観月ありさ主演舞台『悪魔と天使』開
幕! 亡き市原悦子に想いを寄せる「
天から見守ってくれているはず」

2019年1月19日(土)神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて、観月ありさ主演の舞台『悪魔と天使』が開幕する。初日に先駆けて18日(金)同劇場にて囲み取材と公開ゲネプロが行われた。
本作は、手塚治虫の生誕90周年を記念する作品。手塚の漫画「ダスト8」を原作とし、平成から年号が変わるときを舞台に、豪華列車・トワイライトエキスプレス号の大事故から生還した乗客と、ある命題を担う事となった男女を巡る物語。監修・脚本は佐藤幹夫、脚本・演出はモトイキシゲキが手がけた。
豪華列車が大事故に巻き込まれる。だが、奇跡的に8人が生き残った。それは“生命(いのち)の山”という不思議な山にぶつかったはずみで山のかけら=生命の石が乗客達にふりかかったから。つまり死ぬ運命だったものが生き残ってしまったのだ。

8人とは別で生き残った海江田沙月と岬慎吾は、“天の声”に他の8人から「生命の石」を取り返すことが出来たなら、二人の命は助けると約束され、8人の行方を追う事となる。
「生命の石」を失った者は当然死ぬ。自分が生きるために誰かの生命を取ろうとする事をいとわない沙月と、どんな理由であれ殺人はいけない、という慎吾。二人はそれぞれの意志にもとづき動き始める……。

ゲネプロが始まり、緞帳が上がるとそこには豪華列車・トワイライトエキスプレス号が発車の時間を待っていた。そこに偶然乗り合わせた人々は年齢も職業も立場も異なる顔ぶれ。楽しい旅行の始まりを笑顔で待ちわびているようだった。ところが大事故が起き、列車は大破。骨組みだけとなった車両の中でまるで生まれたての天使のような沙月と慎吾が目を覚ます。目の前には死神たちがうごめき、そのボス“天の声”が響く。命題を出されると、沙月役の観月は強い意志をみなぎらせ、力強く立ち上がる。一方慎吾役の白石隼也は、一度は反抗するも仕方なく受け入れていく。この二人の意志の違いが物語を大きく動かしていく予感がした。
真っ黒なドレスをまとい、死の使いのような観月は悪魔のよう、白いパーカーを来た白石は天使のよう。見た目にも分かりやすいいでたちとなるが、この二人が2幕に入ると衣裳の色が逆転する。それは何を表しているのか。
生き残った8人の前に沙月が現れ「生命の石」を取り返そうとすると、彼らが心に秘めていたそれぞれの「生きたいと願う目的」が露わになる。助かった命を世のために活かしたい、さらに強欲に生きたい、身内の世話ができなくなるから死ぬわけにいかない……など。これに対して当初は強引に事を運ぼうとしていた沙月が、いつしかタイムリミットぎりぎりまで取り返すのを待とうとする。これもまた、完全に悪魔に身を落としていない「人間」だからこその「情け・優しさ」なのかもしれない。
人はどのように生きるべきなのか、生きる事のすばらしさを、8人と沙月・慎吾を通して観客に投げかける作品だった。
ゲネプロ前に行われた囲み会見には、観月、白石のほか、野村宏伸、黒川智花、鍵本輝(Lead)、中島早貴、黒田こらん、ぼんちおさむ、佐藤B作、高島礼子が登壇した。
観月ありさ
観月は本作の魅力について「生きるとか死ぬとか、人生を自分たちがどう生きていくのかをテーマにきちんと描かれている舞台なので、観てくださる方は楽しんでいただけるのでは」と話したが、稽古はなかなかスムーズには進まなかったようで「何とか初日を迎えるまでに問題点をクリアしたい。また長丁場ですし、インフルエンザや腸炎も流行ってますから。私も一度なってしまったので体調には注意していきたい」と笑った。
白石隼也
白石は本作に携わる事で「生きているということが素晴らしい事なんだ、と感じました。日々生きるという意味を皆さんに届けていけたら」と力を込める。
野村宏伸
医者・柏木守役の野村は「なかなか通し稽古ができなかったので、今日のゲネプロも初日のような感覚でドキドキしています。でも皆さんプロですから、集中していい方に向かっていくと思います」と、ここからの巻き返しに期待を寄せた。
高島礼子
大女優・九條小百合役の高島は「年齢に関わらず若い人でも、明日は亡くなってしまう事もあるかもしれない。でも手塚作品ですから。そういう事を説教臭い感じではなく、どこかミステリー要素を織り交ぜ、悪魔も悪戦苦闘して悩むんだ、と感じていただき、観てくださる方が心に何か一つ持って帰っていただける作品になれば」とコメント。見事なシルバーヘアのウィッグが地毛のように決まっている点を指摘されると「これがウィッグだと思われないような自然な演技をしたい」と微笑んでいた。
佐藤B作
画家・渋井新役の佐藤は「お綺麗な方は何をやっても綺麗です」と高島を持ち上げ、笑いを誘う。続けて「自分が生きたいと思う生き方と、なかなかそう思ってもうまくいかないのが人生だと思う。そのとき何を幸せに思うか、という事の答えがこの芝居にはある気がします。そういう事に気が付く芝居だと思います」と噛みしめるように口にしていた。
鍵本輝(Lead)
亡き父の仕事を継ごうとする小島忠役の鍵本は「僕はカンパニーの中では下の世代になっちゃうんですけど、偉大な大先輩に囲まれながら毎日芝居させていただき、本当に勉強の連続だなと思います。千秋楽まで皆さんに怒られないように頑張りたいなと思います」。
黒川智花
そして病床の母を支える吉沢エリ子役の黒川は「生と死という重いテーマではあるんですが、いただいた命の大切さや自分の大切な家族への感謝の気持ちを改めて感じられる作品だと思います」と上演されることがの役どころを重ねるように述べていた。
ぼんちおさむ
渋井とは幼なじみの大前田十蔵役のぼんちは「自分の中の悪魔と天使と葛藤して生きています」と前置き。「(芝居中に)観月さんにぱっとにらまれると怖いんです。その迫力をぜひ舞台で観てほしい」と見どころを語り、「僕にとっての悪魔は、漫才でウケないお客さん。天使は笑ってくれるお客さんです!」と笑わせた。
中島早貴
ラジオDJ・有坂瞳役の中島は「劇場も大きいですし、先輩方の存在感もすごいので、埋もれないよう、この派手な衣装を味方につけて挑みたいと思います」と爽やかに挨拶した。

