TOTALFAT、SHADOWS、ロットンが三つ
巴 11度目の“パニシャ”の熱戦をレ
ポート

PUNISHER'S NIGHT 2018.1.23 渋谷CLUB QUATTRO
いまや年始の恒例行事として定着した、TOTALFATの自主企画対バンイベント『PUNISHER'S NIGHT』が11回目を迎えた。ときに先輩の肩を借り、ときに同世代とガチンコのぶつかり合いを見せ、またときには後輩をフックアップするステージとして、TOTALFATが大切に育んできたイベントだ。まだTOTALFATにとってクアトロが“挑戦のハコ”だったころ、その第1回目が渋谷クアトロからはじまり、2013年からは新木場コーストを含む東阪公演、なんばhatchや東名Zepp会場を含むツアー形式など様々なかたちに進化してきたが、ここ数年は原点であるクアトロでの東名阪ツアーが定着。今年も、昨年に引き続きクアトロ3会場を同じメンツでまわるスプリットツアー形式で、元FACTのメンバーによるSHADOWS、パニシャには二度目の出演となるROTTENGRAFFTYら“同士”と呼べる2組を迎えて、泥臭いパンクスピリットが激しくぶつかり合う熱いツアーになった。以下のテキストでは初日、渋谷クアトロの模様をレポートする。
SHADOWS 撮影=AZUSA TAKADA
定刻。会場に重々しい轟音が鳴り響いたインスト曲「Flare」からトップバッターSHADOWSのステージがはじまった。Kazuki(G/Vo)とTakahiro(G/Vo)のシャウトとHiro(Vo)のクリーンボイスが交錯する「All I Want」で一気にトップスピードまで加速すると、ダイバーがステージめがけて次々に転がっていく。サポートを務めるリズム隊が生む狂暴なグルーヴの上を2本のギターが容赦なく暴れ狂う「Senses」や「Doubt」。ストイックなハードコア・ナンバーの連発にフロアの熱狂は天井知らずに高まっていった。
SHADOWS 撮影=AZUSA TAKADA
MCでは、Kazukiが会場に来る前に失礼な職質をされたことを明かして笑いを誘うと、その怒りをぶつけるように突入した「Fail」ではフロントの4人が一斉にジャンプ。荒々しい闘争心を剥き出しに、本能のまま体当たりでぶつかりあう。そんなことができるロックバンドも最近では珍しくなった。ラスト2曲を残してHiroが「俺たちみたいなアンダーグラウンドのバンドを地上に呼び戻してくれて、ROTTENGRAFFTY、TOTALFAT、本当にありがとうございます」と感謝を伝えたあと、「Progress」と「BEK」で終演。これからも共に進化していこうと願いを込めた「Progress」は、TOTALFATに捧げる歌のようにも聴こえた。
SHADOWS 撮影=AZUSA TAKADA
ROTTENGRAFFTY 撮影=AZUSA TAKADA
「パニッシャーズナイト、帰ってきたぞ! やりたいようにやってくれー!」。N∀OKI (Vo)の咆哮が口火を切った二番手はROTTENGRAFFTY。90年代ミクスチャーロックへのリスペクトを込めた「PLAYBACK」から、いきなり会場を沸点へと導いていく。躍動感あふれるバンドサウンドにのせて左右に大きく腕を振った「夏休み」では、会場が一つになった気がした。フロアへと身を乗り出したNOBUYA(Vo)が華のあるボーカルでも魅了した「This World」から、ダンサブルな「D.A.N.C.E.」へ。昨年には結成19年目にして初めて日本武道館でのワンマンライブを成功させたバンドの地力を全開にしたパフォーマンスは、その場所にいる誰ひとりたりとも置き去りにしない。
ROTTENGRAFFTY 撮影=AZUSA TAKADA
MCでは、ここまでメンバーチェンジもなく駆け抜けたバンドの歴史を誇るように「いまのロットンがいちばんかっこいいぞー!」と叫んだN∀OKI。「続けることがいちばん難しいから。諦めることなく向かっていってくれよ」とメッセージを残すと、「[70cm四方の窓辺]」「寂寞 -sekibaku-」「金色グラフティー」という必勝のライブアンセムを畳みかけてライブを締めくくった。いよいよ20周年イヤーに突入したロットンに死角なし。凄まじいエネルギーが渦巻いていた。
ROTTENGRAFFTY 撮影=AZUSA TAKADA
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA
