魔法少女になり隊 “新しい武器”を
手に入れた4人が作り上げた最強のミ
ニアルバム『∀』から始まる冒険の旅

各地の夏フェスでオーディエンスを沸かせ、その経験を経て新たに芽生えた創作意欲を消化した新作ミニアルバム『∀』(読み:アンチエー)を1月23日にリリースする魔法少女になり隊。“新しい武器”を手に入れ、「4人で作り上げた最強のミニアルバムが出来た」と自信みなぎる『∀』完成に至る冒険の旅を訊いた。
広い地図を手に入れて、オーソドックスに一歩一歩進めていくのか、寄り道をしてから道を見定めるのか? いますごく面白い状況にあると思います。
――1stアルバムを引っさげてのワンマンツアーで始まり、全国夏フェスにも多く出演した2018年。まずは魔法少女になり隊の2018年を振り返っていただきたいのですが。
gari(VJ&Vo):1stアルバム『魔法少女になり隊~まだ知らぬ勇者たちへ~』をリリースして、ツアーが終わって、春くらいからフェスシーズンが始まって。2018年はたくさんフェスに出られて嬉しかったです。フェスで少し観たことで満足しちゃう人もいたり、出ることの良し悪しもあるんですけど、単純に大勢のお客さんにライブを見てもらえるってことがなにより嬉しくて。
火寺バジル(Vo):フェスで初めて出会ってくれた人もたくさんいると思うんですけど、そこで知ってくれた人が次に手に取る、重要な作品が最新作『∀(アンチエー)』だと思ってて。これを聴いて、改めてハッとしてもらえる作品にしたいと思って作ったんです。
gari:フェスで見た人の印象がカバーの「おジャ魔女カーニバル!!」で止まってるんじゃないかって思うことがあって、Twitterでエゴサすると“魔法少女になり隊でまさかのおジャ魔女www”みたいなTweetも多かったりして。本当はライブハウスみたいに映像(基本、屋内のライブではgariの作る映像をステージに投影してパフォーマンスをしている)と光り物でバキバキに見せたいんだけど、それを見せられてないもどかしさもあって。「おジャ魔女~」で楽しんでくれた人たちに、どうやってライブハウスに来てもらおうか? というのが、2018年に思ったことでした。
魔法少女になり隊/火寺バジル(Vo) 撮影=大橋祐希
――魔法少女になり隊はフェスで見て興味を持った人がCDを聴いて、ワンマンを見てって掘り進めていくと、かなり堀り甲斐のあるバンドだと思うし。最もシンプルな形でライブを見せる、フェスの短いステージで引っかかってくれた人は本物ですよね。
gari:ギミックなしの僕らに興味を持ってくれたわけですからね。そこから面白ギミックが積み重なっていくんで、音楽という根底の部分で引っかかってくれるのは嬉しいですね。
明治(Gt):とにかくライブはすごく多かったので。今年、初めて見た人に来年以降に繋がる興味の持ち方をしてもらえていたらいいなと思います。
ウイ・ビトン(Gt):僕はフェスに出演した時、“結構、知ってもらえてるな”と感じてました。これまでリリースした曲を知ってくれてるのがうれしくて。
バジル:フェスに出た時、曲の頭で「キターーー(゜∀゜)ーーー!!!!! 」って声が聞こえたりね。楽しみにしてくれてたんだ!と思うと、こっちもすごく嬉しくなるんです。
――1stアルバムを掲げてフェスに臨んでというところで、アルバムの存在が自分たちの自信にも繋がったところもあったんじゃないですか?
バジル:単純に武器がいっぱいある中で、“今日はどの武器で戦おうか?”って選べるのが強くて。“今日はこういうフェスです”ってなった時、どういう武器を使って戦いに行くかを決められるのは、今の自分たちの強さになってると思います。
gari:火属性の敵には水属性の武器を使う、みたいなね(笑)。
バジル:そうそう。2018年は本当に振り幅のある色んなフェスに出させてもらったし、どこにでも出られるのが私たちの強みだと思うし。『∀』でまた武器が増えたので、2019年はもっと色んな戦い方が出来ると思っています。
魔法少女になり隊/gari(VJ&Vo) 撮影=大橋祐希
――最新作『∀』は新しい武器が増えた感じ? 元々あった武器がランクアップした感じ?
バジル:どっちもかな? 新鮮さもめちゃくちゃあるし、成長できてるなって実感もあるし。
gari:発想は“ちょっと新しい武器を作ってみようか?”っていう感じでしたね。「アーバン∀タネモノガタリ」とかは、すごく新しいことができたと思ってて。
ウイ:そうだね。よりギターが前に出てるし、専門的なことでいうとシンコペーションでどんどん前に進む推進力のある楽曲ってなかったし。あと、gariさんが歌詞を初めて全編書いた曲がリードトラックだっていうのも新しいよね。
gari:リード曲だと思って、意識して書きました(笑)。今まではみんなで一個をまとめ上げるみたいなワークフローでやってたんですけど、ちょっと変えてみない?って話になって。歌詞を書いた人のゴリ押し世界観で、ひとつ形にしてみようってなったんです。バジルさんや明治が自分の世界観をゴリ押ししてる曲もあるし、ずっと聴いてくれている人は新鮮だと思います。
――改めて、『∀』が出来上がっての感想はいかがですか?
バジル:今回、初めてひとつテーマを決めて、それに基づいて世界観を作り出して、ひとつのミニアルバムに落とし込んだんです。具体的には今までポップなイメージの曲が多かったので、ダークな部分を出したいってところで。“喪失感”とか“切なさ”というのをテーマに掲げて、曲を作り進めていきました。歌詞をみんなで分担して書くのは初めてだったし、4人で作り上げた最強のミニアルバムが出来たなって気持ちがあって。これが出来たことでパーティー感というか、団結力もより強まったと思います。
――それぞれがゴリ押し世界観を出せたのも自信の現れで、何をやっても魔法少女になり隊の曲になるっていう裏付けがあってこそですよね?
バジル:安心感はありますね。ここまでバンド全員が歌詞を書くって珍しいですしね。
gari:そのやり方でやってる人って俺、チャットモンチーJanne Da Arc、あと僕たちくらいしか知らないもん(笑)。
――チョイスが極端だな(笑)。あと、今作を聴いても一曲一曲に明確な世界観や物語があって。ラスト、「NEVER ENDING STORY」を聴いた時、<星の点と点結んで>って歌詞もありますが、7つのミニストーリーがひとつの大きな物語として繋がった気がしました。
gari:一度、フルアルバムで全部乗せをやった上で、今回はそういったコンセプトを定めたミニアルバムができたので。僕らもどこへでも行けるってところで、考え方や世界も広がりました。これを作ったことで、今後の制作の自由度もすごく広がったと思います。
魔法少女になり隊 撮影=大橋祐希
――RPGだと最初、決められたイベントをクリアしないと次に進めないけど、マップが広がるとどのイベントからやっても大丈夫、みたいになるじゃないですか?
gari:船を手に入れたら一気に世界が広がるみたいなね。そう、まさにそんな感じです。
――船ね! さすが、いい例えが出てくるなぁ(笑)。でも、世界が一気に広がると、それはそれでどこに行っていいか分からなくなるんですよね。
gari:そういえば、「頭の良い人のRPGの進め方」みたいな記事を読んだことがあるんですけど。普通の人は言われた通りに順番に進めるんですけど、頭の良い人はとりあえず一回、全部回っちゃって。その上で進めるんだって。
――なるほど! 一度、全体を把握した上で、改めて進めていくんですね。
gari:そうです。ま、いまの話で思い出しただけで、何も関係ないんですけど。
ウイ:なんだ、何か関係あるかと思った(笑)。
gari:いや、でもウチも広い地図を手に入れて、ここからオーソドックスに一歩一歩進めていくのか、たくさん寄り道をしてから道を見定めるのか? って話で。ゲームで言ったら、いますごく面白い状況にあると思います。この話がみんなに伝わるか分からないけど(笑)。
――俺はすごい腑に落ちましたよ。明治さんはアルバムができての感想は?
明治:新しい試みが多いので、自分で聴いていても楽しいし、ウイさんの作る曲はやっぱりいいなと思いました。「ピーポーフーウィーラブラブ」とか、途中で曲のイメージが変わるんですけど、サビに来て泣けるようなエモいメロディが入ってきたりして、すごい落ち着く感じがあって。大好きな曲だし、すごく良い曲だなぁと思って。
ウイ:僕も今まで開けたことの無かった自分の引き出しや、メンバーの引き出しを開けることができた作品になって、すごく良かったなと思ったのと。テーマを設けてやることの楽しさっていう、新しい気持ちにも気付くことができて。今後の作品作りへの広がりが見えたことで、自分たちの未来への広がりも見えたことが本当に良かったですね。

