【インタビュー】kobore、音楽性の広
がりが深度を増していることが印象的
な1stフルアルバム『零になって』

koboreは、2015年に結成された府中発のギターロックバンド。力強さや瑞々しさ、洗練された味わいなどを湛えた個性的な楽曲と精力的なライブ活動、コンスタントな音源リリースなどにより着実にスケールアップしてきた彼らから、最新作『零になって』が届けられた。koboreの1stフル・アルバムとなる同作は、より音楽性の広がりを見せると同時に深度を増していることが印象的。2019年に入ってさらに加速することを予感させる彼らに、バンドの成り立ちや『零になって』について語ってもらった。

■“やりたくないことはやらない”というのがテーマ
■自分がやりたくて最高に楽しいと思えるものだけをやる

――koboreは、どんなふうに結成されたのでしょう?

佐藤赳 Vo/Gt(以下、佐藤):僕は、高校を卒業してから弾き語りをしていたんですが、バンドをやりたいなと思っていたんです。自分の弾き語りの曲をバンドでやったらどうなるのか知りたくて、みんなに「ちょっとやってみてくれない?」と声をかけたことがkoboreを結成するきっかけになりました。GarageBandやCubase(共に作曲用ソフト)を使えばバンド・サウンドをシミュレーションできるけど、それだと想像が広がらないし、自分の知識には限界があるからショボい感じにしかならないんですよ(笑)。だから、生身の人間にお願いしたほうがいいなと思ったんです。

――いいメンバーが揃いましたね。弾き語りの曲をバンドで演奏するところから始めて、音楽性も徐々に変わっていったのでしょうか?

佐藤:変わったというか、広がっていきました。始めた当初の僕は、本当になんでも良かったんです。ドラムを叩いたりベースを弾いてくれる人がいれば嬉しいという感じだったから。そういうスタンスだと、メンバーそれぞれの好きなものとか、やりたいものが自然と入ってきますよね。それに刺激を受けて、こういうのもいいな、こういう曲もやりたいなと思うようになって、曲の幅が広がっていったんです。今は、“やりたくないことはやらない”というのがテーマというか。自分がやりたいと思ったこと、最高に楽しいと思えるものだけをやるというスタンスになっています。

――楽曲の良質さや幅広さ、メンバーの個性が伝わるアレンジなど、koboreは魅力が多いバンドといえます。1月23日にリリースされた1stフル・アルバム『零になって』の制作は、どんなふうに始まりましたか?

佐藤:『零になって』は、すごく考え込まれたアルバムという印象を受ける人が多いみたいですけど、実は制作が始まったときは結構切羽詰っていました。2018年は50本を超えるツアーをまわって、その途中途中で曲作りをしていたので、本当にほぼほぼ何もない状態からのスタートだったんです。だから、テーマを掲げてそれに沿って曲を作ったりするんじゃなくて、とにかく曲を作るしかなかった。今回は、そういうところから入っていきました。

――そういう状態で幅広さと完成度の高さを持ったアルバムを作る辺り、バンドの底力を感じます。

伊藤克起 Dr(以下、伊藤):そう言ってもらえると嬉しいです。『零になって』はいろんな曲が入っていて、どれも自信があるけど、僕の中で特に好きな曲をあげるとしたら「さよならは言わずに」ですね。今までのkoboreは、こういう6/8拍子の曲はやったことがなかったんですよ。そういうところで印象的だし、メロディーがいいし、歌っている内容もジーンとくるものになっていて、すごく気に入っています。アルバムの最後にこの曲を持ってきたのも正解だったなと思いますね。

佐藤:「さよならは言わずに」は楽曲的にも、歌詞の面でも、僕の中ではわかりやすい曲です。53本のツアーをまわっている最中に、次のツアーもほぼほぼ決まっていたんですよ。ただ、53本まわったがために、次は20~30本くらいの規模になると。そうなると次回は行けない場所が出てくるから、そういう土地の人に向けて曲を書きたいなと思ったんです。それで、“こっちからいけないときもあるけど、僕達はずっと歌っているからいつでもきてください”ということを歌った曲を作りたいなと思って。そういう言葉を前向きだけど、ちょっとせつないメロディーで歌うというコンセプトのもとに作ったのが「さよならは言わずに」です。それに、ライブの最後に合う曲ということも意識して作りました。

