【インタビュー】CHIHIRO、恋で悩む
リスナーへ「自分が人生の主人公にな
ってほしい」

数々の恋愛ソングを生み出してきたシンガーソングライター・CHIHIROの2年ぶりのオリジナルアルバム『私の恋はナミダでできている』が2月20日(水)に発売された。2018年12月から、「君に未練」「大丈夫」「好きって言って」「細胞レベルで好きなんだ」の4曲を順次先行配信しており、アルバムには同4曲も含め全10曲が収録されている。恋愛における感情やシーンを多彩かつ非常にリアルに描いており、間違いなくリスナーの共感をさらに深く呼ぶはずだ。

今回BARKSでは、このニューアルバムにおける深化と変化についてCHIHIROに訊いた。恋で悩むリスナーに対して、「自分の人生を、自分が主人公になって歩んでほしい」と願う彼女からの大切なメッセージを、是非受け取ってほしい。

  ◆  ◆  ◆

■ いきなり切ないんです

▲AL『私の恋はナミダでできている』通常盤

── CHIHIROさんに前回インタビューさせていただいたのは前作『KISS MISS KISS』(2017年3月29日発売)のリリースタイミングだったわけですが、約2年の間に、CHIHIROさんにどんな変化があり、それがどのような形でニューアルバム『私の恋はナミダでできている』に反映されているのか、というところからお聞きしたいです。

CHIHIRO:ここ数年はハワイと日本とを行き来していたんですが、『KISS MISS KISS』をリリースしたあとに活動拠点をハワイに移したんです。向こうでは、トロピカルハウスやEDMが街中にあふれているんですね。クラブシーンで育ってR&Bを大事にしてきた私としては、これまで多くの人に支持していただいているバラードやラブソングはもちろん、自分のルーツや海外で過ごす中で自然と耳にしているハウスやEDMっぽい要素も今回のアルバムに入れたいなと思ったんです。

── どおりで前作に増して曲調が彩り豊かだと感じました。たとえば「マーメイドラブ」の透明感あるサウンドは、聴いていてハワイアンブルーが目に浮かびます。

CHIHIRO:そう感じてもらえたら嬉しいです。「マーメイドラブ」はまさに、ハワイで海をイメージしながら作った曲なので。

── マーメイドの恋になぞらえた歌詞には、切なさもありますね。

CHIHIRO:最近の洋楽は、曲はアップテンポでもすごく切ない歌詞を乗せているものが多くて、特にトロピカルハウスには切ない恋の歌が多いんです。それを日本語でやったらどうなるんだろう、と思って融合させてみました。

── 「恋がうまくいかない私」も、そういった意外なコントラストがあります。曲調は軽やかですけど、歌詞は出だしから“好きになった人は彼女あり”で。

CHIHIRO:そう、いきなり切ないんです。

── “もう……失恋辛いだけだし”とか“目指せ両思い!”とか、くじけそうになったり、それでも前を向こうとしたりという心の動きがくだけた表現で綴られているところも共感度が高いのではないかなと。

CHIHIRO:恋愛において自分が感じてきた想いも入っているし、自分の言葉で書いていったら自然とそうなってしまうところもあるんですが、「恋がうまくいかない私」に関しては、私が友だちにいつも言っていることをそのまま書いていたりもするんですよ。その友だちは、恋がうまくいかない自分も嫌いじゃないし、むしろ楽しんでいるところもあって。

── だからですね、聴いていくと不思議とパワーをもらえたりもします。

CHIHIRO:そうです、そうです。彼女はとてもポジティブなんですよ。恋がうまくいかないときってどうしても後ろ向きになってしまいがちで、年齢を重ねて周りの友だちがどんどん結婚していくようになると、どうして私だけ、恋さえしていない私ってなんてイケていないんだろう、だからもう恋しちゃダメなんだ、ってどんどん悪いほうに悪いほうに考えるようになってしまったりもするじゃないですか。でも、今はただうまくいかないだけできっと誰かが待ってくれている、と思えたらきっとポジティブになれるはず。そんな願いも込めて、「恋がうまくいかない私」の歌詞を書きました。