――初のタイアップであるアニメ『パズドラ』のエンディングテーマ、6月発売のシングル「▶START」や、今作も同作のエンディングに採用された「トロイメライ」はどんな存在になりました?
バジル:単純にフェスとかで子供連れの人が増えた印象はありました。ライブハウスもちびっ子が来て、「▶START」聴いてジャンプしてくれたり、小さい子にも刺さってるのが目に見えて分かるのは嬉しかったし。この子が大きくなった時にも覚えていてくれてる大事な思い出になる可能性を秘めてるっていうのがとても夢のあることだなって。
――曲を書く時にはアニメを見てるちびっ子とか、聴き手のことも意識しました?
バジル:めちゃくちゃ意識しました。難しい言葉を使わないとか、歌いやすいメロディにしたいとか。でも、ちゃんと大人が聴いても胸に来るものがある曲ってすごく難しくて。
ウイ:「トロイメライ」はミニアルバムのテーマもある中で、『パズドラ』に合わせるっていうのがすごくハードル高くて。結果として哀愁感の強いものになって、アニメとも重ねて聴けるものになったので、良かったなと思ってるんですけど。
gari:アニメの絵が付いたことで、また印象違ったしね。
魔法少女になり隊/ウイ・ビトン(Gt) 撮影=大橋祐希
――「トロイメライ」は後半の展開やシャウトがあったり、アニメ尺では聴けない部分もあって。ちゃんとテーマに沿った曲になってるし、ラスサビがまた胸にくるんですよね。
バジル:「▶START」で前向きな歌詞を書いて、ちびっ子たちに夢を与えられてるんだってことが実感を得た上で、「トロイメライ」を書いて。ちびっ子たちには大人になっても忘れられない歌詞になればいいなと思って書いたし、裏テーマとして、「トロイメライ」は一緒に冒険してくれているお客さんに向けて書いたところもあって。
――なるほど。「▶START」を経たことで、伝える相手がより明確になったんですね。では、ほかの曲についても聞きたいのですが。リード曲「アーバン∀タネモノガタリ」はできた時、今作を象徴する曲になったなという手応えもあった?
ウイ:個人的には全てがリード曲みたいな気持ちなんですけど(笑)。この曲がリードでいいんじゃないか?って、みんなの意見が一致しましたね。
バジル:そこでみんなで歌詞を書いて、匿名で投票してgariの歌詞が選ばれて。
――あ、そういうシステムだったんですね。
gari:意識したのは“リードでしょ? バジルさん歌うんでしょ? MV撮るんでしょ?”ってことで。特にMVの部分が大きくて、画が浮かぶ言葉であったり、曲に合った世界観が見えるものにしたいなぁと思って書きました。それが“リードっぽく”っていう意味なんですけど。