安藤太一 Gt/Cho(以下、安藤):僕は「ワンルームメモリー」という曲が好きです。この曲を聴いた人は、自然とサビを歌いたくなる気がするんですよ。声に発して歌いたくなるメロディーと言葉の詰め方になっていて、メチャクチャいいなと思いますね。ちょっと女々しい感じだけど、重たくは感じさせないという曲調も好きだし。「ワンルームメモリー」は、僕の中の推し曲です。

佐藤:この曲は僕の実体験ではなくて、僕の友達が体験したことが元になっています。僕自身は独り暮らしをしているわけじゃないし、ワンルームに住んだこともない。友達の話を聞いて、相手の女の子はこういう気持ちだったんだろうな、男はこういう気持ちだったんだろうなということを想像して、それを自分の経験と照らし合わせて書きました。だから、みんなに向けてというよりは、20代に照準を合わせた曲といえますね。お酒を飲める年齢の人とか、ワンルームで独り暮らしを始めたばかりの人というように響く人間が限られているけど、こういう曲もあってもいいかなと思ったんです。
――全然“あり”だと思います。10代の子が聴くと大人の恋愛に対する憧れを感じるでしょうし、上の世代の方は20代の頃を思い出すでしょうし。なので、響く人が限られているとは思いませんよ。

佐藤:それ、わかってもらえましたか(笑)。僕も高校生のときにちょっと意味がわからなかった歌詞も、バイトを始めてわかるようになって、長く聴き続ける曲になったりしたんですよ。アルバムだから、そういう曲が1曲くらいあっていいかなと思ったんです。だから、10代後半でkoboreを聴いてくれている人は、2~3年後にまた「ワンルームメモリー」を聴いてほしいですね。それで、ずっと聴いてもらえる曲になるといいなと思います。「ワンルームメモリー」は安藤も言ったように僕の中では過去最大に女々しい曲だし、他の曲に比べてサウンドがガシャガシャしているんですよ。そんなふうに、今回のアルバムの中ではちょっと異色な曲ではありますね。

田中そら Ba(以下、田中):僕は「スーパーソニック」という曲が、すごく好きです。カッコいいと言ってくれる人もいますけど、僕はアホっぽい曲だなと思うんですよ(笑)。それは、良い意味でですけど…。歌詞も含めて、聴いていたら元気になる曲で、一番好きですね。朝聴くと気持ちが上がって、良い1日を送ってもらえると思います(笑)。

佐藤:「スーパーソニック」は、ちびまる子ちゃんの「おどるポンポコリン」という曲がありますよね。あの曲を聴いて作ろうと思ったんです。“なんでも かんでも みぃんなぁ~ ♪”というノリは最高じゃんと思って。超キャッチーだし。「おどるポンポコリン」みたいにキャッチーな曲はkoboreにはなかったし、今度のアルバムは僕らになかったものを詰め込みたいという気持ちがあったんですよ。それで、とにかく“ダサカッコいい曲”を作ろうと思って作ったのが、「スーパーソニック」です。

――ええっ? ダサいとは感じなかったです。
v佐藤:いや、“ダサカッコいい”は、カッコいいんですよ。ダサいものはダサい。そうではなくて、ダサカッコいいものを意識して作って、いいものができたなと思います。

――そういう意味でしたら同感です。「ナイトワンダー」もそうですが、「スーパーソニック」は4つ打ちではないのにダンス感があることが印象的です。

佐藤:それは、意識しなかったよね?

一同:うん。
v佐藤:躍らせるというよりは、聴かせるというイメージで作りました。ただ、4つ打ちで脈打つような感じではないけど、ノリがいいということは意識したんです。だから、中間をいく感じの曲にはなったかなと思います。

田中:「スーパーソニック」はミュージック・ビデオになっているんですけど、監督はメチャクチャ踊りながら撮っていました(笑)。
▲佐藤赳 Vo/Gt

――それは頷けます。それに、2~3年前でしたら、どのバンドもこういう曲は4つ打ちにしたと思うんですね。8ビートでダンスを香らせるところに新しさを感じました。

佐藤:そう言われると、たしかにそうですね。当時は4つ打ちが流行っていたから。でも、僕はリズム隊に関しては任せきりなので、そういうリズム感の独特さは彼らが出してくれたんです。僕は、こういうリズムにしてほしいというようなことは、あまり言わないんですよ。

――リズム隊お二人のセンスの良さを感じます。「スーパーソニック」の歌詞についても話していただけますか。

佐藤:この曲は比喩表現を多くしようかなと思って、歌詞に出てくる“君”を時計だったり、スーパーソニックだったりに例えました。それに、“君”が誰を意味しているのかが、わりと曖昧なんですよね。大事な人なのか、大事な人と一緒にいる時間なのか、僕らで言うとライブをしているときなのか…というふうに、みんなの想像を膨らませる歌詞ということを意識した歌詞になっている。つまり、この曲は“早く時間が過ぎる”ということしか歌っていないんですよ。“こういう時間は早く過ぎる”ではなくて、どういうときは時間が早く過ぎるかは、みんなに任せるという。それぞれの解釈で、いろんな人に共感してもらえるといいなと思います。

――いろいろな技を活かされていますね。では、佐藤さんの中で特に印象の強い曲をあげるとしたら?

