THE BAWDIES 独自の進化を遂げ、ロ
ックンロールへの愛と感謝を分かち合
った3度目の日本武道館

Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019

2019.1.17(THU) 日本武道館
自分たちが憧れた欧米のロックンロールや、そのルーツとなったリズム&ブルースをなぞることからスタートしたTHE BAWDIESが、それから15年を経て、唯一無二の存在と言える独自の進化を遂げたことを、今一度、キョーレツに思わせる2時間だった。
結成15周年、そしてメジャーデビュー10周年を記念して、ロックンロールへの愛と感謝を、全国のファンと分かち合うため、昨年(2018年)の4月から47都道府県を回ってきた『Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019』がこの日、日本武道館(以下武道館)でファイナルを迎えた。
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
以前のインタビューでメンバーたちは、自分たちが日本武道館でライブを開催する意味を、そこが単なるデカバコではなく、ロックンロールの聖地であることを伝えていきたいから、と語っていたが、THE BAWDIESにとって3度目となる今回の武道館公演。西口正面玄関の上に掲げられた古い映画の看板を髣髴とさせる手描き看板やレトロな雰囲気のステージセットは、武道館をロックンロールの聖地に変えたビートルズの来日公演が行われた1966年――そろそろ二昔前になろうとしている昭和の時代を意識しているように思えた。
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
サム&デイヴの「ソウルマン」が流れる中、観客の手拍子に迎えられたバンドは、MARCY(Dr)のドラムの連打から演奏になだれこむ。1曲目は2009年4月にリリースしたメジャーデビュー・アルバム『THIS IS MY STORY』のオープニングを飾る「EMOTION POTION」。JIM(Gt)とTAXMAN(Gt,Vo)がそれぞれにギターを唸らせ、かき鳴らす。そして、「ロックンロールへの愛情を全開に武道館でシャウトしたいと思います。みなさんもシャウトしていただけますか!?」とROY(Vo/Ba)が“うぉーーーーーー”と渾身のソウルフルなシャウトをキメ……ると思いきや、“ウェッ”とずっこけ、客席をどっと沸かせる。会場全体が一つになったことを確信したROYはニヤリと笑って、「ようこそ、武道館! 飛び上がっていきましょうか!?」と「NO WAY」につなげる。すると、1曲目から総立ちだった観客が手を上げ、ジャンプ。その中には、最新シングル「HAPPY RAYS」の日本武道館公演記念パッケージについていたHAPPY“わっしょい”法被を着ているファンも少なくない。早速、火柱が10本上がった3曲目の「IT’ S TOO LATE」では、ROYが“あーーーー!!!!”と本気のシャウトをキメ、会場中から拍手喝采が起こった。2019年しょっぱなのライブが武道館だなんて縁起がいい。
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
「ロックンロールの愛情で作った糠(ぬか)に、みなさんを漬け込んで、ロックンロールの漬物にしたいと思います。漬け込まれる準備はできてますか!?」
演奏もさることながら、曲間のROYのMCも序盤から絶好調。この日、彼らが演奏したのはオールタイム・ベストと言える全21曲。「みなさん一緒に歌ってくれますよね?」とテンポを落としてポップなメロディーメイキングをアピールした「LEMONADE」、ビートルズバージョンの「ツイスト・アンド・シャウト」からメドレーでつなげ、グルーヴィーな演奏が会場を一際盛り上げた「A NEW DAY IS COMIN’ 」、MARCYのドラムソロも含めハードロッキンな魅力をアピールした「THE EDGE」などなど、印象に残った曲はいろいろあるが、THE BAWDIESのライブの見どころが楽曲や演奏だけに止まるものでないことはファンならご存知のとおり。
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
