「ライブ用耳栓」ってどうなの? メー
カーに聞いた”耳を守る仕組み”&バ
ンドに本音を直撃してみた

近年注目されている「ライブ用耳栓」。いったいどんなものなのか、販売しているメーカーやバンドに取材してきました。ライブを楽しむためにも知っておきたい“耳寄り”情報満載です。

ライブ中心の時代ですが、「耳の疲れ」を気にしていますか?音楽不況だといわれていても、ライブを楽しむ人は増えているといわれる昨今。
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たとえば、ぴあ総研が調査・編集を担当し、ライブ・エンタテインメント調査委員会が発行する『2016ライブ・エンタテインメント白書』によると、ライブ・エンタメ市場規模は4年連続で過去最高を記録しているそうです。
筆者も仕事やプライベート含めて、様々なライブに足を運んでいます。
そんな中、ライブ音響が与える耳への影響が気になってくるようになりました。
初めてライブやコンサートに行った時、まず音の大きさに驚いた経験のある人も多いのでは。数を重ねると慣れてしまって気にならなくなる人もいるとは思いますが、耳へのダメージは知らず知らずのうちに蓄積されていることも。
たとえば海外ですと、ライブの前に耳栓が配られたり、法律で出せる音量が制限されている国もあります。しかしながら、日本国内の場合はコンサートの音規制は近隣住民に対する騒音への配慮からくるものはあっても、聴覚保護という観点での規制は現状ありません。
そこで、「音楽を安全に楽しむ」ことをテーマに啓蒙活動をしている「SAFE LISTEING(セーフリスニング)」を運営する須山補聴器の須山慶太氏にお話を伺いました。
須山慶太氏(以下、須山)「今はコンサートの方が人気の時代ですよね。それでもし耳に大きな負担がかかり、耳鳴りや聞こえにくさなどでお医者様に相談した場合、当たり前ですけど『ライブに行かないで』と言われる。イヤホン、ヘッドホンでの音楽鑑賞もですが、そうなる前に何をしたらいいのでしょうか?というのが『SAFE LISTEING』立ち上げの動機です」
須山補聴器は補聴器以外にもコンサート等で使用されるイヤーモニターの制作も行っており、須山氏ご自身もかなりの音楽ファンとのことで、
須山「音楽、聴力を守るためにどうしたらいい? となると、極端な話『聴かない、ライブに行かないで』という話になってしまう。けれども、大きな音も含めてライブの醍醐味、音圧も含めて音楽表現という面もあります。趣味のことはなかなか理解されにくいんですよね」
と、音楽ファンの気持ちを理解してくださっています。
では、耳を守りながら音楽やライブを楽しむにはどうしたらよいのでしょうか?
須山「音の大きさもですが、時間ですよね。長時間大きな音を聞く場合、時々耳を休ませてあげることが大切です。たとえば長時間開催されているロックフェスに参加する場合、きついなと感じたらライブエリアから出て休憩したり、耳栓を使うなどの配慮でかなり疲労が変わってくると思います」
耳栓も、近年ではライブ用に作られているというものも増えています。ライブ音響から耳を守るという目的で作られている耳栓で、通常の耳栓のように音をまるまる遮断するのではなく、主に耳に負担のかかるであろう高音域をカットするのだそうです。
「ライブに音を聴きに行っているのに耳栓とは…?」と思ってしまう人もまだまだ多いと思いますので、ライブ用耳栓を輸入・販売しているメーカーに疑問をぶつけに行ってきました。
メーカーに突撃!
ライブ用耳栓を販売しているメーカーに突撃してきましたよライブ用耳栓について更に詳しく知るために、お猿さんのキャラクターのパッケージが特徴の「THUNDERPLUGS」を輸入・販売している、銀座十字屋 ディリゲント事業部にお邪魔してきました。
もともと銀座十字屋は西洋ハープなどを輸入販売している会社で、創業140年以上になるそうです。時代の流れによって音楽ソフトやシンセサイザーなどのいわゆるデジタル楽器も輸入するようになり、そこから音楽用の耳栓「THUNDERPLUGS」も扱うようになったとのこと。
