【インタビュー】MONO「アートは人生
観を変える力を持っている」

Photo by Mariza Kapsabeli

MONOが遂に、ニュー・アルバム『Nowhere Now Here』を2019年1月25日にリリースした。新体制となったMONOが新メンバー加入後に収録した初のパッケージ作品である今作は、長年の友であるオルタナ界の巨匠スティーヴ・アルビニをプロデューサー/エンジニアによってシカゴにてレコーディングされ、アートワークにはピンク・フロイドのアルバム『The Endless River』を手がけたアハメッド・エマッド・エルディンを迎えて、バンド結成20周年目の2019年に10作目のアルバムとして世に送り出された。

そしてその大作を引っ提げた全国ツアー<MONO 20 Year Anniversary Japan Tour 2019>が、1月27日(日)の東京・リキッドルーム公演を皮切りに、メンバーの生まれ故郷を含めた大阪、福岡、広島、島根、山口にて開催される。

そこで今回は、“夜明け前の一番暗い場所にいた”という苦難続きだった2017年から新ドラマーのDahmと出逢い、苦境を突き抜けて『Nowhere Now Here』を創作したこれまでのこと、そして20周年を彩るこれからのことについて、メンバー全員に訊いた。
──新ドラマーとなったDahmはMONOのファンだったそうですね。

Taka:ドラムが抜けて、誰かいないかってジェレミー(テンポラリー・レジデンス(Temporary Residence Ltd./Mogwai、Explosions In The Sky、BEAK>などが所属するアメリカのレーベルのオーナー)に相談したらDahmを紹介されて。

Dahm:Torresと3年間ツアーを廻っていたバンドを辞めた時にMONOが新しいドラマーを探していてタイミングは完璧だったんだよ、不思議なくらいにね。

Taka:それと同時に世界中のドラマーからオーディションさせてくれっていうオファーもたくさんもらったんだけど、まずは紹介してもらったDahmに会ってからにして、もし問題があればそのときに次は考えようと自分からは探さなかった。

──なぜ?

Taka:ジェレミーとは長い付き合いだから心配もないし、悪い予感もなかった。それにメールには「いいドラマーで人間も良くて思慮深い」と書かれていて、思慮深いって面白えなと。実際に1日で決めたよね?

Yoda:そう、そう。リハでね。

Taka:Dahmはアンダーグラウンドの世界でしっかりやってきたキャリアのあるドラマー。そんな彼が転機を迎えるタイミングでMONOも新たなチャプターに入ろうとしていた。紹介されて2ヶ月後には日本に来て一緒に音を出して“いける”って思った。

Dahm:そうだったね。
Photo by Chigi Kanbe

Taka:彼の出身地ルイビルはポストロック界の元祖Slintが居るインストゥルメンタル・ロックの発祥地で、MONOがアメリカで最初に呼ばれて手応えを初めて感じた街でもある。そこでMONOを見ていたDahmと俺たちがそれぞれ違う道を歩んで出逢った。不思議な出逢いでしたね。すべてが決められたかのようにスムーズでした。

──運命的ですね。

Taka:アメリカのバンドはビートがやっぱり違う。特にドラムは如実に違う。俺たちは日本のバンドとしてワールド・ツアーをやってきたけど、アメリカで戦うためにはそういう素質が必要だとずっと思っていたんです。Dahmが入って、曲を合わせてみて、インターナショナルなバンドになって新しい形になっていくというのはこういうことなんだなって。そうこうしてると、ロバート・スミス(ザ・キュアー)から<メルトダウン>(*2018年6月ロンドンにて開催)へのオファーもあって。Dahmもいたし、レコーディングも先に決めてたし、何の問題もなくなった。

──ドラマーが決まっていないのに?

Taka:そう。なんとかなるだろうって(笑)。

──YodaさんとTamakiさんはDahmを迎えての新体制をどう捉えていますか?

