歯磨きや家事のついでに体力アップ!
健康運動指導士が教える「簡単ながら
運動法」4選

スポーツ庁の調査によると、子育て世代の女性の運動実施率は他の世代や男性と比べて低め。実際、子育て中のママに、ジムに通ったりスポーツをしたりする時間はありませんよね。そこで、日常生活の中で簡単にできる“ながら運動法”のアイデアを、専門家に教えてもらいました。

スポーツ庁が発表している平成29年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の概要によると、スポーツ実施率(週1日以上運動・スポーツをする者の割合)は、成人男女の平均で51.8%。
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男女ともに、30〜50代の働き盛りの世代が平均を押し下げている傾向が見られますが、中でも最もスポーツ実施率が低いのが、「40代女性」(37.8%)。
次いで低いのが「30代女性」(40.7%)なのです(ちなみに、40代男性は46.4%、30代男性は49.9%。男性で最も低い50代でも45.4%です)。
たしかに、30代40代の女性には小さな子どもを持つ人も多く、大抵のママは平日もたまの休日も子どもの世話に追われています。ジムに通ったりスポーツをしたりするヒマはどこにもありませんよね。
今回、そんな運動不足気味のママたちに向けてアドバイスをくれたのは、自身も育児中だという健康運動指導士の加藤有里さん。
「基礎代謝は加齢とともに徐々に下がっていきますが、特に50代からは大幅に下がり、太りやすくなります。女性ホルモンがぐっと減る閉経の前後から、骨密度も低下しやすくなり、骨粗しょう症のリスクも高まります。
肥満や骨粗しょう症を予防して、将来にわたって元気で健康に過ごすためには、30代40代で運動しておくことが、とても大切なんです」
といっても、無理にスポーツをする時間を作る必要はないといいます。
「日常生活の中で、筋肉や関節をきちんと使って運動量を増やす工夫を続ければ、筋力アップ、骨密度の維持も可能です。基礎代謝アップも期待できますよ」
では、具体的にはどうすればいいのでしょうか?次に、加藤さんが教えてくれた、ママが日常生活の中でできる4つの運動法を紹介します。
歯磨きタイムにちゃっかり実践。「かかとの上げ下ろし」手順
左右の足を揃え、ゆっくりと爪先立ちになる。
またゆっくりとかかとを下ろす。
※10回程度繰り返します
ポイント
左右のかかとをくっ付けた状態で行うのがポイント。
一般的に、かかとの上げ下げ運動は、両足を肩幅くらいに開いて行うことが多いのですが、加藤さんによると、子育て世代のママには、かかとを付けたスタイルがよりおすすめなのだそうです。
加藤さん(以下、加藤)「こうすると、ふくらはぎだけでなく、太ももとお尻、下腹部の筋力も鍛えられるんです。姿勢を支え、骨盤や腰椎を支えている体幹のインナーマッスルのトレーニングにもなります。
産後にゆるみやすくなる骨盤底筋群も、そんなインナーマッスルの一つ。骨盤底筋群のゆるみは、尿失禁などのトラブルの原因になります。
産後3、4年経っていても骨盤底筋群がゆるんだままで、二人目三人目と出産してさらにダメージが大きくなるママも多いので、子育て中のママは、できる限り早い段階でこのかかとの上げ下ろしトレーニングを始めるといいでしょう」
最適なシーン
日常生活のどのシーンで実践してもかまいませんが、「朝昼晩の歯磨き中に行うと、必ず10回程度ずつできるので、最適ですよ」とのこと。
そのほか、スーパーのレジ待ち中や、通勤途中の電車内(軽く吊り革につかまりながら)、食器を洗うときにするのもいいそうです。
洗濯物を干すときがチャンス!「スクワット」手順
両足を肩幅に開いて真っすぐ立ち、股関節(脚の付け根)で体を曲げ、背中を伸ばしたまま上半身を45度くらいまで前傾させる。
ゆっくり膝を曲げながら、イスに腰掛けるイメージで、お尻を後ろに引いていく。このとき、膝が爪先より前に出ないよう注意する。膝の角度が90度くらいになるまで曲げたら、ゆっくり立ち上がる。
※1~2を、10回程度繰り返します
ポイント
このトレーニングの一番のポイントは、1の股関節を曲げるところ。慣れないうちは、脚の付け根のラインに手の平を上に向けた状態で当てると意識しやすいそうです。
加藤「股関節を曲げて背中を真っすぐにキープした状態でスクワットすることで、大臀筋(お尻の表面の筋肉)、ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)といった背面の筋肉を鍛えることができます。
家事や育児は前のめりになる細かい作業が多く、股関節を曲げずにみぞおちで体を曲げてしまいがち。その動作ばかり続けていると、肩が前に出て背中が丸まってしまい、姿勢が悪くなります。それに、お尻や太ももの筋肉が使われないので、骨盤底筋群などの体幹のインナーマッスルが弱くなりやすいんです。
関節の正しい使い方を身につけ、筋力をアップして代謝をよくするために、スクワットは、ぜひ日常生活に取り入れてほしいトレーニングです」
最適なシーン
洗濯物を干しながら10回程度行うほか、トイレで用を足した後、ついでに2、3回行うのも一つの手。
加藤「洋式トイレに座る姿勢は、スクワットにちょうどいいんです。1回につき3回行って、1日に5回トイレに行くとしたら、計15回スクワットができますよ!」
テレビを見ながらできちゃう運動も!
休憩中に「バタ足」で気軽にリフレッシュ手順
イスかソファに座り、両方の足を宙に浮かせて上下にバタバタさせる。※1、2分程度続けます
ポイント
特にコツというほどのものはない超簡単なトレーニング法です。加藤さんが開いている健康講座でも、「続けています」という声が最も多く聞かれる運動なのだとか。
加藤「運動不足の人は、足の血流が戻りにくくなり、代謝が悪くなっています。そのため、下肢の冷えやむくみを感じることも。
座って足をバタバタさせるだけで、血流がよくなり、代謝アップも期待できますし、足の疲労取りにもなります。ついでに手を前や上に上げてブラブラさせると、同時に体幹のインナーマッスルのトレーニングをすることもできます」
最適なシーン
テレビを見ながら。ちょっとしたスキマ時間や待ち時間に。
散歩や買い物途中に「腕振りストレッチ」手順
歩きながら、大きく(45度くらいの角度まで)腕を振る。後ろに振る際に、腕をひねるようにしながら、手の平を後ろに向ける。※20歩~30歩の間、腕を振って歩きます
ポイント
実際に腕を振ってみるとわかりますが、通常、前より後ろの方が腕が上がりにくいもの。
ひじを真っすぐに伸ばし、特に、後ろに腕を振る動作を意識しながら行いましょう。前側へは、後ろに腕を振った反動で自然に戻る程度に振ればOK。
加藤「かかとの上げ下ろし、スクワット、バタ足の3つは主に下半身の筋肉を刺激する運動ですが、この腕振りストレッチは、上半身を使うトレーニングです。
子育て中のママには、抱っこのしすぎで『二の腕が太くなっちゃった』という人も多いのですが、実は抱っこでは深い部分の筋肉までは使えていないので、筋肉の付き方がアンバランスで疲労もたまりやすいんです。
歩きながら腕を振ると、二の腕をシェイプすることができる上、肩甲骨が動きやすくなり、背中のシェイプアップや肩こり予防にもつながります」
最適なシーン
散歩中や買い物に行く途中、通勤途中など。
加藤「『あの信号まで腕を振って歩こう』というように、目的地に着くまでの間に何度か実践するといいですよ」