── 自分の短所や現実を直視した上での“この世界のどこかに未来のパートナーがいるなら きっと私のいいところ見てくれるはず”というフレーズには、説得力があります。

CHIHIRO:「運命の人なんて本当にいるんですか?」っていう質問をファンの子からされることもあるんですけど、まだ出会っていないだけでどこかにいる、と思って前向きに明るく生きていればきっと出会える!と私は思っていますから。

◆インタビュー(2)へ

■ 恋の悩みという沼から引っぱり上げてあげたい

── また、前回インタビューさせていただいたときに「切ない気持ち、どうしようもない気持ちを代弁することが自分の役割なんだと思っている」とおっしゃっていましたが、『私の恋はナミダでできている』でもその点は意識されましたか?

CHIHIRO:『KISS MISS KISS』のときにはそんなに恋愛相談をしていなかったですけど、最近インスタグラムなんかで恋愛相談を始めてみたら、友だちにも誰にも言えないような恋愛の悩みを私に打ち明けてくれたりもして。中には、「好きすぎて、でもどうにもならなくて……もう、死んでしまいたいです」って思い詰めてしまっている人もいるんですね。そうやって恋に悩んでいる人、立ち止まってしまっている人がいるなら、自分の歌や歌詞でその沼から引っ張り上げてあげたい、という想いが『KISS MISS KISS』のときよりもより強くなっています。

── 「私の恋はナミダでできている」の葛藤しながらも一途に貫く想いにしても、「失恋のあと」の喪失感の中でのやるせない“もがき”にしても、ただきれいなだけではなく、恋愛が生々しく描かれていて。誰かを好きになった人なら、自分を重ねて心動かされてしまうはずです。

CHIHIRO:「失恋のあと」は、“キラキラした好き”を書くことも大事なんですけど、そういうところだけじゃなくて、裏にある“ドロドロした好き”までを私は書きたいんですよね。書きすぎかな、って最初は思ったものの……。

── CHIHIROさんの紡ぐ美しいメロディと相まって、悩める恋心が救われたりもすると思います。

CHIHIRO:進行形のつらい恋も、過去の哀しい恋も、もし私の歌や歌詞で救われるなら、本当に嬉しいことです。
── その一方で「No.2」は、曲調も歌詞もだいぶ攻めていて、驚きました。

CHIHIRO:まさに、「No.2」は私なりに攻めた曲ですね(笑)。

── 歌詞も“都合いい女”になっちゃダメ!と、はっきり突きつけていますもんね。

CHIHIRO:私って都合のいい女になっているのかな?って思いつつそこから抜け出せなかったり、「私って都合のいい女なんだよね」って自分で言ってしまう女の子っていたりするじゃないですか。

── 諦めてしまっているのか、強がってしまっているのか。

CHIHIRO:そうそう、きっと強がりで言ってしまっているところもあるんでしょうね。でも、2番目ってよっぽどのことがないと1番に勝てないし、なかなか幸せになれないはずで。「私って都合のいい女なんだよね」なんて自分で言っちゃダメでしょ!って、目を覚ましてもらえるようなメッセージをしたかったんです。しつこいくらい“ナイナイナイ”って歌っているこの曲(笑)、ずるい男の人に振り回されている女の子に本当に聴いてほしいです。

── 当てはまる人にとってはつらいところもあるかもしれないですけど、もっと自分を大切にしてほしいという想いがあるから、そこまでズバっと言ってあげられるんですよね。

CHIHIRO:彼の言いなりになってしまったり、合わせすぎてしまったら、言いたいことも言えなくなっちゃったりするじゃないですか。でも、自分を殺してまで相手に合わせなきゃいけないって対等な関係じゃないし、もっと自分を大事にして、自分自身のことを好きになって、せっかく女の子に生まれてきたんだから輝いて、ちゃんと自分の人生を自分が主人公になって歩んでほしい。そういう想いは、強く持っています。

