新国立劇場2019/2020シーズンライン
アップ説明会~<大野和士・オペラ芸
術監督編>

新国立劇場の2019/2020シーズンラインアップ説明会が2019年1月17日(木)に開催され、オペラ、バレエ&ダンス、演劇部門の各芸術監督が登壇した。オペラ、バレエ、演劇の三つの部門のコラボレーション他、各部門で新たなる試みが見られる意欲的なシーズンとなりそうだ。このうち、オペラのラインアップについては、オペラ芸術監督の大野和士氏より説明があった。
大野和士オペラ芸術監督
大野芸術監督が約束した新しい三つの柱
これまでインタビューなどで大野氏が公言していた通り、ロシア・オペラ、ベルカント、そしてバロック・オペラがシーズンの重要な柱となっている。
来シーズン開幕を飾るのはロシア・オペラの傑作、チャイコフスキー作曲の《エフゲニ・オネーギン》だ。新国立劇場で一から作りあげる新制作のプロダクションである。モスクワのヘリコン・オペラの総支配人ベルトマンが新国立のために新演出する。ロシア現代演劇の父祖として知られるスタニスラフスキーが《オネーギン》の演出をした"オネーギンホール"の4本の柱を再現する舞台美術を作り、斬新な演出のプロダクションになる予定だという。出演歌手たちもタチヤーナ役のムラーヴェワ、オネーギン役のラデューク、レンスキー役のコルガーティンなど実力者が揃う。指揮はアンドリュー・ユルケヴィチ。
続くはベルカントを代表する作曲家の一人、ドニゼッティの《ドン・パスクワーレ》。歌手が活躍するオペラ・ブッファながらも、オーケストラ部分の充実した書法でも知られる作品である。金持ちで傲慢、若い嫁をもらおうとして反対に皆にこらしめられる老人ドン・パスクワーレ役にロベルト・スカンディウッツィ。若い求婚者エルネスト役にはいま絶好調のテノール、マキシム・ミロノフ、そして男たちを翻弄する美女ノリーナ役には華やかなスター歌手ダニエル・ドゥ・ニースが出演する。指揮はベルカントに熟練したコッラード・ロヴァーリス。ミラノ・スカラ座で初演された、この演目の極め付けとして知られるヴィツィオーリ演出のプロダクションが新国立劇場に初登場する。
そして新国立劇場がオペラ・パレスで上演する初めてのバロック・オペラには、名作中の名作であるヘンデルの《ジュリオ・チェーザレ(ジュリアス・シーザー)》が選ばれた。古楽の第一人者リナルド・アレッサンドリーニの指揮で東京フィルハーモニー交響楽団が演奏する。チェーザレ役に美声で注目されているアイタージュ・シュカリザーダ、クレオパトラ役が名花ミア・パーション、そしてトロメーオ役には人気の日本人カウンターテナー、藤木大地が出演。演出は「新国立劇場の第一回目のバロック・オペラであるので、まさにバロック的」で「祝祭的な意味も含めた」舞台にしたいということで、ローラン・ペリがパリ・オペラ座のために演出したゴージャスなプロダクションが日本にやって来る。
これだけでも大変観ごたえのあるシーズンになることは間違いないが、そのほかの演目も新国立劇場でこれまで上演された名作オペラが揃っている。キャストは国際的な歌手たちと日本人歌手がバランス良く配され、特に大野芸術監督から名前が挙がっていた《椿姫》ジェルモン役の須藤慎吾、《ラ・ボエーム》ミミ役のニーノ・マチャイゼ、《セビリアの理髪師》ロジーナ役の脇園彩、《コジ・ファン・トゥッテ》フィオルディリージ役のエレオノーラ・ブラット、《ホフマン物語》のタイトルロール、ステファン・ポップなどはぜひ聴いておきたい歌手たちであるし、各演目の指揮者に関しては大野芸術監督が「特に質にこだわりを持って」演目ごとにもっとも適したアーティストを選んだとのことで楽しみである。
世界の一流音楽祭との共同制作
オペラ・シーズンの最後にはもう一つ重要な新制作がある。「オペラ夏の祭典」と銘打ったワーグナーの《ニュルンベルクのマイスタージンガー》だ。ザルツブルク・イースター音楽祭、ザクセン州立歌劇場、東京文化会館との国際共同制作という大型プロジェクトである。芸術監督の大野自身がタクトをとる。演出はドイツ・オペラ界待望の大器と期待されているイェンス=ダニエル・ヘルツォーク。トーマス・ヨハネス・マイヤー、アドリアン・エレート、トミスラフ・ムツェックなど国際的な顔ぶれに加えて、林正子、望月哲也、青山貴などの優れた日本人歌手たちが出演する。
三部門のコラボレーションで作られる「子供オペラ」
新しい試みとして、2019/2020年のシーズンには、オペラ、バレエ&ダンス、演劇の三部門がコラボレーションする企画があるという。
オペラ芸術監督の大野氏から、世界の注目が東京に集まる2020年の8月に、特別企画として「子供オペラ」を新制作する予定だという説明があった。
作曲は初音ミクのボーカロイドオペラ《THE END》がパリのシャトレー座他で成功を収めた渋谷慶一郎、台本は島田雅彦。演出は演劇芸術監督の小川絵梨子、指揮は大野和士。新国立劇場バレエ団からダンサーたちも参加する。100人位の子供たちが合唱で舞台に登場し、そこに最新のAIロボットがからみながら、日本の未来を創っていくという内容だという。「未来のオペラ展望として重要な」このような試みが成功するには困難も多いと思うが、三つの部門のクロスオーバーが実現しただけでなく、最新の文化を積極的に取り入れようとする姿勢を評価し、すばらしい舞台作品の誕生を期待したい。
取材・文=井内美香  写真撮影=長澤直子

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