佐藤:「ナイトワンダー」です。前作の『ヨル ヲ ムカエニ』のレコーディングをしていたスタジオは小さいベランダがあって、そこがすごくいいんですよ。すぐ傍を、電車が“パーン!”と通ったりして。そこでタバコを吸いながら、こういうときに聴く曲がほしいなと思ったんです。僕と同じ世代の人はタバコを吸い始めたり、お酒を飲むようになったりするのが、カッコいいからという理由の人が多いんですよね。僕の中にもそういう感覚があって、スタジオのベランダの雰囲気とか、そこでタバコを吸っている自分のアクションにハマる曲がほしくなった。完璧に、このシチュエーションで聴くしかないでしょう…くらいな曲ということを意識して、「ナイトワンダー」は作りました。
▲安藤太一 Gt/Cho

――だから、エモーショナルなんですね。

佐藤:そう。メロウで、深く落ちていくイメージです。歌詞は同じフレーズを繰り返しているんですけど、つまらなく聴こえないようにするために、歌詞で韻を踏んでみたりしました。言葉を字余りなしで、ピタッとはめるようにしたし。「ナイトワンダー」は、聴いていて心地好いということを一番重視しました。

――曲作りのヒントになったイメージなどを、そのまま楽曲で表現できるスキルを持たれていることがわかります。ここまでにあがった曲以外に、スロー・チューンの「東京タワー」にも惹き込まれました。

佐藤:東京を歌った曲は、地方から上京してきた人が作ることが多い気がするんですが、それをぶっ壊したかったんです(笑)。それに、上京してきた人が作るより、元々東京にいる人間が東京の皮肉を歌ったほうが、説得力があるんじゃないかなと思って。そういう考えのもとに「東京タワー」は作りました。

――とはいえ、上京してきた人が聴いても染みる歌詞になっていませんか?

佐藤:そう。僕が上京した体で書きました。ツアーで1ヶ月間東京に帰れない時期があって、それを終えて東京に帰ってきたときに、たまたま仕事で東京タワーの近くに行く機会があって。それで東京タワーを見たら、すごくきれいだなと思ったんです。いつもはそこに建っているのが当たり前で、見ても特になにも感じなかったけど、1ヶ月いろんなところを見て帰ってきたら“ズン!”ときた。それで、上京した体で歌詞を書くことにしたんです。そういう歌詞の書き方はしたことがなかったので、チャレンジした曲でもありますね。

――スカイツリーではなくて、東京タワーというのもいいなと思います。

佐藤:デジタルよりも、アナログという(笑)。それがkoboreには合っているんじゃないかなと思ったんです。
■いろんなバンドと競演しながらいろんなことを経験していって
■ツアーが終わる頃には、いろんな人に親しまれるバンドになっていたい

――『零になって』は前半にパンクが香る曲が並んでいますが、そこだけでkoboreを判断せずに、1曲1曲をじっくり聴いてほしいなと思います。では、続いてプレイに関する話をしましょう。本作を作るにあたって、それぞれプレイヤーとして大事にしたことは?

伊藤:僕は元々、手数を多く入れるタイプのドラマーなんですけど、今回はあまり入れないようにしました。僕は後からkoboreに入っているから、どういうドラムを叩けばいいのか若干わかっていない部分があったんですよ。でも、ツアーをまわってライブをいっぱいやっていく中で、メンバーそれぞれのいいところが見えた。それで、自分がそんなにモリモリやらなくても普通にカッコいいからいいやと思って、今回は結構シンプルにしたつもりではあります。

――たしかにメリハリは効かせていますが、すごくアイディア豊富なドラマーという印象を受けました。

伊藤:自分の中ではかなりシンプルなので、そう感じてもらえたなら良かったです。今回一番作るのが難しかったのが、「スーパーソニック」なんですよ。この曲のドラムは、本当に何もしていないんですよね。ちょっとヒネりたかったけど、ヒネると曲をダメにしてしまう気がして。