Yoda:楽しいですよ。楽しいしハッピーだし。出逢えてラッキーですね。性格も純粋だし。僕らも純粋なんですよ。だから説明しなくてもちゃんと同じところを見えてる気がしますけどね。

Tamaki:いろいろとトラブルがあったし、喪失感がすごかったから。去年の11月とかはもう呼吸が弱くて(笑)。

Taka:ひどかったよね。

──喪失感というのは前メンバーの脱退に際して?

Tamaki:脱退も含めてですが、この先が見えないことで過去18年の積み重ねが全て失われたように感じたんです。脱退に関してはそこで分かれ道ができてお互いが違う道を進んだって感じかな。

Yoda:辞めた実際の理由は僕らもわからない。ただ、僕なんかはバンドとしてどうありたいかというヴィジョンが変わってきたしね。

Taka:バンドも生き物だからね。俺らもバンドを辞めて解散することも、続けることもできた。その問題も含め、それぞれが次のチャプターに向けてさらなる高みへ進む時が来たんじゃないかな。大きな波が来て抗わずにどうなるんだろうって見てたらこうなった。
Photo by Yoko Hiramatsu

──では、3人は続ける方向へと自然に進んだということでしょうか?

Yoda:そうですね。自分たちは強制的に集まってるわけではなく、やりたくてバンドにいる。でもバンドでやりたいことが自分のヴィジョンと違うんだったら辞めたいっていう人もいるし、こうしたいって言う人もいるし。それだけな気がしますけどね。

Tamaki:Dahmと音を合わせるまでは不安だったけど、合わせてすごい楽になって。ピースが1個、きちんと埋まって進み始めた。

──組んだばかりのバンドだったら、そうは事が運ばなかったかもしれませんね。

Yoda:始めたときは分からないことがいっぱいあったけど、いろいろ経験して、いろんなところへ行って、いろんなことができるようになって、今は全部分かってるからね。

Taka:自分たちが何者でどういう立ち位置で何がしたいのかも分かっている。コアな部分は変わらずそのままでね。

Yoda:そう、だんだん見えてくる。「僕がこうしたいから君もそう思いなさい」ってことではなくて、みんなが自然発生的に同じことを経験しているから同じようなヴィジョンを見てるはず。

Taka:Dahmの場合はサポート・メンバーでやりたいのか、パーマネントでやりたいのかを最初に訊いたらパーマネントのメンバーになりたいと言ったので、それなら3つだけ条件がある、と。「愛し合うこと」「リスペクトし合うこと」「助け合うこと」これを守れるならやろうよって言いました。

──どれも大切なことですね。
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Taka:MONOをサポートしてくれる仲間が世界中にいるのは、その気持ちがお互いにあるから。それに日本でのマネージメント契約を辞めたのもその3つがなかったからだったしね。それぞれの人生だし何をやってもいいけど一緒にやるんだったら、人としてその3つだけは絶対守らなきゃいけないことじゃない? テクニックがあるとか、名前があるとか、そういうことはどうでもよくて、その3つができるメンバー、それができる仲間と夢を叶えていきたい。シンプルだけど、それが今はできているのですごくいい環境と思ってます。

──そこを守るためにしてることはありますか?

Taka:ディスカッション(話し合い)とアーギュメント(言い争い)は違うじゃない? ディスカッションはするけどアーギュメントは要らない。これは世界共通で絶対守らなきゃいけない。それができれば事は世界中で進んでいく。バンドってチームだしさ。事務所とかもそうだけど、そういう感情がないとできない。1にも2にもお金の話だけなら一緒にはできない。

──今更ですが、2017年のマネージメントのトラブルは片付いたんですか?

