嘉納治五郎役の役所広司

嘉納治五郎役の役所広司

「宮藤官九郎さんの脚本が面白いので
、新しい大河ドラマのファンが増える
のでは」役所広司(嘉納治五郎)【「
いだてん~東京オリムピック噺(ばな
し)~」インタビュー】

 いよいよ本格的に始動した大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」。主人公・金栗四三(中村勘九郎)をやがて日本人初のオリンピック出場へと導く人物が、講道館柔道の創始者として知られ、アジア初のIOC委員も務めた「日本スポーツの父」嘉納治五郎だ。演じるのは、「花の乱」(94)以来、25年ぶりの大河ドラマ出演となる役所広司。撮影の舞台裏やドラマの見どころを語ってくれた。
-久しぶりの出演となる大河ドラマの手応えは?
 オリンピックにまつわる日本の歴史を描く物語は、大河ドラマにふさわしい企画ですね。しかも、2020年の東京オリンピックに向けてという意味でも最高のタイミング。僕自身、スポーツ観戦が大好きで柔道もよく見ていますが、金栗さんはもちろん、嘉納さんがこんなにオリンピックのために尽力した方だったとは知りませんでしたから。宮藤官九郎さんの脚本を読んで、今までの大河ドラマとは一味違った面白さを感じます。新しい大河ドラマのファンが増えるのではないでしょうか。
-嘉納治五郎の印象は?
 実に立派な人です。あの時代に確かな語学力を持ち、オリンピックを世界平和と結び付け、猛反対を受けながらも、日本を初めてストックホルムオリンピック出場へと導いた。この人がいなかったら、日本のスポーツはどうなっていたんだろうと。それぐらいのことを感じさせる人物です。ただ、このドラマでは陽気で楽観的な部分が強調され、周りに迷惑ばかりかける人物として描かれていますが(笑)。でも、「歴史が動くときは、こういう人物が必要だ」と思わせる説得力があります。
-演じる上で心掛けていることは?
 宮藤さんが脚本に描いた嘉納治五郎に歩み寄ることを一番に考えています。現場では、監督やスタッフがみんな「治五郎さん」と呼んでくれるのですが、そういう親しみの湧くキャラクターです。私財を投げ打ってスポーツとオリンピックのために尽力し、莫大な借金を残したまま亡くなったような人でありながら、どこか憎めないところがある。そういう「治五郎さん」の呼び名にふさわしい雰囲気が出せればと。
-宮藤官九郎さんの脚本の印象は?
 やっぱり面白いですね。大胆な展開がある一方で、繊細なところはとても繊細。しかも今回は、僕らが演じるオリンピックの話と、ナビゲーターを務める古今亭志ん生(ビートたけし)を中心とした落語家の話が並行して進んでいきます。台本を読んで話は知っていても、落語の方がどんな映像になっているのか全く分からないので、一つになったときにどんな面白いものになるのか、僕自身も楽しみにしています。
-主人公の金栗四三を演じる中村勘九郎さんの印象は?
 撮影が始まって最初に姿を見たとき、既にマラソンランナーらしい体形に出来上がっている上に、地方から出てきた人の雰囲気もよく出ていました。素晴らしい役作りをしているなと。一緒にお芝居をしてみても、やっぱりエネルギーのある素晴らしい俳優という印象を受けました。
-現場は、勘九郎さんを中心に動いている感じでしょうか。
 勘九郎くんの役作りが素晴らしいので、僕は金栗四三に関わる人物として、うまく盛り上げていきたいと考えています。主人公が輝いていないと、ドラマは面白くありませんから。そういう意味では、出演者全員が金栗四三を盛り上げていく役割を背負っています。ですから、僕もそんな金栗四三の骨の一本になれればと。
-序盤の見どころとなるストックホルムロケにも参加されたそうですが、感想は?
 100年以上前にオリンピックが開催されたスタジアムがそのまま残っていました。ただ、外観は当時のままですが、フィールドは近代的に整備されていたので、撮影のために大量の砂を運び込み、当時の状態を再現しました。そのおかげで、初めて日本人選手が入場行進をした当時の雰囲気が見事に再現できたと思います。ロケをした価値は十分にありました。
-現地で、当時の嘉納さんの気持ちを感じることはできましたか。
 嘉納さんは海外視察の経験なども豊富なので、それほどカルチャーショックは受けなかったと思いますが、金栗さんはどうだったのかと、そっちの方が気になりました(笑)。それまで日本しか知らなかったのに、いきなり見ず知らずの外国に連れてこられたわけですから。ただ、金栗さんはストックホルムでは有名なので、スタジアムの通路に写真がたくさん飾ってあるんです。それを見たら、昔、ここに日本人が確かに来たんだな…と改めて感じることができました。
-ご自身が考えるこの作品の面白さは?
 大河ドラマなので、できるだけ歴史に忠実に描かれているのは皆さんご存じの通りです。ただ今回は、歴史上の有名人が続々と登場する今までの大河ドラマと違い、一番の有名人が嘉納治五郎。スタッフからは「唯一の有名人」と言われるほどです(笑)。でも逆に、金栗四三や三島弥彦(生田斗真)、後半の主人公・田畑政治(阿部サダヲ)など、今まであまり知られていなかった歴史上の人物がたくさん登場してきます。明治・大正・昭和にかけて、これだけ頑張った日本人がいたんだと知ることができるのは、大きな見どころではないでしょうか。ぜひ楽しみにしていただきたいです。
-このドラマに期待することは?
 100年以上も前、世界と戦うために金栗さんや嘉納さんが遠いストックホルムまで行ったことをきっかけに、日本でスポーツが発展してきました。そのおかげで今、僕たちはスポーツを見て感動することができるわけです。このドラマではその過程が細部まで丁寧に、ユーモラスに描かれています。だから、スポーツを通じた国際交流の意義を改めて感じてもらえたらいいですね。同時に、関東大震災や第2次世界大戦など、さまざまな困難を乗り越えていくためにもスポーツを続けようとする人たちの物語でもあります。そういう意味では、東日本大震災を始め、地震や豪雨などの災害が続く今こそ、スポーツを通じて皆さんに元気を与えるドラマになることを期待しています。
(取材・文/井上健一)

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