佐藤:ヒネれなかったよね、曲がアホ過ぎて(笑)。

伊藤:そう(笑)。でもヒネりを入れたいという気持ちもあって、そこでちょっとモヤモヤしていたんです。多分、自分的に納得するのが一番遅かったのは、この曲ですね。

田中:曲を作っているときに、メッチャ無表情で叩いていたよね(笑)。

伊藤:うん(笑)。メンバーからこうしよう、こうしようというアイデアが出てくるんですけど、自分一人だけどうしようと思っていて、何もできないまま「じゃあ、もう1回やろうか」と言われて、「はい、叩きます」みたいな(笑)。結局全くヒネらない形でいくことになったけど、この曲ができたことでシンプルなビートに徹したドラムの気持ち良さみたいなものを感じるようになったというのがあって。だから、無理してヒネったりしなくて良かったなと思います。
――たしかに、「スーパーソニック」のシンプルなドラムは、楽曲によく合っています。逆に、「ワンルームメモリー」はAメロのパーカッシブなパターンや2番のサビのフックビート系のパターン、展開パートの速いタムまわしなど凝っていますね。

一同:「ワンルームメモリー」のドラムはキテる(笑)。

伊藤:この曲は最初にオシャレなことをしているドラムを1回だけ(佐藤)赳に聴かせたんですよ。そうしたら、「これじゃない」と言われて、まるっきり変えたんです。オシャレな方向じゃないとしたら、もうドンドコいわせたほうがいいんじゃないかなと思って、こういうドラムになりました。Aメロのパターンは、僕の癖みたいなところがありますね。僕は元々ロックよりもブラック・ミュージックとかが好きだったので、間をちょっと入れてみたりすることが多いんです。そういう部分が出ているし、この曲は全体的に洋楽を意識した感じです。

――ブラック・ミュージックが好きなことは、「ナイトワンダー」の繊細なハイハット・ワークなどからもうかがえます。その一方でキックの8分音符踏みを多用していることなどもあって、知的さとロック感を併せ持ったドラムになっていますね。

伊藤:照れちゃいます(笑)。8分踏みは、結構こだわっていますね。直感ですけど、これじゃないと嫌だなと思うことが多くて。そう感じたところは全部活かしました。

安藤:ギターに関しては、マーシャルのJCM-2000とツアー中に買ったキャビネットを組み合わせた音がすごく好きで、今までの作品よりも僕が本当に好きな音が作れたというのがまずあります。そのうえでリスナーの人は気づかないかもしれないけど、4種類くらいの歪んだ音を使い分けました。アンプの歪み、足元(エフェクター)で作ったハイゲイン・クランチ、ローゲインのクランチ・トーン、オーバードライブ・トーンというふうに使い分けたんです。それに、ギターのリアPUとセンター・ポジションも使い分けて、さらにボリュームやトーンも細かく調整しました。それぞれのパートに合う音ということは、今まで以上に意識しましたね。僕はギブソンのES-335を使っているんですけど、そういう音作りをすることで、セミアコの持ち味や良さも出せたんじゃないかなと思います。
▲田中そら Ba

――細やかな音作りが楽曲の空気感に大きく寄与していることは間違いないです。プレイ面に関しては、いかがでしたか?

安藤:今回は赳がデモの段階で全体像をガッツリ作り込んできて、ギターもいいフレーズが多かったんですよ。なので、それを壊さないようにすることを意識しました。今まではいろんなギターを突っ込もうとしていたけど、楽曲の雰囲気に合ったギターを弾きたいなと思ったので。プレイ面で印象が強いのは「スーパーソニック」ですね。イントロからずっと8分音符を弾くんですけど、全部ダウン・ピッキングで弾くことにしたんです。そのほうが、楽曲のテイストに合うなと思ったから。そうしたら、BPMが1とか2違うだけで、なんか速いなとか、なんか遅いなと感じてしまって。それで、結局リズム隊を録るときにBPMを変えたんですよ。そうやって、「スーパーソニック」という曲を聴いて描いたニュアンスを出したというところで印象が強いです。

――キャリアを重ねると、微妙なテンポの違いもわかるようになりますよね。それに、「おやすみ」のブルージーなギターも絶妙です。

安藤:ブルースはメッチャ苦手なので、「おやすみ」は結構大変でした。でも、周りのみんなが良いと言ってくれたし、koboreに必要な要素じゃないかなということを感じたので、今年はブルースも学んでいこうかなと思っています。

田中:ベースは音色が大きかったですね。僕は今までの作品は全部バキバキの音で弾いていたんですけど、それが嫌で、全体的に丸い音にしてみました。それが良かったのか、悪かったのかはわからないけど、挑戦してみたかったんです。あとは、どうだろう?

