【ライブレポート】THE MAN、究極の
フォーメーションでHR/HM祭り

ANTHEMの変名トリビュート・バンドTHE MANが、スペシャル・ライヴ<THE MAN ULTIMATE FORMATION>を行った。

2016年にANTHEMの別働隊として<HEAVY METAL SOUNDHOUSE 2016>でライヴ・デビュー、<HEADSTRONG FES.18>や<HEAVY METAL SOUNDHOUSE 2018>などのイベントに出演、11月には単独ツアー<1st ATTACK TOUR>も行っている彼らゆえ、変名バンドといえどファンへの浸透度はバッチリだ。ゲスト・プレイヤー達を迎えての「究極のフォーメーション」と題されたライヴの会場はほぼ満員と言っていい盛況ぶりで、開演前のフロアーには心地よい緊張感が漂っていた。
往年のメタル・クラシックスをバンドと観衆で楽しむというコンセプトのライヴ。どんなバンドのどんな曲をプレイするだろう?...と想像を巡らすところから、既にショーは始まっている。場内が暗転、バンドが駆け込むようにステージに登場して、ジューダス・プリーストの「ヘリオン」が鳴り響くと、どよめきと同時に大きな声援が上がった。
「エレクトリック・アイ」「ブレイキング・ザ・ロウ」「ターボ・ラヴァー」と、いきなりのプリースト・メドレーで度肝を抜く。アレンジは決してオリジナルから大きく逸脱するものではないものの、森川之雄が自らのヴォーカル・スタイルで貫き通し、清水昭男とコンチェルト・ムーンの島紀史によるツイン・ギターも自分たちの個性を隠そうともしない。もちろん観衆の求めているものは“ジャパニーズ・メタルの猛者たちによるメタル・クラシックス”なので、このアプローチは大正解である。森川のステージMCも洋楽メタルに縛られることなく、「オラー、ガンガン行くぜーッ!」という、ピュア・ジャパニーズ・スタイルだ。

柴田直人もタイトに低音部を支えながら、オリジナルのベース・ラインに随所でヒネリを加えて、全体のノリにANTHEMらしさを加味していた。

それにしてもしみじみ考えさせられるのは、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの名盤・名曲を生んできたアーティスト達の少なくない数が物故者となっていることだ。ゲイリー・ムーア&フィル・ライノットの「アウト・イン・ザ・フィールズ」とユーライア・ヒープの「七月の朝」は、GALNERYUSのYUHKIによるキーボードの調べを得て、哀感を増している。実際、この日プレイされた曲の多くはオリジナルのミュージシャンのひとり以上が亡くなっている。ただ、この日のライヴは追悼などという湿っぽいものではなく、むしろ偉大なる先達が生み出した音楽へのセレブレーションだった。

ステージ上の面々が浮かべるスマイルからも、彼らが楽しみながらプレイしているのは明らかだったが、それは決して楽をしているのではない。GALNERYUSの小野正利が歌ったディオの「ウィ・ロック」とヒューズ/スロールの「ルック・イン・ユア・アイズ(瞳の叫び)」、そしてレインボーの「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」はいずれもロニー・ジェイムズ・ディオとグレン・ヒューズという、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル史上最高のヴォーカリスト2人が歌った曲だ。声域・表現力・エモーションなどあらゆる面において難易度の高い楽曲を歌いこなすのは、チャレンジ精神の賜物だといえる。
「サンダー・アンド・ライトニング」「コールド・スウェット」というシン・リジィ2連打に続いて、「レディ・トゥ・ロック」「ドクター・ドクター」というマイケル・シェンカー2連打が繰り出される。ちなみにこの日演奏された曲で「ルック・イン・ユア・アイズ(瞳の叫び)」と「ドクター・ドクター」の2曲のみが、オリジナルを録音したバンドのメンバー全員が存命の曲である(ライヴ当日の時点で)。

ライヴ本編のラストはディープ・パープルの「紫の炎」だ。出演者全員がステージに上がり、それぞれがスーパー・プレイを披露する超豪華ヴァージョンは、ショーの大団円と呼ぶに相応しいものだった。

だが、祭りはまだ終わらない。アンコールではANTHEM組によるモーターヘッドの「アイアン・フィスト」とジューダス・プリーストの「ユーヴ・ガット・アナザー・シング・カミング」のワンツー・パンチを経て再び出演者全員が集結、レインボーの「オール・ナイト・ロング」で締め括る。ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの名曲オンパレードの1時間50分、リアルタイムを知るオールド・ファンの腰と膝に堪えそうなオールスタンディングのライヴだったが、時間が経つのを忘れる...というありがちな表現を使いたくなるほどアッという間のショーだった。
この日の公演は“ライヴ・レコーディングGIG”と銘打たれ、後々商品化されることが決まっている。プロフェッショナル歴の長い彼らゆえ、気負いすぎることはなかったが、単なるカヴァー曲大会に終わらない入魂のパフォーマンスは濃密なものだった。今後THE MANがどんなゲスト・プレイヤーを迎え、どんなカヴァー曲をプレイするか?バンドの未来に期待が高まるライヴだった。

文:山崎智之
写真:Takumi Nakajima

<THE MAN ライヴ・レコーディングGIG -ULTIMATE FORMATION-2019年2月8日@新宿LOFT>
1.Hellion~Electric Eye
2.Breaking The Law
3.Turbo Lover
4.Out In The Fields
5.July Morning
6.We Rock
7.Look In Your Eyes
8.A Light In The Black
9.Thunder And Lightning
10.Cold Sweat
11.Are You Ready To Rock
12.Doctor Doctor
13.Burn
(Encore 1)
14.Iron Fist
15.You've Got Another Thing Comin'
(Encore 2)
16.All Night Long

ANTHEM『NUCLEUS』

3月29日 世界同時発売
【通販500セット限定 直筆サインカード付CD+ライヴDVD+直輸入2枚組ピクチャーディスクLPレコード+Tシャツ】 WRDZZ-823 / ¥9,000+税
【初回限定盤CD+ライヴDVD】 GQCS-90673~4 / 4562387208463 / ¥3,500+税
【通常盤CD】 GQCS-90675 / 4562387208470 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入
【通販100枚限定 直輸入2枚組ピクチャーディスクLPレコード】 WRDZZ-824 / ¥4,500+税
1.IMMORTAL BIND
2.BLACK EMPIRE
3.OVERLOAD
4.STRANGER
5.LINKAGE
6.ETERNAL WARRIOR
7.GHOST IN THE FLAME
8.VENOM STRIKE
9.AWAKE
10.OMEGA MAN
11.PAIN
12.ECHOES IN THE DARK
13.UNBROKEN SIGN
日本盤限定ライヴDVD
WORST HABITS DIE HARD -ALL REQUEST LIVE-2018.7.7(Sat)CLUB CITTA'
1.VICTIM IN YOUR EYES
2.GOLD&DIAMONDS
3.BLAST
4.FROZEN FATE
5.ARE YOU READY?
6.MACHINE MADE DOG
7.HUNTING TIME
8.ENGRAVED
9.THE SIGN
10.PAIN
11.WILD ANTHEM(with MAD大内)

【メンバー】
柴田直人(ベース)
清水昭男(ギター)
森川之雄(ヴォーカル)
田丸勇(ドラムス)

BARKS

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