【ライヴレポ】Lenny code fiction、
『Montage』ツアー最終日に発した約
束!「見てろよ、最高のライヴをやっ
てやるから」

2018年11月14日に1stアルバム『Montage』を発表したLenny code fictionが2月2日、東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライヴを行なった。この公演は、10月19日の宮城・仙台enn 2ndよりスタートさせ、アルバムリリースを挟む形で駆け抜けてきた『LIVE TOUR 2018-2019 Montage』のファイナル。対バン形式で全国各地を巡りつつ、『Montage』ドロップ翌日の東京&ツアー後半での福岡・名古屋・大阪ワンマンを経て辿り着いた場所である。

開演前。オールスタンディングのフロアには詰めかけた観客たちの高揚感が膨れ上がっていた。彼ら、彼女らが見つめるステージの奥の壁にはバックドロップが掲げられているが、バンド名を記した文字列は波打っていて、風を受けたフラッグ上に書かれたかのよう。革命を先導する印や、風を受け走る4人の象徴ともとれた。
予定時間を少し回った18時10分、会場の電気が消え、暗闇が訪れる。フロアに向けたブルーの光が灯り、姿を現したKANDAIのシルエットを浮かび上がらせた彼がドラムを打ち鳴らす。オープニングはアルバムと同じく「Montage」(SE)。kazu、ソラが時間を置きながら順に登場して音を重ね、スリルを撒く。アルバムの浸透度の深さそのままに、オーディエンスが手を上げクラップを打つ。そして最後に現れた片桐航はギターを持っておらず、手にはハンドマイクがあった。ギターを弾きながら歌う比率が多かった航の、このツアーからのひとつの変化の現れだ。
すぐさま女性コーラスが流れ、スピーディなリズムが轟く。曲は「Snatch」、各地での手応え、自信、出会った人から受け取った想いが溢れた演奏と歌が迫ってくる。倍に変化して大きなグルーヴを生んだりと展開していくリズム、ドッシリしたkazuのベース、ソラは様々なフレーズアプローチで目まぐるしく彩りを変える。そして航はステージを動き周りながら言葉を発する。音楽的実験による刺激と快楽が詰まった楽曲にライヴならではの熱と気合がプラスされ、ぬるま湯のような日常から連れ出してやるという想いを叩きつけてくる。早くも渦巻き始めたオーディエンスの熱気をさらに押し上げようと、KANDAIがバスドラムでリズムをキープしつつクラップを先導。そこから入った「KISS」では、色気を放ち情熱的に演奏と歌がうねった。
「大都会・渋谷で田舎育ちの俺らがワンマンをやっているんですよ。……最高かよ!」と航が話して始まったのは「Make my story」だ。流した涙、味わった悔しさを宿した演奏と歌が、サビで一気に晴れやかに広がっていく。例えば今、苦しい想いを噛みしめていても信じて進めば逆転できる。俺たちもまだ、自分で見つけた正解の道を進んでいる。そんな実体験をハンドマイクを手に航は丁寧に、全身を使い力強く歌で表現する。想いを重ねるひとりひとりに言霊というエネルギーを注ぐ。ソラとkazuがコーラスをする。KANDAIがドラムを叩きながら歌っている。観客が歌を乗せる。響き合う声を聴いていると、Lenny code fictionのメンバーそれぞれの曲であり、曲に心を震わせる全員の歌なんだと思えた。
今夜初めて航がギターを持った「Ruby’s day」では、恋に落ちた瞬間をギュッと詰め込んだアンサンブルに気持ちが弾む。そして、ディレイをかけたスネアの音像と、クリーンなギターフレーズ、ベースのロングトーンが冬の澄んだ夜の空気感を連れてきた「オリオン」。再びギターを置いた航は、スタンドごとマイクを両手で握り、歌う。寒空で吐く白い息に、横にいる“君”の存在の温かさを感じる、そんな繊細で穏やかな幸せを運んできた。
ソラがギターを高々と上げた「欲を纏う」では、エッジーに言葉を連射する航のボーカルとキレのいいKANDAIのドラムが心に突き刺さる。ベースでうねりを生みながらkazuがクルクルとターンをする。ガッチリと噛み合った音と歌は莫大なエネルギーを放出する。彼らの根底でドクドクと流れる“熱”の存在を知らしめ、バンドとしてのタフさがツアーを経て増幅したことを伝えてくる。