曲間の軽妙なトークで会場を沸かせるROYはこの日、MARCYのエピソードをネタに笑いを取ったが、照れ屋という性格の中で、頼まれたらイヤとは言えないやさしさと、どんなにかっこ悪い時でもクールに見せたいという2つの気持ちがせめぎあっているというMARCYの葛藤を、両手を前後に動かす振りつきで、“阿波踊りのように”とROYが表現した時は、笑うよりも先に、この人は話術の天才かと感心させられたほど。もちろん、「HOT DOG召し上がれ!」と「HOT DOG」になだれこむ前にメンバー全員で臨む通称“HOT DOG劇場”も彼らは忘れなかった。今回は、“花の17歳のコッペパン娘、フナヤマタクコ”と“ソーセージことソウダセイジ”、そして名前がケチャップを連想させる“アカイトマト”が三角関係を繰り広げる学園ラブコメ風のコントを、SEと照明を駆使しながら披露。コントと言えば、「B.P.B」の演奏中、階段状のステージを降りて、「やることは一つ! 踊れ!」と客席を煽っていたTAXMANとROYが間奏が終わる直前に、その場で足踏みしながら慌ててステージに戻るくだりが、ビートルズの来日公演で前座を務めたドリフターズへのオマージュに思えたのは筆者だけだろうか?
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
その「B.P.B」から「そろそろ打ち上げ花火を見てみたい時間じゃないですか!? 一人ひとりが打ち上げ花火になって飛び上がれますか!?」と「YOU GOTTA DANCE」「JUST BE COOL」のキラーチューン2曲をたたみかけ、アリーナはもちろん、1階席、2階席の観客もジャンプさせると、「すでに次が始まっているTHE BAWDIESについてきてほしい」という願いを込め、昨年4月にリリースしたベストアルバム『THIS IS THE BEST』に加えた新曲「FEELIN’ FREE」を、「この曲で前に進んで終わりたいと思います!」と披露して、本編を締めくくった。
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
そしてアンコールでは、ストリングスとともに演奏した「HAPPY RAYS」、初の武道館ライブで1曲目にやったという「I BEG YOU」を、「これからも武道館に立ち続けて、ここがロックンロールの聖地であることを言い続けながら日本中にロックンロールを根付かせたい」(ROY)と夢を語りながらたたみかけると、最後の最後に、THE BAWDIESはこれからもロックンロールを演奏し続けるという思いを込め、メジャーデビュー・アルバム『THIS IS MY STORY』のラストを飾る「KEEP ON ROCKIN’ 」をキメ……ると思いきや、観客に求めたコール&レスポンスのレスポンスの声が「足りない足りない!」とROYが言いながら、ジャ・ジャジャジャ・チャラーンとROY、TAXMAN、JIMが悲しそうな顔で振り返ったもんだから、観客全員が破顔一笑。
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
もちろん、そこから「こんなもんじゃないってわかってるんです。今の49倍の声を聞かせてください!(なんで49倍なのかなんて)考えないの! 感じるの!(笑)」と再び盛り上げ、眩い照明が会場全体を照らす中、銀色のテープが放たれ、恒例の“わっしょい”コールで、ツアーフィアナルは見事、大団円を迎えたが、筆者は最後の最後まで観客を笑顔にする努力を惜しまないバンドの姿を見せつけられた気がしたのだった。
この日、ROYは「笑顔になることが明日からのパワーにつながる。じゃあ、どうしたら笑顔になれるんだろう? ロックンロールがあるじゃないか。我々、THE BAWDIESがいるじゃないか。それを武道館で言いたかった」と語ったが、ロックンロールを日本中に根付かせることに加え、THE BAWDIESにはいつしか、ロックロールで日本中を笑顔にしたいという目標が芽生えたようだ。
独自の進化を遂げてきたTHE BAWDIESは、新たな使命感とともに、ここからさらなる進化を遂げていきそうだ。6月からは、レコーディング前の新曲たちを初披露するというツアーが始まる。
取材・文=山口智男 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
THE BAWDIES 2019.1.17 日本武道館 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)

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