1月6日@EX THEATER ROPPONGI

1月6日@EX THEATER ROPPONGI

アンティック-珈琲店-、
活休前ラストライブが終了し
15年の歴史に幕

アンティック-珈琲店-は、2018年6月、現体制での活動を2019年1月の活動をもって休止することを発表した。結成15周年イヤーにまさかの発表。でも、大きな節目だからこそ、メンバーそれぞれが自分の未来を見据えた上での決断だったのかもしれない。そして彼らは、『15th Anniversary Year Special LIVE CAFÉ TOUR 2018「ラグニャロク」〜the last voyage〜』と銘打った全国ツアーに出た。

このツアーのファイナルであり、現アンカフェにとってのファイナルともなるライブが、EX THEATER ROPPONGIでのグランドファイナル2デイズだ。ヴォーカル・みくの誕生日でもある1月5日に開催された1日目は、愛しい相手への想いを綴ったラブソング「Spring Snow」に始まり、感謝の言葉を詰めこんだ「世界にたった一つの温もり」で終わるセットリスト。「覚醒ヒロイズム」や「スマイル一番イイ♀~2015ver.〜」など、アンカフェの代表曲を盛り込みながら、“原宿ダンスロック”を信条とするアンカフェらしい、明るく元気な楽曲で盛り上げた構成だった。本当の最後となる2日目は──。

みくの“生涯最愛の皆さまへ──”という一言からライブはスタート。1曲目の「MY▽LEAPS FOR “C”」は、大好きな人に未来を誓うメッセージを込めたナンバー。1日目の「Spring Snow」に続き、目の前にいる多くのファンへの想いを伝える楽曲を1曲目に選んできたことが胸に沁みる。やっぱり、“今日で最後なんだ”と思うと、ステージを見る目がどうしてもセンチメンタルになってしまう。最後のライブは思い切り楽しみたいのに……。今、目の前にいる5人がそんな寂しさを吹き飛ばすステージをこの先見せてくれることを願いながら次々と続く楽曲に耳を傾ける。

「覚醒ヒロイズム」「流星ロケット」と、ライブではおなじみの代表曲的ナンバーが続くが、今回の演出はとてもスタイリッシュだ。色とりどりのレーザー光線が飛び交う場内の雰囲気は、これまでのにぎやかでかわいい印象のアンカフェとは趣が異なる。“アンカフェも大人っぽい演出が似合うバンドになっていたんだな”と思ってしまうのは、しんみりした気持ちがまだまだ自分の中にくすぶっているからだろうか。ステージに向かう観客側と同じく、メンバーも寂しさや複雑な気持ちを抱えてステージに上がっているのだろうか、最初のMCでみくは“歌っちゃうと終わりに近づいていくのかと思えて悲しいんですけど……。ちゃんと向き合わないといけないので。残された時間を思いっきり楽しんで帰りますよ。しっかりと、アンティック-珈琲店-の音楽と15年間の感謝をしっかりとみんなに届けたいと思います”と話した。強がることなく、自分の素直な気持ちを包み隠さず伝える姿は、つねに等身大でファンの前に立ってきたアンカフェらしい。この言葉を聞いて、悲しい気持ちはフタをせず、彼らと一緒に悲しんでもいいんだなと気持ちの切り替えができたように思う。

とはいえやっぱり、曲が進むにつれ、アンカフェが持つ幅広い引き出しに気持ちは上がっていく。というのも、「スノーシーン」から本編ラストまでの13連発(厳密にいうと、ゆうきがヴォーカルをとった「ニャッピーメドレー」で5曲をダイジェスト演奏したので、計17曲)が圧巻過ぎた! 「逃避回路」「我侭行進曲」といったダークで激しい初期のナンバーではフロアがヘドバンの嵐となり、アンカフェオリジナルキャラのニャッピーが登場した「ニャッピーメドレー」ではアンカフェらしい毒のある可愛らしさが炸裂し、「ダックのマジカルアドベンチャー」ではメンバーいじりのロングMCで場内に爆笑が起き……15年の歴史を駆け足で振り返るような構成がとても楽しかった。

このセットリストは、あらためて、アンティック-珈琲店-というバンドの魅力に気づかせてくれた。彼らは演奏技術がウリのバンドではない。けして器用でもない。でも、それ以上にアンカフェには大きな武器がある。原宿ダンスロックのボトムを支え、エレクトリックと生ドラムの融合にチャレンジし続けつつ数々の楽曲を生み出してきたドラムの輝喜、ほのぼのしたキャラクターと抜群のソングライティングセンスで独自のキャラクターを確立したベースのカノン、飛び道具的なキャラクターと華やかな鍵盤の音色でアンカフェに新しい色を持ち込んだキーボードのゆうき、端正なルックスと職人気質の真面目なプレイスタイルで個性を放ったギターのtakuya。そして、バカがつくほど正直に自分の想いを歌詞にぶつけ、多くのファンの心に届く歌を歌ってきたみく。この5人が集まると、ほかのバンドにはない“花”が生まれることを、ラストステージで再認識させられたのだ。

※▽は白抜きハートになります

OKMusic編集部

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