成長したのはタフさだけではない。曲の中にある風景と主人公の心の機微を音と歌声で描く、というもうひとつの彼らの武器もしっかり研がれていた。少しの静寂が訪れ、スポットライトがソラを照らす。彼は、澄んだ音色でギターをしっとりと爪弾き、そしてテンポを上げて掻き鳴らす。そこにリズムトラックが流れ、スタートした曲は「オーロラ」だ。もう近くにいない“君”を想う切なさが、静まりかえった客席にしんしんと降っていく。その余韻が残る場内に、ギターを持った航が「世界について」のサビを、ゆったりとしたギターストローク1本を伴奏に歌い始める。CDとは違うアレンジでアプローチされた演奏と歌、そこにある柔らかさが「オーロラ」でまとわりついた切なさを昇華していく。“君”という存在、ひとりの時間があるこの世界をそのまま素敵な、愛すべきものへと変えていった。
一度、航が去ったステージで、ソラ、kazu、KANDAIによるツアーの思い出トークが炸裂。ツアーでの恒例でもあった3人のMCは、普段のヒューマニティが滲んでいてオーディエンスの心を軽やかにほぐす。そこにギターを手にした航が出てきて、ラストへの畳み掛けが始まる。その先陣を切った「Showtime!!!!」、ガツンとしたサウンドがご機嫌にうねる。観客がクラップを打ち、跳ねる。上げた手を振る。言葉を吐き出し、ラフに歌う航は集中しながら、この瞬間を楽しんでいるのがわかる。さらに、ソラとKANDAIが加入する前──前身のバンド時代からプレイされてきた「Rebellious」。<見てろこれからガラクタが夢を見るのさ>というフレーズが飛び込んでくる。以前は、このフレーズから、根拠のない自信を手に未来へ攻撃に出る姿を感じていた。でも今は、自信、自分たちがやるべき音楽、やりたい音楽、聴いてくれる人、支えてくれる人……それらを持ち、己の道を走る4人がシャープに先を見据え、より加速しようとしていると確信できた。
「バカ楽しいな」とフロアを見渡した航が笑顔を覗かせて言う。「ラスト2曲」。アンコールはない、本編ですべてを出し尽くす。まずプレイされた「Flower」は、ピースでカラッとしていて、希望しかないLenny code fictionの未来を照らす響きだ。そして長かったツアーの行き辿り着いた先、最後の曲「Twice」に突入していく。航の歌が届く、ソラの透き通った音色のギターが鳴る。Kazu、KANDAIのリズムが気持ちを未来へ運んでいく。悲しみや悔しさとはこれから先も付き合っていかなくてはいけない、それでも、今この会場のかけがえのない幸福な時間を忘れず、重ねていけば、大切な日々の連続だと思える。輝きを持った彼らの音楽が伝えてくる。やはり、Lenny code fictionの音楽は、自己の吐露ではなく、心を重ねた人のエネルギーになる力を帯びていて、そしてその人が増えた分だけ、ひとりひとりの中で大切なものとなった分だけ、強く輝くんだとハッキリと感じた。
1stアルバムの制作、そしてそれらの曲を引っ提げたツアーでタフになり、表現を磨いたLenny code fiction。彼らはツアー先で向かい合い時間を共有したひとりひとり──“伝える先”と自分たちの音楽を手に、次へと加速を始めている。
「見てろよ、最強の曲を書くから」「見てろよ、最高のライヴをやってやるから」。4人がステージ上から発した約束は、すぐ先の未来を煌々と照らしている。
写真/Yusuke Satou 文/大西智之
<セットリスト>
1.Montage(SE)
2.Snatch
3.KISS
4.Enter the Void
5.Make my story
6.Ruby’s day
7.オリオン
8.Key-bring it on, my Destiny-
9.Colors
10.欲を纏う
11.影になる
12.オーロラ
13.世界について
14.Once
15.Showtime!!!!
17.Rebellious
18.Vale tudo【MAKE MY DAY
19.Flower
20.Twice

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