――ボトムに徹している曲もあれば、「夜を抜け出して」のように動きのある曲もあって、両方得意なタイプなんだなと思いました。

田中:僕も伊藤と同じで、ちょっと前までは動くベースがカッコいいと思っていたんです。でも、いろんなアーティストを聴くうちに、どっしりしているベースもカッコいいなと思うようになった。伊藤が加入した頃は二人でスタジオに入って、「俺が考えてきたフレーズにドラムを合わせてみてよ」といって、「うわっ! 俺たちカッコ良くねぇ?」みたいな感じになっていたんですよ(笑)。すごく動きのあるリズム隊で、これは最強じゃないかと。

佐藤:ダッセぇ(笑)。高校生かよ(笑)。

田中:アハハ(笑)。でも、それがだんだん変わってきていて。今回の「どうしようもないな」は制作の早い段階でできつつあって動くベースを弾いたけど、時間が経つに連れてダサいかもしれないと思うようになった。だから、今回シンプルな曲はすごくシンプルになっています。アプローチとしては、サビのためにいろんなことを取っておくという感じですね。すべてはサビへの伏線というか。「夜を抜け出して」も最後のサビにいく前のところで弾いているハイポジを使ったフレーズは、気持ち悪いといえば気持ち悪いんですよ。でも、その後のサビの気持ち良さを際立たせるために、敢えてああいうフレーズを弾いたんです。僕は汚れ役でいい…みたいな(笑)。「スーパーソニック」もさっきアホっぽいと言いましたけど、この後にいいものがあるんだよという伏線みたいな感覚で考えました。

佐藤:自分のギターはレスポールを使いました。アンプはフェンダーのスーパーソニックで、もうバッキングに特化した音ですよね。あとは、ボリューム・ペダルを使って“グォーン!”と音量を上げるというのを「東京タワー」とかでやっています。僕はそれが大好きで、それを音源でも活かしたいなと思って。それで、クリーンから歪みまで一気に持っていけるセッティングにして、その瞬間を入れることにしたんです。そうしたら、みんなにメッチャ良いと言ってもらえました(笑)。歌は、今までよりも音域が広くなったというのがあって。低い声も、高い声も出せるようになったし、低いほうをわりと崩さずに歌えるようになってきたんですよ。なので、高い声は敢えて使わずに、それをコーラスに活かしてみました。

――逆転の発想ですね。

佐藤:そう。前回は上のハモリを裏声でやっていたのが地声で出るようになったから、それをはめてみたらメチャクチャ良かったんです。裏声だと、ちょっと弱いんですよね。気持ち良さがないというか。ピアノでいうと、大きく鳴っている音に対して弱い音が鳴ってしまっているような感じになっていた。それが地声2声になることでピタッとはまって、すごく良くなった。今回メインのボーカルはすごく早く録り終わったので、コーラスにメチャクチャ力を入れて録りました。
▲伊藤克起 Dr

――たしかに今作はコーラス・ワークも聴き応えがあります。さき程話がでた低い声は「ワンルームメモリー」などで聴けますし、「おやすみ」のサビのちょっと泥臭い歌い方なども魅力的です。

佐藤:低い声は、「ワンルームメモリー」「さよならは言わずに」ですね。その辺りの曲では低い声のハモリの気持ち良さも出せたかなと思います。「おやすみ」は、終盤にかけてどんどんサビが泥臭くなっていく流れになりましたね。1曲目の「ティーンエイジグラフィティー」はカッチリ歌っているけど、「おやすみ」は敢えてきれいに歌わずに、また違う表情を出してみたいなと思ったんです。今回はそれぞれの曲に合う歌ということを今まで以上に意識したかもしれない。より深く表現したくて、どの曲も歌詞をしっかり頭に入れて、レコーディングするときは歌詞を見ないで歌ったんですよね。ライブ感を出したくて、ギターを弾いているような動きをしながら歌った曲もあったし、バラードはバラードなりの歌い方をしっかりしたし。そういう録り方をすることで、よりメリハリを出せたかなと思います。

――1曲1曲を、いい意味で楽しんで歌ったことを感じます。さて、『零になって』は新たなkoboreらしさを味わえる必聴の一作になりました。アルバム・リリースに伴って3月から始まるロングツアーも楽しみです。

