銀杏BOYZの『君と僕の
第三次世界大戦的恋愛革命』は
峯田和伸が白も黒もさらけ出した
渾身のデビュー作
普遍的なメロディーと荒ぶるサウンド
その一方でサウンドはロックバンド然とした荒ぶった音が多い。M6「なんて悪意に満ちた平和なんだろう」はアコギのストロークとハーモニカが中心でモロにフォークソング的な容姿で、M13「青春時代」とM14「東京」とはロック寄りのフォーク、即ちフォークロック的なスタイルだが、それ以外はパンクロック。しかも、一般的にはうるさいとか汚いとか言われるノイジーなサウンドが前面に出ている。ギター、ベース、ドラムの音もさることながら、コーラスのシャウトも凄まじい。M3「あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す」、M7「もしも君が泣くならば」、M8「駆け抜けて性春」が顕著だが、“頭の血管が破裂してるんじゃなかろうか、少なくとも喉は潰れてるだろう”と思うような、まさに渾身のテイクが聴ける。この辺は好き嫌いがはっきりとするところだろうし、聴き手を選ぶのは間違いないけれども、全体的な質感としては70年代のロンドンパンク、80年代の日本のパンクに近いものも感じられるので、その辺に造詣がある人なら抵抗感は少ないだろう。
荒ぶった音が多いとは書いたが、無論それだけでない。全体的には高速R&Rとでも言うべきM5「トラッシュ」は、イントロにお洒落なコードを使っていたりして、単に荒々しさに固執していないというか、決してオールドスタイルのパンクだけを標榜していないことも分かる。個人的に注目したのはM10「漂流教室」。やわらいメロディーを持つフォークタイプのナンバーだが、間奏はネオアコ的である。狙ってネオアコっぽくしたというよりもバンドサウンドにフォーキーなものを取り入れたら結果的にそうなった感じだろうが、この辺りは峯田和伸の音楽的センスを感じざるを得ないところだ。いたずらに荒々しい音、汚い音だけを重宝しているだけではなく、表現手段としてそうしたものを取り込んでいると想像できる。