【ライブレポート】<DECEMBER’S C
HILDREN>、スパルタ、バンアパ、DE
ZERT、後藤まりこ等がビリビリと激突

2018年12月16日、マイナビBLITZ赤坂。音楽事務所moving onが主催する年末恒例のイベント<DECEMBER’S CHILDREN>が行われた。2012年の開催から7回目となった今回は、エッジの立ったアーティストが熱くぶつかる夜となった。
オープニングアクトの一番手で登場したのはサクマリナ。愛憎こんがらがる情念がむき出しとなったステージで、いきなり度肝を抜く。抱えたアコースティックギターは、マシンガンのように叩き込まれる言葉、メロディー、感情のゆれと一体となったかのよう。まるで武器に見えた。

苛立ちをエンジンに刺々しい言葉が続くが、そのなかに時折、可憐な歌声が現れドキリとさせられる。「女に生まれて嫌なこといっぱい。ロックは男のものだしさあ。きのこ頭のバンドマンに嫌な思いもさせられた」と毒づいたあと、「そんな悪口の歌です」と最後の歌を歌い終え、ステージを去っていった。その時のフロアの静けさがサクマリナの“衝撃”を物語っていた。
続いてのオープニングアクトは沖縄からやってきたAs Alliance。沖縄を中心に中国、台湾、マカオなどを巡るアジアツアーを精力的に展開している6人組だ。スラッシャー、デスメタル、メタルコアなどゴリゴリでヘヴィなサウンドを地響きのように響かせて圧倒したかと思うと一転、サビでは抜けのよいメロディーが飛び込んでくる。それをフロントで引っ張るシャウト&低音デスボイスのTsuguma、甘いハイトーンボイスのBrandonという2人のボーカルのメリハリは快感。

また激しいパッションを発散するなかに、フレンドリーさに溢れたキャッチーさも見え隠れ。初見の観客の多いフロアを一気に沸かせた。今後の飛躍を予見させるステージだった。
オープニングアクトから激しくパワフルなパフォーマンスで幕を切った2018年の<DECEMBER’S CHILDREN>。本編のトップバッター、眩暈SIRENが登場。エモーショナルなサウンドが注目を集める福岡の5人組ロックバンドだ。2018年11月にリリースされたばかりのミニアルバム『囚人のジレンマ』のタイトルトラックを含む5曲を、幻想的なSEを挟みながら一気に演奏。

ソリッドなギター、重くグルーブするリズム隊、ときにカラフルに跳ねる音色で彩る鍵盤、そして、京寺の切迫感が響くボーカル。それらが一体となって、自分たちを取り巻く閉塞感や厭世観を振り払うかのようにラウドな演奏が繰り広げられる。SEを聞いてもわかるように様々なジャンルの要素を巧みに取り込む才能が光るが、何よりままならぬ現状を打破しようともがく“あらがい”が刺さった。
フロアが温まってきたところでDEZERTの出番に。SEに合わせてステージ奥からスポットライトが赤、青に点滅。フィードバックするギターのなか、歓声に包まれてボーカルの千秋が只者ではないオーラをまとってポジションにつく。「ピクトグラムさん。」から一気呵成にフロアを持っていく。ステージ半ばでは、エレポップなイントロで始まるダンサブルな「遭難」を熱唱し、ハッピーサッドにフロアを染める。

DEZERTはビリビリとした緊張感で進んできたこの夜にあって猛者ぶりを見せた。フロアではファンが長い髪を振りながらヘッドバンキング。「自分の居場所」を求め、あがく者へのメッセージが放たれる。このイベントはそんなエナジーを放つ“ひとまとめにはならない”アーティストが多種多様にステージに上がっていたが、もしかしたら異種格闘技戦のような乱戦模様が生む勝手の違いに千秋は“そぐわなさ”を感じていたかもしれない。でも、それを楽しんでいたようにも見えた。DEZERTは違和感のなかできっちりと矜持を示す。最後の曲は荒ぶるファストコアサウンドですべてをぶっ潰す「殺意」だった。
続いては名古屋・栄の路上ライブでも刃を研いできたSuspended 4th。ロック、オルタナ、ミクスチャーなどの要素を融合したサウンドを爆裂させながら、その一方でストリートカルチャーのスポーティーな軽やかなさを粋に忍ばせる“何かを持っている”バンドなのだが……2曲を演奏し終えたところでボーカルのKazuki Washiyamaが「ああ、俺らぜんぜん足りてない。セットリストを変更してもいいですか」と一言。メンバーに耳打ちをし、そこからミドルテンポの重たくうねる轟音が爆裂するインストナンバーに。

