもあるんですけど、同時にファミコンの海外での名称でもあって(Nintendo Entertainment Systemの略)。スーパーファミコンが海外だと「SNES」で。あの曲は、僕の音楽がキッカケで、ファンの人たち同士が繋がったりしてくれるのがめちゃくちゃ嬉しくて、その気持を書いてます。僕のことはいくらでもダシにしてくれてもいいので、いっぱい楽しいことしてね、みたいな(笑)。
――確かに、ファンの方、自分の音楽を聴いてくれた人たちへの感謝の気持ちが伝わってきます。
VaVa:でも、それを「ありがとうありがとう」っていうと、やっぱり自分が恥ずかしくなっちゃうんで(笑)。あれが僕なりの表現です。
【リリース情報】

VaVa 『VVORLD』

Release Date:2019.02.20 (Wed.)
Label:SUMMIT, Inc.
Tracklist:
1. Welcome to VVORLD Prod by VaVa
2. Chapter Prod by VaVa
3. 現実 Feelin’ on my mind Prod by VaVa *『Virtual』収録
4. Virtual Luv feat. tofubeats Prod by VaVa *『Universe』収録
5. Honey Prod by Rascal
6. Hana-bi feat. BIM Prod by VaVa *『Universe』収録
7. Dry Ice Vibe Prod by Chris Falcone
8. Pac man Prod by Marvin Cruz
9. 8 bit Cherry Prod by Mantra
10. ロトのように Prod by KINGBNJMN *『Idiot』収録
11. つよがりのゆくえ Prod by VaVa
12. 星降る街角 feat. 角舘健悟 Prod by VaVa *『Universe』収録
13. Ziploc Prod by VaVa
14. Blend Prod by VaVa
15. 93′ Syndrome Prod by VaVa *『Virtual』収録
16. NES Prod by VaVa

※フォーマット:2枚組CD / DL / Streaming

※Disc 2:Instrumental VVORLD(全曲のインストゥルメンタル・ヴァージョンを収録)
※CD初回プレス封入特典「落ちてるバット」
※タワーレコード・オリジナル購入者特典:VaVa ステッカー
■ リリース詳細(https://www.summit2011.net/vava/)

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『心が震える音楽との出逢いを』独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介。音楽ニュース、ここでしか読めないミュージシャンの音楽的ルーツやインタビュー、イベントのレポートも掲載。

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