ポーランドの独立記念日にピアニスト
黒木雪音が「サンデー・ブランチ・ク
ラシック」に登場!

「サンデー・ブランチ・クラシック」2018.11.11 ライブレポート
2018年11月11日(日)東京・eplus LIVING ROOM CAFE & DININGにて行われた人気企画「サンデー・ブランチ・クラシック」に若きピアニスト黒木雪音が登場。その高い演奏力から紡ぎ出される美しいピアノの音色で、集まった観客を心地よく包んだ。
黒木は、若干7才で東京フィルハーモニー交響楽団と共演し、これまでに国内外の多くのオーケストラと共演してきた。各国のピアノコンテストで1位、グランプリ、金賞などトップを極めた黒木。最近は関ジャニ∞の「THEモーツァルト音楽王No.1決定戦」で2連覇を成し遂げた事で黒木の存在を知った人もいるだろう。
そんな黒木がこの日演奏した曲は以下のとおり。
・ショパン「プレリュードOp.28-1,3,4,5,7,8」
・リスト「巡礼の年第2年イタリアよりペトラルカのソネット第47番」
・パデレフスキ「ピアノソナタOp.21 第1楽章」
・カプースチン「エチュード」※アンコール
黒木雪音
■ショパン「プレリュードOp.28-1,3,4,5,7,8」
この日集まった観客がすうっと黒木の弾くピアノの世界に入っていけるように、と耳に優しいメロディが織りなすこの曲が一曲目となった。ご存知の方はおそらくニヤリとされるだろうが、プレリュードの第7番は太田胃散のCMでおなじみの曲。そのメロディが聴こえてくるとそれまでおとなしく聴いていた観客の表情に変化が。微笑みを浮かべる人、連れと顔を寄せて「あの曲だね」と語り合う人……子どもたちも「どこかで聞いた事がある!」と身を乗り出し黒木の演奏に耳を傾けていた。
黒木はここでマイクを持ち、自らMCを行った。その様子がそれまで弾いていた流暢なピアノの旋律とは異なり、初々しく緊張感にあふれたものだった。おそらくMC役は慣れていないのだろう。ぎこちなくでも一生懸命に語る黒木の口から、この日がポーランドの独立記念日であると説明が入る。だからこそ作曲家であり、ポーランドの初代首相を務めたパデレフスキの楽曲をメインに選んだ、と語り、またマイクを置いた。
黒木雪音
■リスト「巡礼の年第2年イタリアよりペトラルカのソネット第47番」
MCから解放された喜びもあってか、ショパン以上に豊かな色彩を鮮やかに放ちながら弾く黒木。リストと聴けば超絶技巧を要する楽曲が思い浮かぶが、この曲はそれとはことなりまるで花が一斉にスローモーションで開花していくようなゆったりとした美しさを持つ楽曲だ。ロマンティックな世界に誘うように、魅力的に弾く黒木だった。
■パデレフスキ「ピアノソナタOp.21 第1楽章」
この日のメイン曲。リストとは世界が一転し、まるで嵐が来たような激しさと、どこか歴史小説を紐解くようなドラマティックさをも感じさせる楽曲。先ほどまではピアノの上空にいる何かと対話するような表情で弾いていた黒木だったが、この曲では人生や運命と対峙し、抗っているような厳しい表情を見せる。まさに圧巻の演奏だった。
■カプースチン「エチュード」
観客の拍手で再度迎えられた黒木が御礼と共に「この曲を最後に」と選んだのは、高度な演奏技巧が求められ、どこかジャズの香りがする名曲。まるで鍵盤の上で指が一斉に走り出すような速弾きに観客からは大きな拍手が送られていた。
ライブ終了後、黒木に話を伺ってきた。
ーーお疲れさまでした。まずは「サンデー・ブランチ・クラシック」で演奏した感想から聴かせてください。
会場がアットホームな雰囲気なので皆さんあたたかく包んでくださるようでした。だから私も全然緊張せずリラックスして弾くことができました。コンサートホールなどではなく、こういった場所で弾くのは初めてですごく楽しかったです。時間が経つのがとても速く感じて30分のライブ時間の中、最後の曲を弾きながら「ああ、もう最後の曲なんだ……」と思いながら弾いていました。
ーーご自身でMCも務めていらっしゃいましたが、そもそもMCをする事自体初めてだったんですね。
一人で全部やるのが今日初めての事だったので何を話そうか、話したい事はたくさんあるのに緊張して思うように出てこなくてどうしようかと思いました。
ーーそのMCの中でも話が出ていましたが、今日はポーランドの独立記念日ということで、演目にショパンとパデレフスキの楽曲を入れたんですね。
そうなんです。一曲目は途中であの有名なメロディが出てくると皆さん顔色がパッと明るくなっていました。その有名なメロディの前に、こんな素敵な物語を感じさせるメロディがある事を今日初めて知った方もいらっしゃると思いますよ。この曲は全部で24曲の構成になっていて、今日は1から8までを抜粋して演奏しました。なじみやすい流れになって皆さまへ届くといいなと思いました。
ーー2曲目のリスト「巡礼の年~」は、ロマンティックで華やか、花が一斉に咲き出すような絵が浮かんでくる楽曲でした。
これは元々の原曲が歌曲で歌の伴奏をピアノ版にしたものです。「静かな愛の歌」というタイトルですが、ゆっくり進んでいく中に燃えるような愛があります。それを直接的ではなく内側からお客様にどのように伝えるか、を大事に考えながら弾きました。
ーーそして3曲目のパデレフスキの「ピアノソナタOp.21」。こちらは一転して「激動」「嵐」といった言葉が思い起こされるような楽曲ですね。
この曲にはドラマがあって、今回は1楽章だけを弾きましたが、続く2楽章はゆったりとした曲調でありつつも、1楽章で示した固い「意志」のようなものが見えますし、3楽章ではその想いが爆発して激動に向かっていく……本当は皆さまに2、3楽章も聴いていただきたかったなあ、と感じています。
ーー弾く側にとって、一楽章だけで演奏を止めるのはかなりストレスなのでは(笑)?
はい! もう続きが弾きたくて弾きたくて(笑)。1楽章だけを弾く時と全楽章を弾く時とではお客様に伝えたい事が違うので、弾き方を変えています。例えば、全楽章を弾く場合、1楽章で出てきたテーマが3楽章でも出てくる時は、1楽章ではそれを予感させるように弾き、3楽章であのテーマが来た!と確信させるように弾きます。でも1楽章だけを弾く場合はそのテーマを強調して、この曲だけ聴いてお客様が満足できるような弾き方を心がけています。
ーーアンコールではカプースチンのエチュードを演奏されていました。圧巻という言葉で表現するしかない高速弾きで興奮しました。鍵盤の上で指が全力疾走しているようで……。
最後に発散させていただきました(笑)。大好きな曲で以前はよくアンコールで弾いていたのですが、最近はアンコールで発散するような曲より、ゆっくりしんみりと聴かせる曲の方がいいかな、と少し離れていたんです。
ーー全体を通して気になっていたんですが……黒木さんは、ピアノの前に座ってから弾き始めるまで、ほとんど間をおかずに弾き出しますよね?あれはいつものスタイルなんですか?
(笑)。コンクールなどではもちろん弾く前に精神統一したり、「あの部分はこう弾こう」と考えてから弾き始めることもあります。 今日はとてもアットホームな雰囲気を感じ、あたたかいお客様の前で演奏ができて本当に幸せでした。
黒木雪音
取材・文・撮影=こむらさき

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