LUNA SEA 単なる再現ライブではなか
った、バンドの進化の歴史をバックグ
ラウンドから垣間見たクリスマス公演
DAY1レポート

LUNATIC X’ MAS 2018-Introduction to the 30th Anniversary-IMAGE or REAL

2018.12.22 さいたまスーパーアリーナ
LUNA SEAが12月22日、23日の2日間、さいたまスーパーアリーナにて『LUNATIC X’ MAS 2018-Introduction to the 30th Anniversary-』を開催した。いまや毎年恒例となったLUNA SEAのクリスマスライブだが、今回は、来たる結成30周年のアニバーサリーイヤーに向けて、初めてテーマを掲げたライブを開催。初日の公演ではメジャーデビューアルバム『IMAGE』を携えて1992年に行なった全国ツアー『IMAGE or REAL』を、2日目の公演ではメジャー2枚目のアルバム『EDEN』を携えて1993年に行なった全国ツアー『SEARCH FOR MY EDEN』を再構築したライブを開催し、大いに話題を集めた今回のクリスマスライブ。ここでは、その初日公演『IMAGE or REAL』のレポートをお届けする。
ライブは単に当時のライブを完全再現したものではなかった。“いま”のLUNA SEAとして、アルバム単位で自分たちの過去曲を演奏することで、LUNA SEAの楽曲、演奏、ライブ感、さらには照明などを含めた演出が、バンドの歴史のなかでどんな風に構築され、進化していったのか。それをバックグラウンドから垣間見ることができた、貴重なライブ体験となった。
LUNA SEA/RYUICHI 2018.12.22 撮影=LUNA SEA Inc.
客電が落ちると、オープニングSEは当時と同じケイト・ブッシュの名曲「Babooshka」だった。ステージを覆う紗幕には『IMAGE or REAL』のキービジュアルが映し出され、その少女がゆっくり瞬きすると爆発音が鳴り響き、ライブはオープニングから瞬発力全開の「Dejavu」で幕開け。アルバム『IMAGE』のなかでは、もっともライブで演奏され、LUNA SEA王道のキラーチューンへと成長した曲である。
真矢は青髪のエクステをつけ、Jは伸ばした髪にバンダナを纏う。誰よりもファンを興奮させたのはRYUICHIの姿だった。間奏明けにフードを脱ぎ、目元を黒くふちどったメイクとロングヘアのエクステをつけた昔の自分を再現したような容姿があらわになると、盛大な歓声が上がり、場内は狂乱状態に。次は、Jが“カッコイイ”としか言いようのない佇まいでベースを弾きながら前に出てきて、アルバムの曲順通り「MECHANICAL DANCE」の演奏へ。当時のサウンドの骨格は、驚くほどシンプル!! その分RYUICHのボーカルはパワフルさを増し、激しいシャウトも使う。歌い方の変貌ぶりに、会場はただただ興奮するしかない。これが、26年前のLUNA SEAなのか――。
観客が心を震わせ、感動しているところに「みんな元気ですか?」と普通に挨拶してくるところがなんともRYUICHIらしい。このライブをやるにあたって昔の映像を見直したこと伝えたRYUICHは「これを再現するのは無理かもと思いながら、でも、進化してるからさ!」と自信に満ちた口調でバンドを鼓舞する。そして「IMITATION」の演奏へ。この曲のタメを多用した独特なグルーヴ感が、いまのLUNA SEAを形成する重要なパーツへと進化していったのが、演奏から見えてくる。20年以上ぶりに「IN MIND」の演奏が始まると、客席が大いにざわめく。この曲はLUNA SEAには珍しいシャッフルビートで、ここではJが弾くメロディックなベースラインがとても新鮮だった。ギターがシンプルな分、こうしてリズム隊の骨格がよりあらわになるナンバーのあとにきた「Image」(読み:イマージュ)は、格別だった。アコギではなく、エレキで美しい旋律をアルペジオで奏でていくINORAN。音の一粒一粒が本当に美しい。その上で空間的広がりを感じさせる音とフレーズで、曲を装飾していくSUGIZO。それらをボトムで支える強靭なリズム隊。そのなかでRYUICHIのボーカルがローからそのオクターブ上までエモーショナルにテンションを上げていく。重厚でドラマティックなLUNA SEA。その原型がむき出しになったようなパフォーマンスが見られて、気持ちが昂る。
LUNA SEA/SUGIZO 2018.12.22 撮影=LUNA SEA Inc.
演奏が終わると、RYUICHIが「俺たちが通ってきた道、足跡、残してきた作品を俺たちが進化させながら30周年を迎えたい」と静かに語りかけた。これは、ひょっとしてアルバム再構築ライブが今後も続いていくということなのだろうか? そんな嬉しい予感を感じながら曲は「SANDY TIME」へ。ここからLUNA SEAの濃厚な世界観が幕を開けていく。ステージを覆った紗幕が壁となって始まったのは「WALL」。20年以上演奏していなかったこのナンバーは、アルバムのなかでも次作『EDEN』に通じるような幻想的かつ、抜け感のあるミディアムナンバーだ。音の厚み、さらに磨きをかけた音色、歌。いまのプレイで聴く「WALL」に、客席が興奮している。そうして、曲のアウトロで徐々にステージが暗くなり“くるぞ、くるぞ”と観客の期待感がマックスに高まったところでバイオリンを構えたSUGIZOのシルエットが紗幕に映し出され、美しいバイオリンの音色で場内をやさしく包んでいった。