SHADOWSからロットンへ渡されたバトンを最後に受け取ったTOTALFATは、「DA NA NA」からキックオフ。直前に気持ちのこもった2組のライブを見届けた後とあって、ド頭からペース配分なんて考えない、そんな高いテンションでステージに乗り込んできた。カラフルな照明を浴びてフロアが踊り狂った「PARTY PARTY」から直球のメロディックパンク「Broken Bones」へ。Kuboty(Gt/Cho)が奏でる硬質でメタリックなギター、Bunta(Dr/Cho)が全身を使って叩き出す軽快なビート、Jose(Vo/Gt)&Shun(Vo/Ba)のツインボーカルという「あの4人」にしか鳴らせない陽性のバンドサウンドは、どんな曇り空の気分も「晴天」に変えてくれる。「今日ここにいる全員が仲間なんだって証明してみせようぜ!」。Shunが熱い想いをぶつけた「晴天」では、リフトをするお客さん同士が肩を組み、<Leave your umbrella>のフレーズを大合唱。他人同士が隣り合い、ひとつのステージに向かって想いを爆発させる、そんな光景はきっとライブハウスでしかあり得ない。
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA
「Good Bye, Good Luck」を終えたところで、「ちょっと待ってくれ!」と慌てた声をあげたShun。ベースの弦が切れたという。ギターと違って、ベースの弦は切れにくいはずなのに、だ。「これがパニッシャーズナイトですか。あんなに息を切らしたSHADOWSも、いきなり出だしから曲順を間違うROTTENGRAFFTYも見たことがない。今日は何かが起こるなと思ったら、17~8年ぶりにベースの弦が切れました!」。そう言って、弦を変えるあいだに懸命にトークで場をつなぐShunに対して、Joseが「こんなShunを見るのもあんまりない(笑)」と言って会場の笑いを誘っていた。仕切り直して、「Highway Part2」に続く爽快なサマーチューン「Summer Frequence」では極上のメロディに心地好く揺れる。「Visible」ではKubotyの痺れるような速弾きにあわせて、Joseがメロイックサインを掲げ、Buntaもドラムスティックを放り投げる派手なアクションで湧かせた。
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA
そして、バンドの「ホーム」と呼べる自主企画だからこそ大きな意味を持ったピースフルなナンバー「We Sing Everyday For Hometown」のあとは、「Seeds of Awakening」「Phoenix」という、昨年のワンマンツアーでも大切に歌い続けてきた、最新アルバム『Conscious+Practice』のニューアンセムを畳みかけたクライマックスへ。「楽しかったです。仲間とむちゃくちゃやれるって最高。音楽を好きでよかった。みんなもでしょ?」とJoseが嬉しそうな笑顔で語りかけると、その言葉に賛同するように会場は大きな喝采で包まれた。本編のラストは壮大のシンガロングを巻き起こした「Place to Try」。TOTALFATのライブは、どんなお客さんも傍観者ではなく、主人公にしてくれる。この日も、最初から最後まで、フロアと一緒に歌い、叫び、踊り、笑う、みんなで作り上げる、TOTALFATらしいライブだった。
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA
アンコールで再びメンバーがステージに登場したころ、時刻は22時15分を過ぎていた。「時間、大丈夫?」。終電を気にしながらも、ハンドマイクで「Revenge of Underdogs」を歌ったJoseは、ここに来ていちばん激しい動きでフロアを煽った。さらに、お客さんが肩を組んでフロアにサークルを作り上げた「Good Fight & Promise You」で、熱狂のライブは遂に終演。最後に写真撮影で出演者全員が一堂に会すると、いろいろあった一夜を象徴するように、「トラブル!」「上等ー!」という掛け声でイベントを締めくくった。ライブハウスを大切に活動する3組のバンドが集結した11回目の『PUNISHER'S NIGHT』は、その場所ではいつも想像を超える何かが起こるということを、身をもって証明してくれる1日だった。

取材・文=秦理絵 撮影=AZUSA TAKADA
TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA

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