『サムシング・ロッテン』開幕~「ミ
ュージカル愛ダダ洩れ」と語る福田雄
一に中川晃教、西川貴教が満面の笑み

2018年12月17日(月)、東京国際フォーラムホールCにて、ミュージカル『サムシング・ロッテン!』が初日を迎えた。本作は『コーラスライン』『レ・ミゼラブル』をはじめとする人気ミュージカルや、演劇の原点とも言えるシェイクスピア作品を彷彿とさせるシーンが溢れんばかりのリスペクトとともに描き込れた作品。2015年にブロードウェイで初演されると舞台・ミュージカルファンをはじめとする多くの観客の心をくすぐる話題作になり、同年のアメリカ演劇界の最高峰「トニー賞」で9部門10ノミネート、うち1部門を受賞している。
本作が日本初上陸を迎えるにあたり、日本語台本・演出を務めたのはコメディ・ミュージカルの鬼才・福田雄一。主人公の劇作家ニック役を中川晃教、ニックが憧れ嫉妬する人気劇作家シェイクスピア役を西川貴教が務める。このほか、ニックの妻ビー役に瀬奈じゅん、ニックの弟ナイジェル役に平方元基、ナイジェルと愛し合う清教徒の娘ポーシャ役に清水くるみ、ニックの運命をある意味左右することになる予言者ノストラダムス(?)役に橋本さとしがキャスティングされている。
初日前には同劇場にてゲネプロ(通し稽古)が披露された。この模様をレポートしよう。まずは下記動画から御覧あれ。
【動画】ミュージカル『サムシング・ロッテン!』ゲネプロより

