明治座『水谷千重子50周年記念公演』
開幕! 宮迫博之を彷彿させる演歌歌
手や友近もエール

「万博ササニシキ」での華々しいデビューより50年。水谷千重子の明治座初座長公演、『水谷千重子50周年記念公演』が、2月22日に開幕した。千重子にゆかりあるキャストも顔を揃え、芸能生活の節目のステージを華やかに盛り上げる。この公演に先駆け、千重子と近しい関係にある友近からは、「常に新しいことをやりたいのよね。応援してる」とエールがあったとか。
公演終了後には、会見が行われ千重子の他、宮迫博之を彷彿させる、台湾出身のオネエ演歌歌手 春澪、原田龍二、YOU、あご勇、バッファロー吾朗A、シソンヌ、尼神インター誠子、そして、田山涼成、高橋ひとみも登壇。公演の模様とともに、会見のコメントを紹介する。
明治座の前ではためく、水谷千重子のノボリ。
本公演は、途中休憩をはさみ2部構成。
第一部:お芝居ステージ「とんち尼将軍 一休ねえさん」(120分強)
第二部:歌のステージ「千重子オンステージ 歌えばコブシの花が咲く」(60分程度)
初日の明治座は千重子の50周年を祝うファンの熱気に包まれていた。館内には売店が軒を連ね、お弁当や和菓子、千重子のオリジナルグッズを販売するブースも。客席に足を踏みいれると、テーマパークのパレードが始まろうかというBGM。そして始まった明治座『水谷千重子50周年記念公演』。
「皆さまに愛され50年」とのナレーションとともに、千重子の芸能生活を映像で振り返る。デビュー当時のあどけない千重子、数々のスターとステージを共にする千重子。なつかしの映像に、笑いと歓声が上がる中、「とんち尼将軍 一休ねえさん」の幕が上がった。
フェイスパックからエンディングノートまで、豊富なオリジナルグッズ。
とんち尼将軍 一休ねえさん
時代は、江戸の中頃。江戸の町人たちのダンスパフォーマンスで一気に盛り上げ、舞台は越後膳屋の屋敷へ。お寺からの使いできた小坊主(シソンヌ。じろう、長谷川忍)に、無理難題をふっかける越後膳屋の主人(田山涼成)と、主人の愛娘(高橋ひとみ)。
じろうは、奔放な演技で爆笑を誘い、時に共演者をもたじろがせる。長谷川は、場面場面を手堅くまとめ、安心して笑わせてくれる。小坊主は、ハリセンボン、ずんとシソンヌのトリプルキャスト。「このシーン、あの人ならどうやるだろう」と想像するだけで笑いがこみ上げる。
田山と高橋は親子役。田山は、安定の演技で舞台のクオリティを担保しつつも、千重子50周年の舞台を心から祝い、一休ねえさんの敵役を楽しんでいる様子。高橋は、19歳の役どころ。笑いにつぐ笑いをさらりとこなしながらも、コントではなく喜劇に仕上げるところがさすが。
そんな越後膳屋の屋敷に登場するのが、一休ねえさん(水谷千重子)。とんちでその場を解決してみせる。一休ねえさんのとんちは、和尚さん(バッファロー吾朗A)こそ少々手を焼いているが、小坊主だけでなく、お侍の竜右衛門(原田龍二)にも頼りにされている。そんなある日、お寺に、旅の薬師(YOU)が訪ねてくるのだった。
YOUは、誰よりも自然体のまま、一休ねえさんの世界観に溶け込んでいた。原田は二枚目の顔と美しい身体を乱用し、隙あらば上半身裸になる侍を熱演し爆笑をさらう。これが原田の新境地なのか、あるいは隠していた素顔なのか、興味は尽きない。
さらに一休ねえさんには、もう1つの顔がある。素性を隠し、遊郭で花魁をしているのだ。回り舞台によるダイナミックな場面転換は、観る者を楽しませる。尼神インター誠子(ゆりやんレトリィバァとダブルキャスト)の花魁も登場し、全キャラクターに見せ場があり、クライマックスには阿吾助や和尚も大活躍の派手なアクションシーンも用意されている。フィナーレはオールキャストでパラパラダンスを披露。観客は手拍子で参加した。千重子の、青々とした坊主頭の愛らしさ、花魁姿の美しさ、大舞台を所狭しと駆け回り、とんちで客席と絡み、歌い踊るエネルギーに、明治座を揺らす万雷の拍手が贈られた。