ライブ用耳栓と普通の耳栓の違い、公式サイトには表もありますが、そもそもヘルツやデシベルという単位も、恥ずかしながら筆者はなんとなくしか理解していないんですよね…。
銀座十字屋 ディリゲント事業部「デシベルは数字が大きいほど大きな音、ヘルツは数字が大きいほど高い音になります。いわゆる可聴周波数のなかで、人間が聴こえる一番高い音、たとえばシンバルとか耳に”くる”じゃないですか。そこをなるべく落としていく形になります。
ヘルツというのは簡単にいうと、1秒間に空気が何回震えるかということ、つまり鼓膜を震わせている分負担がかかるんです」
「THUNDERPLUGS」などのライブ用耳栓は、中に特殊なフィルターが入っており、中音域はできるだけ残して、耳に負担のかかる音はカットするという構造になっているとのこと。
銀座十字屋 ディリゲント事業部「ユーザーの方からも音に対する違和感がないという声をいただきます。人の話声などは聴こえるので『孤独にならない耳栓』と表現してくださった方もいます」
ちなみに、先ほど登場していただいた須山補聴器の須山氏も、「ライブ用耳栓は大きな音をカットするだけではなくて、大音量で音が飽和してかき消されてしまう音に対しても耳栓を通すことで、楽器の個性やアンサンブルを再発見する楽しみもあると思います」と述べています。
たしかに、筆者もコンサート等でライブ用耳栓を何度か使用したところ、ギターのリフなどはライブ用の耳栓をしたほうがハッキリ聴こえるように感じることもあり、MCや会話もほぼ聞き取れました(※筆者個人の感想です)。
耳栓をしていることでライブの転換中などに周囲から声をかけられてもまったく聞こえないということもなさそうです(会話するには外したほうが無難だとは思いますが)。
耳栓を物販で販売するバンドも
耳栓を物販で販売するバンドも一方、ミュージシャン側からもアクションを起こし始めています。
人気ロックバンド・キュウソネコカミは、昨年秋の『DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016-2017〜ボロボロバキバキ クルットゥ!ツアー〜』ツアーから物販グッズとして500円で耳栓を販売していますし、グッズとは別に「THUNDERPLUGS」を物販で扱っているそうです。
そして、「THUNDERPLUGS」とコラボした耳栓「ミミセンドリックス」(とてもいい名前ですね!)をバンド物販で販売している生活密着型ラウドロックバンド・打首獄門同好会にメール取材を行ったところ、大澤敦史さん(Gt)からこのようなコメントをいただきました。
「ライブハウスで耳栓」っていう話をすると、大概最初の反応は「えっ?耳栓って、アリなの?」というのが多数なんですけどね。
そもそも音楽に対して少なかれ耳を塞ぐ行為というのが、演者に対して失礼にあたるのではないか?そんな心情、あるんですよね。それゆえ「ちょっと耳がキツくても我慢」してしまうという、なんとも日本人らしい奥ゆかしさを感じる話なのですが。
そうは言ってもライブハウス、スピーカー前とフロア後方じゃ全然音量も違うし、バンドによっても音の処理は全然違う。長時間のイベントもある。正直、演者側という立場から見ても「あーこれはキツいな」と思うシチュエーションは多々あるんです。大きい音に慣れてない人ならなおさらですよね。
なので、耳がキツいなーと思う時には耳栓で和らげ、キツくない時はポケットにしまっておく、全然アリなのです。
で、そんな「アリだよ」というメッセージを「物販で耳栓を扱う」という直接的な形で示したところ(笑)やはり「これは助かる!」って使ってくれる人は多いんですね。結果的に、ライブハウスに足を運びやすくなったとかも言ってもらえて。
うん、いいと思います。音楽の楽しみ方は人それぞれ、こういう「楽しみ方を選ぶ」ツール、ぜひ積極的に活用していただきたい。
打首獄門同好会・大澤敦史(Gt)普段何気なく音楽を聴いたりライブに行ったりしていますが、筆者も今後長く音楽を楽しむためにも、ちょっとだけ「耳のこと」を考えていきたいと思いました。

ウレぴあ総研

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