――この曲は全体を通して聴いた時もひとつアルバムを象徴する曲になっていて、1曲目でも良いかなと思うくらいですけど。1曲目には物語の導入となる「周回とセイレーン」があって、この曲が始まるのもすごく良い感じです。
バジル:始まり感がありますよね。
明治:この曲は私が作詞したんですけど、分かりやすい曲にしたいと思って、私ができる限りのキャッチーさを入れました。すごくしんどい思いをしてる友達がいて、その子と色々話してて思ったことを書いたんですが。前向きさを押し付けられるのが辛い人もいて、私には“頑張れ”って言いたくなってしまう気持ちもあって。そのバランスに葛藤する中で書いた歌詞でした。自分が丸々書いた歌詞を歌ってもらう機会って、あまり無かったので。みんながこれを聴いてどう思うのか? 色んな人に感想を聴いてみたいです。
バジル:私は“頑張れ!”って言っちゃうタイプなので、“頑張れ!”って言わなくて応援するってところに明治さんらしさも詰まってると思ったし、私には絶対出てこない歌詞だし。これをどう表現したら良いのか? ってことを色々模索しながら歌いました。
――この曲はイントロがカッコいいですよね、めちゃアガります。
ウイ:ライブでも1曲目であって欲しいなと想像して作りました。最初は爽やかな気分なんだけど、曲が進んでいくうちに切なくなっていく感じが自分でも好きです。
魔法少女になり隊/明治(Gt) 撮影=大橋祐希
――そして、この作品のラストを飾る「NEVER ENDING STORY」。こちらはライブのエンディングにピッタリな切なさと希望に溢れた曲になっています。
バジル:この曲は作品の最後に入ることをイメージしながら、ライブで披露していく上で、みんなにとっても私たちにとっても大切な曲になっていくんだろうなと思って。魔法少女になり隊がここからどんどん成長して大きくなった時、みんなの中でそれまで積み重ねてきた物があって。その時に歌ってやっと完成する曲になればと思って、ある意味エンディングみたいな、最終回みたいな気持ちも込めて書きました。
――ライブでもラストに演奏されるであろうこの曲。「周回とセイレーン」で始まって「NEVER ENDING STORY」で終わるライブがはっきりとイメージして作れたのも、2018年の経験が活かされているんでしょうね。最後に今作を『∀』と名付けた意味を聞かせて下さい。
gari:タイトルは深い意味を含むものじゃないし、想像におまかせしたいので、あまり深くを語りたくないですが。ひとつだけ言えるのは、可愛かったからです(笑)。
バジル:「アーバン∀タネモノガタリ」がリード曲にあって、タイトルの間になにか記号があればと思っていた時、Aの逆さまの文字の“∀”が出てきて。今までのポップで明るいイメージをガラリと変える、変化の一枚って意味で分かりやすいんじゃないかな? という意味があったりします。アルバムを聴いたみんなにも色々想像して欲しいです。
取材・文=フジジュン 撮影=大橋祐希

魔法少女になり隊 撮影=大橋祐希

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