Taka:それはTamakiが片づけたね。

Tamaki:片づけました。人生で一番エネルギーを持ってやったかも。

──片付いて、2018年のスタートが切れた。

Taka:のはずだった(笑)。

──ああ、ここで前メンバーの脱退でしたね。

Yoda:でもいい人が現れたし。

Taka:理解者が現れた。そういうことだったんだろうって今は思います。

──これまで積み上げてきたものが引き寄せ合ったんでしょうね。

Taka:さっきから言葉を選んで喋ってきたんだけど…。言葉は悪いけど、臭いものに蓋をするのをやめた。臭いものに蓋をしてたらいろんな意味で爆発したから。我慢していても大事故になるならしないほうがいいってね。

Yoda:今までは自分が我慢していればバンドがうまくいくって思っていた。それぞれが少しずつ我慢してやれればいいものが間違いなくできるって思ってたんだ。でもそうではなくて、意見を分かりやすく、人を傷つける言い方ではなくてちゃんと伝えるようにすれば臭いものに蓋をしなくていいし、小さい問題が小さいうちに解決できるって気付いたんだ。

Tamaki:事務所のことやビジネスのことで皆が考え込んで疲弊しきった時に、後藤さんが「俺たち元々ミュージシャンで、音楽とは違うことで悩んでるだけだよね? そこに時間を使うのは勿体ないから音楽を創ることに時間を使おうよ」と言われて、そうだわ、音楽に還らなきゃって。
Photo by Bana courtesy of Young Team Productions
Photo by Bana courtesy of Young Team Productions
Photo by Diana Lungu
Photo by Diana Lungu Photography

──意外ですね。MONOのような百戦錬磨のバンドでも見失うときがあるとは。

Yoda:(笑)

Tamaki:インディペンデントっていう意味では、自分たちを自分たちで管理するのは昔からやってるし私は悪くないと思っている。でも音楽以外のことを軽減したくて(会社を)入れたのに、怒りや苛立ちがそこばかりに向かってしまった。でも後藤さんの言葉で相手がどうこうではなく、自分たちは何をやってるんだろうってね。

Taka:VISAの発給もマーチャンダイズも、何でも自分たちでできる。でも外部の人間が入ることで集中力が剥がれて信用が欠け、非常に不健康になったりする場合があるってこと。

Yoda:その会社とやることによって少しでも自分たちの負担が減ればいいと思ってやったけど、結局は思ったよりスケジュールも埋まらないし、いろんな面で自分たちのほうがうまくやれる。それだったら一緒にやる意味はないって、そこがきっかけになりましたよね。同じように世界と戦っていきたかったけれど、僕らの目には同じように世界へ向かって行っているような気がしなかった。

Taka:そういう結果に辿り着いたよね。金の話しかない、音源渡しても感想もない。結局は俺たちが教えなきゃいけない。だからその会社は俺たちの日本のパートナーにはなり得なかった。でも、テンポラリー・レジデンスは18年の付き合いで一回も揉めたことがないし、中国、オーストラリア、ヨーロッパ、それら全部のエージェントとだって気持ちよくやれている。必要なパートナーは世界にいるから。ただ、後に続いた若いバンドには悪いことをした。こういうくだらないのはもう最後にしたいね。

──そうした苦難を乗り越え、アルバム『Nowhere Now Here』が生まれました。Macで試聴させてもらっただけでも分かるほど音が完全に違うレベルになっていますね。

Tamaki:前の良さはもちろんあるし、それは素晴らしいと思ってるんだけど、こういう世界があるのかと。

Yoda:こんな音になるんだなって(笑)。

Taka:スティーヴ・アルビニは出た音しか録らないからね。もちろん俺たちしか持っていない音とか世界観もあるけど、そこに新しいドラムがプラスされて自分たちが想像していないようなアルバムを作っちゃった。すんごいの録れたなって思ってます。やっとアメリカで戦えるんじゃないかな。今からアメリカ・ツアーが楽しみですね。

──Dahmによるものが大きいと?

Taka:今回のアルバムはすごいヘヴィで、Dahmが入って自分たちが求めた形になった。だからドラマーが誰でもいいわけじゃないんだなと。

Tamaki:そこに合わせて自分の音も変わる。「私すごい」みたいな(笑)。

Taka・Yoda:そう。
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──絶賛されているDahmさん、初アルバム制作はどうでした?

