フリーの『ファイア・アンド・
ウォーター』は早熟の天才たちによる
ハードロック黎明期の傑作
本作『ファイア・アンド・ウォーター』
について
アルバムの冒頭を飾るタイトルトラック「ファイア・アンド・ウォーター」は彼らの代表作のひとつで、ロジャースの文句なしのヴォーカルとコゾフのギターリフは、のちにハードロックでよく使われる様式のひとつとして大きな影響を与えている。かなり遅いテンポで始まる「ミスター・ビッグ」では、ロジャースの跳ねるようなヴォーカルとフレイザーのうねるベースソロが素晴らしい。抑えたギターのコゾフも実に良いのだが、本人はもっと弾きまくりたい欲求を感じていたらしい(若い!)。「ドント・セイ・ユー・ラブ・ミー」のような洗練されたバラード曲もこれまでの彼らには見られなかったスタイルで、ソウルフルではあるけれど熱くなりすぎないロジャースの抑えたヴォーカルが良い。
それにしても本作をリリースした時、ロジャースとカークは21歳、コゾフは20歳、フレイザーは18歳なのだ。この若さで、これだけ重厚な作品を作ったことに驚くが、特にフレイザーはソングライティング、ベース、ピアノと八面六臂の活躍で、コーナーやメイオールが彼をフォローする気持ちがよく分かる。収録曲は全部で7曲と少ないが、じっくり聴かせる曲ばかりで、やっぱり本作が彼らの最高傑作だ。
この後『ハイウェイ』(‘70)、『フリー・ライブ!』(’71)をリリースし、グループはメンバー間の不和で解散するものの何故か再編され『フリー・アット・ラスト』(‘72)をリリース、その後フレイザーが脱退し、山内テツとラビットを加えて再スタート、『ハートブレイカー』(’73)をリリースするのだが、内輪もめの結果、解散が決定する。その後、ロジャースとカークはご存知バッド・カンパニーを結成し大成功を収めることになるのだが、そのあたりはまた次の機会にしようと思う。なお、コゾフはドラッグに溺れ76年に25歳の若さで亡くなっている。
もしフリーを聴いたことがないなら、本作『ファイア・アンド・ウォーター』か、よりハードで荒削りな演奏が聴ける『フリー・ライブ!』(‘71)を聴いてみてください。
TEXT:河崎直人
アーティスト