◆インタビュー(3)へ
■ 実は体育会系?
── 切ない恋、つらい恋を経験してこそ人間的に成長できたりもするのでしょうけど、あくまでも自分の人生は自分のものとして、胸を張って歩むべきですもんね。そして、運命の相手に出会った喜びが伝わる「細胞レベルで好きなんだ」や、距離は離れていても強く結ばれている二人の絆を描く「大丈夫」、恋を永遠の愛として実らせた“ふたり”の誓いの歌「ふたりでひとつ」は、温かな気持ちにさせてくれたりもします。

CHIHIRO:『私の恋はナミダでできている』というアルバムタイトルが最初に思い浮かんで、切ない曲を書いていったんですけど……涙って哀しいときだけでなく嬉しいときにも出るから、「ふたりでひとつ」や「大丈夫」、「細胞レベルで好きなんだ」では嬉し涙をテーマに書いてみようと思って。「細胞レベルで好きなんだ」では、“この人ときっと結婚する”って瞬間的に感じることって本当にあるみたいで、それを書いたんです。

▲AL『私の恋はナミダでできている』初回限定スペシャルパッケージ盤

── そんなことあるはずないと思い込んでいる人、諦めている人も、やっぱり信じてみようかなと思えそうです。

CHIHIRO:そういう聴き方をしてもらえるのも嬉しいです。私自身が恋愛体質で、明日死んでもいいや、っていうつもりで恋愛をするタイプなんですよ。人から見たら危なっかしくて、「やめておいたほうがいいよ」って言われるような人を好きになっても、いっさい迷わないし。

── そのときの自分の気持ちに正直に、真っ直ぐ進んでいくと。

CHIHIRO:そうです。

── 学生のころと違って、大人になると打算的な恋愛をするようになってしまってもおかしくないですけど……CHIHIROさんはなんてピュアなのでしょう。

CHIHIRO:条件に見合う人を選んだとして、それはそれで安定した生活を送れるのかもしれないですけど……私は危なっかしい人、ミステリアスな人に惹かれてしまうし、ものすごくモテる人でも、好きになってしまったなら絶対に諦めたくないんです。そうなったら、彼を好きなほかの女の子っていうのはもう関係なくて、自分との闘い。でも、そういう恋愛のほうが、ぼんやりした恋愛をするより自分が成長できると思うんですよ。

── CHIHIROさん、おっとりしていてかわいらしく見えて、芯が強い! 実は体育会系だったりしますか?

CHIHIRO:あ、そうかもしれないです(笑)。自分に不利な状況でも、負けない!って思っちゃうし。

── そういう強い気持ちを持つCHIHIROさんだからこそ、切ない恋をしていても前を向こうよという歌詞が書けるし、その言葉が私たちの胸に響くのでしょうね。アルバム『私の恋はナミダでできている』はどんな恋も自分の糧にできると信じられる作品なわけですが、作り終えた今、CHIHIROさんの中に新たに芽生えている想いもあるのでしょうか。

CHIHIRO:今回、新しい音をいろいろ入れてみて、それが自分的に新鮮だったりもしたので。みなさんが求めてくださるバラード、ラヴソングはこれからももちろん歌い続けていきつつ、もともとのルーツであるR&B、ダンスミュージック、ヒップホップやレゲエを忘れずに、新しいサウンドでみんなに驚いてもらえるような曲も作っていきたいな、と思っていて。R&Bやヒップホップに日本語を乗せるのは難しかったりもするんですけど、日本語詞も自分らしさとしてブレずに貫いていきたいですね。

取材・文◎杉江優花

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■ニューアルバム『私の恋はナミダでできている』

2019年2月20日発売 
・初回限定スペシャルパッケージ盤 TECI-1618 ¥2,963+税
(オリジナルブックレット「恋がうまくいく33の恋言葉」封入)
※初回プレス分のみ、本人直筆サイン入り

・通常盤 TECI-1619 ¥2,593+税

収録曲
M1:私の恋はナミダでできている
M2:君に未練
M3:失恋のあと
M4:マーメイドラブ
M5:好きって言って
M6:細胞レベルで好きなんだ
M7:恋がうまくいかない私
M8:No.2
M9:大丈夫
M10:ふたりでひとつ

※初回限定スペシャルパッケージ盤と通常盤の楽曲収録内容は同じとなります。

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