Dahm:ファンタスティックな出来だよ。スティーヴ・アルビニとのスタジオワークも楽しかったし、とても楽にできた。本当に楽にできちゃって。

Tamaki:ワオ(笑)。

Dahm:あまりにもスムーズに事がうまく進むもんだから、少し怖かったくらい。みんなで一発録りだったしね。すごく興奮したよ。とにかくグレート。MONOにはもちろん多くの楽曲があるけれど、このアルバムは僕にとってはバンドに入って初めて参加した作品だから特別なものだね。ライブで演奏するのも今から楽しみです。

──新体制になったMONOに対し、スティーヴ・アルビニは何と言いました?

Yoda:何も言わない。

Taka:フェアでジェントルだからね、彼は。出た音をただ録ってた。ドラマーが脱退したときも「お前ら、大丈夫か?」ってすぐにメッセージくれて。それ以外はメールでもSNSでもスタジオで会っても、絶対に何が起きたか訊いたりはしないし、俺らが今やろうとしていることをリスペクトしてくれて、今のMONOを信じてくれている。

Tamaki:前に進むだけ。レコーディングはいつも楽しいんです。

Yoda:今回歌ったからね。泣きそうになりますよ。

Taka:とにかくシングルを聴いてもらえばわかる。

──Tamakiさんのボーカル・デビュー作となったセカンド・シングル配信曲「Breathe」。これまで歌なしで来たMONOが、なぜ歌ものを?

Taka:アルバムを出す毎に新しいことにチャレンジしていて、遂に歌有りをやることにしてTamakiに歌ってもらおうってことに。「ロンドンのフォーラムでオーケストラと一緒に歌っているからね」って脅して(笑)。

Tamaki:むちゃくちゃでしょう?でも、そこまで言われたらさすがに断れない。ピアノ、ギター、シンセもそう。いろいろな楽器をやらされてきましたけど、遂に歌まで来たかと。ひぃって仰け反りましたし大変でした(笑)。

──(笑)

Taka:完全なるヴィジョンがあったから。俺を信じてずっと一緒にやってきてくれたTamakiをフィーチュアリングしてミュージック・ビデオを撮って、皺の一本一本も全部残したくて。Tamakiが俺たちのために献身してくれたものへの恩返しじゃないけど、そういうのを表現したくて映画監督のジュリアンとTamakiと俺の3人でコラボレーションした。Tamakiがどんな声でどんな歌を歌うのかまったく分からないまま、ホーム・スタジオで歌ってもらったらマイブラみたいにレヴェルがわりと低くてウイスパーっぽくて。でも、スティーヴ・アルビニが録ったら、歌が生々しくてデカい!

Yoda:すっごいデカい!(笑)

Taka:すっごいデカくて、すっごいいいの。暗闇にいる主人公の女性がきちんと感情を語れればいいと思ってて、スティーヴと二人で顔見合わせて「これだ!」というのが録れた。でもTamakiは「これ残すの?!」という反応だったけど(笑)。

Tamaki:いろいろあったから、やけっぱち?

Yoda:でも、アルバム通して聴くとすごく自然に聴こえる。Tamaさんが歌ってるのが当たり前のようになってる。

Taka:これもこのタイミングでしかできないこと。俺らは前に進むし、私は私のやりたいようにいくっていうのがあったから。ベースは弾かず、歌ってちっちゃいシンセを弾いてるけどね(笑)。
▲左からYoda、Tamaki、スティーヴ・アルビニ、Taka

──そんな斬新作も収録されたニュー・アルバム『Nowhere Now Here』のコンセプトは?

Taka:今回のアルバムはどうしようもない怒りから、そこを抜けるまでのストーリーを書いています。最初のシングルは“F**k you”から始まって、2曲目はTamakiに気持ちを代弁してもらう。バンドのリーダーとして、絶対うまくいくから、来年は絶対いい年になるからって言い続けて作ったアルバム。いつ解散してもおかしくない状態だったからね。この二人が信用してくれてMONOを続けてくれて、Dahmが入ってくれて。まさにそのままがアルバムになっている。

──ふたりはなぜ信じてこれたんですか?