「SUGIZOーっ!!」という歓声とともに湧き上がる盛大な拍手。だが、照明が暗転するとその拍手はすぐに途切れ、場内に静寂が訪れる。静まりかえった会場の緊張感が最高潮に高まった絶妙なタイミングで、真矢がドラムのカウントを入れ「VAMPIRE’ S TALK」が始まる。緊張感をキープしたまま淡々と曲が進行していくなか、ステージが真っ赤に染まったのを合図に間奏が始まると、RYUICHIが神がかった絶叫を唱え、SUGIZOのギターが炸裂。このブロックでは、5人の呼吸が生み出す間合い、バンド感、さらにそこに照明、演出なども加わって、これまで彼らが積み上げてきた経験値を結集させたステージングで、濃厚な世界観を描き出すLUNA SEAを観客に知らしめていった。
LUNA SEA/INORAN 2018.12.22 撮影=LUNA SEA Inc.
このあとは真矢のドラムソロ、Jのベースソロをはさんで、ライブは「FATE」から後半戦へ突入。目の覚めるような真っ赤な衣装に着替えてSUGIZOがステージに現れると、ファンのボルテージも急上昇。RYUICHIが、さきほどソロステージを披露した真矢とJをコールで讃えると、JはLUNA SEAとしてはこの2日間のライブで見納めとなるMARIAが描かれたESPのベースを掲げ、キスをおくった。そうして「今日は22日だけど、LUNA SEAのクリスマスだよね」といって、RYUICHIがSUGIZOのギターに合わせて「White Christmas」を歌唱し始める。一瞬で、これまでとはまったく違うラグジュアリーで、ベルベッドのような質感をもった上品な歌声に歌い方をシフトさせたRYUICHIに、ただただ圧倒された。そして、その歌声をキープしたままライブは「I for You 」へと美しい流れで展開していく。しっとりとせつない愛をムードいっぱいに届けたあと、アルバムのなかでもダークな最速・最短な暴走チューン「SYMPTOM」を投下。真矢のバスドラが勢いよく駆け抜けるなか、さっきまでの姿が嘘だったかのようにプリミティブになったRYUICHIが、激しく叫び続ける。それに食らいついて体をゆさぶる観客たちを「PRECIOUS…」、「TIME IS DEAD」で熱狂へと導き、RYUICHIが「アリーナ、お前ら全員でかかってこーい!」と煽りを入れたあと、銀テープが宙を舞い、最後はアルバムのラストに収録され、これまで大事なライブを何度も締めくくってきた人気曲「WISH 」を歌って、本編はフィニッシュ。
LUNA SEA/J 2018.12.22 撮影=LUNA SEA Inc.
アンコールは「アンコール」と叫ぶ代わりに、SLAVE(LUNA SEAのファンの呼称)たちがスマホライトをかざし、一丸となって「きよしこの夜」の大合唱を始める。合唱に耳を傾け、聞き入っていたRYUICHIが「カウントもないのにすごいよね。練習してないよね? 誰から始めてるの? 誰かすごく声がデカいヤツがいるの?」と驚いた様子で語りかける。そこにJが素肌に白ジャケットという出で立ちで登場したものだから、ファンは狂喜乱舞! そうして、アルバムに収録された三拍子の、いまやLUNA SEAを象徴する名曲の一つとなった「MOON」が始まると、客席からはこの日1番の大歓声が湧き起こる。3機のミラーボールが光を反射するなかで、壮厳かつ神秘な世界を場内に作り上げたあとは、最新アルバム『LUV』の「Hold You Down」へ。その瞬間、無数のレーザーがステージから扇状に放たれ、演出、サウンド、すべてが現代へとトリップ。視界がすこーんと開けるようで、このトリップがたまらなく気持ちよかった。真矢とSUGIZOが手拍子を促すと、場内には観客のクラップ音が鳴り響き、まばゆい光に包まれ、会場いっぱいに幸せな空間が広がっていった。
LUNA SEA/真矢 2018.12.22 撮影=LUNA SEA Inc.
このあと始まったメンバー紹介のコーナーでは、RYUICHIに言葉を求められたINORANが「『IMAGE or REAL』の時代、しゃべってなかったんで(笑)」と伝えると、RYUICHIも「動いてもいなかったしね(笑)」と補足を付け加える。すると、INORANが「今日の姿は見なかったことにしてくれー」といって場内の笑いを誘った。
そうして、このあとは「ROSIER」でJがマイクスタンドをぶん投げ、観客一丸のシンガロングを呼び起こした「TONIGHT」では、曲中にINORANが観客を煽りまくったあと曲を再スタートさせるというおなじみのパフォーマンスに続いて、最後は超久々にRYUICHIがステージの端から端までを全力で駆け抜けてみせた。こうして、今日のテンションを翌日のライブにつなぐようにして、彼らはこの日のライブを締めくくったのだった。
取材・文=東條祥恵 撮影=LUNA SEA Inc.
LUNA SEA 2018.12.22 撮影=LUNA SEA Inc.

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