【インタビュー】the shes gone、キ
ラキラと輝くサウンドと柔らかい歌声
で恋愛のときめきを綴るミニアルバム
『DAYS』

そのバンドの名はthe shes gone(シーズゴーン)。バンド歴は約3年、メンバーは二十歳を超えたばかり、2017年末の「RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 17/18」で優勝を勝ち取った、若き俊英だ。ギター・サウンドはキラキラと輝き、柔らかい歌声は耳に優しく、恋愛のときめきと切なさを綴る歌詞はどこまでもピュアで瑞々しい。初々しい1stミニアルバム『DAYS』を引っ提げて、バンド・シーンに爽やかな旋風を巻き起こす、その音楽と思考についてボーカル&ギター・兼丸が語ってくれる。

■「想いあい」は女性の言葉にしたらすぐに書けちゃった
■主人公の思いをどれだけ詰められるかなと思って書いています

――年末に公開された「甘い記憶」のミュージック・ビデオが、すごい勢いで見られていますね。

兼丸:ありがたいです。今は見てもらって、知ってもらうのが最優先なので。

――今まで出した「ラブストーリー」「想いあい」と「甘い記憶」には共通性があって。どれも可愛い女の子が主人公で、「甘い記憶」はモデルの橋本美好ちゃんが可愛すぎ。不純な目線ですけど(笑)。

兼丸:いいんです(笑)。賛否あると思うんですけど、サムネイルの段階で見てもらおうという魂胆が僕らにあるので。何がきっかけでも、聴いてもらえばこっちのものというか。

――映像制作も兼丸さんが?

兼丸:そうです。今回は初めて映像監督の方にコンセプトを立ててもらったんですけど、今までは基本的に僕で、「ラブストーリー」は編集に2か月くらいかかっています。女の子も僕が声をかけて、前の2作は同じ学校の子なんですよ。一つ目の「ラブストーリー」は、サークルの後輩で可愛い子をピックアップして、次の「想いあい」はカットモデルをやっている子に頼んで撮りました。

――可愛い子が身近にいていいなあ。でもthe shes goneの歌は恋歌が基本だから、すごく合ってる。

兼丸:僕が好きなMVも、そういうものなので。バンド演奏のみのシンプルなものだと、伝わらないこともあるじゃないですか。女性がいてもいなくても、ストーリーが入っていて、サビで演奏シーンがパッと出て来るとか、そのほうがかっこいいなと思うので。

――みなさんぜひ。音を聴く前に映像をチェックしてもらえれば。

兼丸:お願いします!
――元々このバンド、兼丸くんが声をかけて集めたメンバーなのかな。

兼丸:テーマ性を持って集めたメンバーではなくて、大学の音楽サークルで僕とギターのマサキが一緒になって、ギターもけっこう弾けるし好きなジャンルも似ていたんで、声をかけたのがきっかけです。あとのメンバーはマサキの高校の軽音部の同級生で、僕以外は高校が同じというメンバーでした。メンバー・チェンジを繰り返していますけど、時間が経つにつれてようやくまとまってきた感じです。

――とはいえ、結成からまだ3年弱。バンド・オーディションで優勝したのが、1年前くらいでしたっけ。

兼丸:あそこで優勝していなかったらバンドは続いてなかったと思います。僕は行けるところまでやってみようと思っていたんですけど、メンバー全員がそう思っていなければ続けられないので。だからここまで来られるとは本当に思ってなかったです。

――オーディションがすべてを変えた。何が評価されたんだと思います?