伊藤:ロングツアーとはいえ本数が前回の半分くらいなので、1本1本を“バチッ!”と決めていきたいですね。あと、僕は最近車の免許を取ったので、今度のツアーでは機材車の運転もしようと思っています。運転の練習になるし、僕はお酒が飲めないから運転手に最適かなというのがあって。メンバーには打ち上げで思いきり飲んでもらって、運転は俺がちゃんとやるぜという(笑)。ライヴをしっかりやって、事故に気をつけつつ運転技術を向上させる場にもしたいなと思っています。

安藤:前回のツアーは毎日ライブという感じの怒涛の日々だったけど、今回はスケジューに余裕があるんですよ。だから、1日1日をより濃くしていきたい。そうできるように、いろいろ工夫しながらやっていけるといいなと思います。ライブに関しては『零になって』を携えたツアーということで、また新しいkoboreを見せられると思うんですよね。なので、期待していてほしいです。

田中:ツアーは楽しみです。『零になって』を作ったことで、今後のライブは今まで以上に多面的になると思うんですよ。そういうライブをすることを楽しみにしているし、お客さんにも楽しんでもらえると思います。ツアーを通していろんなことを吸収していって、ファイナルの渋谷CLUB QUATTROでは最高のライブをしたいですね。本当に大きな会場なので、膝が震えそうですけど(笑)。自信を持ってCLUB QUATTROのステージに立てるように、全部のことをがんばります。

佐藤:ツアーは健康第一でいきたいですね。前回よりも本数が少ないけど、いろんな場所にいくことには変わりがないので、各地でおいしいものを食べて、元気な姿を見せられればいいなと思っています。あとは、今回は対バンも自分達で声をかけていて面白い1日1日ができあがると思うので、期待していてほしいですね。いろんなバンドと競演しながらいろんなことを経験していって、ツアーが終わる頃には“ギターロックバンドだな”とかではなくて、ジャンルを飛び越えて、いろんな人に親しまれるようなバンドになっていたい。それを実現させるツアーにしたいです。

取材・文●村上孝之
リリース情報

『零になって』
発売日:2019年1月23日
レーベル名:Paddy field
品番:PADF-005
価格:¥2,300(taxout)
1.ティーンエイジグラフィティー
2.どうしようもないな
3.テレキャスター
4.ワンルームメモリー
5.ナイトワンダー
6.おやすみ
7.夜を抜け出して
8.スーパーソニック
9.東京タワー
10.さよならは言わずに

ライブ・イベント情報

2月13日(水)東京 府中Flight (Vo/Gt佐藤弾き語り)
2月18日(月)東京 渋谷TSUTAYA O-CREST
2月21日(木)東京 日本工学院八王子専門学校 片柳記念ホール
2月23日(土)東京 渋谷MUSIC MONSTER
2月25日(月)茨城 水戸LIGHT HOUSE
2月27日(水)千葉 千葉LOOK

<koboreスーパーソニックTOUR2019>
3月8日(金)東京 府中Flight
3月9日(土)神奈川 横浜F.A.D
3月20日(水)石川 金沢vanvanV4
3月21日(木/祝)兵庫 神戸太陽と虎
3月26日(火)岡山 岡山CRAZY MAMA 2nd Room
3月30日(土)茨城 水戸LIGHTHOUSE
3月31日(日)千葉 千葉LOOK
4月2日(火)静岡 静岡UMBER
4月4日(木)愛媛 松山Double-ustudio
4月6日(土)福岡 福岡Queblick
4月7日(日)鹿児島 鹿児島SRHALL
4月9日(火)香川 高松DIME
4月10日(水)広島 広島CAVE-BE
4月13日(土)長野 松本ALECX
4月14日(日)福島 郡山#9
4月16日(火)新潟 新潟CLUB RIVERST
5月3日(金/祝)北海道 札幌COLONY
5月5日(日)青森 八戸FORME
5月6日(月/祝)宮城 仙台enn 2nd
5月8日(水)愛知 名古屋APOLLO BASE
5月9日(木)大阪 福島2nd Line
5月11日(土)東京 渋谷CLUB QUATTRO

<otherlive>
3月2日(土) "見放題東京2019"
3月16日(土) "HAPPY JACK 2019"
3月23日(土) "SANUKI ROCK COLOSSEUM 2019"
3月24日(日) "HIROSHIMA MUSIC STADIUM-ハルバン'19-"

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