DARK SOULSが示す楽しい人生の歩き方
-ゲームが教えてくれたこと #4-

DARK SOULSシリーズというアクションR
PGの金字塔

「2000年以降で1番おもしろかったアクションRPGは?」と聞かれたら、何と答えるだろうか。

2000年代になって日本では数多くのアクションRPGがリリースされた。2019年となった現在でもその流れは衰えることなく続いており、正統派RPGにアクションの要素が散りばめられることも当たり前の世の中だ。その理由には、ゲームに求められるものの変化があるとおもう。

ぼくが子どもの頃のゲームカルチャーの立ち位置は、「男子の嗜み」的なものだった。人見知りのせいか、ぼくはあまり友達が多い方ではなかったけれど、小中高で出会った友達の中でいっさいゲームをしなかったのは、せいぜい2,3人くらいのものだ。それくらいゲームカルチャーは80年代生まれの少年の心を虜にしていた。

学校から帰れば、カバンを置いてすぐに近所の友達の家へ行き、みんなでゲームに勤しむ。言わずもがな休日は午前から友達の家へ“出勤”していた。流行りのゲームに高い壁が出現すると、誰が1番はやく攻略できるのか仲間内で競い合うことも日常だった。
壁を乗り越えるために工夫や努力を重ねること、壁を乗り越えた経験が達成感や成功体験として自分を支えること、これらのことをぼくはゲームカルチャーから学んだ。いま生業としているライターのしごととも、これらは本質的につながっている。

そのようにぼくたちに学びを与えていたゲームカルチャーは、2000年代に入り、エンターテイメント性を色濃くした。「スピード感のあるアクション性で爽快感が得られること」これが最優先事項に挙げられるゲームが増えたのだ。大人になりつつあったゲームフリークたちは、ゲームを卒業していくものと、数少ない良作を探求していくものとに、二分化されたようにおもう。

そんな中、2009年に発売されたアクションRPGタイトルが、冒頭の質問に対するぼくの答えだ。

「心が折れそうだ…。」DARK SOULSシリ
ーズの歴史

『DARK SOULS』と冠されたものだけをカウントするのであれば、『DARK SOULS』『DARK SOULS II』『DARK SOULS III』の3作のみになるが、実はDARK SOULSシリーズにカウントするべきタイトルはほかにも存在する。

まずは1994年に発売された『KING’S FIELD』だ。DARK SOULSシリーズを開発するフロムソフトウェアの処女作品がこのタイトル。一人称視点で描かれるアクションRPGであるため、ゲーム性の面ではDARK SOULSと似て非なるものだが、世界観や登場キャラクターなど、共通する要素も多く存在する。このソフトがなければDARK SOULSが生まれなかったと言っても過言ではないだろう。
いまではフロムソフトウェアの代名詞ともなりつつある高すぎる難易度、アクションRPGや一人称視点がまだ市民権を得ていなかった背景もあり、当時は評価の分かれるタイトルだった。これまでにナンバリングとして4作が発表されている。

2009年には、DARK SOULSの正編とも呼べるタイトル『Demon’s Souls』がPS3で発売。神がかり的なバランスでつくられたこのタイトルは、『KING’S FIELD』を知らない層にも口コミで大きく広がった。圧倒的な難易度は、シリーズ前作とも言える『KING’S FIELD』から踏襲しているが、DARK SOULSシリーズの中ではややマイルドな部類。現在のDARK SOULSシリーズの人気は、このタイトルなくしてあり得なかっただろう。

その後、2011年に『DARK SOULS』、2014年に『DARK SOULS II』が発売する。『Demon’s Souls』のエッセンスを引き継いだこの2タイトルによって、DARK SOULSシリーズは不動の人気シリーズとなった。

シリーズ最新作は、2016年に発売された『DARK SOULS III』。2015年には外伝的な位置づけで『Bloodborne』というタイトルも発売されている。

DARK SOULSシリーズとぼくの出会い

ぼくとDARK SOULSシリーズの出会いは、『Demon’s Souls』の発売から約半年後、2009年9月のこと。当時はPS3がまだ普及途上にあった頃で、フルモデルチェンジによって少し価格を下げたタイミングでぼくもPS3デビューを果たそうとしていた。