Yoda:ずっとやってきたからですよ。始めた頃は何も分からなかったし今でも全部は知らないんだけど、こういう風な人間でこういうバンドでこうなりたいよねっていうのが、多分、今、同じなんだと思う。だから「信じる・信じない」ってね…、さすがにこんだけやってきてるからね(笑)。

Tamaki:そうね。

Taka:俺たちしかできないアートがあるのに俺たちが解散したらそれがなくなっちゃうじゃない。それが消えるのがイヤなんだよね。命ある限り残していきたい。今回10枚目だけどあと20枚トライしていきたい。もっといいものができるかもしれないし、ピカソの絵みたいにね。作品は歴史に残る生きた証だから。今日もスタジオで4人でやってても楽しいし、音楽の必要性がわかる。これを世界中の人とシェアしたいし、少なくとも音楽を通じて社会貢献できる。

Tamaki:考えをシンプルにすると、それを創り上げるところがコアな部分で、それがある限りは曲を演奏する、表現するという部分を最終的に選んだってこと。

Taka:4人でやると掛け替えのないクオリティの表現ができているという認識はある。ソロやっても他の誰かとやっても比較の対象にはならなくて、MONOでやるとスペシャルなんだよね。それを壊すなんて馬鹿げてるしできないな。明日ステージやるっていったらすごいものができる自信があるから。

Yoda:一昨年の出来事があって改めて考えましたよ。「バンドとは何か」とか、このメンバーでやっている意味とかね。人生の半分がMONOなんで、この20年の中で自分が何を残したか。MONOにみんな生かされてる。より誇りに思えるし、これからもやり続けていきたいって僕は思いましたね。

Taka:細かいディスカッションもあるけど、誰も何も言わなくても誰が何をすべきかを暗黙の了解でレコーディングしてできちゃうから。これは他のメンバーじゃできない。この音出すとこうなるって分かるって、それってミラクルだから。
Photo by Anne D'hoore
Photo by Mariza Kapsabeli

──世界での反応が楽しみですね。さて、ツアーも始まります。日本公演は2018年7月のリキッドルーム以来ですよね。

Tamaki:あのリキッドは泣きそうになりました。お客さんの待っててくれた感がすごくて。ちょっと活動から離れていたから。

Taka:いいお客さんだったな。いいライブだった、楽しかったね。

──イギリスで暮らしていた時、多くのライブを観た中で最も衝撃を受けたのがMONOでした。他のカルチャーショックもたくさんありましたけど、音楽大国のイギリスにおいてまさか日本人からショックを与えられるとは思ってなくて。

Yoda:嬉しいですね。

Taka:アートは人生観を変える力を持っているから、価値観が変わるようなものを聴かせて見せなきゃ。それがプロフェッショナルだろうし、そのために切磋琢磨、追求していく。鳥肌とノイズは似ていて、想定外のことが起きると細胞レベルでブワッと反応してくる。単純にノイズだとかジャンルだとかじゃなくて、喜びの鳥肌が立つとか、こんな世界があるんだっていうのを感じてもらって、その扉を開けたら一生他の音楽を聴けないって思って欲しい。そういう音楽を俺たちはやっているんだけど、日本ではなかなか伝わらないなって。言語を超えた表現、人間の根源に入ってシェアしていく音楽をね。

──しかし、MONOのようなインストゥルメンタル・ミュージックは想像力がないと楽しめない音楽。これはクラシック音楽なども然りですが、日本では近寄りがたいイメージがあるような。

Tamaki:音楽は知らないけど海外をよく知る人からは「なんで日本ではこの音楽を受け入れないんだろうね」って言われることはある。

Taka:歌詞から入る音楽と、音楽から入って歌詞を想像するって真逆じゃない? 俺なんかは洋楽聴いて、歌詞わかんないからそういう気持ちになってたし、音楽が言葉以上に雄弁に語れると信じているけどね。それに俺たちは俺たちの音楽をアンダーグラウンドだとは思ってないし。