そもそも本作のタイトル『Something Rotten!』(サムシング・ロッテン=何かが腐ってる!)とは、戯曲『ハムレット』の一節“something is rotten in the state of Denmark.”から引用されたもの。
物語の舞台は16世紀、ルネサンス時代のイギリス。売れない劇作家ニックは弟のナイジェルと共に自身の劇団を運営していた。この時代の寵児でありスーパースターの劇作家シェイクスピアに対抗心むき出しのニックは、劇団運営に行き詰まり、妻ビーの目を盗んで予言者ノストラダムスのもとを訪ね、彼のお告げに従い世界初の歌って踊る「ミュージカル」を書こうと決意するが……。
一方、『ロミオとジュリエット』が大ヒットしたシェイクスピアも「生みの苦しみ」に人知れず思い悩んでいた。以前からナイジェルの才能に目をつけていたシェイクスピアは、彼からなんとか次作のアイデアを得ようと画策する。しまいには「トービー・ベルチ」と名乗る役者に化け、ニックの劇団に潜入し、アイデアをどんどん盗んでいくが……。
前述のとおり、台詞はもちろん、演出、歌、音楽、ダンスなど、至るところに古今東西の有名ミュージカル作品のオマージュが織り込まれている本作だが、笑いとミュージカル愛に溢れる福田の手を介したことで、日本で上演されている人気ミュージカル作品を感じさせる様々なネタもふんだんに盛り込まれていた。福田はかつて浦井健治、柿澤勇人らが出演したミュージカル『タイトル・オブ・ショウ』(2014)でも当時の国内上演作品を上手く織り込み観客を沸かせたが、本作ではその時よりさらに、さらにパワーアップ! 観劇したミュージカルファンが終演後に「元ネタいくつ分かったか選手権(仮題)」を有楽町界隈で行っていてもおかしくない話だ。(※休憩前に「元ネタをSNSなどで語るのはNG」とアナウンスが入るのでご注意を)
しかも、ミュージカルネタだけではないのが“福田節”。出演者に関わる作品や番組、CMネタ、中にはミュージカルネタから出演者繋がりのCMネタへつなげる芸の細かさも見せ、どれだけ楽しみながら作っているのだろう、と思わせる。
もちろん上記のような「ネタ」はあくまでサブ的なもの。ニックやナイジェル、シェイクスピアたちクリエイターの苦悩やライバルへの激しい嫉妬、クリエイターたちを支える人々の物語、何より演劇・ミュージカルに対する愛がしっかり描かれているからこそ、またこれらを演じるすべてのキャストが、歌に踊りに芝居に、それぞれが持つ高いポテンシャルを最大限に発揮しているからこそ、作品の魅力が何倍にも増し、観客を最後まで多幸感に包むことができているのだ。特に中川と西川の極上の歌声は必聴! 来たる新しい一年に向けて観る人すべてにポジティブエネルギーを与えるような力を感じさせていた。
ゲネプロ終了後、囲み会見が行われ、中川、西川、福田が出席した。初日を目前にした心境を聞かれると、福田が「様々なミスが出まして」と口にする。すると中川が「ダメ出しだ! 怖いよ~」とおどけつつも苦笑い。福田は「ゲネプロでミスが出た方が本番がうまくいくんです。逆にゲネプロでうまくいくと本番が怖いんです」とポジティブに語った。
続く中川は「私たちは(稽古場での)稽古終わりから、1週間くらい舞台に立ってやっているんです。昨日今日と舞台でやらせていただいていますがドキドキやワクワクが止まらないんです。共演する仲間、そして福田さんの『絶対に大丈夫だよ、お客さんハッピーになるから』というマジックを終始感じる事が出来ました」と笑顔を見せた。
一方の西川は「直前までいろんなリクエストが多いもんですから」と福田を意識して話し出す。福田がクックッと笑うなか、西川は「昨夜、夢の中に福田さんが出てきて『シェイクスピアの引用の台詞、7ページくらい増えるから』と言ってきたので、あまりのリアルさにうなされてガバッと起き、台本を改めて読んで『よかった!増えてない』って安心したんですから」と珍しく追い込まれている感を語る。すると間髪入れず福田が「この後、台詞増やすから。今日のゲネプロを見て思ったんだけど……」としれっと言うと「嘘でしょ!最悪だ! 言わなきゃよかった」と笑いながら肩を落としていた。
福田からのリクエストで大変だった点を聴かれた西川は「(ゲネプロを観ていたら)わかるでしょ!やらされているって皆、思いつく事あるでしょ! 誰もが納得するところがあるでしょ! あんな事ばかりです(笑)」と西川ならではのとあるネタについて声を張り上げる。ここでうっかりネタバレした福田の発言を紛らわすように中川が「タップもあったよね」と話を変える。「タップをやるかどうかはグレーゾーンだったんですけど、稽古場に入る一週間前にね。僕たち頑張りました」と中川。西川と共に福田演出の洗礼を振り返っていた。
中川と西川は本作で初共演だが、「中川晃教」「西川貴教」の名前について「字面が凄く似ているんです」と西川。「干支もちょうどひと回り違うんです。見てくれもね。お互い引きの絵で見ると『あれ!?似てる!?』って。先祖をたどっていくと同じお猿さんになっているかも」と笑いを誘っていた。
そんな西川の話を笑いながら聞いていた中川は「(西川は)大先輩だし、TVで観ていた憧れの存在でもあるんです。今、ついこの間もFNS歌謡祭(フジテレビ)で『ミュージカル特集』が組まれるくらいお茶の間にミュージカルが顔を出してきているんです。さかのぼると西川さんは割と初期のころからミュージカルもやっていますよね」そして「音楽とミュージカル、そしてエンターテインメント。ミュージカルを観たことある人もない人も、楽しんでもらえるような作品を志してますので、そんな作品で西川さんとタッグを組めている事に運命を感じています」とリスペクトすると、西川が「よく言った!」とハグをする一幕となった。
「ミュージカルの愛ダダ洩れなミュージカルなんですが、ミュージカルをよく知っている人はもちろん知らない人でも楽しめるので、これをきっかけにもっとミュージカルを観てほしい」と福田がまとめるように本作の見どころをアピールし、初日公演に向けて3人はそれぞれの楽屋に戻っていった。
(左から)福田雄一、中川晃教、西川貴教
取材・文・撮影=こむらさき

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