黒田こらん
エリ子の叔母・小坂徳子役と、“天の声”を担当する黒田は「一人ひとりの思いがこもっている舞台です。千秋楽まではスタッフ、キャストと共に最後までケガなく務めたい」と続けた。
黒田が演じる“天の声”は、1月12日に亡くなった市原悦子が当初務める予定だった役。
市原への想いを聞かれた観月は「皆、市原さんの“天の声”を聴くのが楽しみだったので本当に残念です。市原さんとは以前朗読劇でご一緒したのですが、同じ場面がなく、共演という感じではなかったので、あの時一緒に出来ていたらもっとよかったのに、勉強になったのに、と思っています。市原さんは『悪魔と天使』の脚本を読んで『是非とも“天の声”をやりたい』とおっしゃっていたそうで、願いは叶いませんでしたが、生と死をテーマにしたこの舞台で、市原さんが天から見守ってくれているんだと思いながら、最後までがんばりたいです」と決意を口にした。
市原の代役を務める黒田は「16日、市原さんに別れの挨拶をしたんです。安らかに眠っていらっしゃいましたが、まるで生きているかのようで、今にも台詞を喋り出しそうな雰囲気でした」と時折声を震わせる。市原の代役を務めるにあたり「市原さんって5種類くらい声を出される方なので、演出家さんたちと相談して『こういう風な低めの声を出すんじゃないかな』とアドバイスをもらいながら演じていました」と振り返っていた。
また、本作のテーマ曲を手がけた河村隆一が、先日肺腺がんの手術を受けたことを受け、観月は「回復に向かっているそうなので安心しました。少しでも早く復帰していただいて、迫力のある歌声を聴かせていただきたいです。KAATでは間に合いませんが、もし地方公演で舞台に出る事ができそうなら歌っていただきたいです」と励ましと期待を寄せていた。
取材・文・撮影=こむらさき

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