和気あいあいではない、勝負感が漂うイベントにあって、気合が空回りしてしまったのかもしれない。でも、ここ“そぐわない赤坂の街”で、Suspended 4thはよそゆきの服を捨てた。そう思わせる激情を爆発させた。最後はとっておきのナンバーとして用意していたであろう曲を持ち時間の関係で演奏できず、ステージを降りた。ただ、観た者に刻むハプニングは起こせた。その熱情はしっかりとフロアに伝わっていた。負けん気にあふれる彼らの行き先が楽しみだ。
2015年からソロアーティストとしての活動を休止していた後藤まりこが“DJ後藤まりこ”として久しぶりの赤阪BLITZに降臨。この出演に際して後藤まりこは「赤坂BLITZのステージにもう一度立てるなんて思ってもみませんでした。(略)。ライブを何年かお休みして、いろいろ考えて、やっと、ふっきれました。やっぱり、僕はライブが好きみたいです。キラキラの初期衝動を忘れず、僕とあなた方、一緒に遊びましょう。(略)。後藤、恥ずかしながら、精一杯、出来る限り、この日のイベント、誠意を持ってやりまくりたいと思います。DJ後藤まりこやりまくります」とコメントを発していた。

その言葉通り“後藤まりこ”は爆発。早々にフロアに飛び込みモッシュ。小さな体を支える観客の上練り歩きシャウト。デジタルハードコアなオケに乗せてパッションを発露させる。そのライオットなあらぶりは、「居場所のない連中」を鼓舞。愛にこんがらがった傍若無人さで、ステージでもフロアでも、楽しそうに居心地が悪そうに、怒りながら笑いながら、懸命に奔放にやりきった。最後の曲を歌う前、ステージ最前線で叫んだ言葉は「僕は、僕は、僕は……大人には絶対にならない!」だった。
後藤まりこの絶唱で空気がヒートアップしたなか、the band apartがステージに。2000年代中頃、パンクスピリットをベースにジャズ、ファンク、フュージョン、シティポップを独自のセンスで、さも当たり前の顔で涼しげに昇華させたそのサウンドは斬新で鮮やかだった。そして、シャイなのか、仏頂面なのか判別しづらい佇まいは、ポストパンクを知る者にとって何か信頼にたる印を与えていた。

そんな彼らはこの夜、流行り廃りの激しいシーンを乗り越えた猛者のたくましい顔を見せてくれた。若きバンド、アーティストが放つギラついた火花もドンと受け止めて臨む姿は、彼らが生き抜いた歴史を感じさせた。最近、ヒップホップやストリートカルチャーをも経た後の、“今の都市を生きる”とっぽいシティポップ〜AORが最新型カウンターミュージックとして若者のリアリティを表現しているが、the band apartは時代よりも早く、そのテンションをただ一人鳴らしていた。もちろん今宵、そんなオリジネーターを待ちかねていたファンにはしっかりとレスポンス。ラストナンバー「夜の向こうへ」で聴けた刹那で、タフで、ハッピーなグルーヴには都市をサバイブするプライドのような何かが潜んでいた。
いよいよイベントは大トリ。SPARTA LOCALSがステージに上がる。王道のパンク〜ポストパンク〜ニューウェーブを継ぐジャキジャキとしたナイフのような切れ味に、独特の和風フォークテイスト、“ええじゃないか”的な乱痴気お祭り感をごった煮にした歌で、寄る辺なき者から熱狂的に支持されてきた。2016年12月よりオリジナルメンバーでの再開を果たした彼らが、この夜の締めを飾るのは感慨深いものがある。フリーキーな四畳半フォークをメタリックファンクで騒動に変えるサウンドは今も健在。待ちかねた“いなくてはならぬ存在”として応え、持ち前の“何かただならぬ気配”を与えた。SPATA LOCALSは“カルトな伝説&ヒーロー”で終わるタマではない。そんな現在進行系のあらぶりを“生き様”として鳴らしたステージを見せてくれた。

出演者がエッジを立てまくった今年の『DECEMBER’S CHILDREN』。繰り返しになるが、出演者同士のビリビリしたテンションがスパークしていた。年齢、ジャンルを超えて共通していたのは、見晴らしの悪い我々の世界への“ノー”と突破への渇望。この夜の先に何があるのか。来年、再来年、10年後……答えを見てみたい。

取材・文◎山本貴政
撮影◎高橋一生/朝岡英輔 (SPARTA LOCALS)

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