兼丸:何ですかね? 自分ではわからないところもあるんですけど、「想いあい」のMVを出した時にコメントがどっと増えて、歌詞が共感できると言ってもらえたんですよ。そこを狙って作ったわけではなかったんですけど、聴く年代が僕らと同じか下の子で、しかも女子が共感してくれたのがまずびっくりしたところで、「そこなんだ」という感じはありました。たとえば「想いあい」の、“憂鬱で時々寝て/日が暮れることが未だにあるんだよ”とか、落ち込んだ時に現実から目をそらしたくて、ベッドに倒れてそのまま寝ちゃうことがあるという、それをただ書いただけなんですけど(笑)。それって自分だけじゃなかったんだということを、初めて知ったというか。

――ああー。

兼丸:“ポッケの電話/手放せなくなるよ”とかも、意外とあるあるなんですけど。意味深な言葉がメッセージで来て、どういうことなんだろう?って考えるとか、恋愛じゃなくてもありますよね。僕の場合はバイト先からのメッセージだったりするんですけど(笑)。メンバーにパッと言われたこととか、些細なことがすごく気になるという、自分の中のあるあるをストーリーにして書いたんですけど、それを共感できる歌詞だととらえてもらえているんだって。

――面白いなあ。

兼丸:けっこう、何も考えてないんです。「想いあい」は歌詞とメロディが一緒に出てきて、“もう行かないでよね/耐えられないの”って、女性の言葉を借りて書いてみたらすぐに書けちゃった。目指すものがあるとすれば、それぞれの曲に主人公がいて、その主人公が思ってることを限られた時間の中でどれだけ詰められるかな?と思って毎回書いてます。

――作家的。ストーリー性を重視している。

兼丸:そうですね。ただ、歌だけを聴いてほしいわけではなくて、ちゃんとバンドでいたいというのがあって。僕はあんまり楽器に詳しくはないですけど、メンバーはそこをしっかり考えてやってくれていますし、ちゃんとバンドの演奏をしていると思います。今注目してもらっているのは、MVの女の子が可愛いとか、声がいいとか、歌詞がいいとか、きっかけはそれでいいんですけど、そこで終わらないように、バンドとしてちゃんとしたいと思っています。

――ちなみに、音楽的にはどんなルーツが?

兼丸:最初に好きになったのはL'Arc-en-Cielで、でもカラオケで歌っても自分に合わないことに気づいて(笑)。それからSEKAI NO OWARIGalileo Galileiが好きになったんですけど、僕は声フェチなところがあって、息の継ぎ方や語尾の切り方とか、そういうところが好きで聴いていました。あとFUNKISTback numberは、歌詞で伝えたいことがちゃんとあるところに惹かれていました。ストーリー展開があると覚えやすいのもあって、自分が書くものもストーリーが多いんだと思います。

――ソングライター体質ですね。バンドマンである前に。

兼丸:そうかもしれない。でも優勝してお客さんが来てくれるようになってから、ちゃんと聴いてくれる人がいるんだと思えてから、メンバーもライブが楽しくなってきたので。ノルマを達成するだけで精一杯だったバンドが、ありがたいことに見てくれる人が増えてきて、せっかく見に来てくれた人にどれだけ思いを伝えられるか、そういう意識に変わってきました。

――そして今回の1stミニアルバム『DAYS』に至る。

兼丸:再録音が4曲と、新しく作ったこれからの曲が4曲という感じですね。

――どんなものにしようと思って、作り始めたんですか。

兼丸:コンセプトを考えていたわけではなくて、時間がなかったのでとりあえず作って録っていきました。“はじめまして”のアルバムですし、結局何を作っても自分たちらしくなればいいなと思って作ってました。

――新曲は4曲。新しいチャレンジもありますね。

兼丸:「化物」「shower」とかは恋愛に関係ない曲で、今までとは違うと思います。「shower」はアンサンブルっぽいサウンドで、「化物」は前よりもギター・ロックが前面に出たサウンドになっているし、ミックスの力も大きくて、録りながら次第にできていくのに自分たちでもびっくりしてます。結果的に集まった8曲を見て、『DAYS』というタイトルをつけました。

――DAYS=日々、ですか。

兼丸:僕らの歌が日々に寄り添えますようにということなんですけど、そのテーマを掲げるバンドが多いことは重々わかっていて、その中でも一番近くに行きたいので。支えられるとは思っていないですけど、好きな曲って毎日“とりあえずつけとこう”っていう感じで聴く方も多いですよね。“このバンドの曲、とりあえずシャッフルして流して聴いておこう”みたいな感じが理想ですね。