大輪のコブシの花咲く歌謡ショー
盛りだくさんのお芝居ののち、休憩をはさんで第二部は『千重子オンステージ』。電飾がまぶしいステージで、生バンドをバックにまずは「万博ササニシキ」を披露すると、続いて五社英雄監督の『吉原炎上』を彷彿させる「五月雨道中」を熱唱。香西かおりの「標ない道」は、ストリングスが印象的なメロディで切なく聞かせる。
さらに50周年を祝うべくゲストの春澪も登場し、パワフルに「ロンリーチャップリン」をデュエット。ふたりの歌声が客席を魅了。MCでは客席に絡むばかりか、客席から千恵子がふつうに話しかけられることも。ファンとの距離の近さに春澪は驚くが、「千重子のお客さんは口々にしゃべるの」と千恵子は余裕の笑顔だった。
会見の水谷千重子(中央)と春零(後列中央)
終演後の会見で千重子は「お客さんがテンション高く喜んでくれてちょっと安心しました。結構長丁場でしたが、しっかり観てくれて、最後までのって、楽しんでくれて幸せな時間でした」と語った。原田は「お客さまには喜んで頂けたと思います。それよりも! 稽古場から千重子先生のふくらはぎにやられちゃいまして!」と、話を脱線して千恵子の美脚を大絶賛。
田山は「水谷先生に比べれば、僕なんかまだ若手。若い気持ちで思い切りやらせていただきました」と。「先生には本当に良くしていただいて」と語るのはYOU。「大満足。もう終わった時のことを考えて淋しいです」と答え、一同から「はやい!」と突っ込まれていた。高橋が「明治座も、19歳の役も初めて(笑)。本当に楽しいです!幸せです!」と笑顔を見せると、キャストは口々に「かわいい!」「チャーミング!」とコメント。
尼神インター誠子は「美人花魁という役をいただき、稽古場から皆さんに可愛いねといっていただけて、ずっとここにいたい」と、おしとやかに答えるも、劇中に誠子が自身の顔を、先輩芸人のほんこんに例えた話題に飛び火。春澪に「雌のほんこん」と認定され、一同は爆笑。さらに春澪は、お芝居で使われた舞台セットの豪華さに驚いていた。シソンヌ長谷川は「真剣にやってるので役が抜けない、憑依型で演じさせてもらってます」と語ると、じろうは劇中のキャラになり距離感の狂った大きな声で挨拶をした。
バッファロー吾朗Aは、稽古場では千重子のダジャレで何度も稽古が中断したことを明かし「先生には元気をもらいっぱなし」と頭を下げる。あご勇は千重子の初代付き人なのだそう。「先生はどんどんきれいになっていく。小坊主で出てきたときにグッときたのは僕だけでしょうか。非常にエロっぽい!」と熱弁。千重子は「やだやだ、バカ言ってる!」とお決まりの台詞で切り返してみせた。
千重子にとっては、初めての明治座での座長公演。
「いい空気感で、皆さんが能力出し切ってやってくださる。こんな楽な座長はない50年、やってきて良かった」とメンバーへの感謝を述べた。
記者会見まで含め、“水谷千重子”をまっとうした千重子。「50周年記念公演」は、千重子のエンタテイナーとしてのプロ意識に引き寄せられた、歴史ある劇場、毎公演1300人を超える観客、豪華キャストの全員の理解と笑いで作り上げたもの。「夢芝居」という言葉がふさわしい、充実の公演だった。若干枚ではあるが当日券も販売されるという。55周年、60周年の記念公演にも意欲的なコメントがあったので、今後の活動にも注目したい。

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着