──MONOに出逢うまで、ポストロックやインストゥルメンタル・ロックと呼ばれる音楽を聴いたことがなかったけれど垣根なしに好きになりました。心臓が震える音楽ってそれほどないですし。

Taka:見たものを描くんじゃなくて、感じたものを描く時代になった。事実の先にある人間の心情を表現できるものがアートだと俺は思うから。その人が死んだら換えがきかないものがアート。

Yoda:こんな音楽が流行ってるからとか、そんなんじゃなくてね。

Taka:誰かに気に入ってもらいたくてやってることは一切なくて、俺たちは俺たちにしかできないものをやっていきたい。すると「自殺しようとしたけどMONOの音楽を聴いて救われた」とか、そういうメールが来てこっちが驚くようなことが起きるんだよ。去年からずっとTatooを掘ってやろうって思ってる言葉が「夜が明ける前が一番暗い」なんだけどさ、今暗い気持ちだったら何も見えないし、人生ではいろんな辛いことがある。予期せぬこととかね。でも必ず出口があるし、今見えることがすべてじゃないから。そういう風に思えるか思えないかが勝負であってさ。とにかくライブに一回来てくれと思ってます。
Photo by Anne D'hoore

バンドが遭遇した出来事は壮絶だが、それほどの苦難を乗り越えなければこの音は生まれなかったのかもしれない。そう感じさせられるほどまでに研ぎ澄まされた純度の高い音楽作品に仕上がっている『Nowhere Now Here』は、音楽を真に愛する人たちに届いて欲しい傑作だ。

また、MONOは毎年世界中でツアーを実施しているが、日本における全国ツアーが組み込まれるのは近年では非常に珍しい。また、5月12日にはMONOをはじめとするアーティスト主催フェス<After Hours>の開催が発表され、出演アーティスト第一弾として、Explosions in the Skyenvydownyなどが発表された。この好機に彼らのライブを体感して、彼らが紡ぎ出す轟音の中でしか見えない美しいアートを貴方にもぜひ観て欲しい。

取材・文◎早乙女ゆうこ
Photo by

アルバム『Nowhere Now Here』

2019年1月25日(金)発売
Labels:Temporary Residence Ltd.(North America & Asia),
Pelagic Records(UK, Europe & Oceania)
Formats:CD, LP & Digital
1.God Bless
2.After You Comes the Flood
3.Breathe
4.Nowhere, Now Here
5.Far and Further
6.Sorrow
7.Parting
8.Meet Us Where the Night Ends
9.Funeral Song
10.Vanishing, Vanishing Maybe

◆アルバム予約
www.smarturl.it/mono-nnh
◆Single 1「After You Comes the Flood」
www.smarturl.it/mono-ayctf
◆Single 2「Breathe」
www.smarturl.it/mono-breathe
◆Single 3「Meet Us Where the Night Ends」
www.smarturl.it/mono-muwtne
Photo by

<MONO 20 Year Anniversary Japan To
ur 2019>

2019年1月27日(日)東京・LIQUIDROOM
2019年1月29日(火)大阪・梅田Shangri-La
2019年3月16日(土)福岡・西小倉WOW
2019年3月19日(火)広島・広島CLUB QUATTRO
2019年3月22日(金)島根・出雲APPOLO
2019年3月24日(日)山口・周南LIVE rise
前売¥4,000/当日¥4,500(ドリンク代別)
席種:All Standing
チケット(ぴあ/ローソン)
東京:130-341(ぴあ)/ 73668(ローソン)
大阪:130-641(ぴあ)/ 52805(ローソン)
福岡:135-943(ぴあ)/ 81919(ローソン)
広島:135-397(ぴあ)/ 63912(ローソン)
島根:135-398(ぴあ)/ 63913(ローソン)
山口:135-397(ぴあ)/ 63912(ローソン)
チケット(e+):http://smarturl.it/mono-jpn19-eplus
Tickets for English speakers:http://w.pia.jp/a/mono-eng/

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