『THE RENAISSANCE』には
THE ALFEEがブレイク後に示した
堂々たるロックサウンドがある

確信を持ってロックを前面に打ち出す

THE ALFEEはもともと桜井が高校時代に所属していたフォークグループ“コンフィデンス”が母体であり、デビュー時のスタイルもフォーク。再デビュー以降、高見沢が全ての楽曲を手掛けることになってから徐々にロック色を強め、1982年の5thアルバム『doubt,』でその割合が増えたと言われている。1983年の7thアルバム『ALFEE'S LAW』においては、「メリーアン」の他、バンド史上初のスピードメタルも披露している。「星空のディスタンス」で音楽シーンでの確固たるポジションを確立した後の作品、8thアルバム『THE RENAISSANCE』ともなると、完全にロックのリミッターは外れたと言っていい。

鐘の音~クラシカルなシンセで幕を開けるM1「孤独の美学」は、プログレ寄りのハードロックといった印象。歌の主旋律はメロディアスで、サビはキャッチーで親しみやすいのだが、ツーバスの面白いリズムの取り方であったり、間奏で転調しての速弾きギターソロであったり、そこからブレイクを経てリフに展開する様子であったり、決して長い曲ではないものの、構成がとてもドラマチックだ。そして、これもまた劇的な展開を見せるM2「愛の鼓動」に続く、M3「真夜中を突っ走れ!」は米国西海岸を彷彿させるカラッとしたR&R。さらにM4「二人のSEASON」ではシャッフルのブギーと、複雑さだけでなく、ベーシックもしっかり押さえている(まぁ、この時点でTHE ALFEEはデビュー10周年だったのだから、“ベーシックもしっかり押さえている”とは随分と失礼な物言いだが…)。それでいて──M4「二人のSEASON」が特にそう感じるのだけれども、サビメロの抑揚もドラマチックで、THE ALFEEでしか作り得なかったロックになっているのはさすがの貫禄と言えるだろう。この時期すでにCDは商品化されていたが、割合としてはまだアナログ盤のほうが圧倒的で、M5「星空のディスタンス (Long Version)」でA面を締め括る構成は時代を感じさせるところではある。

B面がM6「GATE OF HEAVEN」で始まり、M7「鋼鉄の巨人」と続く辺りは、完全にリミッターを外した証左であろう。M6「GATE OF HEAVEN」は8分27秒にも及ぶプログレ大作。3人ともがヴォーカルを取り、アコースティックからハードロック、変拍子があったり、アウトロ近くはボレロ風なマーチングビートを取り入れていたりと、まさに何でもあり。歌詞での《自由の旗を心にかざせ》の通り、その精神が発揮されたナンバーだ。M7「鋼鉄の巨人」は、この前作『ALFEE'S LAW』においては初披露したスピードメタルの第二弾。間奏でのライトハンドなどメタルをかなり意識的にやっていることが分かる。以降、どことなく米国のロックバンド、Starshipを彷彿させる、アニメ映画の主題歌にもなったM9「STARSHIP -光を求めて-」、リズムレスでパイプオルガンを導入するなど、これまたプログレを完全に意識しているM10「永遠の詩」もいいが、個人的に最も注目したのはM8「NOBODY KNOWS ME」。佐野元春っぽいニューウェイブさもありつつ、その師匠筋に当たる大滝詠一っぽいセンスが見え隠れしつつ、THE ALFEEの3人のコーラスワークが加味されて、さらに全てのご先祖様とも言えるBrian Wilsonっぽさも感じさせる。ハードロックテイストの強い作品の中で一本調子を避けてミディアムを入れたのだろうが、THE ALFEEの出自から考えるとフォーキーに仕上げそうなところ、こういう仕上げ方をするとは懐が深い。これまた流石である。

最後に──サウンド全体に見るアコギの存在感について少し記したい。『THE RENAISSANCE』は、これだけハードロック、プログレテイストの強いサウンドながら、アコースティックギターは隠れていない。やはりというか、当たり前というか、ステージでの立ち位置通り、THE ALFEEの中心には坂崎幸之助がいることが分かる。組曲的にさまざまなパートが連続するM6「GATE OF HEAVEN」や、リズムレスのM10「永遠の詩」が、そのことが分かりやすいが、白眉はM2「愛の鼓動」ではないかと思う。サビに注目してほしい。エレキギターと激しいドラミングが支配している楽曲ではあるが、サビに重なるアコギのアルペジオは、まさに楽曲全体の雰囲気を決定付けるほど、絶妙な入り方をしている。この辺はコンポーザーである高見沢の指示によるところなのか、あるいは卓越した音楽知識を持つ坂崎が導いたものか、どういう経緯で出来上がったのか分からない。しかしながら、『THE RENAISSANCE』の時点でこういったアレンジができたことは、THE ALFEEが単なるハードロックバンドに止まることなく、現在まで走り続ける息の長い存在となった、その秘訣のようなものが隠されているのではないだろうか。

TEXT:帆苅智之

アルバム『THE RENAISSANCE』1984年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.孤独の美学
    • 2.愛の鼓動
    • 3.真夜中を突っ走れ!
    • 4.二人のSEASON
    • 5.星空のディスタンス (Long Version)
    • 6.GATE OF HEAVEN
    • 7.鋼鉄の巨人
    • 8.NOBODY KNOWS ME
    • 9.STARSHIP -光を求めて-
    • 10.永遠の詩
『THE RENAISSANCE』(’84)/THE ALFEE

OKMusic編集部

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