――ああー。それでいい。

兼丸:それでいいんです。劇的な変化を与えたいわけではないし、とりあえずアルバム全曲通して聴けるものになれば、それが僕の中の理想です。どんな日にもちゃんとそばにいてくれる、そう考えてタイトルをつけました。それにプラスで、ジャケットがおうちの玄関なんですけど、「緑とレンガ」でデモCDを作った時と同じ場所をあらためて撮ってもらいました。この頃、最初から見てくれている人に“遠くへ行っちゃったね”とか言われたりするんですよ。でも直で話してる時点で、遠くへ行ってないんですけど。

――そりゃそうだ(笑)。

兼丸:一緒に飲みに行っている時点で違うんですけど(笑)。でも僕らはどこへ行っても変わってないし、メンバーも僕の意見を尊重してくれている。この状況にいると天狗になりやすいと思うんですけど、僕らはただの学生で、何も変わってないんです。という意味も込めて、同じジャケットにしています。いつも同じカメラマンに頼んでいるんですけど、最初に見た時にピンと来たんですよね。玄関があって、ドアがあって、生活感があって、お客さんも勝手に連想できそうだから。自分ちなのか彼女んちなのか。

――出て行ったあとなのか、これから入っていくのか。そう考えるとけっこう切ないかも。

兼丸:悲しいところから始まっているんで。僕が。バンドをやることも曲を書くことも、悲しい部分から始まっているんで、そういう写真を選んじゃったんだと思います。
■悩むのは苦しいけど悩まないことは一番良くない
■ちゃんと向き合って前に進めている証拠だよと言いたかった

――そもそもthe shes goneというのも、相当切ないバンド名ですよね。彼女は行ってしまった、ということでもあるし。

兼丸:僕が、初めてできた彼女に振られて、その時にback numberを聴いて、今までわからなかった歌の意味が初めてわかったんです。「青い春」が好きで、受験の時に聴いていたんですけど、それ以外の曲は正直よくわからなくて。それまで恋愛経験がなかったから。でも初めてそういう経験をした時に、“こういう気持ちのことを言ってたんだ”って初めて共感できた。その時に僕も、恋愛じゃなくてもいいけど、寄り添って支えてくれるような、“わかるよ”って言ってくれてるような曲が書きたいと思って、バンドで歌う内容はそういうものにしようと決めたのは、そこから来てる気がします。

――それすごく大切な話。結成前の話ですか。

兼丸:そのこと自体は全然前の、高校時代のことです。まだ曲作りはやっていなかったんですけど、数年経っても、この気持ちを忘れちゃいけないなというのが自分の中にずっとありました。

――わかる気がする。ものすごく個人的な話って、普遍性につながりますよね。

兼丸:そうですね。自分とは違うストーリーでも、すごく鮮明に描かれていれば、世界観が勝手にわかった気になるのが楽しいから。それを自分の生活に重ねて、こういうことなんだなって発見したりするんですよね。
――リード曲の「甘い記憶」は、字面だけみると完璧にハッピーなラブソングですよね。可愛い君にメロメロという感じ。

兼丸:一番だけ聴くと、ずっとハッピーですね。

――あまりにハッピーだから、もしかして全部空想だったら怖いなとか。

兼丸:夢オチかもしれない(笑)。

――まさかの(笑)。ちょっと「高嶺の花子さん」っぽい関係だし。

兼丸:まさに「高嶺の花子さん」に近いかもしれない。言うなれば、高嶺の花だった人に手が届いたという、そこからスタートしている歌なので。その、僕が初めて付き合った人は、僕にとってすごく高嶺の花だったんですよ。僕と付き合っていていいのかな?と思う人だったので。こういうことって、ある人はあると思うんですよね。でもずっとハッピーなことはないという、自分がこの主人公の立場になった時、そう思ったんです。理想の彼女と付き合えたけど、自分は本当に見合っているのか?って。そこまで書いてないですけど、服装だったり、お金だったり、毎回デートでおごれるわけでもないし、デート・プランを提案できるわけでもないし、なのになんで付き合ってくれてるんだろう?って、絶対思うだろうなと思ったら、バーッと書けました。

