笑いと真面目のバランスが絶妙な群像
劇! 『ジーザス・クライスト・レデ
ィオスター』公開ゲネプロ

2018年12月12日(水)、東京・紀伊國屋ホールにて、『ジーザス・クライスト・レディオスター』が初日を迎えた。
本作は、人気演劇作家の西田大輔と元お笑い芸人で気鋭の脚本家、家城啓之(マンボウやしろ)のコラボによるシチュエーションコメディー。西田のオリジナル作品として2004年に初演し、過去4回の再演を行ってきた人気作。その原作を、舞台『魔王コント』の脚本・演出を手掛け、TOKYO FM「Skyrocket Company」のDJとしてラジオ番組の裏側を知る家城が脚色・アレンジ。そして西田がその脚本を演出をするというコラボレーションで出来上がった。
【あらすじ】
10代を中心に絶大な支持を集めるカリスマDJ・ジーザスが持つ番組は伝説的な聴取率を誇っていた。
今日は特番で生放送。いつもより気合いを入れて生放送に臨むスタッフたち。番組スポンサーの社長が来たり、特番のゲストが来たりといつもより準備が大変だ。
しかし、OA直前になってもジーザスは現れない。
番組を止めるわけにはいかないとプロデューサーはジーザス不在のままOAを指示する。
ジーザスの穴を埋めるため奔走するディレクター、放送作家、音響たちレギュラースタッフ。なぜかゲストやスポンサー企業の社長、演歌歌手など様々な人間を巻き込んで番組が始まってしまう。
様々なトラブルに巻き込まれながらもジーザス不在で無事に生放送を終えることができるのか?
初日前に公開されたゲネプロ(通し稽古)の模様をレポートする。

大きな声では言えないことだらけの番組制作の舞台裏で、新人の青臭い正義感やそれをねじ伏せる先輩たちの大人の事情、さらに相手に合わせておべんちゃらと威圧を使い分けるプロデューサーなど、それだけならどこにでもありそうな「熱血職業群像劇」になりがちな設定。でもそうならないのは、おそらく話が熱く真面目になるかと思いきや、絶妙な(もしくは強引な)タイミングで笑いを差し込み、観るもののガス抜きをする、いい意味での力の抜け具合によるものかもしれない。
そのバランスの中で、最初は生放送特番で放送事故が起きないようにと、その場にいる全員が「仕事として」全力を尽くそうとしていたと思われるが、いつしか、ラジオの向こうにいる誰かのために本気で身を乗り出し本音で寄り添おうとする。仕事の「本来の目的」となる部分に手を伸ばそうと懸命になる姿に胸が熱くなる。過去4回も再演されている人気作というのもうなずける話だった。
現場のリーダーとして緊急事態であっても冷静に指示を出そうとする番組ディレクター役の染谷俊之、派手さはないが、染谷演じるディレクターをサポートする構成作家役の八木将康(劇団EXILE)、青臭い正義感を直球でぶつけてくる新人AD役の中島早貴。ここを軸として、安川純平、宮平安春、小槙まこ、大地洋輔(ダイノジ)、小野寺ずる、肘井美佳、辻本耕志がひっかきまわし、役どころとしては調子ばかりよくて役立たずのプロデューサー役だが、芝居としては大きな大黒柱となっていた山崎樹範のふわふわした安定感(?)が非常に良い存在となっていた。

そして忘れてはいけない、ジーザス吉田とその弟・吉田健康の2役を演じる板倉俊之 (インパルス) 。強引で自信に溢れる兄と真面目で人見知りな弟の役のハマりがよく、これが初主演とはとても思えない自然な佇まいを見せていた。

なお、ゲネプロ前に出演者3名から、以下のコメントが寄せられた。
■売れない演歌歌手・氷川金次郎役:大地洋輔(ダイノジ)
一癖も二癖も三癖もある人たちが登場するのですが、皆何か足りないところがある人たちばかりなので、それをお互い補完しながら一つの物を作り上げていこうと奮闘する姿に皆さんの共感を得られればと思います。
■六本木のカリスマSM嬢・宮崎ハヤ子役:肘井美佳
本当に個性的な人たちが揃ってのチームワークが本作の魅力です。劇中、チームワークがないと成り立たないことがいっぱい起こります。初めましての人たちのチームワークの話ですが、それを演じる役者たちのチームワークはとれています。そこがリンクして、お話にさらに深みが増しているのではないかと信じて演じています。そのチームワークをぜひ観て頂きたいです。
■ラジオプロデューサー・山根平蔵役:山崎樹範
僕は何年か前にラジオの生放送をずっとやらせていただいたのですが、本当にラジオって生だから面白いし、ハプニングがあるから面白いんです。昨日の夜、ふとラジオの仕事をしていた頃のことを思い出して、『ジーザス・クライスト・レディオスター』と同じだと思ったんです。一気に腑に落ちた感じで、今日からの本番がすごく楽しみになってきました。目の前で起こるハプニングをなんとかしようという姿が、面白いと思うし、愛らしいと思うので、そこを見ていただければと思います。僕らがラジオをやっていた時にルールがあって、意見が分かれた時には、演者でも作家でもディレクターでもプロデューサーでもADでも誰でもいいけれど、一番想いが強い人の意見に従う、というルールがあったんです。これもまさにこの舞台と同じだし、僕らがやっていたラジオも、全国で流れているけれど、『誰か一人のためだけのラジオでいい。それがより多くの人に届けばいい』という想いがあって、それもこの舞台の物語と同じです。
『このお芝居がもし一人のお客さんの心も動かせなかったら、ここに出ている全員引退する』という気持ちでやります!

余談だが、舞台が始まる前の場内アナウンス、さらに終演後のアナウンスもどうぞ楽しんでいただきたい。
取材・文・撮影=こむらさき

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