以上、健康運動指導士の加藤有里さんが教える、運動不足のママのための4つの“ながら運動術”を紹介しました。
長く健康をキープするには30代40代で運動して体力を養っていくことが大切、というのは先述の通り。しかし、ママが日常的に運動を心がけた方がいい理由はそれ以外にもあるようです。
加藤「今、子どもの運動量は二極化していて、活発に動く子がいる一方で、ほとんど動かない子も多いことが問題となっています。運動量の少ない子の場合、将来の健康が気がかりですよね。親が日常生活の中で活発に動く姿を見せておくと、子どもの運動量も自然に増えると思いますよ」
“ながら運動法”なら、時間のないママでも、心がけ一つで簡単に取り入れられます。自分自身のためはもちろん、子どもの将来のためにも、日常生活の中で継続的にしっかり体を動かして、体力アップを目指しましょう。
【取材協力】加藤有里さん
健康運動指導士。「一般社団法人ケア・ウォーキング普及会 」上級指導員。健康経営エキスパートアドバイザー。日常動作改善「姿勢や歩き方を正しく意識すること」を主に、自治体の健康づくり・生活習慣病予防(メタボ・ロコモ)・介護予防講座をはじめ、企業セミナー、各種健康講座で講師として活動。
出産、子育ての経験を活かし、妊娠中・産後のママのための教室や、ママパパと子どもがいっしょにできる運動講座の開催、スポーツシッターとして子供への運動サポートを実施。最近では、【足育】という観点から、赤ちゃんから100歳まで足・靴の大切さを伝える活動も行っている。

ウレぴあ総研

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