新しくゲームハードを買うとなると、どのソフトをいっしょに買うかはとても大きな問題だ。なかには特定のソフトがプレイしたいためにハードごと買うというパターンもあるが、当時のぼくはPS3を買うことが先にあって、どのソフトをいっしょに買うのかは二の次だった。最初のソフトにどれを選ぶか悩むぼくの前に現れたのが『Demon’s Souls』だった。

買うと同時にぼくは呆れるほど『Demon’s Souls』の世界に没頭していった。理不尽さを感じないギリギリの難易度に落とし込むバランス調整は、まさしく金字塔と呼ぶにふさわしい出来だったとおもう。総プレイ時間は2,000時間、はじめてトロフィーコンプ(※)を果たしたタイトルもこれだった。

また、このタイトルを通じて多くの人と出会うこともできた。有名タイトルとなってしまったいまでは、海外ユーザーは別のサーバーでプレイしているが、当時は海外のユーザーも同じサーバーでプレイしていた。『Demon’s Souls』がきっかけで知り合ったイギリス人やドイツ人と、片言の英語をつかってコミュニケーションしていたこともいまとなっては良い思い出だ。

特にイギリス人とはプライベートな話もよくした。お互いが大好きなお酒の話になり、好きなお酒はなにかと聞いたところ、ぼくの予想(イギリス=ジンのイメージがあった)に反して「Sake(日本酒)!!」と答えた彼の勢いをいまでも忘れない。好きなサッカー選手の話でぼくが元イングランド代表のオーウェンの名前を挙げたときには、「あいつは転んですぐケガをするからダメだ」と真っ向から批判された。インターネットが世界とつながっていることを初めて実感したきっかけは、紛れもなく『Demon’s Souls』だった。

※PS3のソフトから実装された収集的な要素。それぞれのタイトルに複数のマイルストーンが設定され、それをクリアするごとにトロフィーを獲得できる。1つのタイトルをコンプリートするためには、かなりのやり込みが必要。

フロムソフトウェア最新作、『SEKIRO』
について

2019年3月22日には、開発のフロムソフトウェアから新作『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』が発売される。中世ダークファンタジーのDARK SOULSシリーズと世界観は異なるが、おなじ系譜として続くタイトルであるのは間違いない。このタイトルも当然のように大きな注目を集めている。

フロムソフトウェアの代表取締役社長で、DARK SOULS II以外のシリーズ全タイトルのディレクターを務めた宮崎英高氏によると、「おそらくシリーズ最高の難易度になる」とのこと。IIやIIIに通ずるようなやや理不尽さもともなう難易度となるのか、それとも『Demon’s Souls』や『Bloodborne』のような理不尽の手前に落とし込む絶妙な難易度となるのか、シリーズのファンとしてもとても興味深い。『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』については、4月以降、このコラムでも扱う予定だ。

DARK SOULSからぼくたちはなにを学ぶべ
きか

DARK SOULSは、平たく言えば「死にゲー」だ。しかし、ただ難易度が高くひたすら死を繰り返すだけのゲームだったとしたら、いまのような地位はなかっただろう。もちろんアクションゲームであるがゆえ、そのようなゲームが得意な人とそうでない人のあいだで、進度や感じ方に差は出てくる。が、ほぼすべてのプレイヤーが一度はつまづいた壁を乗り越えていくのだ。
ここには、想定より高い人間の能力の限界を垣間見ることができる。正当な工夫や努力を重ねれば、最初は無理だと感じた目標も達成が可能なのだ。これをぼくたちは人生へと生かしていくべきだとおもう。

冒頭でも話したとおり、一時期を境にゲームにはエンターテイメント性が求められるようになった。時を同じくして、社会では安定こそが至上だと考えられるようになり、挑戦的な人が減ってしまったようにおもう。このタイミングが重なると感じるのは、ぼくの考えすぎだろうか。
昔はDARK SOULSシリーズのように骨のある難易度のゲームがたくさんあった。そこから学ぶべきことを学ばずに、ぼくたちは大人になってしまったのではないだろうか。

カルチャーには世相を反映していく面と、世相をリードしていく面の二面があるとおもう。「リセットできない」「やり直しがきかない」といった、ゲームとは区別して語られる人生の特徴は、はたしてぼくたちの人生を豊かなものにしているだろうか。

時代錯誤的に発売され、アクションRPGの金字塔となったDARK SOULSシリーズ。このゲームカルチャーは、ぼくたちにとても大切なことを教えてくれているのかもしれない。

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DARK SOULSが示す楽しい人生の歩き方 -ゲームが教えてくれたこと #4-はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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