――めちゃリアル。「化物」も大事な曲で、バンドとして化けていくぞという決意に聴こえる。

兼丸:「化物」は、前のドラムが通っている大学の学園祭で歌ってほしいというオファーがあって書きました。僕が大学4年生の2月ぐらいに話をもらって、一番就職で悩んでる時期だったので、それしか頭になかったんですよ。だから不安要素や決意の気持ちが入っているんだと思います。“箱入りの根性を出す時が来た”とか、普段は根性出すことがあまりないので(笑)。細かい表現は個人的なことが多いですね。でも「化物」という曲は何に当てはめてもらっても良くて、恋愛の歌詞もそうですけど、理想とは違うことで悩んでしまっているから、途中で不安な要素が出てきてしまうということですね。でも最後に“それはちゃんと向き合えてる証拠だよ”と言えたから、肯定してあげられたと思います。

――自分に向けて言ってるから、他人にも伝わるんだと思う。

兼丸:自分が共感できることは、聴いてる人も共感してくれるんじゃないかと思うので。悩むのは苦しいけど、悩まないことは一番良くないし、それはちゃんと向き合って前に進めている証拠だよと言いたかったんです。最後の最後に“さぁ化けにいこうか”っていう言葉が出てきて、タイトルが「化物」になりました。

――恋歌と、自分を見つめる歌と。the shes goneの2大テーマですか。

兼丸:自分を見つめる歌は、書くのに時間がかかりますね。自問自答だから。ほかの曲は、たとえば「甘い記憶」の“君を包む何かになれたらなぁ”とか、ふわっとしたニュアンスなんですけど、自問自答系の曲は、光とか空とか、大きなものを出しがちになっちゃうんですよね。そこに逃げるのも嫌だったので、そういう言葉を入れずに書きたいなと思いました。光という言葉を使って歌っても、結局答えを出せていないと思ったので。

――誠実な曲。今の年齢だから書ける曲でもあるのかな。

兼丸:それはありますね。何も知らないからこそ書けている部分はあります。

――リアルな恋歌はthe shes goneの大きな武器として。こっちの歌詞も突き詰めてほしいと思います。

兼丸:いつまで葛藤してるんだよって思われるのも恥ずかしいですけど。こいつ何歳だよって(笑)。

――新たな旅立ちの季節、3月にはリリース・ツアーも決まりました。どんなものにしたいですか。

兼丸:アルバムと同じですけど、その人にとってそれぞれのDAYSになればいいなと思っています。それぞれに人にとって素敵な日になればいいし、いい意味で、素敵な日でなくてもいいと思っていて、全部引きずって見てもらっても全然いい。僕らの音楽は、その瞬間だけは現実を忘れさせてやるよというよりは、あなたのためにちゃんと歌いますという気持ちを届けるものだと思うので。初めてのツアーですし、ライブ経験が浅かったぶんいろんな発見もあると思うので、模索しながら成長できればと思います。

取材・文●宮本英夫
リリース情報

1st mini album「DAYS」
2019年1月23日(水)発売
UKCD-1180 1,800円(税別)
収録曲:
1.想いあい
2.甘い記憶
3. 化物
4.サプライズ
5.緑とレンガ
6.shower
7.最低だなんて
8.ラブストーリー

ライブ・イベント情報

●リリース記念東名阪ツアー「DAYS TOUR 2019」
※各公演ゲストバンドあり
2019/3/16(土) 愛知 名古屋 ell.SIZE
2019/3/17(日) 大阪 心斎橋 Pangea
2019/3/24(日) 東京 下北沢 SHELTER

●the shes gone「DAYS」発売記念インストアイベント
2019年2月3日(日)16:30スタート
開催場所:タワーレコード渋谷店4Fイベントスペース
イベント内容:アコースティックミニライブ&サイン会

2019年2月9日(土)18:30スタート
開催場所:ヴィレッジヴァンガード大阪アメリカ村店
イベント内容:アコースティックミニライブ&サイン会

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